加えてマイクロソフトは1月に、ウィンドウズ8を従来のインテル以外の半導体でも動作可能にする方針を明らかにしている。これによりPC各社は、米エヌビディアや米クアルコム、同社などに技術を提供する英アームらが開発した半導体も自社製品に採用できる環境が整う。大半はスマートフォン向けに設計されているため消費電力が少なく、駆動時間の長い製品を設計しやすくなる。
2010年に約1400万台のMacと約1500万台のiPadを出荷したアップルの動向も見逃せない。7月に発売する新OS「マックOSX(テン)ライオン」はタッチパッドをフル活用する操作体系を導入し、ソフトを全画面表示したり保存の操作をせずに、自動保存することが可能になる。アップルがスレートPCを出すことを表明したわけではないものの、iPadやスレートPCをかなり意識したパソコン向けOSになることは間違いない。
ウィンドウズ8やマックの新OSの登場はPC各社にとり、バラエティーに富んだスレートPCを市場に投入するまたとない絶好の機会となりそうだ。
PC業界がこぞってスレートPCに走る背景には、スマートフォンなど新たに登場したIT(情報技術)機器の急成長に対する強烈な危機意識がある。米IDCの予測では2011年にスマートフォンの世界出荷台数は4億台に達し、パソコンの3億7000万台強を初めて上回ると予測する。米調査会社のガートナーも3月、スマートフォンや多機能情報端末の急成長ぶりがPC販売に急ブレーキをかけるとの見方を示し、PC世界出荷予測を下方修正。個人向けノートは直近5年間は年率で平均40%と高い成長を続けてきたが、15年にかけて年率10%以下に落ち込むとした。市場が成熟した結果、2台目や3台目を追加購入する需要が減り、買い替えサイクルも長くなるとみている。
こうした予測から浮かび上がるのは、買い替えを促せる魅力ある商品作りの姿勢が最近のPC業界に欠けているという消費者からのメッセージでもある。ウィンテルの完成型の1つの姿だったはずの低価格な「ネットブック」の人気が、急落したのはその証左と言えよう。ネットブック拡大を追い風に世界3位に急成長した台湾エイサーは現在売り上げ減に苦しみ、PC事業拡大の立役者だったジャンフランコ・ランチ最高経営責任者(CEO)の辞任を3月に発表したのは記憶にまだ新しい。
次の10年、PCはもはや他のPC同士と戦うのではない。スマートフォンや多機能携帯端末も含めた多種多様なライバルを相手に消費者からの審判を日々受ける。スマートフォンだけでなく、iPadらと対等に渡り合うのは決して生易しい戦いではないだろう。くしくも2011年は、PCの爆発的普及を決定づけた米IBMの市場参入から30年の節目の年。第1の革命が「IBM PC」の登場だとすれば、第2の革命は1989年に東芝が誕生させたノートPC。それ以来の第3の革命をスレートPCで再び起こせるのか――。IT(情報技術)の主役の座への復帰を巡って、PC業界は試練の時を迎えている。
(産業部 高田学也)
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