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菅首相:被災地視察・ブログ発信、政策意欲衰えず 野党反発

 菅直人首相が退陣表明後、太陽光や風力など自然エネルギーの導入や、東日本大震災からの復旧・復興に積極的に取り組んでいる。13日には首相官邸のブログを通じ、電力会社が自然エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度の導入に向け、関連法案の早期成立を与野党に訴えた。在任中に重点政策の方向性だけでもつけたい首相に野党から「延命策だ」との批判が強まっている。

 「30年前、(風力発電は)採算性がないからだめだ、と行政がわざと潰した。分厚い(政官業の)構造があり、今変えられなかったら10年は動かない」

 首相は12日、首相官邸でサッカー日本代表の岡田武史前監督やソフトバンクの孫正義社長らと会談し、自然エネルギー導入促進を政府の基本方針にする考えを示した。会合では「自然エネルギー推進庁」を新設する構想も披露。ビデオメッセージで参加した音楽家の坂本龍一氏が「『菅降ろし』を国民の大半はあきれて見ている」と首相にエールを送る場面もあった。

 首相は11年度第2次補正予算案の編成に向け、積極的に被災地も訪ねている。11日には津波被害を受けた岩手県釜石市を訪問。魚市場で被災者から「辞めなくていいから、ここに来る時間があるなら早く予算を付けて」と声をかけられると「必ず付けます」と応じ、同市内のボランティアセンターの寄せ書きには「決然と生きる 菅直人」と書き込んだ。

 与党内の「応援団」の存在も大きい。国民新党の亀井静香代表は13日、首相との党首会談後の記者会見で、首相の早期退陣に言及した仙谷由人官房副長官を念頭に「(首相が)震災対策をまっしぐらにやろうとしている時に、部下が『介錯したい』と、刀を振り回している」と批判した。

 たとえ月内に退陣の手続きに入ったとしても、後継の民主党代表を選ぶ代表選は7月上旬以降と見られ、即退陣するわけではない。残余の首相職を全うしようとする首相の胸の内を、周辺の下村健一内閣審議官は簡易ブログの「ツイッター」上で「首相の座の延命より、(政権の掲げる)テーマの延命という考え方」と解説した。

 ただし、政策遂行への意欲をみなぎらせる首相に対し、野党側はいら立ちを募らせている。自民党の石原伸晃幹事長は13日、横浜市内での講演で「(首相は)ちっとも辞める気配がない」と批判。同党の麻生太郎元首相も同じ会合で「ヤメヤメ詐欺みたいな話だ」と皮肉った。【田中成之】

毎日新聞 2011年6月14日 東京朝刊

 

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