FILE148:「万国『イケ面』博覧会」
2011年6月16日放送
※別番組放送のため、再放送(21日午前1:30〜)は休止です。ご了承ください※
NHKオンデマンドで6月17日(金)午後6時〜配信予定です。
国立民族博物館
世界160カ国から集めた冠婚葬祭用品や生活用具、なんと27万点を所蔵する国立民族学博物館(みんぱく)。とりわけ世界各地の「仮面」のコレクションは、目が点になるほどの超強烈キャラぞろいだ。物知り博士の荒俣宏、世界104カ国を旅したツワモノリポーター・竹内海南江とともに、不思議発見!世界一周ツアーをもくろむ爆笑問題の前にまず姿を現したのは、アフリカのガーナでつくられたという極彩色の巨大エビ型置物。なんと○○を入れるものだという・・・。暗がりから飛び出してきたバリ島の仮面劇の登場人物たちに圧倒されたり、松井秀喜はじめ有名人そっくり仮面の数々に大ウケしたり、イースター島のモアイ像の秘密に触れたりしながら歩くうち、アフリカの秘密仮面結社のメンバーまで登場して・・・。果たしてその正体は?秘密結社の鉄のオキテとは?
世界の「イケ面」たちを訪ね歩くツアーの果てに、人間と仮面との切っても切れない関係が見えてくる。月光仮面からタイガーマスクまで、なぜ日本人は仮面ヒーローが好きなのか?「仮面」と「化粧」と「かぶりもの」の違いとは?話を進めるうち、人類が「仮面」に託してきたさまざまな意味が浮かび上がる。
ゲスト
荒俣宏(あらまたひろし)
博物学者・小説家
1947年東京都生まれ。膨大な知識を駆使して、百科事典の編纂から妖怪、ピンナップガールの研究まで、多岐にわたる執筆活動を続けている。
竹内海南江(たけうちかなえ)
タレント・リポーター
1964年群馬県生まれ。クイズ番組のリポーターとして、1987年から現在に至るまで、世界104か国を訪れている。
吉田憲司(よしだけんじ)
1955年京都府生まれ。京都大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科芸術学専攻博士後期課程修了。1984年からザンビアでフィールドワークを実施。アフリカの新しい芸術、現代の仮面ヒーローや顔出し看板への考察など、ユニークな研究を続けている。
今回の対戦内容
吉田憲司(よしだけんじ)/爆笑問題
荒俣:人類は仮面という、ものすごい道具をつくったっていう感じがするのね。異界のものを自分たちのところにスイッチングさせるための道具、顔に付けるね。
竹内:装置ですよね。
荒俣:要するに心に作用を及ぼす道具なわけでしょ。
竹内:すごい発明品ですよね。
太田:でもこう見ていると、仮面ライダーとか、覆面レスラーとか。威嚇というか、「お前らよりおれの方か強い」っていうことがどっか入っているのかな。
吉田:覆面にしろ、仮面にしろ、そういうものを付けると、いつもできなかったことができる。
田中:勇気が出ちゃうというか。お笑いでもいるんですよ。かぶりものすると、わっとできるタイプ。
先生の対戦感想
吉田憲司(よしだけんじ)
吉田:太田さんの集中力と田中さんの包容力、その両者が相まって「一点突破全面展開」の話術が可能になるのだと改めて実感しました。本番では、質問がどの方向から飛んでくるのか全く予想がつかず、スリリングな収録でした。しかも今回は爆笑問題さんのお二人のほかに、荒俣宏さん、竹内海南江さんもご一緒で、それぞれの博識・ご体験を生かしての質問やコメントはまさに百花繚乱。「知の異種格闘技戦」を堪能させていただきました。
次の機会には、もっと時間をとっていただいて、みんぱくをじっくりご案内したいと思います。
荒俣:仮面はね、本当に難しいですね。難しいけれども、魅力あるテーマの一つだと思います。今日お話を聞いて一番面白かったのは、仮面が異界と村落を結ぶ一つの交通の手段、という話ですね。ヘリコプターの仮面まで出てきて、それが怪獣と同じ扱いだったっていうのは、面白かったですね。
今回のみんぱく見学は、僕にとって一番理想的な、夢に見たような博物館見学の一つだと思うんです。アーティストたちがプリミティブアートの解説なんかするのは見たことあるけれども、吉田先生みたいに本当に秘密結社員になった人なんて、聞いたことがないですからね。やっぱりこれがみんぱくのすごさだなとつくづく思いました。
竹内:私はあまり誰かとご一緒するっていう機会がなかったので、コレクションの方に目が行ってしまって。ちょっとこう目が周りの収蔵品に泳いでいる状態だったので、いつもよりも表情に落ち着きがないかもしれません。申し訳ないです。
素晴らしいコレクションがこんなにたくさん「みんぱく」に揃っているとは、本当に驚きでした。見たことのないものがたくさんあって、とっても楽しかったです。またプライベートでゆっくり来てみたいと思っています。
爆笑問題の対戦感想
田中:思ったところと全然違いましたね。「民族学博物館」って、古いものがいっぱいあるような感じかと何となく思ってましたけど、「民族学」だから、現在も含めて暮らしに使うもの、っていうことなんだね。あとはこのデカさね。歩き疲れましたけど、意外に普通に、本当に楽しかったです。
今日は「仮面」がテーマっていうことでね、でも確かにそのぐらいに絞らないと、途方もないですよね。仮面だけでも面白かったですね。これだけいろんな地域の仮面があるけど、何かやっぱり、どこか共通している感じっていうのがあって。何かやっぱり間抜けなのがあったり、怒っていたり、何か変な、「こんなやついるか?」っていうのもあってね。でかいのとか、ぐちゃぐちゃな感じがもう本当に、何とか表現しようと頑張ってるんだけど表現しきれない!みたいな感じとか。何とかして強く見せたいとか。さまざまな人間の思いが表れている気がして、そういった意味でも面白かったね。そういうことで、人々は何とか気持ちを上げてきたんでしょうね。非常に興味深くて、もっといろいろ見たかったです。
太田:見応えありましたね。ああやって世界のを見比べると、日本のあの能面っぽいのとか、無表情なんだけど何か綺麗だなって。あと逆に、オセアニアにあった、あっけらかんとした、人じゃなくてちょっと鳥っぽい仮面というか。コミカルな。そのどっちかが好きですね。好みとしては。
(スリランカの)病気仮面も面白かったね。我々が病気を治そうとすると、科学的に分析して、実証して、頭痛にはこの薬、胃もたれにはこの薬って、細かく細かくしていくんだけど。昔は「この野菜食っておけ」っていうので済んでいたのが、今はその野菜から成分を抽出してっていう、そういうことじゃないですか。でもあの病気仮面は、「あなたはこの病気だから仮面つけてお祓いします」っていう、そういう儀式で済ましてしまう。そのプラスのパワーというかな。数字や科学じゃ割り切れない何ものかに乗っかる気持ちが、信じている分だけ、自然治癒力を呼び起こすっていうか。「こうやってもらったら治るんだ」って本気で信じている社会は、やっぱりほんとに治っちゃうんじゃないかなっていう気がするんだよね。
今の頭でっかちになっちゃった我々が、ああいうふうに夢みたいに説得力を持って信じられる何か、おそらくそれは文化だと思うんだけど、それを作り出せるか。ちゃんと文明も取り込んだうえで、説得力を持って信じられるものに仕立て直すっていう、手塚治虫がやったようなこと。何かそういうことを、やっぱりテレビや何かがやれないと、っていうのは、ずっと考えているんですよね。仮面もそうだけど、「芸能」っていうのはそういうことですよね。
ディレクター観戦後記
みんぱくの初代館長・梅棹忠夫氏は、みんぱくを「ガラクタの宝庫」と呼んだそうです。高価なオブジェや芸術品を並べるのではなく、日常生活に使われている道具「ガラクタ」を展示することこそが真の博物館の役目なのだ、という自負があったようです。
その「ガラクタ」がたくさん詰まったみんぱくは、とても広くて、じっくり見ていると半日あっても時間が足りないくらいです。魅力的な展示が並ぶ中で、何にテーマを絞るべきか悩みましたが、今回は表情豊かな「仮面」に絞って世界一周ツアーを決行しました。
人間が感じる不安、恐怖、喜び、といった「感情」、目に見えない「精霊」や「神」「悪魔」、そして「病気」まで、仮面にしてしまう人間。荒俣さんがおっしゃっていたように、仮面は、「言葉」と同じくらいの力を持つ、人間の発明品なのかもしれません。そう思うと、ナマハゲを見る目も変わりそうです。
仮面舞踊:小谷野哲郎
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