ジャングル・フィーヴァー (2011.06.15)
 昨日の“LOOP”に関しての話題です。アタマとオシリを繋いで繰り返すこの手法は、デジタル時代になって簡単に出来るようになりましたが、アナログ時代からありました。有名なものに Gary Glitter の『Rock and Roll』(1972)があります。NBAやNFLで"The Hey Song"としてよく流れていますよね。



 この“LOOP”はグリッター・バンドの Harvey Ellison がドラムスを、John Rossall が他の楽器をダビングして、殆どこの二人だけで作ったとのことでした。

 実はこれにも“先駆”がおりまして、グリッターと同じ英国の《ジョー・ミーク》なのです。

 『Rock and Roll』から更に10年前の1962年、『テルスター』が大ヒットしました。私もすぐにシングル盤を買いましたが、当時のジャケットには“トルナドース”とあり、ラジオでは“トーナドース”と言っている人が多かったような記憶があります。

 一応、A面を聞き終えると次はB面を聞くのが当時の慣わしでした。(アタリマエですが、ダウンロード時代となってしまった現在、完全に消えてしまった“行為”ですので註釈をば)

 当時の大抵のB面は“捨て曲”が多く、イカニモ“B面”という手抜きの曲が多かったのですね。ただ、それが聞いているうちに徐々に慣れてきて(笑)、キャッチーなA面よりも地味ぃなB面の方が飽きが来ないというか、何とはなしに繰り返し聞いているうちに“B面好き”になっていきました。

 その『テルスター』のB面が“ジャングル・フィーヴァー”でした。



 しかし、いかにB面好きになったとは言っても、さすがにこの“ジャングル・フィーヴァー”は全く良さが分からず、変な曲という印象しかありませんでした。(もちろん当時は作曲者の“ジョー・ミーク”が、後に自分の研究対象になることなど、夢にも思っていないワケです)

 この曲の面白さに気づいたのは70年代、前述のG・グリッターのヒットがきっかけで、このドラム・サウンドはどこかで聞いたことがあるなぁ・・・と思いながらも、何だったのかは全く思い出せずにおりました。そうこうしていた1977年、大阪・フォーエバーの宮下さんから Tornadoes のLPが入った!という情報がありました。(同時に『The Joe Meek Story』も)

 エンジニアの笛吹銅次としては、このレコードによってポコポコポコポコという強力にリミターをかけた音がミークの特徴であることを知ったことも収穫でした。

 ツマラナイと思っていた『テルスター』のB面が、実は“LOOP使用楽曲の元祖”だったのですね。(エンジニア&ソングライターのミークならでは、です)

 《量の時代》という“幻想”の中では、ワカラナイ・ツマラナイ・キライと最初に感じた曲を(我慢して(笑))聞く、という行為を敢えて選択するという人は少ないでしょうね。しかし私の場合、B面だった“ジャングル・フィーヴァー”を聞いていなければ、このリズムの“LOOP”に気づくことは恐らくなかったと思うのです。

 『レコード盤 ひっくり返せば 裏側に』。

 “B面の効用”、大きいものがあったと感じる昨今ではあります。




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