認知症の一種、アルツハイマー病の一因とされる脳内の炎症に特定の酵素が関わる仕組みを、理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市中央区)などのグループがラット(比較的大型のネズミ)の実験で解明した。酵素の働きを抑える新薬の開発や早期診断につなげたいという。成果は近く米核医学誌に掲載される。
熱や痛みを伴う体内の炎症は、免疫細胞などが細菌をはじめとする異物から体を守る防御反応だが、過剰に働くと神経障害が起き、アルツハイマー病やパーキンソン病につながるとされる。
これに対し、関節などの炎症を抑える「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs=エヌセイズ)」を常用する患者はアルツハイマーなどの病気にもなる危険性が低い‐との報告があり、解明が期待されていた。
グループは、関節の炎症に関わる酵素「COX(コックス)」に着目。脳に入りやすいよう加工したエヌセイズをコックスに付け、炎症が起きたラットの脳内を観察した。その結果、炎症部位にコックスが集まり、その影響で免疫細胞が強く働いていることが判明。脳内炎症に関わることを証明できたという。
同センターの宿里充穂(しゅくり・みほ)リサーチアソシエイトは「エヌセイズを加工した物質の投与量を増やし、アルツハイマー病の治療薬になるかどうかを研究中。今後、コックスの集まり具合を指標にした診断法も確立させたい」と話す。
(金井恒幸)
(2011/06/18 10:08)
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