東日本大震災で傷ついた日本経済の回復にはもう少し時間がかかる。しかし今年後半に景気が持ち直しても、デフレの克服という長年の課題は残る。震災の復旧・復興だけでなく、中長期的な成長基盤の強化にも取り組む必要がある。
日銀は14日の金融政策決定会合で景気判断を上方修正し、「下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている」との認識を示した。サプライチェーン(供給網)の修復が進み、家計や企業の心理にも改善の兆しが出てきたためだ。
確かに鉱工業生産指数や消費者態度指数は前月比で上昇に転じた。マイナス成長は4~6月期で終わり、7~9月期から「V字型」の景気回復が始まるとの見方が広がっている。日本経済が最悪の状態を抜け出そうとしているのは心強い。
問題はその後の成長力である。日本には20兆円規模の需要不足が残る。原油などの値上がりで消費者物価上昇率(生鮮食品を除く前年比)はプラスに転じたが、10年越しのデフレを克服できたわけではない。
原子力発電所の事故や電力不足が響き、生産の海外移転が加速する恐れもある。1%弱といわれる潜在成長率が一段と低下しかねない。震災対応はもちろん重要だが、成長戦略が置き去りになるのでは困る。
日銀は環境やエネルギーといった成長分野に投融資する金融機関向けの貸出制度の拡充を決めた。不動産担保はなくても技術があるベンチャー企業などに照準を合わせ、新たに5000億円の資金枠を設ける。日銀は昨年設定した3兆円の成長資金枠をすでに使い切っていた。
日本は民間金融機関の資金が家計や企業に流れにくいという問題を抱える。こうした目詰まりを解消する努力は必要ではあるが、日銀の貸出制度は特定の対象分野に資金を供給する「政策金融」に近い性格を持つのも事実だ。
「物価や市場の安定という中央銀行の使命を逸脱している」との批判もくすぶる。貸出先の選別や金融規律の維持には細心の注意を払うべきだろう。
成長基盤強化の主役はむしろ政府である。法人課税の軽減や環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加をこれ以上遅らせてはならない。
昨年6月に決めた2020年度までの新成長戦略では、環境、健康、観光、アジアの4分野で新たな需要を発掘する方針を掲げた。だが震災発生で目標や手段の修正が避けられない。震災対応との整合性にも配慮し、早急に施策を練り直す時だ。
日銀、エネルギー
日経平均(円) | 9,351.40 | -59.88 | 17日 大引 |
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NYダウ(ドル) | 12,004.36 | +42.84 | 17日 16:30 |
英FTSE100 | 5,714.94 | +16.13 | 17日 16:35 |
ドル/円 | 80.00 - .02 | -0.48円高 | 18日 5:48 |
ユーロ/円 | 114.44 - .50 | +0.66円安 | 18日 5:48 |
長期金利(%) | 1.115 | ±0.000 | 17日 16:32 |
NY原油(ドル) | 93.01 | -1.94 | 17日 終値 |
使用率:78.0%3214/4120万kW
予想最大電力:3160万kW19時~20時
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