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健康診断

2011-05-30 16:53:38 Theme: 所感

健康診断に行ってきました。実は最近、体調がイマイチだったのです。と言いますか、昨夏の忌まわしい記憶が蘇ってきたのです。そうです、右の下腹部に違和感があったのです。すわ、虫垂炎の再発?の可能性もあるので慌てて病院に行った次第です。そう、昨年の難波八阪神社夏祭の直前に患った虫垂炎は時期が時期だけに手術が出来ず、抗生剤で散らしただけだったのでした。先生からは「絶対に再発するよ」と言われていたので、絶対そうやと思っていました。血液検査の結果…シロでした(ホッ)。数値的には問題ないそうです。この夏は西宮やその他重要行事が続きますので、絶対に休めません。安心する意味でも健康診断に行ったのですが、これは良かったです。しかも、肝臓の数値や尿酸値も半年前から改善されていました(とは言ってもまだまだレッドラインですが…)。週に一度休肝日を設けたり(少ないかな?)、ビールを乾杯の一杯だけにしたり(それでも飲むんかい)、地道な努力が実を結んだような気がします(笑)。

 ところで、私達のようなフリーランスの人間は、会社員の皆様のように健康診断を斡旋してくれる訳もなく、自分でその機会を設けなければなりません。若い頃は少々無茶をしても大丈夫だったので全くそんな事を気にも掛けませんでしたが、さすがに30代後半ともなるとそうもいかない。そして、私達のような人間は代わりが利きません。仮に代わりが利くような存在であれば…それはもう私は必要の無い人間と言う事になります。恐ろしい事です。そして私達は仕事をしなければ一円にもなりません。仕事を終え、初めてギャラが発生するのですから。病気ももちろん怪我や不慮の事故、はたまた交通機関の障害で仕事に行けなくてももちろん0円。結構シビアなのですよ。そして仕事をこなしたところで、出来が悪ければ次はありません。毎回毎回結果を出さなければなりません。そりゃ金銭が発生するのですから。当り前と言えば当たり前ですが。

 雅楽をプロの職業にする事の厳しさは、これはその立場になった人間しか分かりません。ま、どの分野でも厳しいのは同じでしょうが、もちろん雅楽も同じく厳しいのです。こうして気楽な事ばかり書いていますが、やっぱりやる時はやらなきゃいけないのですよ。

 特に厳しいのが舞の現場。笛、であればまあ(ホントはいけない事ですが)譜面を見て吹くなどしてごまかせたり出来ますが、舞はそうはいかない。普段舞い慣れている舞なら良いですが新たに覚えなきゃならない舞など大変です。焦ってしまうと余計に頭に入らない、そして本番の期日が着々と近づいてくる…もう阿鼻叫喚の世界です。

 今回の「蘭陵王」壱具もそうなる恐れがありました。胃が痛くなる毎日を迎えるのか…?と思っていたのですが、思ったよりスッと頭に入りました。もう手順は完璧です。間違いようがないと思います。前にも書きましたが、あとはその舞を舞いきる体力が問題なのです(笑)。奇しくも、今回の健康診断にて体調が問題ない事が明らかになりました。これから約40日、足腰を鍛えたいと思います。えっ、遅い?(笑)

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漆塗加工(2)

2011-05-29 11:32:42 Theme: 雅楽関係

 昨日の続きです。

 まずは工程、価格その他。(税抜き価格)

・単管筒 本漆呂色仕上 15000円  輪島塗呂色仕上 25000

・連管筒 本漆呂色仕上 55000円  輪島塗呂色仕上 80000

・篳篥扇箱 本漆呂色仕上 15000円  輪島塗呂色仕上 25000

 呂色、とは艶出し仕上げとお考えください。輪島塗とは木地全体に漆で布を張り、輪島地の粉を使って下地を施してから塗り重ねる工法で、衝撃から木地を守る頑丈な塗りです。本漆塗よりも重厚な感じがします。実際、重量も若干重いような感じがします。ついでに篳篥の扇箱の価格も出しました。

職人についてご紹介すると、彼は高校の雅楽クラブの後輩。篳篥も吹くし舞も舞います。雅楽の腕もそこそこで、演奏活動も行っています。過去には舞楽面「蘭陵王」の塗りも経験しています。世間には「~塗」という言葉がありますよね。良く聞けば、その呼称は産地を示すそうです。彼は輪島在住ですので、正真正銘の「輪島塗」と言えます。漆塗り加工は1~2か月掛かります。仮に自分の手元の管筒を塗りに出してしまうと自分が使う管筒が無くなってしまうので、持ち運びが不便になります。そこで、その間は代車ならぬ代管筒をお貸しできるように手配しています。ただ、あまり注文をいっぺんには取れないようなので、先着順の順番待ちとさせて頂きます。既に注文を頂いていますので、一番早い方で二か月後からの作業になります。

実はこのブログでも書きましたが、三ヶ月前よりこちらの連管筒を使用しています。前まで連管筒は下部が割れていたのであまり人には見せなかったのですが、今は自慢するかの如く見せています(笑)。先生にも見て頂きましたが、評判が良かったです。で、先生に言われたのは「何で絵を入れないの?」…蒔絵かー…。彼に相談したところ、もちろん蒔絵にも対応してくれるそうです。輪島の漆職人は木地師・塗師・蒔絵師・沈金師・螺鈿師…と分業しているそうで、かれは蒔絵は専門では無いので懇意の蒔絵師に外注するそうです。もちろん予算によるのですが、出来るだけコストを抑えて良いものを仕上げてくれると約束して頂きました。

まあ、文章で書いたり口で言ったりしても分かり辛い分野の事ですので、今後は私の行く現場で実際に私の持っている管筒を見て頂こうと考えています。つまりは私が広告塔になろう、と(笑)。もちろん本番の舞台にも持って出ます。舞台道具としても価値があるのです。

漆の良いところは、修理が出来るという事です。割れても、元通りになります。化学塗料であればそうはいきません。職人の彼は言います。漆器は使ってナンボ、だと。私達が考えている以上に強いそうで、仮に割れたらまた直してやる、と心強い言葉を頂きました。雅楽、は外面の美というのも重要な要素です。内面、つまりは稽古も人間形成も大事ですが美しい楽器・美しい管筒を持つ、と言う事が雅楽上達に対して必ずや良い影響を与えると思います。やはり高価なものは大事に使うでしょうしね。


問合せ先はgagaku_iwasa@yahoo.co.jp まで。

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漆塗加工(1)

2011-05-28 23:59:59 Theme: 雅楽関係

 今日・明日は皆様にお知らせです。営業文章が嫌いな方はスルーして下さい。

 私は生徒さんから、笛の注文をよく頼まれます。一年に一回、贔屓の笛師の方にまとめて注文し、一年に一回笛を買う事が出来る機会を作っています。もちろん、生徒さんが自分で楽器屋などで購入してくる場合もあります。この世界は狭いので、作者や値段などは見れば一発で分かります。仮に仲介の人が入った場合など、いくらマージンを乗せられているかまで分かります。

 …今日はこんな話では無い(笑)。本題はここから。笛は竹製で、しかも高価です。プラ管の30本分の値段に相当します。なのでプラ管の時のように布の袋と言う訳にはいかず、管筒を買う必要があります。この管筒も銀細工が付いていたりと結構手間がかかっています。筒、というには安くない金額がついています。つまりは、笛が高価なのに加えてそこそこの値段のする管筒も購入しなければなりません。これは結構辛いのです。

 今、私が紹介している業者の管筒の値段です(税抜き)。

・単管筒(龍笛一本のみの筒)桜材15000円 カシュー塗17000円 漆塗22000

・連管筒(龍笛×高麗笛の筒)桜材38000円 カシュー塗45000円 漆塗150000

 結構するでしょ。ここでまず問題は、単管筒にするか連管筒にするか?という選択です。高麗笛は必要が無い、と言ったらそれまで。でも雅楽の笛の稽古、という場面においてはやはり高麗笛は避けて通れません。高麗笛ももちろんケースが必要ですから、ちょっと無理して連管を買う方が結局は得なのです。単管筒は、連管筒を買った後は殆ど使いませんので。いちいち入れ替える、という人もいるでしょうが、私は一度もありません。手元の単管筒は全く使用していません。で、連管筒を購入する、となるとまず漆塗には手が出ません。笛と同じ程の値段なのですから。で、桜材か、ちょっと頑張ってカシュー(合成漆)塗に落ち着く訳です。でも、お金に余裕があればやはり黒漆塗の連管筒が欲しい!というのが、笛吹き共通の願いでしょう。

 一度買ってしまった管筒は、やはり壊れるまで使うでしょう。仮にお金が溜まって漆塗を買ったとしても、それまで使っていた管筒がもったいなく思いますよね。そこで考えました。今使っている管筒をリニューアルすればどうか?と。具体的には、桜材の管筒に漆を塗ってしまうのです。でも素人が漆を扱うのは多分の無理があります。まずかぶれてどうしょうもないと思います。普通の塗料を塗るのとは訳が違うのです。

 ここで、私の後輩の漆職人が登場します。以下の金額で漆塗加工を行ってくれるそうです。(税抜き価格)

・単管筒 本漆呂色仕上 15000円  輪島塗呂色仕上 25000

・連管筒 本漆呂色仕上 55000円  輪島塗呂色仕上 80000

 工法などの詳細は明日の記事で。管筒が割れている、とお悩みの方は輪島塗をお勧めします。まず割れを完璧に直して塗装するのでまず分かりません。私も下部が割れてボロボロでしたが、全く分からなくなりました。修理を考えている方にもお勧めですよ。

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近況報告

2011-05-27 17:24:07 Theme: 所感

 またも一週間、ブログの更新が滞ってしまいました。もう仕方がないのです。まともにパソコンの前に座る時間が取れないのですから…。昨年10月のブログ再開以降、ブログはパソコンで必ず書くと決めています。携帯では短文でツイッターでの投稿。やはりブログとは一線を画さなくては…と感じたからです。毎回1600字を書いている訳ですが、初めからテーマを決めて書き出す事は稀です。何となく、パソコンに向き合って手が動くのを遠目で見ている…と言う感じです。ともかく、この時間が取れないのは致命的です。なるべく取ろうとは思っているのですが…。

 最近の仕事としては、11月に富山県城端で開催する公演のチラシを入稿しました。サブタイトルは、分かりやすく「城端で雅楽を聴く会」としました。北陸地方に在住の皆様、是非にお越しくださいませ。

 久しぶりとなりましたが、神葬祭での奏楽に行ってきました。葬祭での奏楽は久しぶりでしたが、不思議なもので身体が覚えていました。神職の方が良く知っている方で、まあ身内のような人です。なのでとてもリラックスして吹けました。葬祭でリラックスとは不謹慎ですが…。私達雅楽の演奏者は雅楽を吹いてナンボの仕事です。やはり粛々と雅楽の演奏に臨まなければなりません。それが例えとんでもなく長い玉串奉奠における演奏であれ…、ま私は先日の「五常楽破」がありましたから、全く疲れはありませんでした。…ただしこれは笛の話。初日(通夜)は鳳笙でしたので、これは大変でした。やっぱり鳳笙も吹かないとなー、と反省しました。

 舞を習ってきました。「蘭陵王」です。西宮で壱具を舞うのは既報の通りですが、出手だけではなく入手も壱具舞う事にしました。これは先生の「せっかくなんだから入手も全部舞いなさいよ」という鶴の一声で決まりました。先生も数年前に「蘭陵王」壱具を舞われましたが、その時の入手はカット版でした。今回、舞譜から舞を起こして下さってきっちりご指導くださいました。特段変った手も無く、言ってみれば出手の焼き直しなんですが…。手順は完璧に覚えました。後はそれを舞いきる体力の問題です。そちらの方が重要でしょうが…。

 久しぶり(多いなー)に得意先回りをしました。東京の武蔵野楽器と天理のたなかや、です。武蔵野楽器はレイアウトが一新されていて驚きました。以前より広くなった感じがしました。たなかや、は社長さんと一時間近く話し込みました。たなかや、には西宮のチラシを置いてきました。天理在住で興味のある方はまた見て下さい。両店、に新商品を納品しました。遊び感覚で作った楽譜なんですが、思ったより好評なので売り出す事にしました。こちらはお店に遊びに行った時に見て下さい。

 まだまだありますが、とりあえずこの辺りにしておきます。これから夏に掛けて、益々忙しくなるのでしょう。まずは体調管理をしっかりして、山場を乗り越えるように頑張ります。事務仕事もあるしお稽古もあるし、もちろん自分の稽古もしなければなりません。忙しいのは良い事、と開き直っていきたいですね。

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五常楽破

2011-05-19 23:59:59 Theme: 雅楽演奏会レポート

 遅くなりましたが、18日(水)に行われました雅楽ライブ『五常楽壱具』に御来場下された皆様、本当にありがとうございました。これでこの三人の演奏は四回目かな?なかなかスリリングな演奏でした(笑)

 こうして自主公演的な演奏会を繰り返しているのは、もちろん少しでも多く雅楽を見る機会を増やすことに狙いがあるのですが、それよりも私達演奏者の研鑽の機会を増やす、という側面の方が大きいのかも知れません。私達のような演奏家は、演奏家とは名ばかりで日々の雑用に追われてなかなか稽古する機会が無いのが実情です。言い訳をしますと、仮に演奏を依頼されたとします。その演奏内容は、だいたいいつも似通った演目です。それこそ、25年前から繰り返しているルーティーンのようなもの。確かに稽古して状態を高めて現場に向かう…のが本当なのでしょうが、なかなかそうはならない。下準備したところで、あまり演奏の出来が変わらないからです。これは私達が怠けている、という話ではありません。あまりに稽古しすぎて、もう伸びしろが無いのです。「越殿楽」「陪臚」で稽古出来ることはもうし尽くした、と言ってもいいです。であるからして、次の課題と言うのは、もっと他の曲を吹いて違う稽古をしなければいけない、と言う事なのです。でも、なかなかその機会が無い。個人練習、でならいくらでも稽古できます。でもそれは所詮稽古でしか無い。ピッチャーがブルペンでいくら160キロの球を投げても、マウンドで全くストライクが入らないとか、直球が棒玉で全く通用しない、というのと同じです。つまりは、如何に合奏稽古を積むか、が肝要でありそしてそれが本番であれば尚の事良いのであります。しかし、そんな演奏依頼はまずありません。まず需要が無い。経費や集客を考えた時、まず儲けは考えられないからです。なので自主公演という手段しかありえないのです。

 自主公演、というのはある意味趣味に近い部分があります。誰からも指示されないので演奏者自身が演奏曲や構成を考えることが出来ます。そしてそれはこの瞬間、この公演は興行としては成り立たないこととを意味します。「演奏者が演奏したいもの」=「お客様が求めるもの」という図式は、どこの世界でも成り立ちません。これはメジャーデビューしたバンドマンの友人も言っていました。事務所は大衆に受ける曲を書け、という。でも俺はこんな音楽をしたくない…、彼はメジャーを諦め再びインディーズに戻り、自分の音楽を書く事を選びました。どちらが幸せか、なんて誰にも分かりません。ただ、かれが生き生きしている事は事実です。

 雅楽、は間違ってもメジャーにはなりません。特に、明治撰定譜に固執する私などはその極致です。でも私は誰が何と言おうとその生き方を変えません。「雅楽は面白くない」とか言う人には雅楽しか出すことが出来ない不思議な世界観を、「俺は雅楽を全て知っている!」と豪語する人にはその人が絶対に知らない世界観を示すことが、稽古を続ける私にしか出来ない仕事だと信じて疑いません。「五常楽破」を吹いてみなさいよ。今まで私が全く知らない世界でしたよ。その世界、はお客様との緊張感の中でしか作れないのですよ。

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本番当日

2011-05-18 16:54:14 Theme: 岩佐堅志演奏予定

 
雅楽徒然草
今日は私の実の兄の誕生日です。どうでも良い話ですが…。

 それよりも!今日はいよいよ本番です。朝からずっと準備をしております。笛を吹く方は昨日しっかりと最終調整をしましたので、後はリハーサルでしっかりと笛に息を通し、本番に臨みます。最近、笛の調子が良いのでコンスタントに実力を出せるようになってきました。逆に言えば、飛びきり上手い笛は吹けない、という事でありますが…(笑)。まあ、自分の実力は自分が一番分かっておりますので。無理はしません。その代り、80点の実力でも十分鑑賞に堪えられるだけの稽古はしてきました。十回の本番で十回とも成功する、それが演奏家としてあるべき姿でしょうから。色々と今回試したい吹き方もあります。別に私はアーティストではありません。間違っても雅楽師ではありません。普通のイチ雅楽演奏家です。ただ、少し普通と違うのは、その笛を吹く対象が神前では無く仏前ではなくお客様、という点です。お客様は人間ですので、良い笛を吹けば喜んで下さいますし、逆に悪ければ次の来場はありません。まあ私の場合は回によっての出来不出来というのがあまりありませんので、仮に私の笛が悪い、と思われたならば、それは純粋に私の力量不足です。決して雅楽のせいではありません。事実、今回も素晴らしい演目ばかり選んだのでありますから。

今日は楽譜のチェックとレジュメを作成しました。今日演奏する全曲を何とか暗譜!で臨みたかったのですが「五常楽破」が覚えられない…(汗)。今日は申し訳ないですが、譜面を見させて頂きます。7月には完璧に覚えますのでご容赦を…。ただ、今日本番用の楽譜を作成していまして新たな発見がありました。ちょっと嬉しくなりました。この発見は、今日の本番のMCで話します。お楽しみに…。

 今日配布予定のレジュメもたった今完成しました。もっと早く作っとけ!という話ですが、あまり早く作りますとネタを忘れるのですよ(笑)。なので最近は演奏会当日に作成し、何時間前かに調べた知識をMCにて話すようにしています。朗詠、というのはいつも歌っていますが歌っている時と言うのはあまり意味を考えずに歌うものなのですよ。それが漢詩の読み下し文にすると、とても風情があって美しいものに変化するのです。「ゴヤマサニアケナントス」と書いても雰囲気が出ませんよね。これが「五更将に明けなんとす」と書くと全く違いますよね。(※五更(ごこう)とは一夜を五等分した最後の夜を指す。現在で言うと午前3時から午前5時ぐらいにあたる。歌う際には「ゴヤ」と発音する。)朗詠の楽しみ、というのはこのようなところにあるのでしょう。

 昨年来続けているこの雅楽を気軽に楽しむ会、は今回で最後にしたいと思います。ちょっとマンネリ感も否めないからです。ですが、これっきりで終わるのでは無くまた違う形での雅楽を楽しむ会、を企画したいと考えています。その際には、またこの場にて発表したいと思います。ともかく、私の兄の誕生日と言う御縁のある日に行うこの雅楽演奏会(もちろん兄は来ませんが)、皆様に楽しんで頂ければと思います。ご期待ください!

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最終目標

2011-05-17 17:08:18 Theme: 雅楽関係

 今から三十年以上も前の話です。私の先輩と、私の先生と、一緒にお酒を飲む機会があったそうです。今から三十年以上も前の話ですから、お互いさぞ若かったのでしょう。若い、とは言え先生にはお立場があります。もちろんそれを鑑みて酒を飲んでいたのでしょうが、先輩も当時は若い人間ですので、すっかり酔ってしまって、ついつい冗談交じりでこんな事を聞いたそうです。

「先生は笛お上手ですね。それだけ吹けたら、さぞ雅楽が楽しいでしょうね」

 その先輩は篳篥吹きです。直接的な付き合いは少なかったのでしょう。冗談のつもりで言ったところ、目の前には真っ赤な顔をして怒る先生の姿が。

「君ね、失礼なこと言うなよ。これで終わり、と思ったらこの世界は終わりだよ。一生勉強なんだ。いつも、下手な笛をどうやったら上手く出来るか、悩んでるんだよ。そんなこと、君に言われる筋合いは無いよ」

 もちろん、私の先輩はこの一言で酔いが一気に醒めたのは言うまでもありません。ですが、この一言は胸に響いたそうです。何十年も経って、私に懐古話をして下さいました。それは先輩が私にも「雅楽は一生勉強なんだぞ」と言う事を伝えるために、敢えてこの話題をされたのだと思います。

 月日は流れ、畏れ多くも私は先生とお近づきになる事が出来、色々と親しく笛を指導下さるようになりました。そして、ついこの話を思い出し、思い切って同じような事を聞いてみようと思ったのです。

「先生、やっぱり先生はずっと雅楽をお好きなのでしょうか?」

 …今考えれば、とんでもない質問ですね。五十年以上この道で頑張ってこられた方に聞く質問ではありません。一瞬先生の表情が変わりました。ヤバイ!と思ったら、意外にもこんなお返事でした。

「そりゃ、嫌いに決まってるだろ。仕事なんだから。仕事ってのはね、楽しかったらいけないんだよ。努力して、苦労して、辛い思いをして。そしてお金をもらうんだからさ。仕事ってそんなもんだよ」

 この言葉を聞いて、脳天を打たれたような気がしました。そうか、仕事か。そうだよな、雅楽は遊びじゃないんだ、仕事なんだ。先生はその雅楽と五十年以上向き合ってきて、本当に苦労されたんだな、と思うと心に沁みてきました。そう考えると、自分の雅楽って何なんだろう?と。タダの真似事に過ぎないのでは?「雅楽で生きていく」とか言ってる自分が恥ずかしい。人を雅楽で感動させる?美意識?何を思いあがっているんだ?と。自分はたまたま雅楽をさせて頂いているのであって、決して自分の力でここまで来たわけじゃない。目の前の先生はもちろん仲間・生徒さん、様々な方の力があって今の自分があるのだ、という当たり前すぎて思いつかなかった現実をそこで知りました。で、先生のお返事にはまだ続きがあります。

「こうやって、仕事じゃ無い雅楽をやってると、本当に雅楽は楽しいんだな、って思う。雅楽、はやっぱり見るもんじゃないな。自分でやるもんだな。こんなに雅楽が楽しいなんて、今まで知らなかったよ。この歳になって気づいたよ」

 私はその時、本当に良い先生に出会ったなと心から思いました。

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大同小異

2011-05-16 18:21:55 Theme: 雅楽関係

 私は現在大阪に二つ、神戸に一つ、東京に二つ、計五か所の笛教室を持っております。その他、金沢・城端・小矢部・岡山の雅楽団体様の指導をさせて頂いております。団体への指導は、その団体に属している会員の皆様の指導となりますので、私の指導を受けたければまずはその団体に属して頂く必要があります。全て、敷居は全く高くない団体ですのでまず断られる事はないと思います。それ以外はほぼカルチャースクールになります。こちらも入学金を払いさえすれば誰でも受講する事が出来ます。その他個人レッスンも承っています。こちらも連絡して頂ければスケジュール調整をして、予定が合えばまずお稽古させて頂いております。こちらから断る、ということはまずあり得ないです。

 前にとある方と「自分から習いに来ていない、義務で習いに来る生徒さんは実に指導しにくい」という話をしていました。私の現場では生徒全員自腹を切っていますので、まずこのようなことはあり得ません。天理教教会・神社・寺などでその母体が出資をして指導者を呼んでくるケースや、学校関係で単位を取る為にのみ出席する講義のようなケース、です。実はこの方、雅楽の世界では名前を知らない人がいないほどビックネームのお方です。私も尊敬するお方なのですが、やはり有名なのでさまざまなお仕事オファーがあるみたいで、中にはこう言う現場もあるそうです。最初に話を聞いた時には、ちょっと考えられませんでした。ですが、良く考えてみれば「あり得る」と思いました。大体が、この出資する当人というのは雅楽をしません。若手に雅楽をさせている、のです。その際、やはりネームバリューが欲しいのでしょう。安く、どこの馬の骨のものと分からない指導者には来て欲しく無いでしょうし、まず「肩書」が大事なのですね。結果、雅楽なんてどーでも良い生徒と、素晴らしい実力のある先生がどーして教えたら良いか分からず右往左往してしまう、という恐ろしい構図の教室が誕生します。これは悲劇です。

 雅楽はどうしても宗教音楽です。儀礼において不可欠で、その為にそれを習得する必要がある方がおられます。この方たちにとって、雅楽の稽古はある意味宗教的な修行の一環なのでしょう。そこには技術云々よりも精神的なものが求められます。これはこれで素晴らしい事でしょうが、たまにそれが変な方向に曲がってしまう事があります。これは厄介です。同じ雅楽、という名前のものですが、私が稽古しているものとは全く変質しています。私の考える雅楽の方が正しい、という唯物的な話をしている訳ではありませんが、どうも違うなーと感じる事も多々あるのです。例えば「これが雅楽だ!」と若者相手に絶対的に雅楽を指導する大先生。これ、どこの会にも一人ぐらいおられるのでは無いでしょうか?稽古を重ねた人は、こんなセリフは絶対に出てきません。雅楽は稽古すればするほど分からなくなるものです。「雅楽には絶対も無いし、また間違いも無い」とはよく言ったものです。捉えられないもの、が雅楽であるように思います。「これが雅楽だ!」というのはあくまでその人の主観的な見方によるものであって、決して客観的ではありません。物事は俯瞰して見なければ、時として全く違う物に見える事に気付かなければなりません。

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歌物中心

2011-05-15 12:23:31 Theme: 古代歌謡

 月に二回、難波で合奏会を開催しています。その内一回は合奏会前に絃の教室を開催し、もう一回は古代歌謡の教室を開催しています。この三月からこの体制に移行しました。古代歌謡教室はこの三月から開催し、昨日三回目の稽古でした。私自身、この一年で歌物を歌う事が増えました。これは積極的に演奏会の演目に取り入れているから、であります。ざっと挙げてみると催馬楽で「更衣」「伊勢海」「安名尊」朗詠「嘉辰」「春過」「紅葉」「池冷」神楽歌「其駒」など。こうして歌物に触れる事は、雅楽における色んな分野に非常に良い影響を与えているような感じがします。

 先日唱歌についてこのブログで色々書きましたが、唱歌も歌物も「ウタ」には変わりありません。そして歌物を歌っていると、それは唱歌と同じである部分に多く気づくのです。

 例えば「由(ユル)」というのがあります。三回であったり二回であったり。催馬楽においては三回のを「入節」、二回を「容由」と呼びます。この際、上手く歌うコツは下の音を重く、上の音を軽く歌う事。下の音を響かせると上に綺麗に音が抜けてくれるのです。そういう歌い方を稽古していると、例えば笛の唱歌の際にも応用出来るのです。笛を吹く際、ロングトーンの稽古は同じ音量で長く続けるのが目的ですが実際に曲を吹く際には、全ての音が同じ音量であればそれは聞けたものではありません。やはり高い音は聞こえ過ぎる為に少し音量を下げた方が良いし、低い音は聞こえにくいので音量を上げた方が良い。それが旋律によって様々なパターンがありますので、その反復練習が必要となります。もちろん、音量のみならず音程も正確さが求められますが私はそれほど重要では無いと考えます。音色>音程、という図式ですね。音色で音程を作る、という感覚ですね。その微妙な感覚を身に付けるには唱歌しかありませんし、その前に歌物を稽古するのは上達へ最も早く近づける方法です。

 例えば、良く言われるのが宮内庁楽師の楽生時代の稽古は歌が中心であって、三年は楽器を持たせてもらえない、というもの。この際歌、というのは唱歌もそうでしょうが歌物、特に神楽歌がメインになるのでしょう。宮内庁楽部は御神楽が唯一出来る団体です。御神楽の為に宮内庁楽部は存在する、と言っても言い過ぎでは無いのでしょう。それだけ、先生方は神楽歌を大事にされています。そうなれば、自然に唱歌も上達するのは当然です。我々民間人は御神楽をやりませんので、どうしても唱歌ばかりを取り上げてしまいます。歌物を上演する機会が多くなれば、皆も歌物の稽古に励むでしょう。楽師と我々の歴然たる差は、どうもここにあるのでは?と思います。

 雅楽は器楽、と捉えられがちですが管絃などほんの一分野に過ぎません。雅楽=管絃、という定義はあくまで狭義でしかありません。もっと広大な、裾野の広い音楽です。舞もありますから音楽、というのも違うと思います。芸能?芸術?当てはまる言葉も思いつかない、そんな未知数のものです。舞にしろ絃にしろ管にしろ、根底にあるのは「歌」です。雅楽、という分野を語る時、歌と言う概念無しでは全く取りつく島も無い、ということなのでしょう。

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北陸公演

2011-05-14 12:36:43 Theme: 岩佐堅志演奏予定

 一週間空きました。この一週間はもうホントに忙しかったです。文章を書く暇がありませんでした。申し訳無い。今は大阪です。昼からの古代歌謡教室に備え、現在資料なんぞを作成しております。事務仕事が溜まりに溜まっています。肩コリが一気に来そうです。

 今年11月、金沢での公演を企画していました。が、予定していた会場がタッチの差で別団体に取られてしまって企画は頓挫してしまいました。メンバーのスケジュールはほぼ完璧に抑えられていたのに…、なかなか諦められませんでした。で、別会場で開催する事を模索し、水面下で動いていました。

 先週末は北陸でのお稽古でした。三団体の指導をさせて頂いておりますが、その内の一つである雅城会の稽古中にそんな話をさせて頂きましたところ、では雅城会の皆様と演奏会をするのはどうか?というお話が上がってきました。雅城会のお稽古はだいたい金曜・土曜の二日間行います。金曜は夜、土曜は午前午後の二部練習です。で、土曜日の稽古の際にいつもお昼を食べに行く店があり、その横に立派なホールがあります。「じょうはな座 」というホールでまだ出来て5年しか経っていない新しくて立派なホールです。ここで雅楽の演奏会が出来れば…とは前から話していましたが、今回改めて企画を練り直しました。先日、雅城会の皆さまも話し合って頂いたようで基本的に進めましょう、という話になりました。こちらもメンバーのスケジュールは押さえてある(一度バラしましたが、再召集を掛けました)ので恐らく公演は行う運びです。北陸方面にお住まいの方、ようやく北陸での公演が開催出来ます。城端は結構山の中にありますが、金沢からも高岡からも車で一時間程度の距離です。駐車場も完備していますので、移動には問題ないと思います。

 今回の城端での雅楽公演に関しては、初心者向けの演目を組みます。所謂「鉄板」ですね。雅城会の皆様には最初と最後に出演をお願いする予定です。博雅会としては、管絃は平調で「越殿楽残楽三返」と「陪臚」。催馬楽で「更衣」あたりを。舞楽は西宮で演奏する「蘭陵王」壱具を持っていきます。西宮と同じでは面白く無いので、キャストを代えます。私は管絃で絃(琵琶)に廻って、舞楽を笛にしようか?と考えています。その配役は、あの彼の役でした。そう、今回は舞人を彼に譲ろうと考えています。彼にとっても「蘭陵王」壱具は初めてでしょう。頑張って稽古して下さい。

 今城端はアニメの聖地、として有名です。イベントには全国からファンが集まり、異様な雰囲気となります。次は雅楽だ!と意気込んでいます。今回、演奏会は小学生を無料招待にしたいと考えます。城端には雅城会という立派な雅楽団体があります。小学生には是非興味を持って頂いて、雅城会の次世代を担って頂きたい。…まあそこまで言いませんが、せっかくの立派なホールですので、是非本物の雅楽を見て興味を持ってもらえれば、それだけで十分です。まだまだ詰めることだらけですが、行動を起こすのみ、です。全国各地、呼ばれる所があればどこでも公演したいですね。それは私達にしか出来ない事でしょうし。

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