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2011年6月18日(土)付

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社会保障改革―国と地方は力合わせて

社会保障と税の一体改革に関する政府の修正案がきのう、政府と与党の幹部で構成する「成案決定会合」に示された。20日の閣議決定を目指す。修正が必要になった大きな理由は、6月[記事全文]

東京五輪―都民は望んでいるか

また、東京にオリンピックを招致したい。石原慎太郎都知事がきのう、そう表明した。落選した2016年大会につづく挑戦で、20年の開催をめざす。「大震災からの復興」をキーワー[記事全文]

社会保障改革―国と地方は力合わせて

 社会保障と税の一体改革に関する政府の修正案がきのう、政府と与党の幹部で構成する「成案決定会合」に示された。20日の閣議決定を目指す。

 修正が必要になった大きな理由は、6月2日に政府がまとめた原案をめぐって、地方との関係がぎくしゃくしたことだ。

 原案では、消費税を社会保障の目的税と位置づけ、税率を2015年度までに段階的に10%に引き上げるとした。そのうえで、国が関与する年金、医療、介護の給付と、少子化対策にあてる方針を盛り込んだ。

 これに地方が反発した。

 現在、消費税収の約44%は実質的に地方の自由な財源になっているのに、原案では現行の税率5%分も含めて、国の社会保障制度に使い道を限るように読めたからだ。

 しかも、原案は、医療費の助成など自治体の「単独事業」について、自ら財源を確保すべきだとした。「全国から広く集めた消費税を使う先としては適当でない」という意味だ。

 修正案は、地方の意向を受けて、「現行の消費税5%分の国・地方の配分は変えない」「国民の視点で、地方単独事業を含む社会保障給付の全体像を整理する」という文章を加えた。

 妥当な対応だろう。

 年金以外の社会保障サービスは、国の制度か地方単独かを問わず、自治体が提供している。

 また、地方単独事業といっても、国の補助金を廃止する代わりに、「自治体の標準的な行政サービス」として、国から地方に一括で渡す交付税で賄うことにした事業も多い。

 必要なのは、社会保障サービス全体を精査していく姿勢だ。

 法律で義務づけられたものか、義務がなくても全国的に実施されているのか、自治体の裁量で行っているのか、などの観点で整理・分類し、実態をつぶさに開示してほしい。

 そうすれば、事業ごとに、国が全国から集める消費税を優先的にあてるべきものか、交付税で賄うのがいいのか、自治体が独自に財源を工面するべきものか、はっきりするはずだ。

 今回の改革案では、社会保障をほかの事業とは勘定を分け、消費税をあてる方針を打ち出した。いわば、「安心勘定」の創設だ。

 社会保障サービスを精査したうえで、消費税をほかに流用しないとなれば、負担増への理解も得やすくなるだろう。

 地方もぜひ、その制度設計に協力して欲しい。安定した社会保障の実現に、国と地方は力を合わせるべきだ。

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東京五輪―都民は望んでいるか

 また、東京にオリンピックを招致したい。石原慎太郎都知事がきのう、そう表明した。

 落選した2016年大会につづく挑戦で、20年の開催をめざす。「大震災からの復興」をキーワードに、9年後に立ち直った日本を世界に見せようと訴えていくという。

 日本オリンピック委員会(JOC)は、すでに会場計画がある東京の再挑戦を歓迎し、一部の競技を被災した東北地方で実施するプランも温めている。

 「平和」を旗印に意欲をみせていた広島市は市長交代で撤退しており、この夏までの国内選考は、東京が正式に名乗りを上げればすんなり決まりそうだ。

 だが、13年9月の開催地決定をめざして走り出す前に、確認しておくべきことがある。

 まずは、国民、とりわけ都民は開催を望んでいるのか、だ。

 招致活動だけで100億円規模の巨費が飛び交う。それなのに前回はあまり盛り上がらず、国民も都民も支持率は50%台にとどまった。最終選考に残った4都市で最も低かった。あのときと、世論に変化があるようには見えない。

 東京都には招致のために積んできた基金が4千億円ある。これだけの資金を未来に生かす方法はいくらもある。それを五輪につぎ込んでいくには、世論の支持を確かめてほしい。

 もうひとつは、東日本大震災後のこの国のあり方を、どう考えるのかである。

 石原知事は「東京が日本のダイナモ(発電機)になる」と主張する。たしかに、1964年の東京五輪のころ、日本は首都を中心に経済的な発展の上り坂を駆け上がっていた。

 だが、五輪に合わせて再び都心の基盤を整えれば、いま以上に東京一極集中をすすめかねない。首都圏を大地震が襲うことも想定されるなか、いま求められているのは、もっと多極分散型の国づくりではないか。

 ただ、招致の客観情勢は、南米初のリオデジャネイロ(ブラジル)に屈した前回よりは期待が持てるかもしれない。アフリカ初の看板で有力視された南アフリカが先ごろ断念したため、いまのところのライバルは前回の東京大会の1回前の開催地だったローマくらいなのだ。

 ひとつの山場は7月に来る。18年冬季五輪の開催地が決まるのだ。3回連続で挑む平昌(ピョン・チャン)(韓国)が勝つと、18、20年と冬夏連続でアジアで開くことへの抵抗感が国際オリンピック委員会(IOC)に生まれかねない。

 招致に乗り出すかどうか。まずは都議会の議論に注目する。

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