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広島

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論点2011ひろしま:高速道休日1000円、無料化実験19日終了 /広島

 ◇航路は海の道路 地域に応じた施策を--県旅客船協会・仁田会長に聞く

 東日本大震災の影響で、高速道路の「休日上限1000円」割引と、広島呉道路(クレアライン)などで行われていた無料化社会実験が20日午前0時で打ち切られる。割引や無料化でフェリー会社は厳しい経営を強いられ、県内では呉-松山、竹原-波方(愛媛県今治市)などの航路が廃止になった。これらの政策は何をもたらし、これからの交通ビジョンをどう描けばいいのか。県旅客船協会の仁田一郎会長(50)に聞いた。【聞き手・樋口岳大】

 --割引、無料化の打ち切りをどう評価しているか。

 ◆半歩戻った印象だ。「休日1000円」は09年3月からだが、それまでに始まったETC車への各種割引で船会社はかなり打撃を受けている。これらの割引はそのままなので、根本的な解決にはなっていない。

 加えて震災後、燃料高が加速している。税制改正に伴う船舶への軽油引取税の免税は12年3月末で終わる。経営に大きな打撃を与えるものであり、最優先課題として免税の継続を訴えたい。

 --国は、どのような交通ビジョンを描くべきか。

 ◆高速道路料金を「定価」にいったん戻してゼロベースで議論すべきだ。そのうえで本当に必要な割引は何なのか。車を持たない人の交通手段をどう確保するかを考える必要がある。割引についても、島民の通勤通学時の料金体系など、幅広い議論がいる。例えば、地域活性化のため、しまなみ海道の途中で島に降りて、買い物をした人の通行料金を安くするなど、もっと柔軟な割引制度を作ることはできないか。

 国や自治体の交通施策の基本理念などを定める交通基本法案が今国会に提出されたが、自治体が地域の実情に応じた交通施策を作るためにも、国は早く具体的な協議の仕組みを示してほしい。

 --航路にはどのような施策が必要か。

 ◆瀬戸内海、特に島の交通機関を守るためには航路を「道路」と位置づけ、船は水上の「バス」として整備する。架橋でつながっている島の航路には、国の補助制度がないが、「バス」と位置づければ補助の道も開けるのではないか。また、広島-呉-松山のような県と県を結ぶ航路の維持には、国がある程度関与する必要がある。

 航路を維持する方法も、赤字が出たら補助金を出すというだけではもう成り立たない。安全性に問題のない範囲で、過剰な船の検査や整備のルールを見直すなど、低コストで航路を維持するための規制緩和が必要だ。

 --島しょ部では人口が減り、旅客が減っている。

 ◆一例として、松井一実・広島市長が周辺市町とグループを作って、一緒に施策を考えようとしていることに期待している。江田島市からは大勢の人が広島市に通勤通学しているが、航路の維持について広島市は無関心だった。両市の連携で保育園や学校、高齢者施設の活用など、いろんな面での提携を考えていくことができる。

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 ■人物略歴

 ◇にった・いちろう

 61年、広島市出身。92年、瀬戸内海汽船入社。96年から同社社長、県旅客船協会長、中国旅客船協会連合会副会長を務める。

毎日新聞 2011年6月17日 地方版

 
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