2011年4月22日 9時54分 更新:4月22日 19時15分
政府は22日、東京電力福島第1原発から半径20キロに設定した「警戒区域」の外側で、放射線の累積線量が年間20ミリシーベルトに達する可能性のある福島県内5市町村の全域か一部を「計画的避難区域」に指定した。浪江町、葛尾村、飯舘村の3町村全域と、南相馬市、川俣町の2市町の一部が対象。政府は福島県や関係自治体と連携して住民の避難先を確保し、5月下旬をめどに完了させる方針。枝野幸男官房長官が22日午前の記者会見で明らかにした。
原子力災害対策特別措置法に基づく措置。枝野氏は避難解除時期について「新たな放射性物質の堆積(たいせき)がなくなることが前提だ。(東京電力の工程表に示されている)6~9カ月後の段階で検討する」と述べ、半年以上先になるとの見通しを示した。対象地域の安全が確認され次第、土壌改良を行い段階的に避難を解除していく方針。
政府はまた、同法に基づき、原発から半径20~30キロ圏内で、計画的避難区域に指定されなかった地域を「緊急時避難準備区域」に指定した。田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、川内村の5市町村の一部が対象。
緊急時にはすぐに屋内退避や区域外避難をすることが求められる。自力での避難が難しい子供や妊産婦、高齢者、入院患者らにはあらかじめ避難するよう促す。一方、仕事勤務や生活物資輸送のための出入りは認められる。
対象は、計画的避難区域が計約3000世帯、約1万500人、緊急時避難準備区域が計約2万4000世帯、約6万7000人。両区域指定に伴い、20~30キロ圏内向けの屋内退避指示は解除した。北部の一部が30キロ圏内にかかる福島県いわき市は緊急時避難準備区域の対象とはしない。
計画的避難区域設定を巡っては、畜産業が盛んな飯舘村などで家畜の区域外移動を求める声が強い。枝野氏は会見で「区域外への移動や出荷を支援したい」と述べ、放射性物質の全頭検査などの支援を実施する考えを示した。
原子力損害賠償法に基づく賠償や、1世帯100万円、単身世帯75万円の一時金支給は、計画的避難区域だけでなく緊急時避難準備区域の対象者にも支給する方針。準備区域での自主避難者も支給対象とする方向だ。
また、枝野氏は原発周辺地域の放射線測定態勢を強化し、放射線量の分布地図などを策定する意向も表明。30キロ圏外で計画的避難区域に指定された飯舘村と川俣町に「現地政府対策室」を設置したことも明らかにした。【影山哲也、山田大輔、河内敏康】