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最終更新日:2011年6月17日 | ||||||||||
「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」 [1]に対する要望 |
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平成23年6月17日 情報処理学会では、2004年1月22日付で公表した「9月10日付け法制審議会答申「ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する要綱(骨子)」に関する意見書」[2]において、刑法改正における「不正指令電磁的記録等作成等の罪の新設」、いわゆるウィルス作成罪・提供罪に対して意見を表してきた。その中で、 1.攻撃を意図しない、ソフトウェアのバグや仕様の不完全性を処罰対象としないこと 2.悪意を持たない、研究開発あるいはセキュリティ・テストを目的とする攻撃を処罰の対象としないこと を要望してきた。その後、第177回国会の「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)」において、不正指令電磁的記録等について「正当な理由のない」作成や提供を対象としていることから、上記2.に関する要望は満たされていると考えている。 しかし、上記1.の要望に関しては、特に提供罪に関しその要望が満たされていないのではないかという疑念が残っている。具体的には、平成23年5月27日の衆議院法務委員会[3]において、法務大臣が委員の「無料のプログラム、フリーソフトウエアを公開したところ、重大なバグがあるとユーザーからそういう声があった、それを無視してそのプログラムを公開し続けた場合は、それを知った時点で少なくとも未必の故意があって、提供罪が成立するという可能性があるのか」という質問に対し「あると思います」と答弁されている。これは、バグのあるプログラムの提供がウィルス提供罪になることはあり得るという答弁であると理解される。当発言は、5月31日の衆議院法務委員会[4]において、「したがって、そうしたバグの存在というのは、ある意味で許された危険ということがあるかもしれません。ただ、そういうバグが非常に重大な影響を及ぼすようなものになっていて、しかもこれが、そういうものを知りながら、故意にあえてウイルスとしての機能を果たさせてやろうというような、そういう思いで行えば、これはそういう可能性がある、そういう限定的なことを一言で申し上げた。」として、大臣によって修正がなされている。これは、プログラム中のバグの存在は提供者および被提供者にとって合意されているため、「許された危険」であると理解されるため、未必の故意が問われる可能性はあるものの限定的な場合であるということ、およびその境界は捜査機関に委ねられるという趣旨である。 そもそも十分な注意をもって作成してもバグの発生を完全に回避することができないプログラム開発の特性を考慮に入れれば、答弁の内容は、重大なバグがあれば常にウイルス提供罪にあたる可能性が排除されないことを意味すると受け取られかねず、ソフトウエア等の開発・公開やソフトウエア関連サービスの提供を行う者を萎縮させる懸念が拭えないものである。法務省のQA[5]のQ4のAでは、バグが斯様なものとして、本罪の対象とならないことが明らかにされているが、その点は改めて強調していただく必要があると考える。 そこで、本学会としては、以下のことを要望する。
1)情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案 2)「ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する要綱(骨子)」に関する意見書提出 3)第177回国会 法務委員会 第14号(平成23年5月27日(金曜日)) 4)第177回国会 法務委員会 第15号(平成23年5月31日(火曜日)) 以上 |
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