2011年4月24日 20時46分
東京電力福島第1原発から放射性物質に汚染された水が海洋に流出した問題で、東電が福島県沖8キロと15キロで継続調査している全8地点で、国の濃度基準を下回ったことが24日までに確認された。一時、基準の4385倍の放射性ヨウ素が検出された南放水口付近でも2倍程度に収まりつつあり、経済産業省原子力安全・保安院は、流出した汚染水が拡散したことと、高濃度汚染水の止水対策に一定の効果があったとみている。
東電は海に広がる放射性物質を監視するため、保安院の指示を受けて福島県の沖合3~15キロで海水の定点観測を続けている。2号機周辺からの高濃度汚染水の流出が表面化した4月初旬をピークに海水の汚染濃度は低減傾向が続いていた。
22日午前のデータでは、沖合8キロと15キロの全8地点で、放射性物質のヨウ素131▽セシウム134▽セシウム137の主要3核種が基準を下回ったか、検出可能な濃度に達しなかった。南相馬市沖約15キロでは、4月11日に最大で基準の23倍のヨウ素が検出されていた。一方、いわき市北部など沖合3キロでは基準を2倍程度上回る地点が残った。
沿岸4地点の濃度もピーク時から最大1000分の1以下に下がり、すべての地点で基準の3倍未満となっている。2号機付近から高濃度の汚染水が海へ流出した問題では、東電は少なくとも4700テラベクレル(テラは1兆倍、ベクレルは放射線を出す能力の強さ)の放射性物質が放出されたと推定。汚染水が海へ拡散するのを防止するため、1~4号機の取水口前面などに「シルトフェンス」を設置するなどの対策をとった。
海洋生物環境研究所の御園生淳研究参与(環境放射能)は「放射性汚染水の放出が少なくなっているのは間違いなく、拡散効果によって沖合では確実に放射性物質の濃度が薄まっていると考えられる。放射性物質の濃度も、すべての核種で国の基準を下回ったのであれば、魚類への放射性物質の蓄積はまず心配しなくてもいいレベルだ」と話す。【八田浩輔、河内敏康】