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佐賀・玄海原発:1号機原子炉、想定超す老朽化 専門家「急冷却で破損の恐れ」

 九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の原子炉圧力容器の老朽化が、従来の予測を超えて進んでいることが、九電の資料や専門家の分析で分かった。原子炉が中性子を浴びるほどもろくなる「脆化(ぜいか)」と呼ばれる現象で、大地震などで急激に炉心を冷やした場合に圧力容器を破損する危険性が増す。九電は従来予測を上方修正した上で「安全性に問題ない」とするが、専門家は「予測不能に陥っており、安全検査を徹底すべきだ」と指摘している。

 玄海1号機(出力55万9000キロワット)は75年10月に稼働した九電最古の原発。予測以上の脆化が判明したことで、他の古い原発の安全性も問われそうだ。

 電力各社は、核燃料を納める圧力容器の老朽化を把握するため、容器内壁のさらに内側に、容器本体と同じ材質(鋼鉄製)の試験片を4個以上設置。検査のため数~十数年ごとに1個ずつ取り出し、脆化の指標となる「脆性(ぜいせい)遷移温度」を測定している。この温度は脆化が進むほど高くなり、容器が急激に冷やされこの温度を下回ると壊れやすくなる。

 九電によると、1号機の運転開始時の脆性遷移温度は零下16度。76~93年の計3回の検査で35度↓37度↓56度と上昇し、09年4月の4回目検査で98度と跳ね上がった。しかし、九電が03年に国に提出した技術評価書の予測では65度前後、誤差を考慮しても75度前後のはずだった。

 これを受け、九電は予測を実測値に合わせて上方修正した。一方、現在の容器本体の脆性遷移温度については、日本電気協会の予測式から80度と推定し、今後24年間稼働しても91度と予測している。新設原子炉の業界基準である93度を下回り、九電は「安全性は問題ない」と説明している。

 井野博満・東京大名誉教授(金属材料学)は「4回目の実測値は誤差の範囲を超えており、脆化を予測できなくなっている。『安全』と説明されても信頼性に欠ける」と指摘。「予測不能である以上、容器本体も98度と仮定して安全検査を徹底すべきだ」と訴えている。

 国内の原発でこれまで観測された脆性遷移温度の最高値は関西電力美浜原発1号機の81度。玄海1号機の98度はこれを更新した。【阿部周一】

毎日新聞 2011年5月27日 西部朝刊

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