旦那がコンピュータのオペレーティング・システムを変えた。
コンピュータの会社に勤めているくせに、私のブックマークや日本語環境などは新しい環境に導入していなくて、君もまだまだだなと思う。
だが、ふと、もしかしてと思いながら楽天の画面にアクセスしてみると、なんとアクセスできることに気づいた。
以前のオペレーティング・システムを使っていたときは、意地悪な旦那が、私が楽天にはアクセスできないように環境設定していたのである。
ほほう・・と思う。

もう２ヶ月も経つだろうか。
息子のトイレトレーニングを真剣にやろうと心に決めた頃だった。
毎日のように、息子の学校、ママ友達のホームパーティ、公園、動物園とかけめぐる生活から足を洗い、家にこもることに決めた頃。
家にいるとトッテモつまらないので、インターネットでネットサーフばかりしていた。
その間、息子の粗相を掃除するのもうまくなったけど、私は新しい世界に足をつっこみだした。
そう、楽天の世界である。
これは、私には本当に不思議な世界であった。
顔も知らない、名前も知らない人と毎日のように声を掛け合い、毎日の様子さえ覗くことができる。
同じ教室で授業を受けながらメモの紙が回ってくるように、自分が書き込みをすると瞬時に返事が返ってきたりすると、この身近さにドキドキする。
誰が何時何分に自分の日記を見たかリストででてくるし、じゃあその人はいったい誰なのかと思えば、その人を知ることのできるページが、ボタンひとつクリックするだけで出てくる。
自分のためにつけている日記のはずが、誰かに見せる日記に徐々に変わり、自分とは、客観的に文字だけで見ると、どのような人間に見えるのだろうなどと考え出す。

このような事に四苦八苦していると、そのうち旦那に呼ばれても返事をしなくなり、コンピュータのスクリーンばかり見続ける日々が始まった。
Addictive（中毒）である。
夫婦の会話は、片方がスクリーンを見て、もう片方がその片方の背中を見ながら行われる。
まるで、これは旦那がインターネット接続のエバークエストとかいうゲームをやっている時、旦那の背中に向かって私がいつも話しかけていた日々に酷似していることに気づく。
旦那が、何気なく、そのサイトはいったい何なのかと聞く。
心ここにあらずの私は、口が滑って、言ってしまった。これは”ラクテン”というのだ、と。
なんて馬鹿だったんだろう。この男がどんな男か、こんなにもこんなにも知っているのに、言ってしまった。
"I　see.（ふーん。）"と、旦那が言う。
それは、２ヶ月の激しい戦いの静かな始まりであった。

しかし、私と旦那の戦いは急に幕を閉じることになった。
ある週末、アホな旦那がオペレーティングシステムを変えて、私はまた楽天にアクセスできるようになったのである。
今朝、旦那は私が楽天に日記を書いているのを見つけた。
「おーっ？？！」
その見たことのある画面と背中越しに返事をする私の姿に、うぉほっほっほとつい笑ってしまっている彼。
そう、やっと気づいたか。君が自分でハッカー攻撃を解除したのだ。