一体、私の旦那とは何者なのだ。
昨日の朝、いつもどおり日記を書こうとログインすると、通常出てくる画面に変わり、大きな文字が現れた。
”Kyoko Clean the mold. ”
（香子/仮名、かびを掃除しろ。）
点滅までしている。

これは一昨日の話にさかのぼる。
旦那と私は仲良く中国のカンフー映画を堪能していた。旦那は一人用のリクライニングになる椅子で、私はソファに寝そべって見ていた。
2時間ほど経ったところで、私は映画が異常に長い事に気づいた。2時間経っているのに、まだ映画は延々と続きそうである。私は飽きてしまった。
そこで、まずは旦那に、1度DVDを止めて一服しようと提案。しかし直ぐに却下された。自分は大変楽しんでいるので、邪魔されたくないという。
そこで、私は、自分だけ後でそこから見るからまぁいい、じゃあコンピュータを使うのでどいてくれ、と頼んだ。旦那の座っている椅子、その席からでないとコンピュータは使えないのだ。
旦那は言う。なぜ君は僕の邪魔ばかりするのか。私が言う。この部屋には４つも５つもテレビを見れる席があるが、コンピュータが使える席は一つだけだ、それを占領してテレビを見るというのは意地悪いとは思わないのか。すると、旦那、映画をやめてコンピュータを見るのはどうかしている、目が悪くなるなどと言う。私、何をいうか、そんな事、気にしてくれなくていい、と反逆。そして叫びあう私たち。「Move（どいて。）」「No（いやだ。）」「Move（どいて。）」「No（いやだ。）」「Move（どいて。）」「No（いやだ。）」「Move（どいて。）」「No（いやだ。）」
そして、最後に旦那は捨てぜりふを吐いた。
「You will regret this.（君はこの事を後悔するだろう。）」

愛し合っているのに、いつもケンカをしてしまう私たち。

コンピュータを立ち上げて、ログイン用のアドレスを入力して、息を飲む私。
画面には同じ文字だけが浮かぶ。
かびとは、私がずーっと掃除していない、部屋の片隅の小さなかびの事だ。
電子メールの受信記録には、1時間に1回迷惑メールのように、愛する旦那からのメールが入っている。
"Kyoko, Clean the mold.（香子、かびを掃除しろ。）"
コンピュータと格闘している私を見つけて、けっけっけと笑う男が私の背後に一人。
「これは、Man in the middle （マン・インザ・ミドル/ハッカーの技術のひとつ）というのだ」。そして、けっけっけともうひと笑い。

旦那よ、君は一体何者なのだ。