海江田万里経済産業相が18日、原発の再稼働を促したことについて毎日新聞は、原発立地道県の知事に感想を聞いた。原発の運転に関して知事に法的権限は無いが、道県と地元市町村、電力会社は安全協定を結んでおり、知事の同意無しの再稼働は困難とみられる。経産相は近く立地自治体を訪問する方針だが、この日の説明に関し「論評に値する内容が無い」などと厳しい批判も噴出。「適切」とした安全対策に疑問を示す知事も多く、各地で紛糾するのは必至の情勢だ。【まとめ・石川淳一、柳澤一男、関東晋慈】
福井県知事と18日夕までに連絡が付かなかった茨城、鹿児島両県を除く10道県知事が取材に応じた。
海江田経産相は会見で、シビアアクシデント(過酷事故)対策について「適切に実施された」として再稼働要請方針を示した。適切と判断した根拠の説明を求める知事は多く、溝口善兵衛島根県知事は「国が指示し、電力会社が実施するとした安全対策で十分かチェックする必要がある」と国方針をうのみにできないとの姿勢を堅持。新潟県の泉田裕彦知事は「安全性について論評に値する内容が無い」とコメント。「本県の技術委員会の質問に国は回答していない」と不快感も示した。
原発事故の現場となった福島県の佐藤雄平知事は「再稼働はあり得ない」と従来通り断言。菅直人首相判断で運転停止となった静岡県の浜岡原発は、今回の経産相方針でも対象外とみられ、川勝平太知事は「再開のさの字も出る状況ではない」と現状を語った。
一定の理解を示す知事もいたが、そんな中でも「浜岡原発と他の原発との違いの説明を」(谷本正憲石川県知事)と指摘する声も複数あり、西川一誠福井県知事は取材に応じなかったが、県幹部がコメントで「浜岡原発のみに停止を命じた判断根拠などが示されなければ、定期検査中の原発の再稼働は了解できない」と慎重な姿勢を示した。
原発建設や運転の許認可権は国にあり自治体は法的に口を挟む権限を持たないが、道県と市町村、電力会社は地元の了解、自治体の安全措置要求受け入れなどを約束している。
■道県知事のコメント
◇北海道 高橋はるみ知事
過酷事故対策が適切と評価した根拠も含め、国は責任ある説明が必要。説明を踏まえ対応を検討したい
◇青森県 三村申吾知事
県原子力安全対策検証委員会での検証結果、県議会での議論などを踏まえ、慎重に、かつ厳しく対処していく
◇宮城県 村井嘉浩知事
一定の理解は示すが、不安の声があるのも事実で安全対策を万全にしてほしい。女川原発にはコメントできない
◇福島県 佐藤雄平知事
原発が立地している県の知事は安全確認の証左がなければと言っている。(福島第2原発の)再稼働はあり得ない
◇新潟県 泉田裕彦知事
本県の技術委員会の質問に国は回答していない。原発の安全性について論評に値する内容を何も含んでいない
◇石川県 谷本正憲知事
経産相の判断は一つの考え方だが、浜岡原発と他の原発の違いを十分説明していただかないと判断は難しい
◇静岡県 川勝平太知事
(浜岡原発が含まれないのは)当然だ。完全な対策だと確認できない限り、再開のさの字も出る状況ではない
◇島根県 溝口善兵衛知事
国の指示内容が、福島原発事故の原因を踏まえた安全対策として十分かチェックしていく必要がある
◇愛媛県 中村時広知事
再稼働の必要性に理解を求めたのだろうが詳細は分からない。伊方原発の稼働は白紙であることに変わりはない
◇佐賀県 古川康知事
再起動への国の意思が明確に示されたと受け止める。玄海原発の再起動は、県議会での議論も踏まえ判断したい
毎日新聞 2011年6月18日 21時28分