2011年5月24日12時0分
東京電力福島第一原発から放出されて降った放射性セシウムが、事故後1カ月以上たっても地表から5センチ以内に9割がとどまっていることが広島大などの調査でわかった。15センチまでなら99%以上という。旧ソ連・チェルノブイリ原発事故では、汚染された表層土を60センチ下に埋める方式を実施した。今回の校庭などでの土壌汚染でも「上下入れ替え方式」が有効なことの裏付けになりそうだ。
広島大サステナセンターの田中万也講師(地球化学)らは、郡山市など福島県の4カ所の土壌を4月13日に取り、放射性セシウムなどの濃度が深さでどう変わるか調べた。その結果、郡山市日和田町の2カ所と西白河郡矢吹町では地表から5センチまでに放射性セシウム全体の約97%が、福島市飯坂町では約88%がとどまっていた。いずれも15センチまでに99%以上があった。
セシウムは土壌の粘土と強く結びついて表層にとどまり、深いところにしみこまない性質がある。埋めてしまえば、セシウムはその場を動かず、放射線は地表に届かない。放射性ヨウ素も同様に地表から5センチ以内に75%以上がとどまっていた。京都市で開かれている国際分析科学会議で24日発表する。
文部科学省が同県内で上下入れ替え方式の実験をしたところ、地表の放射線量は入れ替え前の10分の1まで減ったという。
近畿大の山崎秀夫教授(環境解析学)が東京都や群馬県で調べた結果でも、地表から1センチ以内に96%以上がとどまっていた。山崎教授は「表層が汚染された土を別の地域に捨てるのは困難。ほかに有効な方法はないのではないか」と話している。(鍛治信太郎)