安倍晋三吠えた!菅政権は「国家の恥、万死に値する」

2011.06.01


菅首相の常軌を逸した言動が原発事故処理を混乱させたと指摘する安倍元首相【拡大】

 菅直人内閣に対する不信任決議案が1日にも提出される。東日本大震災や福島第1原発事故への稚拙極まる対応に、国民世論も愛想を尽かし始めている。国会の大論争となった第1原発1号機への海水注入中断問題を、いち早く指摘した自民党の安倍晋三元首相が、夕刊フジ連載「突破する政治」の特別インタビューに応じた。官邸迷走の驚くべき実態から、菅首相がもたらす日本経済の危機などを一気に語った。

 ――海水注水中断問題の実態を、安倍氏はメルマガで指摘した

 「原発事故直後、官邸が流したのは『菅首相が、海水注入を渋る東京電力を説き伏せて、海水注入を指示した』というストーリーだった。マスコミも『首相の英断』と報じた。しかし、私には全く違う核心情報が複数ルートから届けられた」

 ――いつごろか

 「マスコミが問題を報じる2週間ほど前だ」

 ――結局、官邸のストーリーはウソだった

 「この問題について、政府発表も東電発表もコロコロ変わった。なぜか? 最高権力者の“真実”を隠そうとしたのだろう。当初、官邸側は『12日20時20分から海水注入』としていたが、ウソだった。途中で『19時04分から試験注水開始し、19時25分に停止した』と説明し直したが、これもウソ。現実には、試験注水などはなく、1号機では19時04分から、ずっと原子炉を冷やす海水注入が続けられていた」

 ――官邸で何が?

 「菅首相が『海水注入で再臨界するんじゃないのか。詰めろ!』と怒鳴り散らしていたと聞いている。現実には起こり得ない話だが、菅首相の言動が常軌を逸していて、冷静に科学的分析や判断を下せる状況ではなかったようだ。東電側が当初、注水停止を決めた理由を『首相の了解が得られていない』と説明していた真意はこれだ」

 ――第1原発の吉田昌郎所長が独自の判断で注水を続けていた

 「危急存亡のときに、立派な判断だった。職を賭す覚悟で決断したのだろう。こうしたことは、菅政権では2回目だ。昨年11月、国民に公開すべき沖縄・尖閣沖での中国漁船衝突事件のビデオ映像を、海上保安官がインターネット上に流出させて問題となった。ともに、異常な首相、異常な政権の証明ではないか」

 ――菅首相は、先日のサミットで「1000万戸にソーラーパネル」「自然エネルギー20%」と表明したが、担当の海江田万里経産相にも相談していなかった

 「考えられない話だ。一国のリーダーが国際社会に向けて発言する場合、政策の中身や是非、コスト、国益との兼ね合いなどを、緻密に練り上げていく必要がある。国際公約が実現できない場合、首相の恥ではなく、国家の恥となる。菅首相はどうも、自分の立場を良くするパフォーマンスばかり考えているようだ」

 ――中部電力浜岡原発の停止要請もそうでは

 「海江田氏が、経産省内や中電側と綿密に詰めていた問題を、菅首相が功名心に駆られて、本質を十分理解しないまま発表した。日本全体のエネルギー政策を深く考えた形跡は見えない。わが国には54基の原子炉があるが、現在、19基しか動いていない。菅首相の唐突な発表のため、定期点検中の原子炉の再稼働が難しくなっている。このままでは、質の良い安定的な電力が失われ、日本経済に大きなダメージとなりかねない」

 ――安倍氏は復興増税にも反対している

 「日本は深刻なデフレが続き、景気も悪化している。震災で東日本が傷つき、電力供給にも不安があるいま、とても増税する状況にはない。体力が回復するまで、復興国債で対応すべきだ」

 ――ほかにも、SPEEDI(スピーディ)による放射性物質の拡散 シミュレーション結果の隠蔽疑惑や、子供の放射線量「年間20ミリシーベルト」(平常時同1ミリシーベルト)という高い基準値など、菅政権には批判が噴出している

 「スピーディについて『パニックを恐れた』という解説があるが、理解できない。政府が情報を隠し、国民が不信感を高めているときにデマが流れるとパニックになる。正しい情報を国民に早く伝えることがパニックを防ぐのは歴史の教訓だ。都合の悪い情報を隠し、子供たちの命、健康を危険にさらしたとすれば、万死に値する」

 ――自民党は1日にも内閣不信任案を提出する

 「急流で馬を乗り換えるな、という意見があるが、この馬では間違いなく急流は乗り切れない。菅首相の交代は当然。近くで見ている、われわれには大きな責任がある」

 ――民主党には「菅首相の政権運営はおかしい」と思いながら、「解散総選挙」や「党除籍(除名)」を恐れてか、不信任案賛成に二の足を踏む議員も多い

 「民主党の方々には『何のために国会議員になられたのか』と言いたい。誰に対して責任を負っているのか問い直してほしい。そうすると、答えはおのずから出る」

 

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