チェルノブイリの今はフクシマの明日――。ジャーナリストの高世仁氏は2011年6月14日、今年の4月上旬にウクライナのチェルノブイリ原発周辺で行った取材の報告会を行った。その模様はニコニコ生放送でも『チェルノブイリ取材報告ー福島原発事故への警告』として放送され、高世氏は事故後のチェルノブイリ原発の問題について、「一番強烈に印象付けられたのはコストの問題。覚悟を迫られた」と語った。
今年で事故が起きてから25年目となるチェルノブイリ原発。高世氏は2011年4月7日~12日の間、そのチェルノブイリ原発周辺で取材を行った。高世氏は東京電力福島第1原発の事故を受けて、「チェルノブイリを教訓にしなければ」という思いがあったそうだ。しかし、この時の取材映像はフジテレビで一部だけが放送されたが、ほかのテレビ局では「放送できない」と言われたという。そのため、高世氏は「(映像が公開されないのは)あまりにもったいない」と考え、動画サイト「YouTube」に映像を投稿した。
報告会の中で、高世氏は「チェルノブイリと福島は違う、と仰る方がたくさんいる。一つ一つ見ていけば規模であったり、事故の対応であったり、違いはたくさん見つけられる。しかし、25年間この事故にどうやって向き合ってきたか学ぶことは、彼らの失敗も含めて、私たちにとって必須であろうと思った」と取材の意義を説明。その上で、
「(今回の取材で)一番強烈に印象付けられたのはコストの問題」
と語った。
■気が遠くなる原発事故のコスト
チェルノブイリ原発で事故を起こした4号炉は、数ヵ月後「石棺」と呼ばれるコンクリートに覆われた。この「石棺」は当初、耐用年数が30年とされていたが、原発幹部が認めるほどの設計ミスがあったため、激しい劣化が起こっているという。そのため、2007年からは「石棺」をさらに覆う移動式の巨大シェルター(耐用年数100年)の建設が始まった。しかし建設費の1200億円をウクライナ政府が調達できず、工期が遅れている。また高世氏によると、このシェルターは15年おきにメンテナンスしなければならず、その費用も建設費くらいかかるという。
高世氏は、「普通の原発を廃炉にするのと、事故原発を廃炉にするのは全然違う」と指摘した上で、
「気が遠くなるような時間、お金、労力、こういったものを、これからわれわれ(=日本人)は覚悟しなければならない」
と語った。また事故原発周辺住民の移住問題についても取り上げ、
「何万人単位の人を職業、土地、共同体、隣人、こういうものから引き離して、ほかの土地に住まわせるなんてことが、机上だったらできるけど、一人ひとりのことを考えると、ものすごいこと」
と話し、移住の是非についての議論の必要性とともに、原発事故処理のコストについて「日本国民は覚悟しなければならない」と訴えた。
(山下真史)
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv53307377?ref=news#12:02