2011年4月20日 20時1分
福島第1原発事故の影響で全域が計画的避難区域となる見通しの福島県飯舘(いいたて)村で、政府が正式な指定の時期を示していないことに対する住民の困惑が広がっている。指定がない現時点では、村が住民に被災証明書を発行できないほか、被災者向けの各種の優遇措置も受けられない。住民たちは「我々は既に被災者。一日も早く指定してほしい」と訴える。
被災証明書は市町村が発行し、公営住宅に優先入居できるなどの措置が受けられる。今回は地震・津波で長期的避難を強いられた住民のほか、国が避難指示などを出した原発30キロ圏内の住民が対象になる。津波被害がなかった飯舘村も計画的避難区域に指定され次第、発行が可能となる。
政府は今月11日、村全域を同避難区域に指定する方針を明らかにし、村では安全への懸念や職探しのため自主避難の動きが加速している。だが、正式指定に至っていないことで、被災証明書の発行に加え、医療費の自己負担分免除など被災者向けの優遇措置が適用されずにいる。
政府は現在、避難に伴う補償や避難先に関する村の要望などを検討中という。指定の時期は明確でなく、自主避難した村民たちはいらだちをみせる。
農家の男性(43)は小学生の子供のために農業を断念し、同県喜多方市でアパートを借りて転職した。「敷金礼金の支払いや学校の手続きなど、すべて自前でやった。こんな中途半端な状況が続くと、村の人間はパンクする」と訴えた。
測量業の大内亮さん(35)は2人の子の健康を考え、福島市の市営住宅への入居を申し込もうとしたが、同市担当者から「被災証明のある人が優先される」と説明され、やむなく親類宅に身を寄せている。「金がなくて避難できない人もいる。なぜ、もっと早く柔軟な対応が取れないのか」と国や行政の対応に憤りを隠さない。【大場弘行、前谷宏】