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来る夏、海開きなく 被災した東北3県の海水浴場

津波で被害を受けた大谷海水浴場。右は津波警報などを知らせる電光掲示板=気仙沼市本吉町

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県で、ほぼ全ての海水浴場が今シーズンの営業を断念する方針であることが、河北新報社のまとめで分かった。砂浜にがれきがまだ残っていることや、緊急時の避難経路が未整備で、海水浴客の安全が確保できないことが大きな理由。関係者は「断念はやむを得ない」と話している。

 岩手県では、主な海水浴場約20カ所が、今季の営業を取りやめた。一部で開設を模索しているが、規模を縮小しての営業となる見通しだ。
 県観光協会は「どの海水浴場も大きな被害を受けた。利用客の安全を考えるとやむを得ない」と話す。
 宮城県も、26カ所の海水浴場全てで営業の見通しが立っていない。例年5月ごろに実施する水質検査も今季は見送った。
 昨年は記録的な猛暑で入り込み数が6年ぶりに増加した。県観光課は「営業断念は残念だが、まずは復興が先。元に戻ったときに来てもらえるようにしたい」と語る。
 福島県では、いわき市の9カ所を含む全16カ所の海水浴場で、海開きを断念した。いわき市は「昨年は80万人が訪れ、経済効果が大きいのは確かだが、利用客の安全には替えられない」と説明した。
 郡山市などの猪苗代湖の湖水浴場14カ所は、水質や放射性物質の量を検査した結果、安全性に問題はないとして、7月中旬から順次、湖水開きをする。

◎残るがれき、沈む砂浜 気仙沼・大谷

 宮城県内有数の入り込み数を誇る気仙沼市本吉町の大谷海水浴場。灰色の雲が空を覆った17日、壊れたコンクリートの護岸は手つかずのままで、人影もなかった。
 大谷海水浴場は毎年、6月の第3金曜日に県内トップを切って海開きをしてきた。ことしも17日に浜辺で神事を行い、シーズン中の無事故や好天を祈るはずだった。
 しかし、震災による地盤沈下で、満潮時は砂が見えなくなるほど波が押し寄せる。がれきの撤去は進まず、津波の襲来を知らせる電光掲示板も壊れたまま。
 本吉町観光協会は、緊急時に利用客の避難誘導ができず、砂浜にがれきが残っていることなどから、今季の営業を見送る方針だ。
 海岸近くで衣料品店を営む佐藤米子さん(56)は、50年以上にわたって海の家を開設してきたが、津波で海の家の資材は全て流された。「毎年来る常連もいるが、客足は年々減る一方。何年かして再開できたとしても、お客さんは戻ってきてくれるのだろうか」と、客離れを心配する。
 海水浴客の受け入れ態勢も整っていない。大谷地区にあった民宿や旅館は、7軒全部が津波で全壊した。
 千葉しげ子さん(64)が経営するペンションは基礎しか残っていない。「いまごろは夏場の予約がどんどん入る時期。新鮮な魚ときれいな海が売りのペンションだったのに」と肩を落とす。
 厳しい暑さが続いた昨夏は約6万5000人が訪れ、前年比5割増のにぎわいだった。
 本吉町観光協会会長で、民宿経営の芳賀勝寿さん(63)は「海水浴のシーズンが、本吉に人が一番集まる書き入れ時だった。(町南部の)小泉海水浴場の海開きも難しく、経済的な損失は大きい。復旧・復興に影響が出かねない」と厳しい表情で語った。


2011年06月19日日曜日


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