県北部地震で震度6強の揺れに見舞われ大きな被害が出た栄村で14日、仮設住宅の第1号として北野天満温泉駐車場に建てられた5戸が4世帯6人に引き渡された。自宅から荷物を運び込み笑顔を見せた入居者たちだが、2年間の期限付きとあって将来への不安も。またこの日、村内で住民たちが地域再生に向けて意見を出し合う「村の復興を考える会」が開かれた。【大平明日香】
仮設住宅は各戸2DKで29・6平方メートル。日本赤十字社から寄贈された洗濯機やテレビ、冷蔵庫などが設置されている。家賃と水道費は無料だが電気、ガス代は入居者負担となる。この日各世帯に鍵が渡され荷物の搬入が始まったが、本格的に生活するのは15日以降になる見込み。
まず県や村による説明会があり、島田茂樹村長は「長い間の避難所生活でご苦労おかけしました」とあいさつした。
温泉施設に避難していた坪野地区の斎藤峯子さん(78)は、親族と自宅から布団や食器などを運び込み「ありがたいね。これからどうなるか分からないけど、みんなで元気にやっていきたい」と笑顔を見せた。
一方で、4世帯のうち3世帯が78歳から80歳の1人暮らし。施設の部屋を3人で使っていた斎藤マツさん(80)は「さびしい。1人になるのは不安」と漏らした。島田村長も「保健師の巡回など、高齢者のケアをする必要がある」と話していた。
また母、弟と3人で入居する原向地区の会社員、江村一男さん(51)は半壊した自宅を取り壊す予定で、新居の見通しはたってない。「(入居期限の)2年間で考えたい」と複雑な表情だった。
同村民のうち158人(13日時点)が村内外で避難生活を送る。村農村広場にも仮設住宅50戸を建設しており、6月末までに希望者全員の入居を予定している。
栄中で開かれた「村の復興を考える会」には、村民約140人が参加。阿部守一知事や島田茂樹村長らと震災後の問題点や復興案の内容などについて話し合った。
出席者は「田んぼの水路の復興ができない」「個人の負担額が多い」「村外に避難した人に戻ってきてほしい」など被災後の課題や悩みを付箋に記してホワイトボードに張り付けた。これらの内容を「農地」「住宅」「高齢者」などテーマごとにグループ分けし、阿部知事や県担当者などが回答。直接意見も交わした。
さらに村民からは「村の振興ビジョンに夢がない」「魅力的な村づくりをしないと、村民が外に出ていってしまう」という厳しい意見も出た。
阿部知事は「大勢の方の意見を聞き、課題を共有することができた。村再生に向け今後も知恵を出し合っていきたい」と述べた。
毎日新聞 2011年5月15日 地方版