<福島第1原発>安全弁検査ミス…保安院所管法人が見逃す
毎日新聞 6月15日(水)2時34分配信
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主蒸気逃がし安全弁検査の概略図 |
【よくわかる】福島原発図説集
機構は翌月、東電からの指摘を受けてミスに気づき、再検査した。実際に2台を取り付けたのは再検査合格後だったため「安全面での影響はなかった」との理由で、公表しなかった。機構は東電の原発トラブル隠し(02年8月発覚)で、保安院が検査結果の改ざんを見抜けなかった教訓から、検査強化を目的に03年10月に設立された。法定検査を実施できる唯一の機関だけに、識者から厳しい批判の声が上がっている。
この安全弁は「主蒸気逃がし安全弁」。直径数十センチ、高さ2メートル弱の円筒状の機器で、3号機には8台取り付けられている。正常運転時は放射性物質を含んだ蒸気を基準値以上に漏らさないよう炉内に閉じ込め、事故時は安全弁を開け、圧力を下げて容器破損を防ぐ。消耗により8台のうち6台を交換することになり、08年12月2、3の両日、安全弁を製造した北九州市のバルブメーカーの工場で電気事業法に定められた検査をした。
機構の検査員2人は、立ち会った東電社員らに指示して、正常運転時の蒸気に相当する圧力の窒素ガスを弁に向けて噴射し、ガスの漏えい量が基準値内かどうかを確認した。6台のうち4台への加圧は適切だったが、残る2台は規定値より各0.55気圧、0.46気圧低い70.38気圧、71.28気圧しか加圧していなかった。東電側の単純ミスだったが、2人はこれを見抜けないまま合格を意味する「良」と判定したという。
東電は機構の検査に先立つ08年11月18日、独自に同様の検査を実施した際に同じミスをしていた。社内の安全審査部門が二重チェック態勢をとっており、機構検査後の09年初めまでにミスを把握した。
安全弁は再検査後、保安院の書面チェック(09年4月)を経て、3号機に設置された。圧力容器の圧力が急上昇した3月13日、正常に動いたが、蒸気に含まれる水素が原子炉建屋まで漏れ建屋は翌日水素爆発した。【清水憲司、酒造唯、川辺康広】
原子力安全基盤機構の工藤雅春検査業務部次長の話 謙虚に反省しており、既に再発防止策も講じた。
【ことば】原子力安全基盤機構
保安院の委任で行う法定検査のほか、海外の原子力施設で起きたトラブルに関する情報の収集・分析などを業務とする。10年度予算(収入)は約222億5000万円で、国からの交付金が約93%を占める。職員426人(4月現在)の中には電力会社や原子力関連メーカーの出向者もおり、独立性を疑問視する声もある。
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最終更新:6月15日(水)2時58分
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