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東日本大震災:原発事故賠償、「福島」後に関心高まる 国際体制、具体化は不透明

 【ウィーン樋口直樹】国境を越えて広がる原発事故の被害に対処するため、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)の閣僚級会議は国際的な原発賠償体制の必要性を打ち出す。東京電力福島第1原発事故による「原発安全神話」の崩壊を受けた、賠償問題への国際的な関心の高まりが背景にある。ただ、原発賠償に関する既存の条約には実効性などで不安がつきまとい、具体的な強化策は不透明なのが実情だ。

 「福島第1原発から大量の放射性物質が大気や海中に流出したことで、周辺国は被害の拡大に非常に敏感になっている」。IAEA外交筋の一人は、原発賠償体制の強化がクローズアップされた事情をこう語る。ロシアや中国、韓国などは事故直後から日本政府や東京電力の「不透明な」対応ぶりに不信感を隠さなかった。

 原発事故に伴う賠償体制は現在、それぞれの国内法に加え、「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」など三つの条約で支えられている。だが、それぞれの条約加盟国は一定地域に固まっており、責任額の上限や補償の仕組みなどでばらつきがある。

 チェルノブイリ原発事故(86年)を受け、主に欧州諸国を加盟国とする「パリ条約」と「ウィーン条約」は、垣根を低めて適用範囲を広げようと、条約改正などを繰り返してきた。97年にIAEAで採択されたCSCは、一定額以上の賠償に加盟国などの拠出金を充てる仕組みを提案したが、加盟国は米国やアルゼンチンなど4カ国しかなく、条約は未発効のままだ。

 また、日本を含む東アジアの商業用原発保有国はいずれも国際賠償条約に加盟していない。日本の場合、今回の事故で周辺国から賠償請求訴訟を起こされたら、関連の国内法などに基づいて対処せざるを得ない。関係者の間からは「主に国内被害を想定した法で、国際的な賠償問題にどこまで対処できるか疑問」との見方も出ている。

毎日新聞 2011年6月16日 東京朝刊

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