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広島市長:被爆者に「感謝の気持ちを」発言 撤回や謝罪要求相次ぐ /広島

 ◇市長、取り消さず

 被爆者援護施策を巡り、被爆者側に感謝の気持ちを持つよう求めた松井一実・広島市長の発言が17日、波紋を広げた。被爆者団体などからは発言の撤回や謝罪を求める声が相次いだ。松井市長は「被爆者援護は、多くの国民が痛みや苦しみを分かち合うことの上に成り立っている」などと趣旨を説明して釈明したが、発言自体は撤回しない考えを示した。

 松井市長は17日夜、中区であった被爆者団体代表らとの会合に出席。「考え方が違うと言われるのは納得がいかない」と述べたうえで「被爆地の市長として、被爆者の立場に立ち、援護について国にしっかり要望していく覚悟だ」と話した。その後の記者会見では「思想信条は変わらないが、話し方についてもう少し考える気持ちでいる」と語った。

 「県『黒い雨』原爆被害者の会連絡協議会」は、高野正明会長(73)=佐伯区=ら7人が市役所を訪れ、松井市長の発言の撤回と謝罪を求める抗議文を提出した。

 広島市と県などは昨年7月、黒い雨が降ったとして国が被爆者援護の対象に指定する地域を現行の約6倍に拡大するよう、国に要望した。これを受け、指定地域を見直す厚生労働省の有識者検討委員会が開かれている。抗議文は「検討委員会の最中の市長の発言は、私たちの運動や市の担当職員などの問題解明への努力に水を差し、解決を妨害するもので、市政のリーダーとして失格」と批判。高野会長は「厚労省出身の松井市長からこうした発言を聞くと、残念でならない」と話した。

 日本被団協は「全国の被爆者は満身の怒りをこめて、発言の撤回を求める」とする田中煕巳(てるみ)事務局長名の談話を発表した。日本被団協は今月8日、被爆者援護法に原爆被害への国家補償を明記することなどを求める改正要求を決めた。「求めているのは、国が起こした戦争の犠牲に対する国の償いであり、ふたたび被爆者をつくらない証だ」としている。

 先月、松井市長と面会した被爆者の平井昭三さん(81)=府中町=は「家族や同級生がたくさん死んだが、私自身は生かされたことに感謝してきた。被爆者は一人一人の体験があり、この声が正しくて、この声が間違っているとは言い切れない」と話した。【樋口岳大、加藤小夜、寺岡俊】

毎日新聞 2011年6月18日 地方版

 
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