杉並区に売却する方向で協議が進んでいる「東京電力総合グランド」。売却価格は総額200億円規模にのぼるとみられる=15日午後、東京都杉並区(撮影・今野顕)【フォト】
東京電力は15日、東京都杉並区下高井戸に保有する運動施設「東京電力総合グランド」を地元の杉並区に売却する方向で協議していることを明らかにした。
福島第1原発事故の被害者への賠償費用捻出のためで、これまで合計6000億円以上の資産を売却するとしているが、売却先が具体的に明らかになったのは初めて。
同グランドは1961年開設で、敷地面積は約4万3800平方メートルと東京ドームとほぼ同じ。野球場2面、陸上競技トラック1面、テニスコート8面、バレーボールコート2面、25メートル屋外プール1つ、駐車場、管理施設などからなる。東電が東京都内で保有する福利厚生施設としては最大規模という。
東電が今月7日に杉並区に競争入札での売却方針を伝えたところ、「良好な住環境を保つことと、防災上の観点から区にとって重要」と取得の意向が示され、協議に入ることになった。
注目の価格は、自治体が不動産を取得する場合には「周辺の公示地価を基準にして価格を算定する」(不動産業界関係者)といい、190億円前後、最大で200億円規模になる計算。一般に公示地価は実勢価格よりも1〜2割低いが、「民間業者に売るとしても、広い土地なので、坪単価は狭い宅地よりも安くなる。それを考えると妥当な価格」(同)という。
しかも、周辺の土地利用制限を考慮すると、「マンションは建設できず、戸建ての宅地として売るにも1区画60坪以上になってしまうが、土地だけで1億円以上になる。宅地としては商売がしにくい物件」(同)という事情もある。
杉並区は、「14日朝に東電から『売却に向けて協議をする方針を決定した』との連絡があっただけで、金額などはこれからの協議。区としては運動公園として整備する方針」としている。
(紙面から)