下手な文章ですが、何かアドバイスや感想がありましたら、遠慮なく掲示板でこきおろしてください。
むしろご褒美です。はぁはぁ(´д`)
あれから、もう10年以上が経った。
「何で俺はあんな事をしたんだろう」
俺はもう今日この日に死のうと思う。だって俺なんてもう生きてる意味がないじゃないか。きっと今日は死ぬには良い日さ。
飾り気のない六畳一間のアパートで唯一のインテリアの風鈴が風になびいてチリーンと音を鳴らした、夏を感じさせるが今は冬だ。
まぁもうこの世界に季節なんてあってないようものだけど。
☆★☆★☆★
放課後、人の気配が消えた校舎に一人の少年がいた。
彼が目指す先は学園のアイドル京子ちゃんの机である。距離にして数歩の距離がとても遠く感じられた。
もはや脳髄にはあの机の中にある物しか頭に無かった。
几帳面な彼女が教室に使用したリコーダーを忘れるという奇跡、そして偶然にも周りに教室から人がいないこの状況。
普段ならまだ教室に数人残っている筈だが、今日に限って誰一人存在していない。これは正に神が与えてくれた天恵。
神が少年に言っているのだ。彼女が口に含んでぴーひゃらぴーひゃら音を奏でたリコーダーんの先っちょの部分を己の口内で思う存分嬲ってしまえと。
「神よ……」
心の中にあるのは圧倒的な感謝だった。曇り一つ無い青空の様な晴れた表情でリコーダ袋からそれを取り出す。
何と卑猥なフォルムだろうか……
見ようによっては自分の股間と似たようなその存在が彼女の口の中に含まれていたなど、音楽という授業のあり方に疑問を感じざるおえない。
そもそも音楽の教師も「高木君~……もっと声を出して歌わないとねぇ……」とか言いながら身体さわさわしてくるホモ野郎だった。
故にこれからこれを舐めたとしても少年には何の責任も無い、むしろ彼は現代の教育制度の犠牲者なのだ。
彼は既にそのリコーダーを舐めていた。
しかし、彼は此処で終わるようなちんけな変態ではない。一通り味わった後に懐から彼はリコーダを取り出した。
彼以外全員女子の|裁縫クラブ《はーれむ》でTOPクラスの実力を駆使して、完成させた傑作。
さらに彼女の体操服入れから中身を取り出し、これまた彼が作成した代わりの体操服に取り替える。
微妙な汚れ具合まで完璧に再現したこれらの物は彼の体毛やら何やらでできている。
京子ちゃんの身の回りのものはこれで全て僕製だ。取り替えたものは丁寧に保存して家に持ち帰る準備をした。(此処まで僅か十分。驚異的な速度である、尚この時代の十分は現在の価値に換算して百分に相当する。……分かっていると思うがこれは嘘だ。)
体操服をすーはーすはーしながらそろそろ此処を去ろうとしていたその時。
「何してるのっ……」
「……きょうこちゃんっ!?」
何ということだ、僕の鶴の恩返し的な場面が見られるなんて……
ここから逃げる翼が欲しい。
「ふ~~~ん、高木君ってそういう趣味があったんだ~変態?」
「こここれはだね、ちがうんだよ、とにかくちがうんだ、そうこれはドッキリ! 壮大なドッキリなんだよ!」
「……高木君見苦しいよ、もう諦めて認めちゃいなよ」
「いや、これは実際誤解なんだよ、話せば長くなる複雑な事情があるんだ、それはもう長くなるんだ」
「聞いてあげるから話してみなよ」
「あ! 時計を見たらもうとっくに下校時刻12分前じゃないか! 今日は何故か足の回転が遅いからそろそろ教室を出ないと閉門までに校門にたどり着けない可能性が出てきたな~という事で話はまた今度で!」
そういって僕はダッシュで逃げた。しかしこの世界の構造は僕の逃亡を許してくれないようだ、肩を柔らかい手ががしっと捕まえている。
普段ならこんな風に京子ちゃんに肩を捕まれるなんて、光栄至極でございますが、今のこの状況ですとご遠慮願いたい。
もはや僕が今成すべき事は、更なる目撃者が現れないウチに速やかにこの場を離脱し、起こり得るであろう追求を逃れる為の論理的な言い訳を構築することだけだ。
リコーダーを舐めていた複雑な事情を考えるなんて余程の脚本家でも難しいと思うが、人間やってやれないことは無い。
頑張ればリコーダーをペロペロして学校の用具を入れ替えた理由ぐらい考えられるさ。
「許してあげても良いよ……」
「え?」
これは予想外の提案でした。 正直まだ8歳の女の子が自分のリコーダーをペロペロしてる奴を許せるなんて、流石は京子ちゃん。
度量が広い。
「私の奴隷になってくれたら」
「え?」
何でしょうか、バター犬みたいな役目なら歓迎しますが。
奴隷生活の始まり~
「私の家までランドセル持って」
「京子ちゃん……僕の家は逆方向なんだけど……」
「何で私のうちの方向知ってるの?クラス名簿に住所って載ってないと思うけど……」
「…………学級委員としてはクラスメイト全員の所在を常に確認しておかないといけないじゃないですか」
「へぇ~じゃあ美津子ちゃんの家の場所知ってる?」
美津子ちゃん……クラスで一番のブスだ。あんなのをわざわざ尾行するわけが無い。
「………………」
「知らないんだ?」
「いや、ちちがうよたまたまちょっと度忘れしただけで家に帰ってタウンページでも見ればすぐに思い出すよ!タウンページがここに無い事が悔やまれるね」
「とにかく! ランドセル持ってくれなかったら明日皆にばらしちゃうんだからね!」
「そんな……いや僕には何の非も無いから望むところと言いたいけどクラス内に波風を立てるのは学級委員としては回避すべきだね」
「持つの?持たないの?」
「持つよ……」
「はい、持ってね」
京子ちゃんは笑いながら僕にランドセルを差し出してきましたが、体力が壊滅的なまでに不足している眼鏡少年に二つのランドセルを背負わせるなんて……
これは一体どういう運命なのだ。
「……何でこんなに重いの……」
ソレを受け取った瞬間、その重さに驚いた。20キロはあるんじゃないかこのランドセル。一体何を詰めているんだ。男の夢か?
「重り入れてるからかな」
「何で入れてるの」
「鍛えようと思って」
「じゃあ自分で持ちなよ」
「逆らうの?奴隷の癖に……明日ばら」
「素晴らしい心がけですね、感動しました。明日学級会で取り上げてもいいですか?」
いくら変態とはいえ平和な生活は望んでいる。
「変わり身早いね高木君」
「そうでもしないと学級委員なんかやってられないからね」
「それ関係あるの……?」
「当たり前だよ、学級委員たるもの臨機応変に対応しなきゃクラスが荒れるからね、見えない努力は欠かせないよ。毎日クラス内の勢力図や力関係を把握してるんだよ。そうする事でいじめなんかも多少対策がとれるからね」
「へぇ~意外と苦労してるんだね」
「意外でしょ」
ま、そんな事してないけどね。
僕の日課は水槽の亀に餌を出し惜しみしてる事ぐらいだよ。
試しに一回舐めてみたけどあの餌人間の食べるものじゃないね。
「そろそろ私の家だね」
「え? こんな所に家なんかあったけ?」
「もう見えてるよ」
そうですね、僕の記憶では此処には家が無かったんですよ。
宇宙船ならあるけどね。
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二ヶ月ぐらい前の事だ。
僕たちの暮らす町に宇宙船が来たのは。
「我々は宇宙人だ」
別に扇風機の前で発声したようなありがちな宇宙人ボイスでもなく、深く透き通った明瞭な声で彼等は僕らの脳に語りかけた。
「この地球には観光で来た。 観光するオススメスポットは調べてきたので案内とかはいらない。 私達に干渉するな。 私達は干渉する。」
何その自己中心的な考え方と誰もがその時思ったのだろうけど、そんな突込みをしてる状況じゃなかった。
次の日から宇宙船が降り立った場所には世界中の報道陣が詰め掛けた。
そしてその存在は一瞬にして消し去られた。
それ以来、彼等に干渉する人間は殆どいない。いるとしたら自殺志願者か一流の変態ぐらいだろう。
「あの京子ちゃん……家って此処じゃないよね? そもそもここは方向も違うし」
「あのね、高木君。 私が貴方の尾行に気づいてないとでも思った?」
「え?」
「あの時私が入ったのは美津子ちゃんの家だよ」
「え?」
なんて事だ、今すぐ盗聴器とカメラを回収しないと。
「ずっと高木君には目をつけてたんだよ……」
それは性的な意味でだろうか。
「僕たちは両思いだったって事ですか?」
「違うけど」
やっぱりねー人生そんなに甘くない事はおぎゃーと生まれたその日から知っているよ。
「高木君、私達はこの地球で候補者を探してたの」
「候補者……まさか京子ちゃんの旦那さん候補ですか? 謹んでエントリーさせていただきます」
「うん、違うよ。 あと一々ぼけなくて良いから黙って聞いてて」
ぼけたつもりはないんだけど。
「この地球からから飛びぬけて異質で優秀な人間を選んで競い合わせ、最後に残った一人にこの地球の支配者になってもらうの」
……ともだちさんみたいな感じなのかな。
「それでまぁ高木君には私の推薦で出場してもらう訳なの、奴隷だから断っちゃ駄目だよ」
一体彼女が何を言っているのか僕には全くわからない、僕に理解力が足りないのか彼女の説明が足りないのか、
それともさっき吹いた風で彼女のパンツが見えてしまったのがいけないのか。
「僕って優秀ですかね?」
「常識的に考えて普通の子供はどれだけ好きでも女の子の家を尾行した上に留守を狙って盗聴器とカメラを仕掛けた上に下着は盗まないよ」
常識って一体何なのか僕には時々わからなくなります。
しかし僕の人生は一体全体どうしたんでしょう。かなりの急展開です。まさか巷で話題の宇宙人が京子ちゃんだったなんて……
よく考えたらあの騒動の後に転校してきたんですよね。
「カメラを仕掛けている場所も絶妙だったし、特殊な機材がないと発見できないデジタル波の盗聴器を家中に取り付ける、それを30分でやった貴方は間違いなく天才的な変態ね」
褒められてるのか?
「とにかく、君は規格外の変態な事は間違いないよ、そういう候補者もいたほうが面白いし、まぁ頑張ってね」
「……僕に拒否権はないのかな」
「ないよ。明日から参加してもらうから、とりあえず遺書をかいといて」
命の危険があるんですか……
「コレに書いてね。後コレにもサインして」
乙は、甲との契約によりあらゆる損害をこうじたとしても何の保障も要求しない事に同意します~
なんて文面のペーパーを渡された。
「最近発達途上知能生命体保護法がうるさいからね~、きちんと同意を取っとかないと。
こないだも人間が一杯詰め掛けてうざかったから消しちゃったらお父さん刑務所に放り込まれちゃったし」
父親の投獄をそんなにあっさり語れるなんて、宇宙人というのは淡白な性格ですね。
「今頃もう首だけになってるかも」
…………痛そうだ。
☆★☆★☆★
京子ちゃんを宇宙船まで見送った帰りにブスの家から盗聴器とカメラを回収してきた僕はその日起きた出来事に疲れきって、
相変わらず不味い母親のご飯も多少空腹のスパイスに助けられ、何とか胃の中に押し込む事ができた。
そろそろ塩の変わりに砂糖を砂糖の変わりに塩を使う奇妙な民族料理はやめてほしい。
あとコロッケ作るなら芋をふかして欲しい。何でそのままジャガイモを衣につけて揚げるの。
「美味しいお父さん?」「うごぉろろぉぉぉ……うううまいよ……死んでも良いぐらいうまい……げぼぉぉぉ……吐くぐらいうまいなぁぁ……」
父さんはそんな風に言ってたけど、明らかに無理してたよね。
父さんが若くして胃ガンで亡くなったのもこんなの食べ続けたのが原因じゃないかな。
あれからは流石に毒になるようなものはでてこないけど、それでも十分糞まずい。
「どう、美味しい?」
「よくそんな事聞けるね……ずうずうしい」
「褒めらちゃった~~! お父さん私褒められちゃったよ~~」
位牌をぶんぶん振り回すな。
「あっ」
すぽっと位牌が母さんの手から抜けた。すげー勢いで冷蔵庫にどごんっ!当たって砕けた。
どんだけ強肩なんだ。
「あれ~~これ何かな~~~?」
どうやらその位牌から手紙の様な物が出てきた。
結果的には見つかったけどもし父さんからの隠された遺書的なものだとしたら入れるところを間違っていると思うが。
それか、母親が位牌をぶち壊すような人間だと見抜いていたのか。
どうやら父さんには意外と先見の明があったようだ。
ただ、あの飯を食い続けて自分が死ぬとはわからなかったようだけど。
「ゴミね」
母はゴミ箱に放り込んだ。ま、別に良いか。父さんの遺書だし。 大した事書いてないだろ。父さんときたら「いいか、人という字は支えあってできてるんだよ」とか「オーマイイエス! ロマンスの神様~きっと貴方を愛してる~~♪」とか訳の分からないことをいつも呟いている人だった。
「母さん、今日はもう寝るよ……」
「え? セメント入りお風呂入らないの?」
「あの徐々に固まっていく恐怖はもう味わいたくないよ」
そんな使い方してるからセメント財団の人が変な目で見てくるんだよ。
「あれが気持ちいいのに……最後がちがちになったところをばきっって壊して出てくるのがストレス解消にもなるし」
あんた本当に人間なのか?