科学【主張】宇宙の古川さん 被災地の子供らに希望を2011.6.16 02:46

  • [PR]

[科学]ニュース トピック:主張

  • メッセ
  • 印刷

【主張】
宇宙の古川さん 被災地の子供らに希望を

2011.6.16 02:46

 宇宙飛行士の古川聡さんが、ロシアのソユーズ宇宙船で飛び立ってから1週間が過ぎた。11月中旬までの約5カ月半、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する。

 「宇宙と被災地を結んで、話ができたらいいと思います」。打ち上げ前の記者会見で、古川さんは、こう語った。東日本大震災の被災地の子供たちが夢や希望を語れる機会として、宇宙との交信を実現させてほしい。

 外科医から飛行士に転身した古川さんは、12年の訓練期間を経て初めての宇宙飛行である。医師の宇宙飛行は、日本人では向井千秋さんに続いて2人目だ。

 長期滞在のメリットを生かし、人体への無重力の影響調査など、自らが実験台となって本格的な医学実験に取り組む。その他、将来の火星旅行を想定した健康管理支援システムの検証など、実験テーマは多岐にわたる。

 ISSの居住空間は普段着で生活できるとはいえ、過酷な環境にさらされる。たとえば宇宙放射線による被曝(ひばく)量は1日当たり0・5~1・0ミリシーベルトで、古川さんはISS滞在中に最大で170ミリシーベルトの放射線を浴びるという。リスクを承知のうえで、宇宙飛行という夢を選んだのだ。

 原子力発電所の事故による周辺住民の被曝と、宇宙飛行士のそれを比較するのはもちろん適切ではない。住民は自らの意思とは関係なく、浴びなくてもいい放射線を浴びている。ただ、リスクを冷静に判断することは大切だ。

 原発周辺の住民の中には、放射線への恐怖心で、希望を持てない心理状態に陥っている人もいると思う。古川さんが宇宙で活動している姿は、リスクに正しく向き合い、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになるのではないか。

 大震災から3カ月が過ぎた。原発事故は先行きが不透明で、復興の足取りは重い。国民は全体的に内向きになり、視野が狭まった感が否めない。

 宇宙は視野を広げ、夢や希望を語るには最適の舞台でもある。これまでの日本人飛行士は、宇宙から子供たちと交信する機会が設けられた。今回はさらに多くの子供たちが会話に加われるよう、恒例の首相との交信は見送ったらどうだろうか。

 子供たちが笑顔になれるようなメッセージを、宇宙から発信してもらいたい。

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2011 The Sankei Shimbun & Sankei Digital