5月31日、WHOの外部組織であるIARC(国際がん研究機関)が、携帯電話が発する電磁波について「脳腫瘍にかかる危険性が限定的だが認められる」と発表した。危険性の分類は、5段階あるレベルの3番目となる「グループ2B」。WHOが携帯電磁波による発がんの危険性を指摘するのは今回が初めてだ。
WHOはこれまで、高周波については非常に強く浴びた場合に生じる加熱作用での悪影響は認めてきたが、携帯電話レベルの電波での人体への影響は認めてこなかった。それが一転、発がんの危険性を指摘したのはなぜなのか。NPO法人・市民科学研究室の上田昌文代表はこう語る。
「ここ数年、世界各国の主導的立場にある科学者らの報告も含め、携帯電磁波の曝露によって、細胞レベル、動物個体レベルでのさまざまな異変や、脳腫瘍との関連を示唆するデータが多数報告されました。WHOとしては、少なくとも疫学のデータについては却下するわけにはいかないレベルに達したと認めざるをえなかったのでしょう」
『携帯電磁波の人体影響』(集英社新書)の著者で、ジャーナリストの矢部武氏はその実験のひとつについてこう説明する。
「スウェーデンのレナート・ハーデル博士が2008年9月に発表した調査結果は、電磁波研究の専門家の間で非常に注目されました。それは、10年以上の携帯使用者は、神経こう腫(悪性脳腫瘍)を発症するリスクが2.7倍、聴神経腫瘍(耳のがん)のリスクが2.9倍になるというもの。この調査結果は、2008年9月に米国議会下院で開かれた携帯電話の電磁波による健康リスクについての初の公聴会でも紹介され、大きな反響を呼びました」
実は日本でも昨年、ある論文が発表されている。
「東京女子医科大学の山口直人教授をリーダーとする研究グループが、『1日20分以上の携帯電話の使用によって、聴神経腫瘍のリスクが有意に増加する』と昨年11月に発表しました。内容は、聴神経腫瘍が左右どちらの耳で発症したか、そして携帯電話を左右どちらの耳で多く使用していたかを調べることで、電磁波との因果関係を調べるというものでした。結果として、携帯電話を多く当てていた側の耳に発症が多く見られたのです」(前出・上田氏)
つまり、携帯電磁波には発がんリスクがあるという結果が出たのだが、山口教授はこの研究結果を検討会の場で一切発表しなかった。
「総務省から研究資金をもらって研究したものをなぜ発表しないのか。非常に不可解ですよね」(上田氏)
携帯電話の普及当初から、たびたび浮かんでは消えてきた“電磁波”問題。危険な情報を国が意図的に黙殺しているのであるとすれば大問題である。
(取材/頓所直人)
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