定期検査中の原子力発電所が再稼働する見通しが立たず、電力需給の逼迫が全国に拡大しつつある。円高に加え電力不足が深刻になれば企業の海外生産移転が加速しかねない。
中長期のエネルギー政策のなかで原発への依存度をどう考えるかは国民的な議論が要る。だが当面、経済への影響を抑えるには、検査を終えた原発で安全を確保できる場合は運転を再開する必要がある。政府や電力会社は原発の安全性判断の基準について早急に、地元自治体や住民に説明を尽くす必要がある。
東京電力福島第1原発の事故と、政府による中部電力浜岡原発の停止要請で原発への不安が広がっている。3~4月に検査を終え運転再開予定だった関西電力などの原発が、自治体から安全性の説明が不十分とされ、再稼働を認められないでいる。
夏場の電力不足の懸念から関電は企業や家庭に15%の節電を求めている。節電要請は北陸電力も決め、九州電力も検討している。
電力不足が東電、東北電力や中部電管内以外にも波及する影響は産業界で大きい。東日本での生産減を西日本での増産で補う予定の企業は計画の抜本的見直しを強いられる。
円高や高い法人税率に電力不足が加わり、国内生産を維持してきた企業が海外へ積極的に生産移管し始める可能性がある。トヨタ自動車からは「日本でものづくりを続ける限界を超えている」との声が出ている。
国際協力銀行によると、日本企業の海外生産比率は2000年度の23%から10年度は31.8%に高まった。第一生命経済研究所の試算では海外生産比率が1%上がると製造業の就業者数が28万人減る。海外生産移転が加速すれば雇用不安が広がる。
原発は電力供給の3割を占め、休止中の火力発電所の再稼働や太陽光などの自然エネルギーでは補いきれない。当面の電力不足の拡大を防ぐには原発を再稼働させるしかない。
そのための地元への説明が現在は足りない。大地震や津波への備えは十分か、非常用電源などの対策で事故発生の危険をどれだけ減らせるのか。政府や電力会社は安全性判断の根拠となる基準などを丁寧に説明しなければならない。
「15%」といった節電の数値目標がどんな根拠からか明確でなく、電力会社への不信感を招いているとの指摘もある。透明で丹念な情報開示が信頼を得る第一歩だ。
このままでは1年以内に国内で54ある原発がすべて止まる。経済も国民生活も影響は甚大だ。政府と電力会社は危機感を強めてほしい。
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予想最大電力:3160万kW19時~20時
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