【ローマ藤原章生】イタリアで12、13の両日、将来の原子力利用の是非を問う国民投票があり、12日午後10時(日本時間13日午前5時)時点で投票率が41%を超えた。投票成立には「有権者過半数の参加」が必要で、地元メディアなどは過去の国民投票の動向から、初日の投票率が3割を超えるかどうかが焦点とみていた。国民の多くが東京電力福島第1原発事故で原発に嫌悪感を示しており、同事故後世界初の国民審判による「原発拒絶」が濃厚となった。
国民投票で問われたのは、原発のほかに、水事業の民営化と首相ら要職者の公判出廷免除など。投票は13日午後3時(同午後10時)に締め切られ、即日開票される。原発をめぐってはドイツ政府が今月、2022年までの原発全廃を決めたが、イタリアには現在、原発がない。87年11月、原発建設地を自治体でなく国が優先的に決めることなどの是非を問う国民投票で拒否され、稼働中の全原子炉が90年までに閉鎖された。
今回の投票は、ベルルスコーニ政権が08年の就任以来、フランス政府などの協力で20年の稼働を目指し今年5月に制定した「原発再開法」に反対するかどうかについて、「はい」(原発建設反対)か「いいえ」(法令の維持)を選ぶもの。
投票の実施は、野党議員や住民による署名、申請で今年1月に決定。事前の世論調査では「原発推進」派が過半数を占めたが、3月の福島原発事故で「原発嫌悪」のムードが一気に広がった。
このため、原発を再開したいベルルスコーニ首相や右翼政党「北部同盟」のボッシ党首ら政権重鎮は棄権を表明し、支持者に投票に参加しないよう呼びかけてきた。イタリアは全電力の約7%をスイス、フランスから輸入。電気料金は欧州一高く、原発先進国のフランスより8割高い。
イタリアでは王制(1946年)や中絶(81年)の是非などで計62回の国民投票があり、うち成立は35回。
毎日新聞 2011年6月13日 東京夕刊