(cache) 立ち上がる日本の母親たち-原発事故受け - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
  • The Wall Street Journal

立ち上がる日本の母親たち-原発事故受け


  • 印刷 印刷
  • Twitter
  • Mixi
  • 文字サイズ:

 【柏市】福島第1原子力発電所の事故を受けて、全国レベルでも地域レベルでも、日本の母親たちによる、子どもを事故の影響から守るための対策を当局者に求める動きが活発化している。

Kyodo /Landov

文部科学省の担当者に会いにきた福島県の母親たち(6月)

 母親たちは、ミクシーなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスなどで賛同者を集め、当局に圧力を掛けている。こうした母親たちの小さな団体は16日に都内で抗議活動を行い多くのメディアの注目を浴びた。こうしたデモは他の地域でも発生している。また、ネットを通じた母親同士の情報交換や、地方自治体に対策を要求する請願書の署名集めもさかんに行われている。

 政府は16日、いくつかの下水処理施設周辺の放射線量が高いとの苦情が1件寄せられたことを受けて、それら放射線量が基準値を下回るようにすべきだと述べた。政府当局はここ数週間、福島第1原発からかなり離れた場所にあるホットスポット(局所的に放射線量が高い場所)の放射線量を公表している。原発から約300キロ離れた神奈川でも最近、茶葉から放射性物質が検出されるなどホットスポットが確認されている。

 専門家の一部は、母親たちによる抗議活動が国民全体に過剰反応を引き起こす可能性を懸念している。近畿大学原子力研究所の講師、若林源一郎氏は、「放射能の人体に与える影響については、線量が高い場合を除いて確定的なところは分かっていないのが現状。年100ミリシーベルト以下については、飲酒、タバコ、ストレスなどの影響と区別するのが難しい。年1ミリシーベルトは法律上の規制値で、超えたら健康に被害がでるというものでもない。放射線を気にするあまり、子供を外で遊ばせなかったり、夏でも長袖やマスクを付けさせていたら、どちらが健康に悪いのか分からない」と話す。

 空間放射線量は、日本のほとんどの地域で震災前の平均的範囲内にあり、福島県とその周辺地域の一部の市町村でも憂慮すべきほど高い水準にはない。例外は福島市だ。同市の15日の空間放射線量は毎時約1.5マイクロシーベルトで、通常平均の30~40倍。

 政府が定めた、原発やその他の人工放射線源による公衆被ばくの上限は年間1ミリシーベルト。日本の当局によると、一般の人が1年間に浴びる放射線量は世界平均で2.4ミリシーベルト(1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルト)で、これには自然源やラドンなどによる被ばくが含まれるが、X線や航空機での飛行による被ばくは含まれていない。

 福島第1原発から約200キロ離れた千葉県柏市は、市当局によると空間放射線量が毎時約0.3~0.4マイクロシーベルトと通常レベルを上回っており、首都圏で空間放射線量が最も高い場所の1つだ。そのため、子どもを持つ住民の中には引っ越しを検討し始める人も出ている。

 柏市当局と調査員は、高い放射線量が検知された理由について、福島第1原発の初期放射線によるものなのか、下流の汚泥処理施設からの2次放射線によるものなのか、あるいは両方によるものなのかは不明だとしている。

 米小児科学会(AAP)の放射線災害と子どもに関する一般的な方針説明では、大人よりも子どもの方が放射線被ばくによる悪影響を受ける危険性が高いとしている。その要因の1つは、子どもは1分間に吸い込む空気の量が大人よりも多いため、放射性ガスを吸い込みやすいことだ。

 また子どもは地面に近いため、より高濃度の放射性降下物にさらされる可能性が高いことも一因だ。AAPの環境衛生に関する委員会のリポートは、たとえ同じ放射線量にさらされたとしても、大人よりも子どもの方が放射線誘発がんなどの健康被害を受けやすいようだとしている。

 柏市では、母親らが中心となってネットを通じて1万人の署名を集め、子どもを放射線から守るために一段の対策を求める請願書を柏市役所に提出した。2日に柏副市長に会い、学校で毎日放射線量の測定を実施するよう要請した。だが、以来ほとんど進展はないという。

 柏市役所は6日から8日にかけて、管理下にある保育園、幼稚園、小・中・高等学校すべてで放射線量を測定し、高い放射線量を検知した。

 柏市広報担当者は、市役所には放射線の専門家がいないため専門家会議を設けたと述べた。その上で重要なのは冷静さを保ち、適切な情報を入手することだと述べた。

 東京都江東区では、3人の子どもを持つ石川綾子さん(33歳)が他の母親とともに「江東こども守る会」を結成した。同グループが先月実施した調査では、都内の汚泥処理施設の1つ「東部スラッジプラント」の周辺で、放射線量が毎時0.2マイクロシーベルトを超えていることが判明した。

 東京都大田区の東京湾一帯に位置する他の汚泥処理施設周辺の放射線量も高いことが判明した。これら施設では、都内の下水処理場で発生した汚泥を集めて焼却している。石川さんは、下水に流れ込んだ放射性降下物が汚泥処理施設に集められ、再び大気中に放出された可能性を疑い、江東区に問い合わせた。同区では、汚泥処理施設から放射性物質が放出されているとは考えていないという答えだった。

Copyright @ 2009 Wall Street Journal Japan KK. All Rights Reserved

本サービスが提供する記事及びその他保護可能な知的財産(以下、「本コンテンツ」とする)は、弊社もしくはニュース提供会社の財産であり、著作権及びその他の知的財産法で保護されています。 個人利用の目的で、本サービスから入手した記事、もしくは記事の一部を電子媒体以外方法でコピーして数名に無料で配布することは構いませんが、本サービスと同じ形式で著作権及びその他の知的財産権に関する表示を記載すること、出典・典拠及び「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版が使用することを許諾します」もしくは「バロンズ・オンラインが使用することを許諾します」という表現を適宜含めなければなりません。

 

  • メール
  • 印刷
  •  
  •  

関連記事

日経平均 9,351.40 -59.88 -0.64
ダウ工業株30種平均 11,961.52 64.25 0.54
TOPIX 805.34 -7.07 -0.87
為替:ドル―円 80.64 80.65
原油 92.79 -2.16 0.00
*終値

投資に役立つ最新分析

日本版コラム

ビジネス英語