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きょうの社説 2011年6月20日
◎スポーツ基本法成立 省の設置も選択肢の一つ
スポーツ振興法制定から50年の節目の年に、国のスポーツ施策の根幹をなすスポーツ
基本法が成立し、大きな転換点を迎えた。1961年制定の振興法は、東京五輪に備えた施設整備や学校体育に主眼が置かれたが 、スポーツは相撲や野球だけでなく多様化が進み、スポーツ人口も飛躍的に広がった。プロスポーツの隆盛をみても振興法は明らかに時代遅れである。 スポーツ施策推進を「国の責務」とした法の基本理念は妥当なものだろう。「地域スポ ーツ」を重視したのも、プロチームが地方で増え、地域の一体感を高めるスポーツの効果を考えれば当然である。 基本法成立後の次の焦点はスポーツ庁の設置である。この点に関しては、条文でなく付 則に記され、しかも「検討、必要な措置を講じる」と抑制的な表現にとどまった。行政のスリム化に逆行するとの判断らしいが、スポーツ施策を強化するには政策実行機関が必要であり、行革にそぐわないと頭から決めつけるのは疑問である。 スポーツ行政は、学校体育が文部科学省、障害者スポーツが厚生労働省、施設関係が国 土交通省と複数省庁にまたがっているが、行政の縦割りの弊害を解消するためにも独立した組織がいる。 スポーツ庁にしても文科省の外局にするなら、文化庁と二つの庁ができる。それなら、 文化、スポーツ行政を「省」に昇格させることも選択肢の一つではないか。文化、スポーツともに国民を元気にする源泉といえる。「文化立国」「スポーツ立国」の旗印を高く掲げるなら思い切った改革が必要である。 国際スポーツ界では、お家芸の柔道でさえ日本の発言力が低下し、五輪、W杯などの大 会招致にも相次いで失敗した。その背景には国の支援が不足していたことも否めない。スポーツ推進の体制整備は東京都が再び招致を表明した夏季五輪実現の後押しにもなる。 スポーツ界出身の議員らもスポーツ庁の旗を振っているが、ただ連呼するだけでは実現 は難しい。基本法に基づき、これから策定するスポーツ基本計画策定は、理念を肉付けし、国民の幅広い支持を得る点でも極めて重要である。
◎介護職も医療行為 財源の壁越え待遇改善を
介護職員に、たんの吸引など一部の医療行為を認めることを柱とした改正介護保険法が
成立した。介護職員の医療行為は、石川、富山県の計5施設を含む全国125施設で試行の上、昨年4月から特別養護老人ホームでの実施が特例として認められてきた。今回の法改正で介護職員は特養ホームに限らず、法律の裏付けを得てたんの吸引や胃ろうによる経管栄養管理が可能になる。来年度の施行に向けて、石川、富山の介護職員も十分な研修時間を取り、自信を持って 医療行為を行えるようにしたい。さらに、医療行為を報酬に反映させる仕組みを整え、負担増に応じて待遇改善を図ることが求められる。ただ、ここにも財源の壁がある。 介護事業者に支払われる介護報酬は来年度が改定の年となる。2003年度と06年度 はマイナス改定で、低賃金による人手不足と小規模事業者の経営悪化を招いたと批判された。そのため、前回の09年度は全体で3%引き上げられたほか、報酬とは別に国の一般財源で介護職員一人当たり月額平均1万5千円を交付する処遇改善交付金(年間約1900億円)で給与の上積みが図られた。 それでも、介護職員の09年度の平均月給は、全産業平均額を最大で10万円下回る状 況という。しかも、臨時措置の処遇改善交付金は今年度で3年間の期限が切れ、来年度も続けるかどうかの判断を迫られている。介護保険料、介護報酬の大幅引き上げが困難であれば、継続のほかあるまい。 ただ、保険料の引き上げを抑えるため、一般財源からの持ち出しで職員給与の改善を図 るというのは、決して望ましい仕組みではない。事務の煩雑さなどから交付金を申請しない事業所もあり、昨年3月末時点での交付金申請率は石川、富山県とも87%(全国平均82%)という状況である。 交付金の対象が介護職員に限られるため、事業所内で給与格差が生じることや、恒久的 な制度ではないため、基本給の引き上げに結びつきにくい点などが事業者側から指摘されており、制度の内容を見直す必要もあろう。
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