原子力発電再開の是非を問うイタリアの国民投票で、同国の国民は「脱原発」の道を選んだ。東京電力の原発事故を受けて、原発の安全性に不安を抱く声が広がった結果だ。
50%台の高い投票率が示すのは、一般国民の原発問題への関心の高さである。投票者のうち95%が原発の凍結を望んでおり、稼働再開を目指してきたベルルスコーニ首相は「原発にさよならを言わなければならない」と敗北を認めた。
スイス、ドイツに続き、イタリアも脱原発にカジを切ることになる。だが、欧州内で同じ機運が高まっているわけではない。フランスと英国のほかチェコやポーランドなど東欧諸国は原発推進を打ち出している。
イタリアの投票結果の意味を判断するには、同国の国内事情を十分に考慮に入れなければならない。
1986年のチェルノブイリ原発事故を受けた国民投票の結果、イタリアは90年までに、国内4カ所の原発を閉鎖した。現在は電力の約15%を、フランスやスイスなどからの輸入に頼っているのが現実である。
電力料金は欧州で最も高い水準であり、これがコストとなって産業競争力の足かせとなっている。恒常的な電力不足を解消するために、ベルルスコーニ政権が原発の運転再開を模索してきた経緯がある。
今回の国民投票に至るまでに、国内で長期のエネルギー政策について十分な議論が交わされたとはいえない。国民は脱原発を選択したが、政府は風力や太陽光発電などで代替する具体的な政策を描けていない。
国民投票には、不祥事が続くベルルスコーニ政権の信任を問う意味もあった。投票結果には、原発への不安と政治への不信が重なり合う形で映っていると考えるべきだろう。
イタリアの脱原発について、海江田万里経済産業相は「電力供給の逼迫は経済、国民生活に影響する」と語った。その認識は正しいが、エネルギー供給の未来図を描けていないのは日本も同じだ。
安心な暮らしや経済成長には、安全で安定した電力供給が不可欠だ。原発のあり方や再生エネルギーの活用を含む全体像について、コスト、技術進歩、環境への影響など総合的な観点から考える必要がある。
ベルルスコーニ、東京電力、太陽光発電、イタリア、海江田万里、原発
日経平均(円) | 9,351.40 | -59.88 | 17日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 12,004.36 | +42.84 | 17日 16:30 |
英FTSE100 | 5,714.94 | +16.13 | 17日 16:35 |
ドル/円 | 80.00 - .02 | -0.48円高 | 18日 5:48 |
ユーロ/円 | 114.44 - .50 | +0.66円安 | 18日 5:48 |
長期金利(%) | 1.115 | ±0.000 | 17日 16:32 |
NY原油(ドル) | 93.01 | -1.94 | 17日 終値 |
使用率:76.0%3131/4120万kW
予想最大電力:3160万kW19時~20時
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)