南京事件FAQ

Q20
  ラーベの日記は一次資料ではない。三等資料であるのから、資料として信用できない。


A20.事実
 これも否定派がよくつかうトリック一つです。
 ラーベの日記というのは、南京に設けられてた国際安全区委員会の委員長(責任者)であるジョン・ラーベがつけていた日記のことです。日本では「南京の真実」という題で刊行されています。

(1)
 これは南京にいたラーベが当時書き残した残したものなので、当然一次資料です。

(2)
 内藤智秀氏の「史学概論」の史学概論によると、歴史資料は取り扱いの便宜上以下のように分類されます。
 この分類によると、ラーベの日記は一等資料か、譲っても二等資料です。間違っても三等資料には入りません。

(3)
 一等資料から三等資料までは「根本資料」として扱われます。明らかに重要資料としてのランクです。三等資料だから信用できないと言う理屈はどこにもありません。

  

根本資料 一等史料 史実の発生当時、同所において責任者が自ら作成した文書類で、例えば当該責任者の日記・書簡・覚書の類。
二等史料 史実発生当時の同所に、最も近き場所、最も近き時、又は同じ場所で時間が幾分異なるもの、又は時が同じで、場所が幾分異なる所で、責任者が自ら作り上げた報告とか、日記・遺言・覚書・追記類の如きもの、ないしは後日に作り上げた日記とか、随筆類の如きがこの中に入るのである。例えば当事者が後日、暇を得て作成した文書類などがそれである。
三等史料 前の一、二等史料を材料として作成した伝記とか、家譜の如きがその中に入るのである。もちろん、この場合人物も年代も場所も違っているのであるが、編纂の方法が正確である限り、これは三等史料というべきであろう
参考資料 四等史料 作者も製作年代も、又製作場所も判明しない場合、又はその一部が判明しても写本などによって幾度か転写されて欠けた点のある場合、又は脱落などもある場合である。普通に書簡といわれるもの、ないし史料としての地名・建築物などがその中に入るのである。この四等史料の中には立派なものもあるが、総じていえば原形とまぎれこみの部分とに分けることは困難であって、いずれを採用し、いずれを捨つべきかに迷わされる。それ故、実際問題としては、最もよきこの種類のものは三等史料と判然区別することが困難であるが、これに反し煩雑なものは五等に入れられる。
五等史料 撰者又は著者がいかなる史料を手にしたか、いかなる方針で調査、又は審査したか不明なものである。又は政治上経済上など、あるいはその他のために何らかためにするところあってものした場合、特に一部の考えに偏し、そのために史実の材料の取捨選択を幾分左右されている種類のものをいうのである。これらを詳細に考究すると編纂物の作者が偏狭な意見にとらわれず、又、審査方法も科学的で、材料も主として根本史料を使用した場合、これは上乗の編纂物というべきものであろう。それ故に、実際の場合はこの種の史料はきわめて少なく、多くは三、四等、又は六等史料に入るのである。
等外史料
六等史料 一等から五等までの史料以外のもの全部をいうのであるが、これは等外史料ともいうのである。その中には、あらゆる編纂物・書画・美文・詩劇・歌劇などがことごとく入るのである

ポイント
(1)ラーベの日記は一次資料。
(2)「史学概論」の分類法でも、一等資料か悪くても二等資料になる。
(3)一等資料からから三等資料までは「根本資料」として扱われる。三等資料が資料として使えないという理屈は全くない。