2011年4月19日 11時18分 更新:4月19日 13時37分
国が国営諫早湾干拓事業(諫干)の開門調査をする方針を決めたことを巡り、干拓地の入植者や後背地の住民ら352の個人・団体が19日、国を相手に開門の差し止めを求める訴えを長崎地裁に起こした。干拓地での営農に影響が出るほか、高潮被害などを受けやすくなると主張している。
提訴したのは、入植者41個人・法人▽干拓地を所有する長崎県農業振興公社(理事長・中村法道県知事)▽諫早湾内漁業者36人▽後後地住民ら274人。
訴状によると、開門すると干拓地(672ヘクタール)の農業用水に使っている調整池に海水が入って農業用水として使えなくなり、安定した営農ができなくなると主張。また、堤防の防災機能が低下し、標高が低い後背地の家屋への浸水被害も懸念されるなどとしている。
提訴後、干拓地入植者を代表して平成諫早湾干拓土地改良区の山開博俊理事長(63)は記者会見で「営農には多額の投資をしてきた。代替水源も国は示しておらず、入植者全員が不安を抱えている。国に裏切られた気持ちでいっぱいだ」と訴えた。
諫干による有明海の環境悪化を調査する開門調査を巡っては、昨年12月に開門を命じる福岡高裁判決が確定。これに反発する長崎県諫早、雲仙両市の後背地住民らが開門差し止め訴訟を検討していた。【柳瀬成一郎】
提訴について、鹿野道彦農相は19日の閣議後会見で「訴状が国に届き次第、関係省庁とも連携を取って協議しながら適切に対応していきたい」と述べた。