米、在沖海兵隊のグアム移転費を水増し

2011年5月5日 09時36分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 【平安名純代・米国特約記者】日米両政府が2006年5月に合意した在沖米海兵隊のグアム移転計画のロードマップ(行程表)作成時に、米側が日本の負担比率を低くみせるため92億ドルだった移転費の総額に、不必要な道路建設費約10億ドルを盛り込んで水増しし、日本側が08年に了承していたことが明らかになった。削減効果を訴えやすくするため、海兵隊の移転人数も実態より多く挙げていた。沖縄タイムスが独自入手した08年12月19日付の駐日米大使館から米国務省宛ての公電で分かった。

 秘密扱いの同公電によると、米側は06年4月の日米の負担額に関する交渉の際、3分の2だった日本側の負担比率が60%を切るように操作するため、必要でないグアムの軍用道路建設費10億ドルを再編費用に盛り込んだ。

 後に米側は、同建設費に関する記述の削除を要求したものの、日本側が国会で詮索を招くなどとして強く反対。道路建設を米軍再編完了の絶対的条件と見なさないと明確化した上で、既存のロードマップの文言を変えないという日本側の要求を受け入れた。

 移転対象となる在沖海兵隊の定数について、1万8千人のうち8千人が移転するという公式説明について、公電では「04年から06年のロードマップ作成時の在沖海兵隊員数は約1万3千人で、予算上の最大定員1万8千人を大幅に下回る」とし、移転時までに8千人を下回る可能性が大きいことを示唆。8千人は「予算措置としての上限人員を示したもの」と説明し、家族9千人は上限に基づく計算で「日本での政治的効果を上げるため実数を水増しした」と説明している。

 在沖海兵隊の受け入れ準備がグアムで整い、普天間の移転が完了しても、海兵隊がグアムに移転しないのではないかと日本の財務省が懸念したため、米側の交渉担当者が口頭で移転の完了をあらためて約束したことなども記されている。

 米国はロードマップ作成時に、沖縄の政治情勢や日本政府の政権交代で再編合意が崩壊するリスクを懸念していたとみられ、「日本側では国会承認を必要とする条約に準じる協定を結び、日本政府にグアムへの複数年度の資金拠出を義務づけ、第3海兵遠征軍の在沖部隊を移動させる前提条件として普天間代替施設を完成させるよう決めたことでリスクが減少した」と説明している。

 公電の内容は告発サイト「ウィキリークス」でも4日から公開が始まっている。

 07年11月7日付公電では、小池百合子前防衛相(当時)が仲井真弘多知事に対し、普天間飛行場の移設にかかる環境影響評価手続きが終われば、代替施設の位置を県側の要望に応じ海側に50メートルずらす非公式の約束をしたとの記述もある。

知事不快感「国に聞いて」
50メートル移動約束「覚えていない」

 仲井真弘多知事は4日、沖縄の海兵隊のグアム移転にかかる経費と海兵隊の数が水増しされていたとの米公電について、「僕がコメントするようなものではない。政府に聞いてみてほしい。そういってるけどどうかと」と述べ、不快感を示した。記者団の質問に答えた。

 仲井真知事は「1万8千人(のうち8千人を移転)と発表されたら、それを実行していただきたいと言うしかない」と述べ、あらためて基地負担の軽減を日米両政府に要望した。

 2007年に当時の小池百合子防衛相が、普天間代替施設の50メートル沖合移動で仲井真知事と同意することを非公式に約束していたとの公電内容について、「政府側からいろんな話があったので、もう覚えていない。意味のある距離だけ沖合に出してもらいたいと、当時、僕は言っていた」と述べるにとどまった。

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