中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 北陸中日新聞から > 北陸発 > 記事

ここから本文

【北陸発】

「えびす」営業再開断念 焼き肉食中毒 全従業員に解雇通告

2011年6月10日

解雇が通告され無人となり、郵便物も放置されたままのフーズ・フォーラス本社=9日午後、金沢市入江で

写真

 焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で、運営会社フーズ・フォーラス(金沢市)が、約六十人の全従業員に解雇を通告し、営業再開を断念したことが分かった。東京商工リサーチ金沢支店などによると営業できない状況が続いて資金繰りに窮したとみられ、フーズ社は弁護士に今後の対応を一任したという。

 フーズ社の元幹部によると、同社の勘坂康弘社長が八日夜、金沢市内の会議施設に従業員約五十人を集め、「(営業再開について)行政の同意が得られない。資金繰りが厳しくなっている。再建は難しい」などと説明。その場で、全従業員に解雇を言い渡したという。

 元幹部によると、従業員は九十人ほどいたが、このうち約三十人が事件発覚後に自主退職したとされる。

 被害者への補償などについて同社側は五月、治療費の全額負担などを明らかにし、死亡した被害者の遺族への賠償も検討したという。解雇通告の場でも勘坂社長は「(補償などは)やりたい」との内容を説明したという。

 東京商工リサーチ金沢支店によると、賠償額などを含めた負債総額は数億円規模に膨らむ可能性がある。

 五月末時点の患者数は約百七十人に上り、うち四人が死亡。富山、福井両県と横浜市が四店を営業禁止にしたほか、石川県も小松店を営業停止処分。

 フーズ社は営業禁止店以外の系列十六店舗の営業を自粛してきたが、五月下旬に金沢市などに営業再開を打診。同市は自粛継続を要請し、他自治体も難色を示したとされる。

「しっかり補償を」被害者家族

 フーズ・フォーラスの営業再開断念に、十代の息子が約二週間入院した富山県砺波市の女性は「まだ重症で入院している人が大勢いる。倒産しても、残ったお金でしっかり補償してもらわなければ」と厳しい表情で語った。

 女性によると、息子は四月二十三日に砺波店で食事し、四日後に入院。「『痛い、痛い』とすごく苦しんでいた。普通ではない状態だった」と振り返る。

 五月中旬ごろフーズ社から補償についての書類が届き、食事の際のレシートなどを添付して返送するよう求められた。が、まだ返送できないでいる。

 退院後も経過観察が必要で、近く三回目の通院も決まっている。「補償すると言われても、まだ検査が続いていて、治療費が決まらない。その後の検査費も補償されるのか、よく分からない」と不信がよぎる。

 女性は「倒産すれば、補償が少しで済むなんて思ってもらったら困る」と訴えた。

 

この記事を印刷する

PR情報

広告
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ