事件・事故・裁判

文字サイズ変更

東日本大震災:福島第1原発事故 東電、工程表を改定 循環冷却、1カ月内に

 ◇作業員の線量管理強化

 東京電力は17日、福島第1原発事故の収束に向け見直した工程表を発表した。4月17日に最初の工程表を発表してから2度目の改定となる。原子炉を冷温停止状態にするなどの目標達成時期は変更せず、今後1カ月で敷地内の放射線量の高い汚染水を浄化して原子炉の冷却に利用する「循環注水冷却」の安定運用を目指す。また、法令限度を超える放射線量を被ばくする作業員が相次いで発生したため、従来の8課題に「放射線管理・医療」の項目を加えた。

 工程表は、目標時期を2段階で設定。原子炉の「安定的な冷却」を目指すステップ1まで残り1カ月となった。

 その3~6カ月後のステップ2で周辺に放射性物質がほとんど出ない「冷温停止状態」を目指すとしている。

 今後1カ月間の原子炉の冷却作業について、1~3号機で循環注水冷却を実施する。

 1~4号機にある使用済み燃料プールの冷却作業では熱交換器による循環冷却システムが順調に稼働しているため、目標を前倒しして全号機で1カ月以内に安定的な冷却状態を目指すとした。

 ステップ2では、汚染水の浄化システム稼働で新たに生じる高レベルの汚泥の保管と、地下水への汚染拡大を防止する遮蔽(しゃへい)壁の検討を盛り込んでいる。

 この1カ月間では、作業員の中で緊急作業時に認められる被ばく線量の限度を超えるケースが相次いで判明した。

 追加された「放射線管理・医療」に基づき、内部被ばくを検査するホールボディーカウンター10台を増設することにした。

 専用の建屋をJヴィレッジ(福島県楢葉町など)などに設置し、個人線量の管理や医療体制を強化する。

 会見した細野豪志・首相補佐官は「被ばく管理は5月から政府が直接管理するようにしたが、(東電の対応が)後手になっていた。今後の1カ月は追い込み期間になる。目標は達成させなければいけない」と強調した。

 東電の武藤栄副社長は「ステップ1の目標は達成できると考えているが、現場の安全や被ばくが危険要因だ。現場の安全管理に力を注いでいきたい」と語った。

 一方、冷温停止の定義について経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「冷温停止の要素は、(核燃料が再び連続的な核分裂反応を起こす)再臨界せず、原子炉内の水が100度を下回る状態で安定し、放射性物質が管理できる状態」と説明した。【関東晋慈】

毎日新聞 2011年6月18日 東京朝刊

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画