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« 東シナ海ガス田問題 その1・・資源と国益 | メイン | 東シナ海ガス田問題 その3・・南シナ海の実例:中国の戦略転換 »

2006/03/18

東シナ海ガス田問題 その2・・南シナ海の実例:中国の覇権拡大

    Paracel_spratly_islands_1

1974年1月、中国は
南ベトナムが実行支配していた西沙諸島(パラセル諸島)に侵攻し、
守備隊を撃滅してこれを占領した。
空軍機までを使用した本格的な侵攻作戦だった。

西沙諸島は南シナ海に浮かぶ計34の小島や岩礁などから構成されており、
ベトナム、中国、台湾の三者がそれぞれ領有権を主張している。
当時、西沙諸島の北半分は中国が実行支配し、
南半分を南ベトナムが実行支配していた。
この南側を中国が占領したのである。

その前年の1973年、米国はパリ平和協定を結び、
泥沼と化していた南ベトナムから撤退した。
米国はベトナムへの軍事介入の終息を宣言しており、
まさに中国の占領作戦は米軍撤退の間隙を突いたものであった。

現在、中国は西沙諸島の主島である「永興島」に
スホイ27戦闘機などが離着陸可能な二千二百メートルの滑走路を整備。
衛星通信ステーションなどの通信施設まで備え、
同島は部隊が常駐する軍事基地となっている。

この西沙諸島占領作戦は
中国の南シナ海への覇権拡大の幕開けとなった。


マラッカ海峡から南シナ海にかけての海域は
世界で最も重要なシーレーンといわれ、
世界の貿易の15%がこの海域を通過している。
日本の場合は全貿易量の5割が同航路に頼っている。

中国はこの南シナ海の支配に固執している。
理由は2つである。

 1,シーレーンの確保

 2,資源の確保

中国自身のシーレーンの確保と
日本や台湾などの他国のシーレーンの首根っこを押さえることによって
自らの支配権を拡大しようという意図。

それと海洋・海底資源の確保。
他国に先制して海底に眠る豊富な石油と天然ガスを手に入れること。
中国政府の発表した推定値では、最大約2000億バレルの油田が
この海域には存在する。
これが事実とすればサウジアラビアの埋蔵量に匹敵する。

南シナ海への関心が高まったのは
60年代後半に、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の調査で
海底に石油や天然ガスが埋蔵されている可能性が報告されてからのこと。

南シナ海の主な諸島群は
西沙諸島・中沙諸島・東沙諸島・南沙諸島の4つ。

このうち前述の西沙諸島は
ベトナム、中国、台湾の三者がそれぞれ領有権を主張しているが、
すでに中国が実行支配している。

東沙諸島(プラタス)は台湾が実行支配しているが
中国も領有権を主張している。
同諸島の海域には中国の海洋調査船が度々侵入し、
台湾の沿岸警備艇とにらみ合う事態が起こっている。
また同諸島の環礁に中国の漁船が上陸するケースが後を絶たないという。

すでに中国が実行支配している西沙諸島や
台湾が実行支配している東沙諸島に比べて、
南沙諸島(スプラトリー)は複数の国が支配し、領有権を主張している
100以上にのぼる小島・岩礁・洲島の総称であり、
これらが東西800km、南北600kmという広大な海域に散らばっている。
その海域の面積は日本海の半分近くにもなる。
台湾、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、マレーシアの六カ国が
全域または一部の領有を主張している。

中国が七カ所の島や岩礁に兵員約六百人を、
ベトナムが二十七カ所に同約二千人、
フィリピンが九カ所に同約百人、
マレーシアが五カ所に同約九十人をそれぞれ配置して支配下に置く。

この南沙諸島において80年代から90年代にかけて
ASEAN諸国と中国がその領有を巡って摩擦を繰り返し、
攻める中国に守るASEANの図式で
時には中国とベトナムの武力衝突すら起きた。

中国の領域拡大のパターンは全て同じで
押し込み強盗のように無人島やサンゴの環礁に建造物を建てて、
「ここは中国領土である」と一方的に宣言する。
そしてその周りの海域は「中国の領海である」と。

以下の写真をご覧あれ。

   Photo

この海の上の立てられた脚の長い建物。
これを「高脚屋」と言う。

中国はこれを
海の上にわずかに露出しているサンゴの岩の上に建てて、
その岩と海域を強引に自国領土と領海にしてしまう。

「国際海洋法条約」によれば
満潮時に海面上の露出している岩は「島」と定義され、
その国の領土として認められる。
さらに島の周囲12海里はその国の領海となる。
そして、その島に人間が居住し、独自の経済生活を営んでいれば
「排他的経済水域」を主張する権利がある。

中国はこの論法を利用して
「高脚屋」を建てて、兵士に常駐させ、
強引に「人が住んでいる」として
排他的経済水域を宣言する。
まさに泥棒の論理としか言いようがない。

時には、満潮時に海中の没してしまう岩にも高脚屋を建て、
国際海洋法の規定を無視してこれを自国領土と宣言することもある。
南沙諸島「赤瓜礁」がその事例。
ベトナムを追い払って、満潮時に海に沈む赤瓜礁に
中国は高脚屋を「観測所」と称して建てた。

この「観測所」だが
中国軍の機関誌「解放軍報」によると

  面積10平方メートル、弾丸と炊事道具が建物の半分を占め、
  あとはベッドを2つ屋と残りのスペースは無くなるので
  兵士達は一枚の薄い敷物を敷いた木の床に寝ている。

  波の高い時には海水がしばしば侵入してくる。
  毎日一人の湯飲み一杯の水で歯を磨き顔を洗う。

という、あまりにも哀れな生活をしているとのこと。

ちなみに、この「高脚屋」という貧相な建物、
それが開発が進んで進化すると以下の写真のようになる。

   Photo_1

このような流れで、中国は着々と布石を固め、
南シナ海全域を自らの手中に収めるべく、領域拡大に狂奔してきた。

当然のことながら
領有権を主張しているASEAN諸国と摩擦が起きるのは必至。

以下、その勢力拡大と摩擦の歴史を時系列で書いておく。

◎1974年1月:西沙諸島内の永楽群島に駐留していた南ベトナム軍に
       武力攻撃を加え、同島を占領。

◎1987年~88年:南沙諸島赤瓜環礁など六カ所を占拠し、軍事施設を構築。

◎1988年3月:中国海軍とベトナム海軍双方の艦艇が
       南沙諸島赤瓜環礁沖で交戦し、ベトナム側が敗北。
       ベトナム艦3隻が撃破され、数十人の死傷者を出した。

◎1992年2月:中国が「領海法」を公布。
       南シナ海ほぼ全域の領有を主張。
       軍に「領海侵犯者を実力で退去させる権限」を与え、
       外国艦船が同海域を通過するさいに
       中国の許可を必要とすると一方的に宣言している。

◎1992年:米国が、フィリピンのスービック海軍基地、
       クラーク空軍基地から撤退。

◎1992年5月:中国は南沙諸島の南西のはずれの浅瀬、
       「ヴァンガード堆」で石油探査をする権利を
       米国クレストン・エナジー社に認めることを一方的に宣言。
       ヴァンガード堆はベトナムではトゥーチン堆とよばれており、
       ベトナム南部とマレーシア領サラワクの
       ほぼ中間ややベトナム寄りにあって、
       ベトナムが自国の大陸棚であると主張している海域。

◎1995年3月:マレーシア、南沙諸島付近で中国の漁船に発砲

◎1995年1月:フィリピンの支配下の南沙諸島ミスチーフ環礁に
       中国が一方的に施設を構築。
       中国は漁民の避難施設と主張。

◎1995年3月:フィリピン、中国が南沙諸島内に建てた領土標識を破壊。

◎1998年10月:フィリピン海軍の偵察機がミスチーフ環礁に
        中国の手で新たにコンクリート製の建物と
        埠頭が建設されているのを発見。
        フィリピン外務省は
        「環礁はわが国の排他的経済水域内だ」と抗議。
        中国側は「既存の漁民の避難施設を補強するためだ」と
        突っぱねた。

◎1998年11月:ミスチーフ環礁を拠点にしていたとされる中国漁民二十人が
        フィリピン海軍に拘束される。

◎2000年:シンガポールがチャンギ国際空港の沖に新しい海軍基地を完成。
        これまで沖合に投錨してきた米空母が
        直接入港できるようした。

◎2000年1月:フィリピンが米軍との合同軍事演習を四年ぶりに再開。
       陸海空軍による演習は、
       クラーク旧米軍基地などルソン島を中心に行われ、
       計約五千人の将兵が参加。

◎2001年4月:アメリカ海軍の電子偵察機EP-3が西沙諸島近辺で
       中国軍機に衝突されて、海南島に緊急着陸。
       両国の間で外交問題に発展。

◎2001年8月:米第7艦隊、南シナ海で大規模演習。

この流れを見ていて分かることは
米国の軍事力がベトナムやフィリピンから撤退すると、
それに合わせるかのように中国が進出を始めていること。
実に利に聡いと言うべきか。

たとえば、米軍が1992年にフィリピンから撤退するや、
フィリピン領有のミスチーフ環礁に進出。
たちまち建造物を建ててしまう。

特にフィリピンの場合は
ASEAN諸国の間では軍事力が貧弱なため
中国に狙われやすいと言える。
米国が基地を持っている間はどうにかなったが、
撤退するや、すぐに中国が虚を突いてくる。

これに懲りたかフィリピンは
1999年に米比訪問部隊協定を締結し、
米軍との共同演習が再開された。
また、2003年には米国と相互補給支援協定を締結した。

米国自体はベトナムやフィリピンからの撤退と
90年代のクリントン政権の親中政策もあり、
このASEANと中国の摩擦に中立の構えを見せていたが、
あまりの中国の強引な拡張路線に焦ったのだろう、
次第にASEAN諸国寄りに軌道修正を行い始める。

そしてブッシュ政権の登場。
2001年、米国は
中国との偵察機墜落事件による外交関係の緊張に伴い、
南シナ海において第7艦隊による大規模演習を行う。

ここから中国の南シナ海での拡張路線は鳴りを潜め始め、
ASEANとの資源共同開発や
対中強硬派であるベトナムとの融和路線に舵を切っていく。

さてさて、ここから先の話しは
次回の「その3」で書きます。


参考資料リンク

国際派日本人養成講座:今日の南沙は明日の尖閣

ベトナムデジタルギャラリー:南シナ海の領土紛争

中国は日本を併合する:平松 茂雄 (著)


関連過去記事

東シナ海ガス田問題 その1・・資源と国益

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