沖縄振興 10兆円投下も薄い恩恵

2011年5月4日 10時45分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 1972年に沖縄が本土復帰して以来2010年度まで、4次にわたる振興計画で約10兆円の振興予算が県内に投下された。このうち8割超が公共事業関係費で、道路や橋など社会資本の整備は進んだものの、教育や福祉など、多くの分野で「格差」が残る。そればかりか、公共事業に投下される多くの予算が本土企業へ流れている。インフラ整備に貢献したとされる沖縄独特の「高率補助制度」をめぐっても、国からの財政支出が他県を大きく上回っている状況にはなく、恩恵は薄い。(政経部・島袋晋作)

整備進むも残る格差

 本土復帰当時の沖縄では、インフラ整備が圧倒的に遅れ、その格差是正のため政府は、公共事業の補助率を最大95%にかさ上げする「高率補助制度」を設けた。

 例えば、河川改修費は全国は国が2分の1を補助するが、沖縄では9割。それだけ自治体の負担は少なくて済み、沖縄のインフラ整備は急速に進んだ。

 補助金は「高率」であっても、使途が厳格に決められている。インフラが充足してくるにつれ、必要性や緊急性の低い公共事業が生じる懸念も出ている。

 長年、同制度を活用してきた県も、「縦割り補助制度の硬直性が顕著化」したと指摘。国が使途を決めるひも付き補助金から、沖縄の特殊性に配慮した一括交付金など、県の裁量度の大きい制度に移行する必要性を訴えている。

地方交付税 減額の構図

 補助金など、国が使途を特定して地方に交付する「国庫支出金」。沖縄は県民1人当たり11万694円(2006年度)で、島根県に次いで全国2位と高い水準にあり、沖縄を特別に優遇しているとの根拠になる数字となっている。

 しかし、これとは別に国が措置する「地方交付税」の県民1人当たり額は14万4149円(同)で、全国16位。「国庫支出金」と「地方交付税」を合わせた金額で見ると全国8位にとどまる。

 沖縄への地方交付税が少ないのは、高率補助制度とも深く関係する。

 地方交付税は、自治体が必要とする「需要額」を確保するため、税金などによる「収入額」だけでは足りない分を補うために措置される。「収入額」に対し、「需要額」が大きいほど、多くもらえる仕組みだ。

 「需要額」の算定には、事業を実施するために借金する起債額が用いられる。高率補助で起債が少なくて済む沖縄では「需要額」が小さくなり、地方交付税も少なくなる構図がある。

 補助率のかさ上げ制度は、沖縄以外にも奄美や離島などでも導入されているが、財政力指数の低い21道県でも「後進地域特例」が設けられ、島根県では補助率が1・25倍に引き上げられている。

 仮に10億円の道路事業で試算すると、沖縄は9億円の高率補助に加えて起債額の3分の1に当たる3千万円の地方交付税が措置され、国からの財政支出は実質9億3千万となる。

 一方、島根県では5・5割の補助率が「後進地域特例」で7割に引き上げられ、交付税措置を加えると国からの財政支出は実質7億9千万円となる計算で、沖縄との差は大きく縮まる。

 一般に補助率の割合は沖縄と本土で「9対5」とされていたが、地方交付税分を加算すると実際は「9対8」に近くなるケースも想定され、沖縄が受ける「恩恵」がそれほど厚くない実態が浮かび上がる。

事業費 本土還流

 沖縄振興予算をめぐっては、公共事業を受注する本土企業に多くのカネが流れていく状況から、「ザル経済」とも指摘される。

 県土木建築部がまとめた国発注工事の契約状況によると、2009年度に県内企業が受注した件数割合は沖縄総合事務局発注分が79・4%、沖縄防衛局発注分は87・9%。ただ、契約金額ベースで見ると、沖縄総合事務局発注分は59・4%、沖縄防衛局発注分が72・4%。両局で計186億1500万円が本土企業に支払われている計算となる。国発注の公共工事は沖縄総合事務局、沖縄防衛局発注分ともに県内業者の受注率は上昇傾向にあるものの、依然として多くの予算が本土へ流れる実態がある。

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