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まもなく各地で海開きが行われ、本格的な海水浴シーズンが始まりますが、原発事故を受けて、この夏、安心して海水浴ができるのか、気になっている人もいると思います。
こうした懸念から、各地の海水浴場では海水の放射性物質の濃度を測る動きが広がっています。
海水浴の安全性と各地の動きを、社会部環境問題担当の高橋修デスクが解説します。
多くの海水浴場では今月下旬から来月上旬にかけて海開きが行われますが、その前に行われるのが海水の水質調査です。
例年ですと、大腸菌がどれくらい含まれているかや、水の透明度がどの程度あるのかなどを調べます。
ところが、ことしは、関東地方の海水浴場を中心に放射性物質の濃度についても調べる所が相次いでいます。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で海などに漏れ出した放射性物質が、海流などによって周辺の海域に広がっているのではないかという懸念があるからです。
NHKのまとめでは、これまでに福島県、茨城県、千葉県、東京都の島、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県の海水浴場で放射性物質の測定が行われているほか、原発から1000キロ以上離れた宮崎県の海水浴場でも測定が行われています。
一とおりの調査がすでに終わっている神奈川県や東京の島の一部では、調査の結果、海水から放射性物質は検出されませんでしたが、千葉県と宮崎県のように、14日から測定を始めた所もあります。
そこで必要なのが、放射性物質の濃度がどの程度なら海水浴に適しているか、その目安となる数値です。
ところが、水道水では放射性セシウムの場合、1リットル当たり200ベクレル以下といった指標がありますが、海水については、現在、放射性物質の基準は定められていません。
このため環境省は、海のほか、川や湖で泳ぐのに適した濃度の数値や、自治体が行う調査の方法を、指針としてまとめることを決め、14日、検討会を開いて議論を始めました。
専門家の意見を聞いて指針をまとめ、今月中に都道府県に示す考えですが、海開きが目前の所もあるため、少しでも早い指針の策定が求められています。
一方で、海開きを阻むのは放射性物質だけではありません。
福島県では、放射性物質への懸念に加えて、海岸からのがれきの撤去が進んでいないために、すべての海水浴場の開設をやめたほか、宮城県と岩手県でも、がれきの処理が進んでいないために海水浴場が使えない所が多くあります。
関東地方でも、茨城県の北茨城市では、余震などで万一津波が起きた場合に海水浴客を安全に避難させることが難しいなどとして、市が管理する海水浴場をオープンしないことを決めました。
また、千葉県の旭市では、津波で打ち上げられた大量の波消しブロックの撤去が間に合わないとして、2つの海水浴場の利用を中止しました。
沿岸部の被災地では、震災からの復旧作業に追われ、水質調査さえできる状態ではないという所が多く見られますが、海開きを行うほかの地域でも、海水浴の安全に気を遣う夏になりそうです。
(6月14日 20:45更新)