県などによる研修会で飛ぶ農薬散布の無人ヘリ=木島平村 |
農薬の空中散布の在り方を検討する県関係部局による連絡会議は26日、無人ヘリコプターを利用した有機リン系農薬の散布を事実上中止する方針を決めた。同農薬は毒性が強く、長時間にわたって大気中に滞留するとされ、周辺住民の健康被害を避けるには散布を制限すべきと判断した。近く農協や市町村など関係機関に自粛を要請する。
県農政部によると、農作物への無人ヘリによる農薬の空中散布は、水稲や大豆などの病害虫の防除に効果的で、昨年度は県内の約5230ヘクタールで実施。このうち有機リン系は約930ヘクタールで散布された。
一方、農薬は毒性試験などを経て農薬取締法で登録されているものの、空中散布で飛び散り、特に子どもや化学物質に敏感な人たちが健康被害を受けると指摘されている。有機リン系農薬の一部が、散布から4日たっても大気中から微量に検出されたとの調査結果もあり、同農薬を自粛対象とした。自粛要請に強制力はないが、県は事実上の使用中止としている。
県は、有機リン系以外の農薬の空中散布も、使用法や飛散しにくい噴射口の装着などを指導する方針。有機リン系以外の農薬の対応は「国が実施する影響調査の結果をみながら継続的に検討していく」(農政部)としている。
農薬の空中散布をめぐっては、反対する上田市の母親グループ「こどもの未来と健康を考える会」が昨年6月、県に対応を求め、県が検討を開始。有人ヘリによる松くい虫防除の在り方も併せて検討している。今回の決定について同会の田口操代表は「有機リン系農薬の自粛は結構だが、空中散布を全面的にやめてほしい」と話している。
農水省によると、有機リン系農薬の散布自粛は、群馬県も実施している。