「悪性リンパ腫が労災として認められることは当然」と話す喜友名末子さん=4日夜、南城市大里の親類宅
厚生労働省の検討会は4日までに、原子力発電所や使用済み核燃料再処理工場での業務に従事し悪性リンパ腫を発症した労働者について、肺がんや白血病などと同様に放射線業務の労災対象疾患とする方針を固めた。近く正式に報告書をまとめる。放射線医学の専門家らでつくる検討会は、放射線業務に従事し、3年半前に悪性リンパ腫で亡くなったうるま市の喜友名正さん=当時(53)=の遺族や支援者らの訴えを機に、昨年秋から検討を重ねていた。
「当然の結果だと感じた」。原発で放射能漏れ検査に従事して被爆し続け、悪性リンパ腫で2005年に亡くなった喜友名正さんの妻・末子さん(57)が4日、悪性リンパ腫も労災対象にするとの厚労省検討会の方針について感想を述べた。末子さんは正さんが亡くなってから3年半、夫の労災認定を訴え続けてきた。「弁護士から(検討会の方針を)聞いた時は涙が出た。夫にも報告した」と静かに話した。
正さんは約23年勤めた県内の大手電器会社を辞め、1997年に公共職業安定所の紹介で原発の機器を傷つけずに放射能漏れなどを検査する「非破壊検査」会社の下請け業者(大阪府)に入社した。危険な仕事だけに当初から、同会社に入社することに末子さんは反対だったが、正さんは聞き入れなかったという。うるま市に購入した家のローンがあり、さらに大学に通う息子の学費の工面もあった。
「家の支払いはどうするのと言われると何も言えなかった」と振り返る。全国の各地で仕事をする正さんから、仕事場でヘルメットをかぶり、作業着姿でVサインをし仕事を頑張っていることを伝える写真が自宅に届いたこともあったという。「こんな怖いところで仕事をして、病気になるのも知らないで」。
正さんの体に変化が起きたのは01年ごろだ。風呂場に鼻血の跡が付くようになり、その後も鼻血が頻繁に出るようになった。熱が下がらないようになり、04年に鼻付近に腫瘍(しゅよう)ができ中部の病院で手術。琉大病院に移って悪性リンパ腫だと分かった。約1年の闘病生活の後、亡くなった。
末子さんは当然、労災が認められると思っていたが06年9月、大阪市淀川労働基準監督署は労災補償を不支給と決定。「これが通らなければ、何が通るのか。徹底的にやる」。末子さんは強い思いで労災認定を求めてきた。
亡くなる2、3日前、チューブが口に通され、しゃべれない正さんがマジックと紙を求め、紙に末子さんの名前を書いたが力が入らず、言いたいことを伝えることができなかった。「『こんな仕事をするな』とわたしと何度もけんかしたから、謝りたかったのだと思う」と振り返る。
正さんが亡くなった後、思い出すのがつらすぎて1975年に行った新婚旅行の写真アルバムは一度も開くことができなかった。
昨日、弁護士らから認定の連絡があり「これまで止まっていた時間がやっと動きだした」と話す末子さんは今回の知らせを受け、初めてアルバムを開いた。旅行先の鎌倉で写した2人の写真を見詰め「一番大好きな人。こんな幸せな家族をどうして国はこう簡単に不幸にするの」とつぶやきながら涙を流した。
(内間健友)
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