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[21516] 習作 リリカルなのは×ACE COMBAT ×色々&オリ主&転生キャラ
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2011/01/09 22:05
題名が思いつきません…アドバイスお願いします。

注意事項
・ACE COMBATとクロスですが登場人物の名前を借りている別人だと思ってください。
・他にも色々とクロスします。
・オリ主で最強系になります。
・転生オリキャラで転生オリ主ではありません。
・厨二設定とご都合主義が満載です。(例・ナデポニコポ)
・原作キャラとの恋愛ありです。
何かありましたら随時、追加します。

8月26日、祝、エースコンバットX2発売!!

9/3追加
5話より人の発言を「」。デバイスは『』。念話を≪≫にしてみました。

2011年、あけましておめでとうございます。
1/2 設定集追加。
何かあったら随時更新。これも付け加えた方が良いと言うのがあったら追加します。
1/9 設定集に項目追加



[21516] 設定&用語集 3/17 V2その2等追加。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/03/17 21:42
付け加えた方が良いと言うのがあったら、お願いします。
追加項目は、下に増えていきます。


【フレッシュリフォー社】
ミッドチルダ、クラナガンに本社を置く、押しも押されぬ超巨大企業。管理局からデバイス・医療機器等の委託されている。
それ以外にも幅広く扱っており、幾つかの管理世界に支社を持ち、人々の生活に深く入り込んでいる。
管理局の出資者の1つであり、それなりに友好な関係を持つ。現在のトップはトリスタラム・リフォー。

【ベルカ公国】
かつて存在した国家。古代ベルカからの移民でありながら、卓越した魔道技術により1つの国家として成り立っていた。
そして、その技術力、軍事力を持って領土を拡大したが、それが原因で経済危機に陥る事になる。
状況を打開する為に、一部の有力貴族に領地を分配し、自治領として運営させ、自国から切り離した。
しかし財政難は止まらず、その貴族達を取り込み、肥大化していくミッドと管理局との関係は更に悪化。その際に、極右政党が政権を握る。
そして、親ミッド派貴族【ウスティオ家】領地にて、天然魔道資源の発見を機に、ウスティオ家領地、ミッドチルダ領地等に侵攻を開始。
後に言うベルカ戦争が開戦される。当初は【ベルカの騎士】と呼ばれる魔道師達の活躍で、優位に立っていた。
しかし、管理局が組織した外部傭兵部隊の活躍により、徐々に押されていく。
だが、魔核弾頭(後述)等を開発し、ミッドと管理局を苦しませるが、敗北。戦争末期には自国領土内で起爆させるという狂気さえ犯す。
国家は解体され、現在は、自治領として残り、自治政府が運営している。なお、旧国土の一部を管理局評議会が、直轄地として運営している。


【ベルカの騎士】
ベルカ空戦部隊のエース達にのみ許された称号。アームドデバイスを使いこなす、接近戦のプロである。
近づかれたら終わり、戦争中の管理局員達の恐怖の対象であった。


【魔核弾頭・V1】
コアとなる魔力吸収体に、魔力を注ぎ込み、起爆させる兵器。都市を蒸発させるほどの威力を持つ。
ベルカ公国が開発するが、自国内で起爆させる狂気を犯す。なお、更に強力な【V2】が開発されていたとの噂もある。

【魔核弾頭・V2】
あるロストロギアをコアにし、蒐集した魔力を暴走させ、爆発させる兵器。威力はV1の比ではないらしいが、詳細は不明。

【魔核弾頭・V2、2】
ロストロギア、闇の書をコアにした魔核弾頭。なお他にも複数の魔導師から、摘出したリンカーコアをそのまま補助のコアとしても使用していた。
開発責任者はアントン・カプチェンコ。(後述)


【アントン・カプチェンコ】
ベルカ史上最高とまで言われた天才魔導師。V1やV2、そしてタングラムを開発している。
既に故人となっているが、ベルカにおいて、未だにカプチェンコの名は絶大な影響力を持っている。1人息子が居たらしいが消息は不明。
ベルカ戦争中、もしくは、戦争後にスカーフェイスと交戦し撃墜されたらしいが、詳細は不明




【タングラム】 
ベルカのある天才魔道師が、作り上げた時空因果律制御機構。任意の平行世界の事象をこの世界の事象と入れ替えるというシステムである。
すなわち、この世界を自由自在に再構築できる装置である。極端に言ってしまえば、運命を書き換えることが出来る。
ベルカ戦争勃発以前に開発、完成されたが、自我を持ち、戦争に使用されることに反発、虚数空間へと逃亡する。
実は、その前に1人の少女と出会っており、彼女の心に触れ優しさを知り、少女に力を貸すことを決意しているらしいが、詳細は不明。
なお、少女は現在行方不明となっている。


【少女・1】
タングラムにアクセスできる唯一の存在。ベルカ公国が探し続けていたが、結局見つからず。戦争勃発につき捜索は打ち切られる。
詳細は不明だが、かつてのベルカの有力貴族の娘らしい。なお、噂では1人の傭兵に恋をし、自身も傭兵になったとか…。

【シュトリゴン隊】 
時空航行艦【ケストレル】所属の航空部隊。管理局の中でも、トップエースの実力者が揃う精鋭であり、ベルカ戦争を戦い抜いてきた猛者達でもある。
特別な遊撃権限を所持し、要請を受ければ、陸・海・空、関わりなく行動できるのは、精鋭部隊ならではである。
現在の隊長は【ヴィクトル・ヴォイチェク】 副隊長は【ジン・ナガセ】


【戦闘結晶構造体・アジムとゲラン】
管理局が指定している第1種接触禁止目標。次元震等の発生で、時空が割れると何処からともなく出現する謎の敵。高い戦闘能力を持っているため、一般局員の接触は禁止されている。9年前のベルカ戦争の時も出現し、両陣営に多大な被害を与えるが、【円卓の鬼神】により、粉々に撃ち砕かれていた。

【ソラノカケラ】
メビウス・ランスロットが所有するレアスキル。
空から常に魔力が供給され続けるスキルであり、実質、魔力は無限である。
空を愛し、空に愛された彼に相応しいスキルである。

【白虹騎士団】
聖王協会所属のベルカ最精鋭騎士団。かつてのベルカの騎士達の流れを継ぐ、魔導師達。制服は純白。
主に自治領内の治安維持、指定ロストロギアの確保を行っている。その実力はベルカ式の魔道師の中でもトップクラスである。
実質、ベルカ自治政府の最高戦力達。彼らと対等に戦えるのは、シュトリゴン隊や管理局の中でも極一部である。


【企業戦士、ネクストマン】
テレビで放送されている超高速バトル特撮ヒーロー番組である。主人公であるアクアビットマンを筆頭に多くの仲間達とも、悪の組織ゴット・オブ・コジマを滅ぼすために日夜戦っている。
最近では、カードやガチャポン等が発売され、子供達に大人気の番組になっている。
仲間には絶対防御巨人、通称・絶防巨人GAマンや正義の味方であり、ライバルのドミナント仮面が登場する。
作者は、ジャク・ゲド。






[21516] 1話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/28 12:27
さて…これはどういった状況なんだろうな。
俺は確か…何時もの様に日課のジョギングをしてて…あぁ…思い出した。車に轢かれそうになってた猫を助けたんだっけか。
そんで、猫は何とか掴んで投げる事は出来たんだけど…俺は轢かれたんだっけかね。2tトラックだったからなぁ…死んだか。
最後に猫が無事に走ってくるのが見えたから良いんだけどね。
しっかし…まぁ…死んだら普通は天国か地獄で決まりなんだろうが…
とりあえず、言っておくか。往年の名台詞。きっと言いたい人間は世界に数え切れないほど居るだろう。
いや、しゃべれないから取り合えず思うか。

(知らない天井だ。)
「貴方、!元気な男の娘ですよ、」
「おぉ…よくやってくれた…」
(まて、なんか知らんが漢字が違うと思うぞ?それは特定の趣味の奴らが使うのだっての!!??)



こうして俺は何時の間にか赤ん坊になってたというわけだ。簡単に言ってしまえば転生だな。
なんで冷静なのかって?…東京の満員電車に乗る男は痴漢冤罪対策の為に嫌でもこうなんだよ。
現状の確認だ。俺は帝 閃。厨二まっしぐらの名前だ。
なんか某少年誌の間接破壊の達人の親子の名前がくっついた感じがする。
ちなみに父親は帝 天。母親は帝 麗。ダンディーな父親と綺麗な母親と言うまさに理想的な両親だ。
転生者とは言え、俺が始めての子供。そして惜しげもなく愛情を注いでくれるこの二人。
俺は産まれて直ぐにこう決めた。本当の父さん、そして母さんと呼ぼう、と。当たり前のことだけどな。
んで、俺の産まれた所はミッドチルダは首都クラナガン。両親はそこの超大手企業の重役だ。
ちなみに、企業の名前はフレッシュリフォー。なんでも管理局からデバイス関連の開発等を請け負っている企業らしい。
あぁ、父親と母親は生粋の日本人らしい。移住してきたそうだからな。ちなみに俺も黒髪黒目。良き日本人の特徴を受け継いでいる。良かった良かった。
…さて、とりあえず…突っ込んでみるか。
まずは…ミッドチルダ?デバイス?そして管理局?ここはリリカルな世界な訳ですか!?どんな二次創作だよ!!??
自分の名前だけで滅茶苦茶、笑えんのにリリカルかよ!!??
そして次にフレッシュリフォー!!??待てよ!!??なんでVRの企業が出てくんだよ!!??
おかしいだろ!!??明らかに原作崩壊も良いところだよ!!??

「あら。閃が泣いてるわ。どうしたの~?」

いや、どうもしないんだけどね。母さん。
母さんの腕に抱かれながら再び俺は考える。
まずは後で俺の魔力要素を調べてもらうか。まだ先の話だが、もしかすると必要になるかもしれない。
そして次に情報収集だ。俺と言う存在とフレッシュリフォーの存在が一体、何を意味してるのかが気になる。
…まだ赤ん坊だから、ゆっくり色々と考えるか。
そんなことを考えていると時間はあっという間に進むわけで…
気が付けば6歳を目の前にしていた。

「閃君のランクはB-ですね。」
「ふむ…私達の子供にしては良いな、。」
「えぇ。けど、まさか閃が魔道師になりたいんだなんてね。」
「多くの子供が憧れる職業だからな。私も最初は憧れたものだよ。結局もランクが低くてどうにもならなかったがね。」
「けど、閃ならきっとなってくれますわ。」
「うむ。この子ならやってくれるだろう。」
「頑張るよ!!」
「はっはっは!!その調子だぞ閃!!」

とりあえず俺はフレッシュリフォーの施設でランクの測定を受けてみた。両親には魔道師になりたいといってね。
しかし…B-…微妙な所だな。可も無く不可もなく…といったところか。
聞くと父さんも母さんもCランク。結構、下のほうだ。
これから成長していくのか…はたまた、下がっていくのか…これは分からない。
次に俺はある提案を両親にしていた。
それは日本の海鳴市に住みたいという事だ。しかも両親がどっちも海鳴市出身ということがあり、疑われることも無くあっさりと引越しが出来た。
両親も本当の日本を知って欲しいと思ってたようで、渡りに船といったところだったようだ。
そして俺は6歳になり、海鳴市の私立聖祥大学付属小学校に通うことに成った。
ちなみに、俺が海鳴市に住みたいといった理由は簡単だ。
とりあえず、原作キャラ達を見てみたいという、本当に安易な理由だ。
けど、俺は自分から原作介入する気は毛頭ない。実際にB-で介入したら大怪我じゃすまないだろうし、何か歪みが生じる可能性があるからだ。
巻き込まれた際は必要最低限の抵抗はするが、それ以上はなにもしない。ひどい言い方だが俺は観客だ。
原作キャラ達が織り成す舞台劇を客席から見ている観客。原作介入して物語を曲げなければ、いい方向にも修正したりしない。
それに…それは俺の役割じゃないからだ。それを担う奴が居たからだよ。
そいつは誰かって?…俺が私立聖祥大学付属小学校に入学して、クラスを見ると原作キャラとは別のクラスになっていた。
とりあえず…この頃は魔法的要素は何も無いだろうから適当にすごそうと思ったが…
案の定、アリサ・バニングスが月村すずかを苛めてて、それをなのはが止めに入るわけだ。
これが三人の出会いな訳で…取っ組み合いの喧嘩を俺は遠くから眺めてただけなんだが…
そこで現れたんだよ。超ど級のイレギュラーが、二人も。

「なのちゃん!!喧嘩は駄目だよ!!」
「はっはー!!江戸の喧嘩は華だぜぇぇぇ!!」
「ふざけたこといってないで止めてよ!!バニングスさんの方を止めて!!」
「おう!!」

蒼い髪の美少年と灰色の髪の少年。
こんな奴ら原作には居なかったはずだが…そんな事を考えていると、蒼髪が間に入って喧嘩を止めた。ちなみに灰色髪はアリサを羽交い絞めにして抑えてる。
お、灰色髪の足にアリサの踵が突き刺さってる。滅茶苦茶、痛そうにしてんな。
ちなみにすずかは泣きながらオロオロしてる。


「なのちゃん、イキナリ喧嘩したら駄目でしょ?」
「だって、この子がいじめてたから…」
「うん。苛めは確かによくないけど…なのちゃんまで暴力を使ったら駄目でしょう?まずはお話して止めてっていわないと。」
「うぅ…けど…」
「私はなのちゃんの事を心配していってるんだよ?それになのちゃんが怪我したら士郎さんや桃子さんも悲しむでしょ?
もちろん、私だって悲しいよ?」
「…」
「それはバニングスさんも同じ。だから、ね?最初はお話しよう?」
「……うん。」
「うん。なのちゃんはいい子だね。」

そう言いながら蒼髪はなのはの頭を撫でる訳で…ナデポかよ…
いや…違うな。既に堕ちてるな…。
そして一人称が私…明らかに俺以上の厨二である事は間違いないな。
結局、蒼髪と灰色髪の介入で、喧嘩は終わり、三人は最初こそギクシャクしていたが、意気投合し、親友になった。
そして、当然、俺は疑問に思ったよ。あの二人は何者なんだろうなって。しかし介入しないと決めた手前、あまり行動を起こしたくない。
植物のように平穏な生活を送りたい、と、どこぞの手フェチ殺人鬼みたいな事を考えながら1年、2年と過ごしたよ。
そして…二人を知る機会が3年に上がって訪れた。
なのは・アリサ・すずかと同じクラスになって、下手すると巻き込まれるかなぁ、と考えながら、クラス名簿を見ると…流石に、俺も驚いたよ。
何度も何度も何度も見直して…確信したよ。
良く考えると納得できる。ミッドにも【あそこ】と同じ地名がある。
そして分かったよ。やっぱり俺は脇役でよかったってな。俺は主人公じゃない、そして目指さなくて良かったってな。
苗字が不安だが…きっとこの二人なら良い方向に原作を修正することも出来るだろう。いや、絶対に出来るはずだ。
そう思いながら過ごしていると…あの二人と気が付けば友人と呼べる仲になった。
原作介入はしないと言う俺の意志はどこへやら、巻き込まれるみたいだが…俺は決めたんだよ。
脇役になるってな。主人公達を支える脇役、情報提供する村人クラスでも良いからな。
そして…今日も俺は教室に入ってきた蒼髪と灰色髪の友人に挨拶をする。

「おはよう。閃。」
「お~す。閃!!」
「あぁ。おはよう、メビウス、オメガ。」


なんたって…リボンの英雄と究極の11がこの世界には居るんだからな。
こいつらが居る時点で…主人公は決まってるだろう?







帝 閃
転生者その1。
友人ポジション。
生前は普通の大学生。
原作知識あり、野心なし。純正日本人の見た目。







[21516] 2話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/28 12:28
♪~♪~♪」

朝のキッチンで朝食を作る一人の女性。外見は若々しい、というより童顔である。
かもし出す雰囲気はのほほんと言うか、ぽややんである。
可愛らしい犬がプリントされているエプロンをつけている。
フライパンの上ではウィンナーがこんがりと焼け、それを目玉焼きの乗った皿に移していく。
彼女の名前はサイファー・ランスロット。外見からは想像できないが、これでも1児の母である。

「これで良いかな~♪。フェイス~。ご飯できたよ~。」

外見と同じくらいの幼い声。ぽややんとした雰囲気がまさにマッチしている。
リビングを見ると、新聞を読んでいた男性が居た。
彼の名前はスカーフェイス・ランスロット。この家の主であり、サイファーの夫である。
名前の如く、左のこめかみから右頬に掛けて顔を縦断する大きな傷跡の在る精悍な顔。だが、厳ついと言うわけでもない。
こちらも若々しい外見をしている。

「ん?そうか。」

読んでいた新聞を畳み、サイファーが作った朝食をリビングのテーブルに運んでいく。
狐色に焼けたトースト、こんがりと焼けたウィンナー等、とても美味しそうだ。

「そろそろ、あの子を起こさないとね~。」
「珍しいな、寝坊か?」
「昨日の夜に、また空を見てたのよ。」

サイファーは笑顔で2階に通じる階段を見る。スカーフェイスも苦笑いを浮かべながらトーストにジャムを塗っていく。
すると、階段から聞こえてくる足音は、子供らしい軽い足音と、4本足で歩く動物の足音だ。

「おはよう~…父さん、母さん。」
「ふふ。早く顔洗ってきなさい。」
「ほら、トーストに塗るのはなにが良い?」
「ブルーベリー…」

階段から降りてきたのは一人の少年。少し長めの髪を蒼いリボンで止めていた。
まだ、眠いのか眼をこすりなら洗面所に向かっていく。
そんな少年の足元に居るのは一匹の大型犬。見た目はドーベルマンなのだが、何故か毛が赤い。
少年は私立聖祥大附属小学校の制服を着ているところを見ると、そこの生徒なのだろう。
首には蒼いクリスタルで出来た剣の形をしたペンダントが輝いている。
洗面所から水の流れる音と、そしてパシャパシャという音が聞こえてきた。
数分ほどで、少年が戻ってきた。顔を洗ってスッキリしたのかも先程までの眠そうな気配は無い。
そのまま両親が待つテーブルに向かい、自分の席に座る。
犬も少年の足元に座り、大人しくしていた。

「ふう、スッキリした。」
「ほら、冷めないうちに食べましょう~。」
「ほぉ…?今日は珍しく失敗してないようだな。」
「そんな…それじゃ、私のお料理は何時も失敗するみたいじゃないのよ~」
「私は…母さんのお料理好きだよ?」
「ああもう。メビウスちゃんは可愛いわねぇ♪」

そう言うとサイファーは少年をぎゅうっと抱きしめる。
少年の名前はメビウス・ランスロット。スカーフェイスとサイファーの息子である。
ちなみに蒼いリボンはサイファーの趣味で、どうやら可愛い物が大好きなようである。
そして男子なのに一人称が「私」と言うのも確実に彼女の教育の賜物だ。
彼女だけでなく、メビウス自身疑問に思っていないあたり、尚更始末が悪い。

「母さん…苦しい…」
「サイファー。離してやれ。時間が迫ってるんだぞ。」
「あら?もうそんな時間?」

スカーフェイスが苦笑しながら、時計を指差す。確かに、メビウスが家を出る時間が迫ってきていた。
サイファーの抱擁から開放されたメビウスも朝食を再開し、トーストを食べていく。
そして食べ終わると直ぐに歯を磨き、鞄を持った。若干、寝癖が付いているが…

「それじゃ、父さん、母さん。行って来きます。」
「あ…メビウスちゃん、待ちなさい。」
「?」

リビングから出て行こうとするメビウスをサイファーが呼び止める。
そしてサイファーがメビウスに近づき、目線の高さまでしゃがむ。

「良いわね。絶対に危ない事したらだめよ?」
「え?…分かったけど…?」
「ふふ…それじゃ、いってらっしゃい♪」

軽くメビウスの頭を撫でて見送るサイファー。
そして、少し疑問に思いながらも元気に家を出て行くメビウスとその後を追う大型犬。
玄関が閉じると同時にサイファーは少し寂しそうな表情をする。何時もニコニコしてる彼女の顔とは大違いだった。
スカーフェイスも難しそうな顔をしてメビウスの背中を見ていた。そして二人してポツリと呟く。

「無理だろうな。」
「えぇ。無理でしょうね。」
「メビウスは…俺達の息子…だからな。まぁ…大丈夫だろう。」
「えぇ…自慢の息子ですものね。」
「あぁ。自慢の息子だからな。」


メビウス

「さあ。ガルム!行くよ。」

家を出た私は何時もの様に後を付いてくるガルムに声をかける。
赤い毛が特徴的な私の家族。声を掛けても鳴くことはしないけど、充分気持ちは伝わる。
静かに私の横に並んで一緒に歩き始める。リード等は付けないんだ。だって、そんな物を付けなくてもガルムは私の言う事を聞いてくれるからね。

「今日も良い天気になると良いねぇ。」

ガルムに話し掛けながら、私は通学路を歩いていく。
途中からバスに乗らなければいけないんだけど、その前に少し寄っていく所がある。
私の両親はアクセサリーショップ【アヴァロン】と言うお店を経営してるんだ。
その近くの【翠屋】と言う喫茶店を経営してる高町さんとは、家も近所と言うことでとても仲良くしてもらっている。
そして、高町家の次女であり、幼馴染の女の子、なのちゃんを迎えに行くのが私の日課。
ちなみに「なのちゃん」と言うのは愛称。本当は「なのは」と言う名前なんだけどね。

「そうそう。今日の夜、出かけるよ。ガルムも一緒にね。」
「?」

そう言うとガルムが不思議そうに私の顔を見る。え?表情の違い?家族なんだから分かって当然でしょ?それにガルムは唯の犬じゃないんだしね。
そんな事は良いとして、確かに、私みたいな子供が夜に出かけるのは感心できないだろうけど、もう父さんや母さんには許可を取ってあるんだ。
まぁ…色々と条件も出されちゃったけど…

「前々から計画してたでしょ?天体観測をするんだ。」

ガルムが納得したように頷く。軽く首を上下に動かしただけなんだけどね。
私は前々から天体観測をしたいと言っていたし、計画も立てていたのを知っているからだね。
既に私の頭の中も今日の夜の天体観測のことで一杯だ。
私は空がとても好きなんだ。広く広く綺麗な空。何時も包み込んでくれる青い空は私は大好き。
…っと、何時までも空を見てる訳にはいかないよね。はやく迎えにいかないと…
鞄をしっかりと持って、少し歩くスピードを速める私。
5分ほど歩くと目的の高町さんの家が見えてくる。何時ものようにドアの呼び鈴を鳴らして出てくるのを待つ。
すると、中からパタパタと足音が聞こえてきて、ドアを開けてくれる。

「あら?メビウス君。おはよう。」
「あはようございます。桃子さん。なのちゃんの事、迎えに着ました。」
「何時もありがとう。少し待っててね、呼んでくるから。なのは、メビウス君が来たわよ。」

出てきたのは桃子さん。とても若く見えるんだけど、なのちゃんのお母さんだ。
桃子さんがなのちゃんを呼びに言ってる間、私は何時ものように玄関の前で待っている。ガルムも大人しく私の隣で座っている。

「あ…少し寝癖が付いてる…」

少し慌ててたからなぁ…手櫛で治るかな…?
そんな事を考えながら、待っていると聞こえてくるなのちゃんの声なんだけど…なんだか慌ててる。

「め…メビウス君!!少し待っててね!」
「うん。待ってるから、慌てないでね。」
「ぜ…絶対だよ!絶対だよ!!」
「ほら、なのは。寝癖寝癖。」
「にゃ!?何処どこ!?」

桃子さんとなのちゃんの声が聞こえてくるんだけど…大丈夫かな?
そんな声を聞いて待つと制服を着たなのちゃんと桃子さんが奥から出てきた。

(なのちゃん…寝癖…治ってないよ。)

私はそう思いながら笑いそうになるのを我慢する。だって私だって寝癖がついてるしね。

「おはようメビウス君!」
「うん。おはようなのちゃん。あ…なのちゃん、少しいいかな?後ろ向いて。」
「にゃ?良いけど…?」

そう言うと私はなのちゃんの頭、正確にはリボンに手を伸ばす。少し曲がってるなぁ…一度解いたほうが良いかな?
なのちゃんのリボンを解いて、髪も手櫛で整えていく。

「め…メビウス君!?」
「あ、動いちゃダメ。ほら、ジッとしてて。」
「あうぅぅ…うん…」

髪を整えて…なのちゃんの髪の毛サラサラだなぁ、綺麗な栗色だし…桃子さん譲りなのかな?
リボンもしっかりと結んで…よし、出来た。うん、我ながら上出来だ。

「はい。もう良いよ。」
「あ…ありがとう…」

振り返ったなのちゃんの顔は真っ赤になってる。恥ずかしかったのかな…悪いことしちゃったかなぁ…?
桃子さんは桃子さんで笑顔だし…なんだろう?
するとガルムが私の足に長い尻尾を当ててくる。何か言いたい時のガルムの癖だ。

「どうしたの?ガルム。」
「…」

ガルムは無言で私の左腕に視線を注ぐ。正確には腕時計かな?
あ…何時の間にか時間がたってたんだ。少し急がないとダメかな?

「…あっ!なのちゃん、そろそろバス来る時間だよ。」
「にゃ!?それじゃ急がないと。それじゃ行ってきます!」
「はい、いってらっしゃい。メビウス君もね。」
「桃子さん、いってきます。ガルム行くよ。」

桃子さんに挨拶をしながら、なのちゃんと一緒に迎えのバスが来る所まで歩き始める。
途中で今日の授業、テレビ番組のこと、宿題の事なんかを話しながら二人で歩いていく。

「メビウス君。さっきはなにしてたの?」
「さっきって?」
「ほら…私の髪、触ってたから…」
「ん~。リボンが少し曲がってたんだよね。」
「え?そうだったの?」
「うん。けど、なのちゃんの髪の毛ってサラサラで綺麗だよねぇ。」
「あ…ありがとう。けどメビウス君の髪も綺麗だよ?」
「そうかな?」
「うん。なんて言うんだろう。宝石みたい?」
「宝石って…」

私は少し自分の髪を触ってみる。母さん譲りのストレートヘアーで少し蒼いんだ。確かに不思議な感じのする髪の毛。
けど、私はこの髪も大好き。理由は勿論、空と同じ色だからかな。
そんな事を話しながら私となのちゃんはバス停まで歩いていく。
既にバス停には私となのちゃんの共通の友達である、アリサちゃんとすずかちゃんが待っていた。
本当はもう1人居るはずなんだけど…何時もの如く寝坊かなぁ。

「おはよう。すずかちゃん、アリサちゃん。」
「おはよう、二人とも。」
「なのはちゃん。メビウス君。おはよう。」
「うん、おはよう。…何時もの如く…あいつは寝坊…?」

私は辺りを見渡しながら、先に来ていた二人に聞く。可能性は天文学的だろうけど…
すると、案の定、アリサちゃんが、呆れたようにしてるし、すずかちゃんも困ったように笑ってる。

「…まぁ…パターンだね。」
「分かってるなら聞かないでよ。…メビウス、あいつの親友なんでしょ?なんとかしなさいよ。」
「ん~。無理じゃないかなぁ…だって…あいつだよ…?」
「…確かに。」
「にゃははは…」

私とアリサちゃんが顔を見合わせて溜め息をつき、なのちゃんも苦笑いを浮かべている。
すずかちゃんはと言うと…

「おはよう。ガルム君。」
「……」

私の隣に座っているガルムを笑顔で撫でている。猫が好きだと言ってたけど…動物全般が好きなのかもね。
ガルムはガルムで気持ち良さそうにしたら良いのに…クールな表情のまま。
まぁ…すずかちゃんが嬉しそうだから良いかな…?
あ…よく見ると尻尾が少し揺れてる。素直じゃないんだから。
そうしていると送迎のバスがやってきた。何時ものように私達4人は一番後ろの座席に座る。ガルムとはここでお別れ。流石に学校までは一緒に行けないからね。
バスの扉が閉まり、走り出すと同時に曲がり角から走って追いかけてくる男子が居た。

「今日も今日で…走ってるわね。」
「にゃはは。懲りないよね。」
「大丈夫かな…?」
「えっと…タオルとドリンクは何処にしまったかな?」

後ろから走ってくる男子を見ている三人。私は鞄の中に入れてあるドリンクとタオルを取り出して準備をしている。
200m位走ってバスが一時停車し、扉を開ける。走ってきた男子は息を切らせながらも私達の居る座席へと歩いてき、そのまま座る。

「ぜーぜー…はーはー…今日も…走ったぜ…!!」
「お疲れ様、オメガ。はい、ドリンクとタオル。」
「サンキュー。メビウス…」

私が手渡したドリンクとタオルを受け取り、一気飲みをする男子。
名前はオメガ・ガウェイン。私の親友。
そして、オメガかバスに乗り遅れそうになるのは日常茶飯事。
だからこうして私が毎日、ドリンクとタオルを持参しているんだ。

「それで?今日はなんで遅れたの?」
「いやな…昨日の夜の【奇跡の大脱出24時】を最後まで見てたら寝坊してよ…」
「あんた…学習能力ないわね…」
「にゃにおう!漢のロマンを見ずして何を見ろってんだ!!」
「録画して後で見なさいよ!」
「勿論、録画して後でもう一回見るぜ!!」
「うわぁ…オメガ君…何回見る気なんだろう。」

毎度おなじみの口げんかをしてみせるアリサちゃんとオメガ。
私やなのちゃん達は何時もの様に苦笑いしながら、その光景を見ている。
オメガは何故か脱出系が大好きであり、そういうもののマニアでもある。
もしかすると父親のチャーリーさんの影響なのかもしれない。
チャーリーさんは警官で、私の父さんやなのちゃんのお父さんの士郎さんと良くお酒などを飲みに行っている。
詳しくは知らないけど、父さんとチャーリーさんは昔、一緒に働いてたそうで、その後で士郎さんとも仕事を一緒にしたみたい。
なんのお仕事かは私も知らないんだけどね。

「そう言えば、今日、転校生が来るんだよね?」
「あ~…そうだっけか?全然覚えてねぇや。」
「昨日のホームルームで先生が言ってたよ。」
「ちっちっち。なのは。発音が違うぜ?Homeroomだ。」
「わぁ。オメガ君って英語上手だよね。」
「はっはー!!照れるぜ!!なのはぁ!!」
「…さっきまでぜーぜー言ってたのに、元気だよねオメガ君。」
「まぁ…元気だけが取り柄のオメガだからね。」

そう言いながら私は鞄にタオルを仕舞う。
けど…転校生かぁ…閃もなにかしってるのかな?
そんな事を考えながら私達を乗せたバスは学校へと向かっていった。









メビウス・ランスロット
本作主人公。
一人称、私&美少年と言う王道厨二キャラ。
ナデポニコポ搭載。


オメガ・ガウェイン
親友ポジション。そしてネタキャラ。
一直線馬鹿。勉強が出来ない馬鹿ではない。
クラスに一人は居た&居て欲しい馬鹿。


あとがき。
男の子が女の子の髪を梳く場面って…萌えませんか?
そして一人称の難しさを感じた今日この頃…




[21516] 3話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/30 00:24
くくくく……ははは…
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!
僕は…僕は選ばれた…選ばれたんだ…!!!
僕の名前はシルヴァリオス・ゴッデンシュタイナー。ミッドにある超名門一族の跡取りだ。
そして…選ばれた存在!!
くくく…この世界は僕を望んだ!!だから僕は生まれ変わったんだ!!
鏡を見ると金髪碧眼の少年。そう…僕だ!!!まるで物語の主人公みたいじゃないか!!
いや!!僕こそが主人公なんだ!!そう!!このリリカルなのはの世界の!!
うるさい親も僕をゴミを見るような眼で見てたクラスの馬鹿共はこの世界には居ない!!
屋敷に居るのは僕の言いなりになる人間だけだ…!!そして僕を生んだ両親と言う、男と女は屋敷に殆ど居ない…。全て僕のものだ!!
そしてこの世界には僕が愛している高町なのはが居る!!最高じゃないか!!はははははははは!!!!!!!!きっとなのはは僕を待っているんだ。きっと僕を見た瞬間に僕の物になるんだ…!!
フェイトなんて人造の化け物や、はやてなんて犯罪者からも僕が護るんだ…!!
それが僕には出来る…僕は原作を知っている!!そして何より僕の魔力はAランクだ!!全ては僕に高町なのはを手に入れろと言う事に違いない!!
この年でAなら間違いなくS以上には成長するだろう!!フェイトとか言う化け物は人造だからAAAだそうだが…僕の前にひれ伏すさ。


「これから、第97管理外世界の日本に行くぞ。」
「は?なにをなさりに?」
「海鳴市の私立聖祥大学付属小学校に転入する。準備しろ。」
「し…しかし、坊ちゃま。こちらの学校は…」
「やめる。つべこべ言わず準備しろ!!クビにされたいのか?」
「は…はい!!ただいま!!」

ちっ…使えない使用人だ。僕のなのはが事件に巻き込まれるだろうが…
私立聖祥大学付属小学校に転入して…直ぐになのはは僕に惚れるだろうな。さぁ…待っててね。直ぐに僕の物にしてあげる…
…さぁ!!始めようか!!僕となのはの為の物語を!!!くくくくく…はははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!






「おはよう。閃。」
「お~す。閃。」
「あぁ、おはよう。メビウス、オメガ。」

先に自家用車で着ていた閃は自分の席で本を読んでいた。
閃とは3年生になって初めて話したんだけど、直ぐに仲良くなった。
ちなみに席替えでなのちゃん達とオメガ、閃と近くの席にしたんだ。
もちろん、空の見える窓際だけどね。
閃は私にとってオメガと同じくらい大切な友人。いや、親友だ。
なのちゃん達も自分の席でお話をしている。

「なぁなぁ。閃、お前も奇跡の大脱出24時は見たよな?」
「見てねぇっての。お前…本当に好きだな。」
「なんだよ~。閃も見てないのかよ~。」
「お前と違って脱出マニアじゃないんだよ。メビウスは?」
「私?私は…夜空を見てたかなぁ。」
「お前は空マニアかよ。」

そう言いながら閃は飽きれたように読んでいた本を閉じる。
空マニアって…ひどいなぁ。空は一瞬たりとも同じ表情見せないのに…

「脱出マニアに空マニアか。」
「んで、閃は本マニアか?」
「なんでそうなんだよ?」
「いや、授業中だって本見てるしよ。」
「当たり前だろ!!教科書見るだろ!?それで本マニアにされたらたまんねぇよ!!
全校生徒が本マニアになんだろ!!」
「ちっちっち!!俺は教科書なんて見ないぜ!!The textbook is not seenだぜ!!」
「見ろよ!!勉強しろよ!!」
「オメガ…自慢する事じゃないよ。」
「お前はなんの為に学校に来てんだよ…」
「もちろん!!purpose is to play soccerだ!!」
「とりあえず…お前は根本的な所から俺達とは違うようだな。」
「まぁ…オメガが勉強してたら…変だよね。」

自信満々に答えるオメガに呆れる閃と私。
まあ、オメガはサッカーが大好きで、士郎さんがオーナーをしているサッカーチーム翠屋JFCに所属しているしね。
ちなみに番号は11番。なんでもオメガか一番好きな番号で、チャーリーさんも現役当時は11番だったそうだ。
なんの現役から教えてくれなかったけど…ちなみに私も頻繁に誘われるけど…私はどっちかと言うとバスケット派だからなぁ。

「そういえば、閃。今日、転校生来るらしいんだけどよ。なんか知らないか?」
「あ~…海外から来るそうだな。…なんで俺に聞くんだ?」
「鳴海の情報は全て閃が操作してるって言う噂が。」
「んな根も葉もない噂流したの誰だよ!?小学3年にできることかよ!?」
「根も葉もない噂を流したのは俺だ。」
「オメガぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

何時もの様にオメガが馬鹿な事を言って閃を怒らせる。ちなみにオメガには自覚がないから余計に質が悪い。
私は取っ組み合いを始めるオメガと閃を見ながら自分の席に荷物を置く。
止めないのかって?二人の顔を見れば止めなくても大丈夫。だって笑っているからね。
日課になっててお互いに楽しんでいるんだよ。
さて、教科書を仕舞わないとね。
鞄から教科書を取り出しているとなのちゃんが私に声をかけてきた。

「あ…ねぇねぇ、メビウス君。」
「ん?どうしたのなのちゃん?」
「えっとさ。まだ朝だけど…お昼一緒に食べようね。」
「うん。良いよ。けど…もうおなか減ったの?」
「ち、違うもん!!」
「ふふ。冗談だよ。一緒にご飯食べようね。」
「うん!絶対だよ!!」

そう言いながらなのちゃんは自分の席に戻っていった。けどお昼かぁ。気が早いと思うんだと…
あ、なんだか私も楽しみになってきた。おっと…チャイムが鳴ってるし…とりあえず、まだ取っ組み合いしてる二人を席に着かせないと。



・閃・

「と言う訳で、ご両親のお仕事の都合で新しくクラスの一員になるシルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー君です。みんな、仲良くね。」
「シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナーです。よろしくお願いします。」

そう言いながら頭を下げる転校生、シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー。…舌噛みそう…
しかし…ゴッデンシュタイナー…ねぇ。俺の知る限りじゃ…原作に一瞬たりとも出てきてないな…
となると…こいつもオリジナルって事か?いや…けど、メビウス達みたいにACE COMBAT系統のキャラでもないだろ…?
VR世界の人間か…?
いや…待てよ。ゴッデンシュタイナー…ゴッデンシュタイナー…。思い出したぞ。名門ゴッデンシュタイナー一族か…。
ミッドの情報ももちろん、俺の耳にも入ってくる。それに両親もこちらに一緒に暮らしているからミッドの新聞も取り寄せている。
そしてゴッデンシュタイナーと言えばミッドの名門にして管理局と密接な繋がりを持つ一族のはずだ。

(つまり、あいつはそこの御曹司と言うわけか…なのになんで鳴海に?)

そう思いながら俺はシルヴァリアスの顔を見る。整った顔で金髪碧眼。まぁ…モテる要素満載だな。普通の学校ならな。
残念なことにこの学校にはメビウス・ランスロットと言う厨二満載の美少年がいるからなぁ…あいつでも無理だろうな。

(…っ…おいおい、なんか…寒気が…)

シルヴァリアスと一瞬だけ眼があったが背中に寒気が走った。転生者の勘は知らないが…あいつはやばい。
確実に…悪い方向に持っていく。なぜだか知らないが、そんな予感が俺の中に生まれた。それに…ほんの一瞬…ほんの一瞬だ…
なのはを見た奴の顔が…哂いやがった…。

「それじゃ…シルヴァリアスはあそこに座ってね。」
「はい。」

そう言って先生が指差したのはなのはと正反対の席。つまり俺とも離れている所だ。
…原作には無いゴッデンシュタイナー一族、そこの御曹司にして不可解なな転校…そしてなのはを見た嫌らしい哂い…
俺の中で仮説が立てられていった。

(奴も…転生者…?)

そう思いながら俺はシルヴァリアスを見るのだった。


・メビウス・

「メビウス君!一緒にごはん食べよ!!」
「はは、慌てないで。けど、私は当番だから黒板の掃除してるから、先に行ってて。」


午前の授業も終わり、お昼時間になって直ぐになのちゃんが私の席に走ってくる。
近くなんだから走らなくても良いのになぁ。
そう思いながら私も鞄からお弁当箱を取り出して、机の上に置く。

「だいじょうぶ、待ってるよ。」
「そう?ごめんね」
「うぅん…その…一緒に行きたいもん…」
「え?なにか言った?」
「な…なんでもないよ?本当だよ?」
「?」

私は当番だから黒板に書いてある文章を消すから後で向かうんだけど…なのちゃんは待っててくれてるみたい
オメガ達やアリサちゃん達は何時もご飯を食べている屋上に向かっていった。
ふっとなのちゃんの席に視線を向けるとシルヴァリアス君が近づいていく。


「ねぇ。高町さん。」
「は…はい?なに?シル…ヴァリアス君?あれ?なんで私の名前…」
「はは、名札を見たんだよ。あと名前は言いにくいなら、シルバーって呼んで。
僕もそう呼ばれたいから。それで一緒にお昼はどうかな?」
「え?お昼ご飯?」
「うん。一緒に食べようよ。」
「あ…えっと…」

なのちゃんが私が困ったように私の方を見る。
優しいからなぁ…断れないのかな。なのちゃんは優しくてとても明るい。だからか、時々無理をする事がある。
私が止めないと大変なときもあるからなぁ。
よし黒板も掃除したし…私は、なのちゃん達の方に歩いていく。

「なのちゃん。」
「あ…メビウス君。」
「…君は?」
「私の名前はメビウス・ランスロット。よろしく。」
「ふ~ん。で?高町さんになにか用事?」
「前から、なのちゃんとご飯を食べる約束をしてたから、呼びに来たんだ。」
「…高町さんそうなの?」

一瞬、シルヴァリアス君の眼が鋭きなった気がするけど……
問いかけられたなのちゃんは何故か私の後ろに回ってコクコクと頷いている。
ちょっと可愛いかも…って、なんでこんな怯えてるんだろう?

「シルヴァリアス君も一緒にどう?」
「…もういいよ。。それじゃ。」

短くそう言うとシルヴァリアス君は自分の席に戻っていった。折角、仲良くなれるチャンスだと思ったのになぁ。
けど、直ぐに他のクラスメイト達がお昼に誘って一緒に食べるみたいだけど…何故か私を睨んでるような感じがする。
なにか怒らせるようなことしたかな…。

「メビウス君…」
「っと?どうしたのなのちゃん?」

シルヴァリアス君が居なくなって、すぐになのちゃんが私の背中にギュッとしがみ付く。
小さい頃から一緒に居て、恐いことがあったり、甘えたりする時にこうするんだけど…どうしたんだろう?
戸惑いながらも私はなのちゃんが落ち着くまで、そのままでいた。

「うぅん…なんでもないよ。」
「そう?それじゃ、屋上に行こう。」
「あ…うん!!」

そうして私はなのちゃんと手を繋いで、一緒に屋上に向かった。

(メビウス君の手、柔らかくてあったかいなぁ…うれしい…)
(……メビウス…ランスロット…僕の邪魔をするのか…!!!!!)




屋上に着くと先に来ていたオメガ達がお弁当を広げて待っていた。
何時もの場所に何時ものメンバー。周りを見ると他の学年の生徒達もちらほらと見える。
私となのちゃんも並んで座り、お弁当の蓋を開ける。

「あ~…腹減った!!遅いぜ、メビウス~。」
「ごめんごめん。さあ、食べよう。」
「オメガ君、毎回毎回、朝に走ってればお腹も減るよ。」
「これでも丼3杯は食べてんだけどなぁ。」
「あんた…そんなに食べて、よくあんなに走れるわね…」
「いや、5杯はいけんだけどな。すずかもどうだ?」
「そ…そんなに食べたら太っちゃうよ…」
「その栄養を頭に回せ。」

すずかちゃんが驚いたようにして眼を丸くしてる。閃は閃で呆れたようにしてる。
まぁ…確かにオメガは沢山食べるからなぁ…。けど、オメガってこんなのだけど頭は悪くないんだよね。
そんな事を考えながら私はなのちゃんに視線を移す。
さっき、何かの怯えてたみたいだけど…今は大丈夫みたいで安心する。

「そう言えば…今日の授業でさ、将来の夢ってあったよね。」
「あぁ。あったなぁ…アリサ達は親の跡を継ぐのか?」
「そうなるわね。だからきちんと勉強しないと。」
「うん。私もかな。けど、やりたい事があったらそれをやっても良いっては言われてるよ。閃君は?」
「俺?…あ~…俺もアリサ達と似たようなものかなぁ。メビウス達はどうなんだよ?」
「もちろん!!俺は警官だぜ!!」
「チャーリーさんと同じか。まぁ…体力馬鹿のお前には向いてるな。」
「なのははどうするの?翠屋を継ぐの?」
「え?私?う…う~ん。そうなるのかな?けど、お菓子作りとか好きだし…。あっ、メビウス君は?メビウス君はどんなお仕事するの?」
「私は…空関係の仕事が良いな。」
「空?」
「うん。」

そう言いながら私は青空を見上げる。
何故か分からないけど…空が私を呼んでいる気がするから。だから私は空が好きなのかもしれない。

「まぁ…メビウスは空マニアだからな。」
「けど…メビウス君には似合ってる気がするよ?」
「ありがとう。けど、なのちゃんが翠屋を継ぐのかぁ。」
「え…変…かな?」
「いやいや、前のなのちゃんの作ったクッキーがおいしかったからね。」
「ほ…本当!?」
「うん。また食べたねぇ。きっとなのちゃんは素敵なパティシエになれるよ。」
「そ…それならまた作るね!!また…食べてね?」
「おいおい…メビウス、独り占めはよくないぜ?」
「なのはちゃんのクッキー。私も食べてみたいかも…」
「うん!!オメガ君やすずかちゃんも…皆の分、がんばって作る!!」

なのちゃんが張り切ったようにして言うのを私は笑いながら見つめる。
うん、やっぱりなのちゃんは笑顔が一番。誰よりも一生懸命な彼女にはとても似合う。



放課後

「よっしゃぁぁ!!今日の授業も終わった!!I will play soccer in all members!!!」
「オメガ!!今日こそは負けねぇぞ!!」
「掃除当番は掃除してから来いよ!!校庭にLet's go!!」

そう言うとオメガを筆頭に男子生徒達は校庭へと走っていく。
掃除当番はしっかりと残っている辺り、オメガの指導力の賜物なのかもね。
いい意味で底抜けの馬鹿のオメガはクラスでも人気があるからなぁ。
なのちゃん達は今日は塾があるみたいで先に帰ったみたいだし…私も今日は早く帰ろうかな。
夜になる前に天体観測の準備をして、海鳴臨海公園に向かうから急がないと。

「ん?メビウス、もう帰るのか?」
「今日は用事があるから…閃は?」
「俺は向かえ待ちだな。あと5分くらいで来るから、乗っけていこうか?」
「良いの?それじゃ、お願いするよ。」
「あいよ。っと…噂をすれば来た様だな。行こう。」

閃の家の車に乗せてもらうのは久々のような気がする。
何時もはなのちゃんやオメガと歩いて帰るんだけど、今日は一人だからなぁ。
車と言ってもアリサちゃんのようなリムジンではなくて、普通の乗用車。
閃は中心街のマンションに住んでいる。特別、通り道と言うわけでもないけど、遠回りでもないからこうして乗せてもらう事ができるんだろうね。
車内では今日の授業の内容や、シルヴァリアス君の事を話したけど、なんでか閃はいい顔をしない。
まぁ…私も少しだけとシルヴァリアス君に良い印象は持っていない。なんだか…いやな感じがするんだけど…勝手に決め付けるのはよくないかな。
そんな感じの事を話したり考えていると私の家の前に着く。

「それじゃ、また明日な。」
「うん。ありがとう。また明日。」

閃と挨拶を交わして、家の中に入る。この時間帯は両親はお店の方に行っていて家には居ない。
玄関の鍵を開けて中に入ると何時ものようにガルムが出迎えてくれた。

「ただいま。ガルム。」
「おかえりなさいませ。メビウス様」

ガルムから男の人の声が聞こえてくる。けど、私は驚きはしない。
だってガルムは私と契約を交わした使い魔なんだからね。
私は制服のボタンを外しながら自分の部屋に向かう。ガルムも後を追いかけてくる。

「さて。準備していかないと…」
「既に我が準備をしておきました。何時でも出発できます。」
「ありがとう、ガルム。助かったよ。それじゃ…軽く何かたべて行こうかな。」
「キッチンにコーンフレークを準備してあります。そちらを召し上がってください。」
「…本当に気が効くね。」
「メビウス様の為ですので。」

そう言うとガルムは誇らしげそうに顔を上げる。
本当にガルムは私に良くしてくれる。こうして色々と準備がしてくれるんだけど…なんだか申し訳ない気持ちになるなぁ。
そう思いながら着替えてキッチンに向かうとガラスの器に入ったコーンフレークを見つける。
食べている間はガルムは寝そべって待っているたけど、食べ終わる頃にはキッチンから出て行って何かをしていた。

「ガルム~?そろそろ行くよ。」
「はい。重い荷物は我が持ちますので…メビウス様はそちらの携帯ラジオ等を。」

玄関に行けばガルムが変身していた。黒いジャケットに黒いジーパン。そして紅い髪の細身の成人男性。
これがガルムの人間形態なんだよね。これなら小学生である私が夜に出歩いても、ガルムが一緒なら保護者として多少は大目に見られるからね。
ガルムが望遠鏡や毛布を、私はラジオや小さいシートを詰めたリュックを背負う。まだ春とは言え、夜は冷えるからね、毛布は絶対に必要なんだ。

「車で向かいますか?」
「ううん。時間もあるし歩いていこう。10時前には終わりにするからね。」
「仰せのままに…」

こうして、私とガルムは歩いて海鳴臨海公園に向かう。
結構、ガルムは重い荷物を持っているんだけど、息切れをしない。流石に体力あるなぁ。
私もばてないようにしないと…


海鳴臨海公園

「さて…付いたね。」
「はい。多少は時間がかかりましたが…現在6時30分頃ですね。」
「うん。空も暗くなり始めてきたし…セットしようか。」
「はい。場所は何処にいたしますか?」
「やっぱり展望台辺りだね。」
「了解しました。我が準備しておきますのでメビウス様はお身体をおやすめください。」
「別にそこまでしなくてもいいからさ。私も準備するよ。」

私は小さく苦笑しながら展望台に向かう。流石にガルムにそこまでさせたらまずいからね。
ガルムは少し慌てながら私の後を着いてくる。展望台は…あっちだね。
展望台に行こうとして顔を上げると…大きな爪があった。…なんで?

「…え゛?」
「メビウス様!!??」

爪が地面に振り下ろされて…衝撃で私は吹き飛んだ。
けど、地面に激突するかと言うところでガルムが受け止めてくれて怪我はなかったんだけど…

「な…なんだ…こいつは…」
「…犬…?」
「グルルルル…」

そこには体長5mはある黒い犬が居た。けど…明らかに普通じゃない。
大きな爪に長い二本の尻尾、そして…眼が狂気そのものの色をしている…!!
眼をぎらつかせながら、口から涎を垂らしている。しかも、その涎が垂れた瞬間に地面を溶かす…!?
それに…額の部分に変な…宝石が見える。

「…魔道生命体…?」
「額の宝石から魔力要素を感じます。恐らくアレが原因かと。」
「ガァァァァァ!!!!」

大きく咆哮を上げる黒犬。くぅ…結構…頭に響くなぁ…けど、不味いな。この声を聞いて誰か来たら…
しょうがない…悪く思わないでね…私も食べられたくないからね!!

「ガルム!!攻撃を仕掛けるよ!!狙いは額の宝石!!尻尾には気をつけて!!多分だけど鞭みたいに使ってくるよ!!」
「御意!!」
「さて…久々に…やろうか…!!」

そう呟きながら私はペンダントを握り、自分の力を呼び起こす。

【我が纏うは蒼。纏うは誇り。汝は約束されし勝利の剣なり。我の手に来たれ!!エクスキャリバー!!】

蒼い光が私を包み…私の服が変化していく。
蒼いマントとコート、そして胸には銀色の胸当て。そして特徴は左右の肩から後ろに伸びる蒼いリボン。
そして私の眼の部分を完全に覆う蒼いバイザー。
そこに示されるのは私の名前と私のデバイスの名前。
Master。 Mebius Lancelot
Device。 Multi Pul Beam launcher。Suraipuna Excalibur

エクスキャリバー。聖剣の名を冠したデバイス。これが私の…剣だ!!






シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー。
転生者その2
生前は自己中オタク。現在は金髪碧眼の少年。なのは以外眼中無し。
コンセプト、読者様&作者からこいつうぜぇぇぇぇ!!!等のバッシングを受けるキャラ。


あとがき
英語に関しては翻訳サイトを使用しておりますので…変なのがあったらすいません。
オメガは某ゲームの独眼竜様的テンションです。すません。
そしてコメントありがとうございます。
ちなみに苗字が円卓騎士なのは…B7R繋がりということです。
メビウス君はバリアジャケットのイメージは…白騎士物語に出てくるマスターロリカ系の装備を想像していただければ幸いです。
調べれば画像は出てくると思います…。

そして…題名募集中(爆!!

以下、返信
薺様

閃君は巻き込まれたくないけど手遅れな感じです。
搭乗機は…マルチロールタイプのホーネット系統ですね。器用貧げふんげふん。柔軟に対応できる人間を目指しております。

ご都合主義者様

え?私も5の最後は5機に見えるんですが?(笑
サイファーはあらあらうふふが似合うお母様ですが…忘れてはいけません。彼女は…鬼神ですよ(にやり。
他のキャラも出す予定ですので…期待に添えれるように頑張ります。

ダンケ様

スライプナーはメビウス君のデバイスになりました。ご期待に背き申し訳ないです。
ちなみに閃君のデバイスは次回に判明します。個人的にはVR系はデバイスにしてみようかと計画中。

34様

ネモやグリフィスは微妙ですが…ブレイズは絶対に出したいキャラですからねぇ。
そこはご都合主義でお願いします。



[21516] 4話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/10/06 20:38
『バリアジャケット展開終了。戦闘モード移行完了しました。マスター。』
「エクス。ブリッツセイバー展開。接近戦でいくよ!!」
『了解しました。ブリッツセイバーを展開します。ランチャーからセイバーに移行。』

デバイスから聞こえてくる女の人の声。
Suraipuna Excalibur。これが私のデバイス。フレッシュリフォーで開発されたインテンリジェントデバイスで中距離と近距離の両方で使えるんだ。
ちなみに愛称はエクス。AI設定では女性として登録してある。私のサポートもこなしてくれる頼りになるパートナーさ。

『目標のデータ解析が完了しました。どうやら額の宝石、恐らくはロストロギアにより変異した物と考えられます。
額のロストロギアを除去すれば元の生物に戻ると思います。』
「やっぱり…ガルム!!」
「はっ…!」

エクスの銃身部に細くなり蒼い刃が構成される。近距離戦のブリッツセイバーだ。
そしてバイザーに示された黒犬の情報に目を通す。エクスの解析したとおり、額から強い魔力反応を確認できる。
まずは体勢を崩さないと…

『目標の尻尾は危険と判断します。自動防御を使っては如何でしょうか?』
「当たる気はしないけど…用心に越したことはないね。タリズマン!!」

バイザーに示された魔法を使うと、私の周りに二つの蒼い魔法球が出現し、旋回し始める。。
自動防御魔法、タリズマン。攻撃を感知すると自動でガードしてくれる。広域殲滅系統の魔法には大して意味は無いし、連続して攻撃を受ければ消えてしまうけどね。
それにこれを貫通するほどの魔法にも耐えれない。まぁ…そんなのをポンポンと撃ってくるのはそうそう居ないだろうけど…
それでもこの黒犬から防御するには充分だろう。

「攻撃して体勢を崩すよ!!」
「御意!!」

ガルムが走り出すと同時に私は地面から数cmだけ浮き上がり、滑るようにして移動する。
黒犬が振り下ろした左足をガルムが掌底で打上げて、喉元に跳び蹴りを叩き込む。そして空中で黒犬の額に回り蹴りを決めようとするけど、宝石が障壁を展開してそれを防ぐ。
そのままガルムは弾かれる様にして離脱をする。喉元に蹴りを叩き込まれたのか動きが止まる。
私はそれを見逃さず、左手に新たに展開していた蒼い光球を投げつける。ボムと名付けた一種の砲撃魔法だ。
もっともこれは撃ち出すのではなく、投げつける独特のタイプなんだけどね。
これは相手の動きを阻害できるし、攻撃も無効化する能力がある便利な魔法。それに発光するフラッシュタイプなんてのもある。
ボムが命中し、相手の動きか一瞬止まる。そしてすれ違いざまにセイバーで横に一閃。そして黒犬の背後で急制動【キャンセル】をかけて尻尾を二本とも切り落とす。
スピードを完全に抑えて、方向転換や姿勢制御を可能にする【キャンセル】のお陰で直ぐに振り返ることが出来る。
ちなみに両肩のリボンが一種のスタビライザーの役割を果たしてくれているんだ。
そしてそのまま直ぐにエクスを横に一閃にすると一文字の斬撃が撃ち出される。
私の持つ魔法の中で最も攻撃速度に優れたソードウェーブだ。エクスから放出される余剰魔力を使っているために詠唱は必要がない。
ちなみにこれはある程度、制御できる。ソードウェーブを黒犬の足に飛ばし、それを爆発させて体勢を崩す。
衝撃で尻尾の傷口から吹き出るようにして黒い液体が来るけどタリズマンが防御してくれる。
その液体が近くのベンチに付着し、溶かしていく。涎以外も溶解液って事か…!!

「ガルム!!」
「はぁぁぁ!!!!」

私がセイバーで攻撃している間にガルムは離れて助走をつけて高く跳躍し、黒犬の背中に踵落しをお見舞いする。
地面に這い蹲るようにして倒れる黒犬に更にボムを投げつけて動きを止めて前に回りこむ。

「ソードウェーブ…」
『フリーケンシー。』

さっき使ったソードウェーブの強化版ソードウェーブ・フリーケンシー。十字の斬撃が黒犬の額の宝石にと命中する。
ソードウェーブの様に一瞬で出せる魔法ではないけど、威力は倍以上違うし速度もソードウェーブ並だからとても使いやすい。
命中すると断末魔を上げるようにして黒犬はのた打ち回る。可哀想だけど…我慢して欲しい・・・
数秒間すると少しずつ動きが弱くなっていく。良く見ると宝石の発する光も弱くなり、最後には犬の額から外れる。
すると犬の身体が徐々に小さくなり、普通のサイズにと戻っていく。
怪我は…何処もしていない。宝石の力で仮初の身体を与えられていたと言うこと…?

「ガルムはその犬を介抱しておいて。エクス、データ解析を」
『「了解しました」』

宝石を拾い上げ、エクスで解析と封印を始める。
さて…この宝石はロストロギアとすると…これを探している人が居るのかな…
そこまで考えるとバイザーに新しい情報が書き込まれていく。
近くに魔法反応…魔道師が居る…?
直ぐに反応があった方向の空に視線を向けると…一人の女の子が浮かんでいた。
綺麗な金髪に…神秘的な真紅の瞳。黒いバリアジャケットを纏っている私と同い年くらいの女の子。
小柄な身体に不釣合いな巨大な斧のようなデバイスを持っていてる。
私が見ていることに気が付いたのか、デバイスをこちらに向ける。って…攻撃する気!!??

「ま…待って!!こっちはなにもしないから!!」
(メビウス様。彼女も殲滅しますか?)
(とりあえず待機してて!!下手に行動おこなさいでよ!!)

ガルムから物騒な念話が届いてるけどきっちりと押さえつける
流石にわけも分からず攻撃されたら洒落にならない…!
私は必死に大きな声を出して敵対する気は無いとアピールする。
それが届いたのか女の子は警戒しながらゆっくりとこちらに降りてくる。近くで見れば見るほど綺麗な顔立ちをしている。

「えっと…こんばんわ?」
「……」
「あ…あはは…私になにか…?」
「それを渡して。」
「…これを?」

女の子が指差したのはさっきまで黒犬の額に付いていたロストロギアだ。
もしかして…これを回収しに来たの…かな?
…どうしようか…別に渡しても…。そう考えながらばれない様にエクスに念話を飛ばす。

(データ解析は終わった?)
(充分とは言えませんが…必要最低限のデータは取りました。データベース照会する程度は可能です。)

なら…渡しても良いかな。ここでまた戦う気にもなれないし。
そう思いながら私は手に持っていた宝石状のロストロギアを差し出す。

「良いよ。はい。気をつけてね。」
「…!?そんな…簡単に…良いの?」

こんなにあっさりと渡されるとは思っていなかったのか、女の子は驚いている。
もしかして…私と戦う気だったのかな?それだと流石に洒落にならないしね。連戦はこなせるけど…この女の子自体かなり強いと感じる
それに…なんとなくだけど…困っている感じがするしね。

「うん。君はこれを探してたんでしょう?だったら良いよ。それに…ね。」
「?」
「なんだか…困ってるみたいだしね。」
「え…?」
「ん〜…瞳の奥で何かが揺れてる感じがするからねぇ。きっと必要なんでしょ?だから、持っていって。」
「…あ…。ありが…とう。」
「いえいえ。どういたしまして。」

なんだから分からないけど御礼を言われる私。
女の子も少しだけと可笑しかったのか笑顔になる。今度は綺麗と言うより可愛いなぁ。
って…そう言えば…名前を聞いてなかったなぁ。会ったばかりだけど…

「私はメビウス。メビウス・ランスロット。君は?」
「…フェイト…テスタロッサ。」
「そっかぁ。フェイトちゃんかぁ。素敵な名前だね。」
「あ…う…」

褒められたのが恥かしいのか顔を紅くして戸惑うフェイトちゃん。
最初は無表情だったけど…うん。やっぱり普通の女の子だね。
そうほのぼのと考えていると…海鳴市のマップが表示され、イザーに新しく魔力反応を二つキャッチしたと表示される。
一体何処から……あれ…反応の一つに該当データあり…?

「該当データは…っ…なの…ちゃん!?」

そんな…どうして…なのちゃんが魔法に目覚めるなんて…普通に暮らしてればありえない…ありえない…!!!

「どうしたの…?」
「ごめん!!フェイトちゃん!!友達が巻き込まれてるかも!!またね!!」
(ガルムは待機!!絶対に動かないで!!)

フェイトちゃんに謝ってから、直ぐに飛行魔法を使って空に飛び上がる。
そして反応があった方向に視線を向ける。バイザーに表示されるのは高魔力反応とさっきと同じ反応。
やっぱり…さっきと同じロストロギアが…
簡易マップじゃ大まかな場所しか分からない…!!

「サテライト起動!!探し出して!」
『サテライト起動します。』

広域探索魔法、サテライト。蒼い魔力で作られたサーチャーが空高く飛び上がる。
エクスにマップを登録しておけば上空から自動的に目標を索敵してくれる探索魔法。その詳細マップと情報がバイザーに表示される。
拡大すると白いバリアジャケットを着たなのちゃんが黒い靄みたいなのと戦っている。
場所は…臨海公園の近く…約2キロ!!細かい座標が示される。
さっき戦った黒犬ほどじゃないけど…それでも初心者のなのちゃんはてこずっているみたい。
直ぐに私はエクスに新しい魔法を準備させる。

「セイバーからザッパーに変更!!」
『ザッパーモードに移行します。』
「ラディカル・ザッパーを使う!!装填!!」
『魔力充填開始します。』

横になった銃身部が2つに分かれ、巨大に変形し砲門形態なる。そして中央のエクス本体に魔力が収束する。
私の持つ直射魔法で最高の威力を誇るラジカル・ザッパー。少し発射に時間が掛かるけど、命中率もエクスの補助のお陰で高い必殺の魔法。
サテライトと併用すると遠距離狙撃も可能な魔法なんだ。

『充填完了。マスター行けます。』
「貫け!!ラジカル・ザッパー!!」

砲門から放たれる蒼い魔力の弾丸が遠くのロストロギア目掛けて飛んでいく。
それを見ながら直ぐにエクスを変形させる。
本体後部から二つのブースターノズルが展開し、サーフィンボード状に変形する。本来は別な使い方なんだけど今は必要ない。
高速移動を可能にする巡航モード。普通の飛行魔法より速度が速いかわりに消費する魔力の量が多いけど、今はそんなことに構っている暇はない。
2k位なら直ぐに行ける距離だ。

『ラジカル・ザッパー、着弾を確認しました。敵ロストロギアの反応が弱体化。まわりの思念体らしき物も消失。
恐らくは散ったと思われます。』
「直ぐに向かうよ!!ブースター起動!!」
『了解しました。ブースター起動します』



・閃・

「…派手にやってんなぁ。」

俺はそう呟きながら空中に映し出されている画像を見る。
ちなみに俺は自宅マンションのベランダに居る。
今日はなのはが魔法に目覚める日で、とりあえず見てみるかと軽い気持ちで索敵をしていたら、何故かメビウスまで見つける始末。
そういえば、あいつ天体観測に行くっていってたなぁ。運悪くジュエルシードでも見つけたか?
メビウスがジャケットを展開して、黒犬と戦闘を開始する。

「お…やっぱり主人公らしくスライプナーか。まぁ…妥当なところだな。」
『フレッシュリフォーで開発された最初期のデバイスですね。不安定な出力ですが、使いこなせれば心強いですね。
それに、形状的にカスタマイズが施されていますかと。』
「へぇ…あれって超高級限定モデルだろ?しかも高ランク魔道師用に開発されたんだろ?」
『はい。他にも同系統のデバイスが開発されましたが、全て個人に渡っています。』

なるほどね。しかし、魔法と言うか…技がゲームと似たような感じか。っと…ダッシュして、急制動しかけたか。…あれか?テムジンのジャンプキャンセルか?
見る限り汎用性が高いか。近距離ではブリッツセイバーがあるし、中距離ならボムにニュートラルランチャー。
それに使ってるのがメビウスだしなぁ…速度は神で耐久は紙ってか。配信機体と同じかもな。
俺は腕に取り付けられているデバイス。【ナイトレーベン】を操作する。杖とかそういうタイプじゃなくてガントレットタイプだ。
そこ、挟まっちまったぜとか言うんじゃねぇよ。AIは女性タイプだよ。ちなみに…かなり性格が変だ。
着ているのは黒のバリアジャケットだ。…いいだろ。好きなんだよ。被るけど…
ナイトレーベンはどちらかと言うと支援タイプに変更している。
流石にB-の俺が主戦力になるわけもないので、索敵妨害と魔法妨害のジャミングとか、超広範囲索敵の魔法をメインにしている。
一応は攻撃魔法も登録してあるが…何故か俺の魔力じゃ一発が限界の特大魔法だ。なんでだよ…

「なぁ…レーベン…やっぱり普通の魔法にしないか?」
『閃の魔力じゃ手数が足りなくなります。接近戦の魔力刃を展開するのだって結構苦労するんですよ?
魔力要素が低いのに燃費も悪いなんて…はぁ…』
「ため息つくなっての…!!」
『なので一撃必殺を行ってください。体力も速度も持久力もない短距離ランナーなんですから。』
「それ…最悪だろ…。」

そう…俺はランクも低いのに何故だか知らんが燃費も悪い。皆が1の魔力を使うのに対して俺は5の魔力を使う。
だから消費量の少ないはずの索敵魔法だけでも結構、負担になるんだよな。これってレアスキルか…?
転生者って…チートが普通だと思っていると痛い目見るぜ。本当に…。
ちなみに一度、訓練で特大魔法を使ったんだが…1日動けなかった。

「っと…なのはの方も始めたか。…ん?臨海公園の近くかよ。なんでだ?」
『臨海公園にも新たなる反応がありますね。…ウホッ!!いい女の子。』
「…レーベン…お前…」

若干、レーベンに引きながら新しくウィンドウを展開してなのはとメビウスを見る。
っと…メビウスの方にはフェイトが居たのか…って…あ~あ…ジュエルシード渡しちまったよ。
まぁ…なんの為に集めてるのか知らないだろうし…あいつが困ってる人を見捨てれる訳ないしなぁ。
なんて喋ってるのかは聞こえない。ただ画像が展開してるだけなんだけど…お。出たよニコポ。流石は我が友人にして厨二搭載。

『恥らう乙女…萌え…!!』

……なんかレーベンが悶えてるが俺は何も知らない…何も知らない…何も知らないからな…!!!
お…なのはが戦闘してるのに気が付いたのかメビウスが空に飛び上がる。
…おぉ…デバイスの形状が変化して…ってやば…!!索敵魔法使ってやがる!

「マナ・ステルス!!魔力消せ!!」
『消すほどの魔力もありませんよ?』
「んな事は百も承知だよ!!保険だ保険!!」
『仕方がない…起動。』

マナ・ステルス。そのまま魔力を隠すと言う魔法だ。魔力反応を探す索敵ならこれを使えば場所がばれる事はない。
俺程度の魔力じゃ他の魔法が使えなくなるが、なのはとかならこれを使ってる間も攻撃魔法が使えるだろう。
まぁ…あいつがそこまで器用かどうかは知らんが…
索敵撹乱のジャミングの方が燃費がいいが今回は使わない。当然だろう?一箇所だけ空白の部分があったら気になるじゃないか?
ステルスは魔力反応自体を隠すから、ばれはしない…筈。
そうこうしていると蒼い奔流が移る。

「おおぅ…あれってラジカルザッパーか?」
『閃の数倍はある魔力ですね。うらやましい限りです。私もあんな主に…』
「おいこら。ネタデバイス。」
『なんですか?へっぽこ?』
『「………」』
「いい度胸だ、バラバラに分解しちゃるあぁぁぁぁ!!」
『マッハでボコボコにしてやんよ!!』

こうして俺はレーベンのバトルが開始したのである。


・なのは・

「はぁはぁ…ゆ…ユーノ君。私どうすれば良いの!?」
「とりあえず、距離をとって!!その後に魔法を…」

今日、私は塾が終わって直ぐに走ってお家に帰った。
だって…お昼にメビウス君が私の作ったクッキーがおいしいって言ってくれて、凄く嬉しかった。
それで、お仕事が終わったお母さんと一緒にクッキーを作って皆より先にメビウス君にあげようとしたんだ。
出来上がってメビウス君のお家に届けようとしたら、なんだか臨海公園に天体観測に行ったってサイファーさんに言われたの。

「あら?なのはちゃんこんばんわ~。」
「こんばんわサイファーさん!メビウス君居ますか?」
「メビウスちゃん?ごめんねぇ。今日、天体観測に臨海公園に行ってて居ないのよ。」
「あう…そうなんですか?」
「えぇ。あら?クッキーかしら?」
「あ…はい。メビウス君に食べてらおうと思って…」
「あらあら良いわねぇ♪預かっておきましょうか?」
「えっと…臨海公園ですよね?届けに行きます!!その…お夜食になれば良いですし…」
「そぅ?なら桃子さんに電話したほうがいいわねぇ。」

むぅ…私も誘って欲しかったなぁ…。そのままお電話をかりてお家に連絡。私も急いで臨海公園に向かうことにしたの。
そしたら…なんでか分からないけど動物病院に居たはずのフェレット、ユーノ君と出会ったり、変なお化けみたいなのと戦うことになっちゃって…
今の私は路地みたいなところで戦っている。人が来ないのはユーノ君が結界魔法って言うのを使ってくれてるかららしい。

「最初に防御して!!」
「え!?ぇぇ!?防御ってどうするの!?」
「ええっと…レ…レイジングハート!!」
『アクティブプロテクション。』

私の杖、レイジングハートが突進してきたお化けを見えない壁みたいなので防いでくれる。
ほへぇ…これが魔法なんだ…
け…けど、これって防いでるだけだよね?後はどうすれば…

「次に攻撃魔法を…って…なんか飛んで…」

ユーノ君が私の肩の上で空を見上げる。なんか…蒼い光線が…こっちに飛んでくるよぉ!?
蒼い光がお化けに突き刺さって…消えていく…?

「これって…砲撃魔法…?けど…何処から…僕の結界を…」
「ね…ねぇユーノ君、誰か飛んでくるよ?」

蒼い光線が飛んできた方を私は指差す。蒼い服を着た男の子がこっちに飛んでくる…
あれ?なんだか…見たことある…?
男の子が私達の近くまで来るとゆっくりと降りてくる。

「大丈夫!?なのちゃん!?」
「そ…その声って…メビウス…君?」

バイザーであんまり顔が分からないけど…聞こえてきたのは私の知っている声。とってもとっても安心する優しい声だった。
戸惑っている私を見て気が付いたのかメビウス君はバイザーを消して、小さく安心したように笑う。

「はぁぁぁ…よかった…怪我はしてないみたいだね…」
「……」
「ん?…なのちゃんどうし…っと…」
「メビウス君…メビウス君…!!」

メビウス君だと分かると私は抱きついていた。眼から涙があふれてくる。
ユーノ君が慌てて地面に降りたけど、そんな事関係ない…。

「こ…怖かった…よぅ…な…なにも分からなくて…ぐす…」
「…そっか…よしよし、もう大丈夫だよ。なにも怖くないからね。大丈夫だから…私が護ってあげるから…」
「う…うん…うぇえぇぇん!!!」

気が付けば私はメビウス君の胸の中でおっきな声で泣いていて、メビウス君はそんな私を優しく撫でてくれた…

・メビウス・

「つまり…あれはジュエルシードと言って君が輸送してたロストロギア…という事かな?」
「うん。そうなる…ね。」
「それで集めようとしたら暴走して…行き倒れた…と。」
「…そ…そのとおり…」
「…馬鹿でしょ。」
「阿呆ですね。」
『素直に救援を頼めばよろしいかと。…使えないフェレット…』
「…ぼ…僕だって…僕だってぇぇぇぇ!!!」

場所を臨海公園に移して、フェレット、ユーノから話を聞く私達。バリアジャケットは解除している。
ちなみになのちゃんは私の背中に顔を真っ赤にしてくっついている。
多分、泣き顔が恥かしいのかな。…くっつしてる時点で恥ずかしがる事もないのに…
けど…そうなるとフェイトちゃんは……今度会ったら話をしてみよう…
ガルムが言うには私が飛んでいった後を眺めて、そのまま去っていたってそうだ。
ちなみにその後で望遠鏡などを完全にセットしておいてくれたらしい。

「それでなのちゃんが魔法素質があるのに気が付いて…利用したと。」
「ち…違う!!」
「今更否定しても遅いよ…なのちゃん。」
「な…なぁに?」
「なのちゃんは…どうするの?このまま手伝うの?」
「…ユーノ君は困ってるし…それに…私に出来ることがあるならやりたい…!!
…メビウス君も魔道師なんだよね…?」
「うん。そう…だね。」
「そっか…そっかぁ…えへへ…一緒だね…!!」
「……」

嬉しそうに微笑むなのちゃんを見て私はなにも言えなくなった。
きっとなのちゃんは自分に出来ることをやりたいんだ…。一生懸命で…全力全開なのちゃん…なら…私も。

「なのちゃん、ユーノ。私も手伝うよ。」
「え…良いのメビウス君!?」
「本当に…?」
「うん。流石に辺り構わず暴走されたら洒落にならないし…なのちゃんに魔法をしっかりと教えないとね。
それに…言ったからね。護るって。」
「あ…ありがとう…」
「…メビウス…本当にありがとう…本当に…」
「ガルムもエクスもそれで良い?」
「御心のままに…」
『マスターの命に従いましょう。』
「決まりだね。」

その言いながらユーノは頭を下げる。まぁ…なのちゃんの為でもあるし…きっとフェイトちゃんともまた会うことが出来るから…
っと…そろそろ天体観測しようかな。そう思って私は望遠鏡に視線を移す。

「あ…天体観測するの?」
「うん。そろそろいい時間帯だしね。なのちゃんもみる?」
「うん!!」

そう言いながら私となのちゃんは望遠鏡のところまで歩いていって、シートを敷いてある地面に座って望遠鏡を覗き込む。
ちなみにユーノはガルムが膝の上に乗せて少し離れたベンチに座っている。
ん…少し風が出てきたかな…そう思っているとなのちゃんが小さくくしゃみをする。

「なのちゃん。寒い?」
「うぅん…大丈夫。」

そうは言っても両手で腕をさすっている。やっぱり春でも寒いからなぁ。毛布もって着てよかった。
けど…一人分だしなぁ…そうだ!!

「なのちゃん。私の前に座って。」
「え?」
「ほらほら。」

疑問に思いながら私の前に座るなのちゃん。
私はリュックから毛布を取り出して、背中に羽織る。そして後ろからなのちゃんを抱き抱えるようにして毛布に包まる。

「えぇ…えぇ!?めめめめめ…メビウス君!?」
「ほら、暴れないの。こうしたほうがあったかいでしょう?」
「…うん……」

顔を真っ赤にして俯くなのちゃんを見て、小さく笑いながら私は望遠鏡を覗き込む。
すると、慣れたのかなのちゃんが笑いながらすりすりとしてくる。くすぐったいけど…いう気になれない。

「えへへ…あったかぁい…」
「うん…暖かいね。」
「そうだ!メビウス君…はいこれ!」
「え?」

なのちゃんがポーチから1つの袋を取り出す。中には…クッキーが入っていた。
まさか…作ってきてくれたのかな…

「作ったから…食べてね?」
「あは…ありがとうなのちゃん。」

お互いに顔を見合わせながら笑い、そして二人で空を見上げる。
今日も…星空は綺麗に澄んでいた。
ラジオからは陽気なDJが音楽を流している…

ガルムとエクスの水面下の話
(エクス…画像は?)
(高画質で録画しております。)
(…後で分けてくれ。)
(良いでしょう。)
(…鼻血が…!!)



あとがき

…戦闘描写が下手すぎて鬱になります…
休みを1日使ってこの程度とは…笑わせる…
ちなみに技にエクスの技はス○ロボのチーフからも取っています。
さて…なのはとの甘ったるい展開が出来ればと満足してしまう…甘いか?

以下返信

34様

ラプたんはぁはぁ…
私もメビウス君には神機動をして欲しいと思っています。私の実力が伴えば…!!
テムジンと同じで汎用性の高い魔道師を目指しています。

ダンケ様

最後の陽気なDJは…奴です(笑
メビウス君は先ほども書いたとおり目指せ汎用性です!!
サイファーお母さんはニコニコ笑顔で向かってくる敵は粉砕する鬼神…(ぼそっ



[21516] 5話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/09/07 21:00
・閃・

「…砂糖吐きそうだなおい・・・」
『ラブラブしてますねぇ…食べちゃいたい…』
「…デバイスのAI設定ってどう変えんだっけかな…」

メビウス達が毛布に包まってるのを俺は眺めていた。ちなみにバトルはレーベンが俺の魔力を使って俺をバインドで縛り上げて終了した。畜生…燃費悪いんだぞ…
そしてレーベンがまた変なことを言っている…本気でなんでこいつが俺のデバイスなんだと1時間ほど問い詰めたい…
主に開発したフレッシュリフォーの研究員と提案した過去の俺に。

「へぇ…面白い事をしてるじゃないか。こんな所に魔道師が居るなんて。」
「っ!?…お前は…」

しくじった…広域索敵に集中してたせいで、近くに居るこいつに気が付かなかった…
目の前に浮遊して居たのはバリアジャケットを着て、妙な一つ目の仮面をつけている男子。
腰には双剣型のデバイスがぶら下がっている。

「シルヴァリアス…ゴッデンシュタイナー…」
「僕の名前を知ってるんだ。…まぁ、僕は有名人だから当然だろうね。」
「…同じクラスだから知ってんだよ。帝 閃だよ」
「同じクラス?君みたいなのが居たのか?…あぁ、思い出したよ。確か帝家の人間だったかな。
何処かの企業の幹部の息子が居るって言われた気もするが…君か。」

こいつ…気にいらねぇな…。明らかに人を馬鹿にしてやがる…
しかし、こいつのランクは、推定でもAはある。俺がどう頑張っても勝てる相手じゃない。

「それで…俺に何の様だよ。」
「君もミッドの魔道師なんだろう?なら、話は簡単だ。僕の配下になれ。」
「あ゛?」
「君もミッドの人間ならゴッデンシュタイナー家は知ってるだろ?そこの御曹司である僕の配下になれるんだ。
君みたいな低ランク魔道師にはまたと無いチャンスだと思うんだけど?」

…前言撤回…気に入らないじゃない…反吐が出る。
人を人として見てないな。自分が最も最上位の人間だと考えてやがる。

「何のメリットがあるんだよ?」
「富と名声…そして女を与えてあげるよ。」
「はぁ?」
「君には理解できないかもしれないけど、僕は未来を知っている。
そこでどんな事件がおきるのかも、どんな人物が出てくるのかも知っている。」

そう自慢げに言い放つシルヴァリアスを見て、俺の推測は確信へと変わっていった。
こいつも転生者だ。しかも超ド級で最悪の転生者だ。二次創作なんかに居る転生者なんかとは訳が違う。
自分のことしか考えていない…物語を壊す最悪の存在だ。

「君も見てただろ?手始めにあの金髪の女を君にあげるよ。」
「……」
「まぁ、言う事を聞かないなら、薬でも何でも使っても良い。
僕はなのは以外眼中に無いから、壊しても何も言わない。
あぁ…僕のなのは…可哀想に…怯えた心の隙をあんな妙な奴に付け込まれるなんて…僕が近くにいないのがそんなに寂しかったんだね…」

そう言いながら視線を臨海公園のほうに移す。
妙な奴って…メビウスかよ。正直に言えばこいつの方が数千倍やばい。
金髪の…と言うことは多分、フェイトの事だろう。薬でもなんでもって…こいつ、何処まで自惚れてんだ…?
しかもなのはがメビウスの事を好きなのは一目瞭然だ。話を聞くと幼馴染で何時も一緒にいたそうだしな。
それに…こいつは中身が最悪すぎる…。

「…こんな事、小学3年に言うことか?まぁ…悪い話じゃない。」
「魔道師をしている以上、老成してると思うがね。なんにせよ…決まりだね。君は僕の配下に…」
「…だが断る!!」
「…なんだって…?」
「てめぇみたいな自己中心的な奴の配下に誰がなるかよ!!第一…これがてめぇの物語だ?
ふざけんなよ!!これはあいつらの物語だ!!しかも…大切な友達のあいつらを裏切れってか?それこそ冗談だなおい!!
てめぇみたいな下衆になのはが惚れる訳無いだろうが!!外見は良くても中身がそんなんじゃな!!
人を人としてみてない奴が…何をほざいてんだよ!!」

俺は何時しかメビウスやオメガ、なのは達を本当に友人と思うようになっていた。
転生者として…例えかけ離れた物語になろうと原作の物語を知っている俺は異端者。未来を知っているのは時には苦痛にもなった。
それでも…俺とあいつらと一緒に笑って一緒に学んで…沢山の話をした。
そう…これはもう…俺にとっては現実なんだ。テレビや漫画で見てた世界が…今の俺には掛け替えの無い現実なっている。
それを壊そうとする奴は…俺が許さない…!!

「くくく…はははははははは!!!!!君みたいな小物になにが出来る?所詮は低ランクの魔道師…そして唯の支援型のデバイス…
僕と戦って勝てると思ってる?しかも…未来を知っている選ばれし者の僕に!!ははは!!面白い事を言うね!!
まぁ…負け犬の遠吠えだな。くくく…精々、足掻くと言い。僕の慈悲深い心に感謝するんだね。君をここで殺さないんだからね。
いや、後悔かな?僕の折角の誘いを断って敵になるかもしれないのだからね。はははははははははははははは!!!!!!」

高笑いしながらシルヴァリアスは飛び去っていった…
虫唾が入るな…確かに…俺じゃてめぇを倒せないだろうな…
…情けねぇなぁ…結局…他力本願になっちまうのかよ…
あ~…なんか泣けてきたよ…

「…強く…なりてぇなぁ…畜生…」
『…閃。』
「…なんだよレーベン。」
『1つ言っても良いですか?』
「あん?」
『くせぇえぇぇ!!あいつはくせぇえぇぇ!!!ゲロ以下の匂いがぷんぷんするぜぇえぇぇ!!!』
「…お前って奴は…」

人が本気で悩んでんのに…こいつ…どんだけ空気読めないんだよ…
だが…次に聞こえてきたのはまじめな声。

『…落ち込んでる暇は無いですよ、閃。』
「……」
『奴に後悔させてやるんです。小物の足掻きを見せてやりましょう。自分が侮っといて人間がどれだけ脅威になるのか…
思い知らせてやるんですよ。』
「レーベン…あぁ…そうだな。しかし、まさか…お前に励まされるなんてな…」
『私も頭にきましたからね。あの自己中には。それに…私の大切で大事な主である帝 閃を馬鹿にしたんです。
ただではおきませんよ!!』
「確かに…そうだな。俺の相棒であり、家族でもあるナイトレーベンを侮辱したんだ。唯で済むわけねぇよなあ!」
『「覚悟しろよ!!シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー!!」』

そけにな…お前だけが未来を知ってるわけじゃねぇんだよ…!!
見せてやるよ…お前が見下した魔道師の本気をなぁ!!



・メビウス・

天体観測を終えた次の日。今日も学校が終わって何時ものように帰るんだけど…
オメガは何時ものようにサッカーしてるし…閃は閃で「悪い。やることあるから先に帰るわ」って帰っちゃったし…
まぁ…私も色々とやることがあるんだよね。

「なのちゃん。帰ろう。」
「あ…うん!」

席に座って荷物を片付けているなのちゃんに声をかける。
昨日の夜に、なのちゃんに魔法の指導をするのを約束していたからだね。
流石になんの指導も無く、魔法を使うのは危ないし、身体にも大きな負担になってしまう。

「ねぇ。なのちゃん。今日は私の家に来ない?」
「メビウス君のお家に?良いの?」
「うん。ほら…訓練しないとね。」
「あ…そっかぁ。うん!よろしくお願いします!」
「あはは。そんなに改まらなくってもいいよ。最初になのちゃんの家に行ってからにしよう。ユーノも一緒にね。」

前に私が計測したなのちゃんの魔力は少なく見てもAAはある。しっかりと指導をすればもっと上のランクに行ける筈。
それに…訓練しないと自分の魔力で押し潰されてしまうことがある。特になのちゃんは無理をする事が多いから…

「ねぇねぇ。メビウス君?」
「なに?」
「メビウス君の…デバイスって、エクスキャリバーさんなんだよね?」
『なのは様。エクスで結構ですよ。』
「それじゃエクスさんって女の人なの?」
『はい。女性として登録されておりますね。』
「ほへぇ…それじゃ、デバイスって他にもなにかあるの?」
「デバイスは魔道師が自作するのもあれば、特定のメーカーが作っているのもあるんだよ。
私のエクスやなのちゃんのレイジングハートみたいに意志があるのがインテリジェントデバイスって言うんだ。」
『主に私達は魔法の発動の手助けや状況判断などのサポートをこなします。
状況判断が出来れば、防御魔法をこちらが行う事も出来るのですよ。』
「信頼すればするほどデバイスは答えてくれる。逆に信頼しなければデバイスは答えてくれない。私達にとっては大切なパートナーなんだよ。
なのちゃんもレイジングハートを信頼して…大切にしてあげてね。」
「うん…よろしくね。レイジングハート。」

そう言いながら待機状態のレイジングハートを撫でるなのちゃん。
うん…デバイスは私達の剣であり盾であり…大切なパートナー。
それを分かってくれたなのちゃんはきっと優しくて強くて…あったかい魔道師になれるね。
それから魔法の事を簡単に説明しながらなのちゃんの家に向かう。


「それじゃ、かばん置いてくるから待っててね!」
「うん。」
「ん?やぁ、メビウス君か。こんにちわ。」
「あ、恭也さん。こんにちわ。」


なのちゃんが家の中に入ると同時に男の人が出てくる。
この人は高町恭也さん。なのちゃんのお兄さんで大学生なんだ。凄くカッコいいんだよね。
それにとても真面目で良い人。

「昨日はなのはが迷惑をかけたね。」
「あ、良いんですよ。こっちもクッキーご馳走になりましたし…それに夜も遅くなっちゃって…」
「まぁ…それはあまり関心は出来なかったな。そう言えば…一緒に帰ってきたあの男の人は誰かな?見たこと無い人だったけど。」
「え…あぁ…あの人はアヴァロンの工房の人なんです。父さんが一緒に行きなさいって言ってくれて。」
「工房の人か。…見た感じでは結構、強そうな感じがしたが…スカーフェイスさんの弟子なら納得できる。」
「あははは…」

恭也さんはきっとガルムの事を言ってるんだよね…
昨日、一緒に帰ってきたところを見てたからかぁ。少し焦ったなぁ。
父さんは時々、恭也さんや士郎さんと組み手をしてるみたい。
…私も何回か見せてもらったけど…人が戦ってるようには見えなかったなぁ…特に父さんと士郎さんの組み手…

「またスカーフェイスさんに暇な時に組み手をお願いしますと伝えてくれないか?今まで全敗だからな。」
「はい。分かりました。」
「…なぁ、メビウス君も御神流を習ってみないか?良い筋をしてると思うんだが…」
「えぇ!?わ…私は…良いですよ。流石に…」
「そうか…気が変わったら言ってくれ。それじゃ、俺も少し出かけるから、また。」
「はい。また今度です。」
「メビウス君お待たせ!あれ?お兄ちゃんと話してたの?」
「そうだよ。それじゃ私の家に行こうか。ユーノも良いね?」
≪うん。けど…メビウスの家で訓練するの?≫

なのちゃんがユーノを肩に乗せて出てくると、ユーノから念話が届く。
まぁ…疑問に思うよね。けど、大丈夫なんだ。
しっかりと準備してあるしね。

「それは行ってからのお楽しみ。さぁ、行こう。」

ランスロット家。地下1階

「わぁ…ねぇねぇ!これってなに?」
「凄い…最新鋭の設備じゃないか…」
「ここではデバイスのメンテや開発。それにシミュレーターなんてのも出来るんだ。」

ここは私の家の地下にある訓練施設。全部、ミッドの最新鋭の設備がそろっている。
ここでエクスをメンテナンスしたり出来るから便利なんだよね。

「まずは…なのちゃん。これに座ってね。」
「にゃ?…これなぁに?」
「これはNEMOって言う超高性能シミュレーターなんだよ。仮想空間の中で訓練できるんだけど、風景とか色々と本物と変わらないんだ。」
「ほへぇ…なんだかわからないけど…凄いんだね。」
「NEMOなんて…聞いたこと無いよ…」
「まぁワンオフだからね。疑似体験だけど体力とかは消費するから気をつけるように。それじゃ…始めるよ」

なのちゃんを席に座らせて、ユーノには小型の装置をつける。
そしてリラックスしてるのを確認すると私はNEMOを操作し始める。

「場所は…草原で良いかな。設定は…レベル1で…妨害なし。ガルム、私も入るから、後はよろしくね。」
「了解いたしました。広域索敵も行っておきます。」
「お願い。」

ガルムがメインモニターの前に座るのを確認すると私もNEMOに座り、仮想空間へと入っていく。


仮想空間


「わぁ…わぁ!!すごいすごい!!メビウス君!!本物みたいだよ!!」
「はは。そんなにはしゃがないで。」
「まさかここまで精巧なんて。君の家は一体…」
「私も詳しくは知らないんだよね…」

はしゃぎまわるなのちゃんを見ていると傍らのユーノが私を見る。
まぁ…確かに普通の魔道師が持つには大規模すぎる施設なのかもしれないね。
けど…私も詳しくは分からないんだよね。唯一分かるのは…父さんと母さんが昔の仕事で手に入れたって事くらいなんだけど…

「さて…なのちゃん、まずはレイジングハートで変身してみようか?」
「あ…うん!それじゃ…風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に! レイジングハート、セットアップ!!」

少し離れた所で、なのちゃんが待機状態のレイジングハートを握り締め起動呪文を唱えると、光が包み込む。
光が収まると白い綺麗なバリアジャケットを纏ったなのちゃんが佇んでいた。
なんだか…学校の制服にも見えるし…天使見たいかも。
変身し終えたなのちゃんがこちらに駆け寄ってくる。

「メビウス君!どう…かな?似合うかな?」
「ん?…うん、とっても可愛いよ。」
「ほ…本当!?」
「うん。似合ってるよ。天使みたいだね。」
「えへへ…そっかあ…ありがとう!!」

なのちゃんかがその場でクルリと回転して私に感想を聞いてくるけど…本当に良く似合っている。
白くて…本当に綺麗だなぁ。

「それじゃ…今度はメビウス君の見せて!」
「私の?」
「うん!えっと…昨日は…その…良く見れなかったし…」

最後のほうを少し顔を紅くしながら呟くなのちゃん。昨日は泣いてたもんなぁ。
私は苦笑しながら胸元のエクスを握り締めて、起動呪文を唱える。


「我が纏うは蒼。纏うは誇り。汝は約束されし勝利の剣なり。我の手に来たれ!!エクスキャリバー!!」

私の周りに蒼い光が集まり、バリアジャケットを構成する。
右手には私の剣であるエクスが握られている。
変身し終えてなのちゃんの方を見ると…なんだか惚けている。

「えっと…どうしたの?」
「え?あ…その…カッコいいなぁって…お話の騎士みたいだねって。」
「そう?ありがとう。」

騎士かぁ…確かに私のバリアジャケットは騎士をイメージしたものかもしれないね。
エクスだって本来はエクスカリバーをモデルにしてるみたいなものだしね。
さて…お互いバリアジャケットを展開したところで…まずは軽く魔法の説明をしようかな。

「それじゃ、なのちゃん。さっき話した攻撃魔法の種類は覚えてる?」
「えっと…砲撃魔法と…広域攻撃魔法に…射撃魔法!!」
「うん。そのとおり。良く出来ました。」
「えへへ。」

私が褒めながら頭を撫でてあげると嬉しそうにするなのちゃん。尻尾があったらブンブン振ってそうだね。
まずは基本的な魔法の講座から始めようかな。

「それじゃ1つずつ説明するね。砲撃魔法は魔力を発射する一番簡単な魔法なんだ。
当たれば一撃必殺だけど…その分、隙も大きいから気をつけてね。
次に広域攻撃は砲撃魔法が単体を攻撃するのに対して、効果範囲全ての敵を攻撃する魔法のことだよ。
まぁ…こっちも時間がかかるのもあるけどね。
最後が射撃魔法。最初の二つが必殺技だとすると、こっちは牽制や削り技見たいのだね。
一発一発の威力は低いけど、少ない魔力を圧縮して弾丸みたいにするんだ。これは複数射撃や誘導も出来るから便利なんだよ。」
「うぅ…色々と難しいんだね。…メビウス君は全部できるの?」
「私?…ん~、ある程度は出来るかな。焦らずに練習すればなのちゃんも出来るよ。」
「そっかぁ…うん!頑張るね!!」
「そうそう、その意気、それじゃ最初に……」

こうして私となのちゃんの魔法特訓が始まった。



・オメガ・

よし、今日も自主練するぜ!!
俺は何時もの様に近所の神社にサッカーボールと油揚げを持って走っていく。
学校でやりたかったんだけどメンバーが集まらなかったんだよなぁ。今日はついてないぜ。
そんな訳で俺は神社で練習をすんだけど…なんでかしらないがちっこい狐が時々、居るんだよなぁ。
結構前から居て、俺の練習をじっと見てるわけだ。
それで気にならないほうがおかしいだろ?とりあえず家から油揚げを持っていったら喜んで食べてくれたんだよ。
気が付けば、練習しない時の夕方にも油揚げを持っていくのが日課になったんだよな。
階段を1段飛ばしで駆け上がっていく俺。今日もちび狐はいるかなぁ。

「お。ちび狐~…って…わぉ。」

境内に入るとちび狐と…妙な目玉が居たよ。なんだこれ?
なんか触手がうねうね動いて…ちび狐を捕まえようとしてるぜ…
俺は徐にサッカーボールを地面に置いて左足を振り上げる。

「唸れ!!俺との銀色の足スペシャァァァァル!!!」
「!?」

思いっきり蹴り飛ばしたサッカーボールが触手目玉に直撃して吹き飛ばす。
よっしゃぁぁ!!今日も俺の銀色の脚は絶好調!!
こちらに気が付いたのか、ちび狐が走って逃げてくる。

「よぅ。ちび狐ぇ、あれってお前の友達か?」
「!!???」フルフル

思いっきり首を振ってるところを見ると違うらしい。
なんかあんな感じの妖怪居たような気が済んだけどなぁ…まぁ、いいや。

「とりあえず…俺のダチに喧嘩売るとは良い度胸だぜ!!
勝負だ!!」

俺は右手で指を鳴らす。さぁ…ComeComeComeCome!!!

【轟くぞHeart!!響くぜBeat!!行くぜぇぇぇぇぇ!!!!Let'sBurning Justice!!!】

光が俺を包み込む。さぁさぁ!!来い!!俺のデバイス!!

「オメガ・ガウェイン!!」
『アファームド・イジェクト!!』
『「劇的に!!参上!!」』

左手には腕と一体化したようなトンファー。右手には鉄の杭。そう!!浪漫のパイルバンカー!!
これが俺のデバイス!!イジェクトだ!!

「さぁさぁ…とっつくぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」






アファームド・イジェクト。トンファー&パイルバンカー装備デバイス。
ベルカ式?いいえオメガ式です。
詳しい説明は次回にでも…


あとがき

あれ?閃君、主人公みたいじゃね?と思った今回…
1時間でも書く時間を作ってみたらこのざまです。
オメガ君とナイトレーベンは…生粋のネタキャラです。色々な台詞を言わせて見ようかと…
あぁ…今回はメビウス君となのちゃんの甘甘展開が出来なかった…そしてユーノ空気…!!
メビウス君の魔法講座を受けるなのちゃん。…男の子が女の子に勉強教えるのって萌えません?(

とっつきとは、アーマードコアに出てくる射突ブレードをとっつきと読んだ事からです。
見た目は某ア○トア○ゼンのパイルバンカーを想像して下さい

以下返信
ご都合主義者様

タリズマン…まぁ…直訳すればお守りですからね(爆
閃君は今回の名家(笑)との会話で色々と決意したようです。


クワガタ仮面様

今回はこんな感じの傲慢さを出してみました。
書いてて若干、面白いかもと感じた作者は…奴より!!??
これからも奴の活躍(笑)をご期待ください

ダンケ様

砂糖を吐ける展開が大好物な作者です(爆
メビウス君はニコポ搭載ですので…フラグは結構立てるかも…
閃君には…後で相手を用意したいとは考えています。
リリン様は…まだ先になる予定ですね。閃君との関係も思案中です。

名無しの獅子心騎士様

今回はオメガ君登場!!で終わらせてしまいました。
次回辺りで活躍させてみようかと思っています。今回は短いですが…
メビウス君は男の娘ですから…おや?蒼い魔(通信途絶
ナイトレーベンは…やる時はやるデバイス!!のはずです。



[21516] 6話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/09/10 21:00
・オメガ・

「はっはぁ!!イジェクト!!久しぶりだなぁ!!」
『ブラザー!今回も派手にいくかい!!』
「もちろんたぜ!!ちび狐はそこで油揚げでも食べながら観戦してると良いぜ!!
オラオラオラぁぁ!!!覚悟しろぉぉぉ!!」

目玉触手が何故だか知らんが逃げようとするが…そうは問屋が卸さないぜ!!
足に力を込めて…加速!!浮遊魔法なんてまどろっこしいのは苦手なんだよ!!
目玉の真ん中に左手のトンファーを叩き込む!そしてそのまま宙返りをして今度は跳び蹴りだぁ!!
そのまま地面に目玉触手をめり込ませて…更に踵落としを二発!!大抵の奴はこれで終わる!!

「どうよ!!」
『おう…Brother。まだ奴は平気のようだぜ?』
「いい度胸してるぜ…なら…必殺でいくぜ…!!」

目玉触手が起き上がると同時に懐に入り込む。
触手で絡めとろうししてくるが…そんなトロイ攻撃にに捕まる俺じゃないぜ!!
そしてぇぇ…左手のトンファーで一発、軽く打ち上げて…

『「絶!!」』

落ちた来たところを身体を回転させながら、右手のパイルバンカーで貫き打ち上げる!!
これが…俺の…俺達の必殺技!!

『「昇竜撃!!」』


本体を真ん中から貫き、高く空中に舞う触手目玉。
そのまま地面に大きな音を立てて落ちて、消えていく。
実はこの技、ずっと前に見た格闘ゲームの参考にしたんだけど…うまく決まったぜ!!

『Your win!!』
「It is possible to go still。ん?なんか妙な宝石みたいなのがあるぜ?なんだこれ?」

さっき倒した目玉のいた辺りに妙に光る宝石を見つける。
…これもぶち壊した方が良いのか?
とりあえず、パイルバンカーで砕くか!!唸れ!!俺の右手!!

「オメガ!!壊したら駄目だって!!」
「お…オメガ君待って待ってぇ!!」
「壊さないで!!壊さないで!!」
「What?」

大声のしたほうを見れば…おおぅ…メビウスとなのはが飛んでくるぜ。なのはの肩に居んのは…イタチ?まぁ、どうでも良いか。
あれ?なのはって…魔道師だったっけか?…まぁ、メビウスと一緒だから問題はないだろ。
しかし…おいおい…今は夕方だぜ?まだ一般人もいるのに飛んでくるなんてよ…。
やれやれ、ここは1つ紳士的にアドバイスをしてやるか。

「お前ら…人の目を気にしろよ!!目立つぜ!!」
「結界も張らないで戦闘してるオメガには言われたくないよ!!」

…細かいことは気にすんない!!
そうそう、ちび狐は油揚げをはぐはぐしてたぜ。



・ユーノ・

「それじゃ、次は…」

仮想空間の草原でなのはに魔法を教えるメビウスを遠くから眺める僕。
頭の中ではさっきからずっと同じ事がグルグルと回っている。

(メビウス・ランスロット…何者なんだろう?)

ミッドの最新鋭機器を保持する家庭、そして見たことも無い特殊なデバイスを使う魔道師。
魔法の知識も深く、なにより…本人自体かなりの高ランク魔道師だって言うのは分かる。
現になのはが戦ったジュエルシードは彼の砲撃魔法が倒した。
しかも遠距離からだというのに魔力が減衰することも無くも届いた。つまり…膨大な魔力量を彼は誇っていると言うことになる。
なのはと言い、メビウスと言い…どうして魔法の存在しない世界に居るんだろう?いや…メビウスは既に魔道師だったけど…

「ユーノ、どうかしたの?」
「ん。ちょっと考え事を…あれ?なのはは?」
「なのちゃんは浮遊魔法に挑戦してるよ。筋はいいんだけど…バランス感覚かなぁ。」

気が付くとメビウスが僕の方に歩いてきて隣に座る。
苦笑いしながら指差した方向を見ると…確かに。なのははが空中で頑張ってバランスを取っている。
浮遊魔法自体は簡単な部類に入るんだけど、高度を上げていくとバランスとかを保つのが難しい。

「ここは時間が遅く感じるから、ゆっくりとやっていくよ。外ではまだ30分くらいかな?」
「1時間位はここに居たと思ったけど…本当に不思議だよ。」
「あはは、けど便利なのには変わりないよ。なのちゃんも気に入ってくれたみたいだしね。」

そう言いながら、なのはを見るメビウスの顔はにこやかだった。
大切な物を見るみたいに…優しく暖かい眼差しをしている。
それを見て…僕は後悔をしていく。きっとメビウスはなのはを巻き込みたくなったのかもしれない…と。
魔法は良い意味でも悪い意味でも日常を変えてしまう。メビウスはなのはに普通の…普通の地球の生活を送って欲しかったんだ…
そう思うと僕の心に重く後悔がのしかかってくる。

「ユーノ。」
「…なに?」
「なのちゃんはね。…困ってる人を絶対に見捨てることなんて出来ないんだよ。誰よりも優しくて…一生懸命だからね。
だから、私は…なのちゃんに幸せになって欲しい。いや…なのちゃん見たいな人が幸せにならないと…だめなんだよ。」
「メビウス…君は…」
「ユーノ、後悔するならそれでも良いと思う。けど…そこで立ち止まらないで。君にはなのちゃんに魔法と言う新しい夢を与えた責任がある。
もちろん、私にもね。だから…二人でなのちゃんを助けていこう。きっと、それが出来るはずだから。」
「…うん。」

そういって笑う彼の瞳は…とても澄んでいて綺麗だ…。
駄目だな…僕は。自分がなのはを巻き込んだんじゃないか。僕がしっかりしないでどうするんだ。
遠くでなのはの呼ぶ声が聞こえる。顔を上げて見ると、靴から光の羽のようなのを伸ばして飛行している。
独自に飛行魔法を変えたのか…やっぱりなのはには魔法の才能があるんだ。

「メビウス君!メビウス君!!見てみて、どうかな!!」
「凄いねなのちゃん。まさか飛行魔法をアレンジするなんて。」
「レイジングハートのお陰だよ。ね?レイジングハート。」
『はい。』
「メビウス君の言ったとおりに信じてみたんだ!だからかな?」
「あは。信頼して大切にするならきっと答えてくれるからね。…その靴の羽は姿勢とかを制御するのかな?」
「うん!フライアーフィンって言うんだよ。」
「そっか。うん、良く出来ました。」
「あ…えへへ。」

なのはを撫でながら褒めるメビウス。傍から見ると兄妹みたいにみえる。
それに、なのはも嬉しそうな…幸せそうな表情をしている。
二人を遠くから眺めて、さっきメビウスが言った言葉を思い出す。なのはが幸せにならないといけない。
ねぇ…メビウス?もしかして…なのははもう…幸せなのかもしれないよ?…君が傍に居ることが…なのはの幸せなんじゃ…ないのかな?



・メビウス・



「飛行魔法が終わったら…」
「メビウス様。」
「ガルム、どうしたの?」

飛行魔法を成功させたなのちゃんを褒めながら、次はなにをしようと、考えているとガルムの声が放送で聞こえてくる。
空中にも外の映像が流れてきて、ガルムの顔が映し出される。

「先ほど広域索敵にジュエルシードらしく魔力反応を感知しました。」
「ひっかかったか…場所は?」
「海鳴神社で反応がありましたが…」
「どうしたの?」

そこまで言うとガルムが不安げに視線を伏せる。
ここのシステムを使っての広域索敵なら誤差は少ないはずがたら迷うことは無いと思うんだけど…
けど…次の瞬間、ガルムから出てきた言葉に私は絶句する。

「その…付近に…別の魔力反応がありまして…しかも、該当データありです…」
「該当データあり?…誰の?」
「……オメガ様のです。」
「え゛…?」

ガルムと私の間に重い沈黙が流れる。待って…なんでオメガ?…どうしてオメガ?…何故オメガ?
だって、学校でサッカーしてるはずじゃ…
はっ…!!確か…メンバーが集まらないときは神社で自主練してるって前に言ってた気がする。
その事を思い出し、背中にいやな汗が流れる。いや…オメガを心配してじゃない…
一応は心配する。けど…もっと心配なのが…ジュエルシードのことだ。
絶対に確実に間違いなくオメガなら…叩き割る。それならまだ良い。粉々に粉砕する可能性すらある。
それはやばい…間違いなくやばい…

「メビウス?どうしたんだい?」
「ユーノ…ジュエルシードが…粉々になっても良い?」
「…はい?」

訳が分からず呆けるユーノに説明すると顔を青くしてガクガクと震えだす。
うん…当たり前だよね…とりあえず…

「ガルム!!急いNEMOを解除!!直ぐに出るよ!」
「御意。」
「なのちゃん!ジュエルシードが見つかったから今回はここまで!」
「う…うん!」

さて…ジュエルシード…無事で居てくれると良いんだけど…


NEMOを解除して。現実に戻ってくる私達。そのまま庭で人気が無いのを確認すると飛行魔法を使って飛び立つ。
ちなみにエクスが認識障害魔法を使ってくれているから、魔道師以外は私達の存在を認識できない。
それに、なのちゃんの現実世界での飛行魔法の扱いになれる良い機会でもあるからね。
けど…流石になのちゃんの魔力量には驚かされる。結構、訓練したから疲れてるかと思ったけど…タフだね。
ちなみにガルムは家でメインシステムで広域索敵するために待機してくれている。一応は念には念を入れておきたい。

『マスター、前方にオメガ様を確認しました。』
「こっちも目視できたよ。…あ~…相変わらずデタラメだ…」
「わ…なんか、格闘ゲームみたいな動きしてるよ、オメガ君。」
「ま…魔道…師?…いや、けど体力とか速度補助の魔法以外使ってないような…」

遠くからオメガの戦闘を見て呆気にとられる二人。私は…何度か見たことあるから良いんだけど…それでも慣れない。
それに、認識障害とか結界を使ってないから、一般の人からも丸見えだよ…。人気が無いのが救いだけど…
基本的に体力とか防御、速度を上げる補助的魔法以外は使わないからなぁ、オメガは。使えないってのもあるんだけどね。
飛行魔法だって初歩的なのに苦手だって言ってる。…その代わり地上を走る速度が速いんだけどね…

『ジュエルシードの反応弱体化。どうやら撃破したようです。』
「相手が悪かったね…って…オメガ…?」
「ね…ねぇ。メビウス君?なんかオメガ君…右手の大っきな杭…振り上げてるよ?」
「…なのちゃん、ユーノ…急ぐよ!!」

慌てて速度を上げる私達。間に合え間に合え!まさかオメガが本当に粉々に壊すなんて!!??
それは不味いってば!!

「オメガ!!壊したら駄目だって!!」
「お…オメガ君待って待ってぇ!!」
「壊さないで!!壊さないで!!」
「What?」

パイルバンカーがジュエルシードに突き刺さる寸前のところで、私達の大声に気が付くオメガ。
あ…危なかったぁ…あと少し遅かったら…ゾッとする…
なんでか、飛んできた私達を見ながらオメガはやれやれと言った感じで首を振る。

「お前ら…人の目を気にしろよ!!目立つぜ!!」
「結界も張らないで戦闘してるオメガには言われたくないよ!!」

何を言うかと思ったら…本当に…オメガには言われたくない…!!!
神社に降り立ち、周囲に素早く結界を張りながら、索敵を始める。
付近に誰もいないけど…一匹だけ狐が居る。確か…オメガが良く話していた狐かな?
とりあえず、油揚げを食べてるみたいだから問題は無いだろう。
なのちゃんとユーノはジュエルシードに封印を施している。

「あれってロストロギアって言うのか?知らなかったぜ!てっきりちび狐の友達かと思ってたけどよ!!」
「…狐が思いっきり首を振って否定してるよオメガ…」
『My sisterァァァァ!!元気にしてかぁ!!』
『叫ばないでください。あと私をそう呼ばないでください。貴方と姉弟と思われると私の品性まで疑われてしまいます!!』
『なら、My Brotherぁぁぁ!!』
『私の設定は女性です!!男性ではありません!!』

まぁ…ある意味で間違ってないんだけどね。
エクスとイジェクトは同じフレッシュリフォーで開発されたデバイスで、開発期間も比較的近い。
性格は…かなり違うんだけどね。

『マスターも笑わないでください!!』
「ごめんごめんエクス。…それで、オメガ。今の鳴海市にロストロギア、ジュエルシードが散乱しているんだ。
それを集めてるんだけど…手伝ってくれないかな?」
「はっはぁ!愚問だぜ、メビウゥゥゥゥゥス!!!俺も手伝うぜ!!それに面白そうだしな!!」
「ありがとう。けど…次からは結界とか張ってよね…」
「おう!!俺に任せとけ!!」

こうして…新しくオメガが協力してくれることになったんだけど…なんか心配だなぁ…
今日も夕焼けは綺麗に染まっていた。




アファームド・イジェクト。愛称・イジェクト
攻撃魔法の登録なし。単体補助魔法のみ。
左手にトンファー・右手にパイルバンカー装備。
ハイテンション兄ちゃん。

スライプナー・エクスキャリバー。愛称・エクス
近距離・中距離対応の汎用デバイス。
見た目は完璧にテムジンのあれ。
優しくてちょっとクールなお姉さん。

あとがき


起床→休日だ!!→書くか!!(脳内BGМ・初陣)→お昼からAC04をプレイ→感動。な一日でした。
…前半の戦闘描写が下手すぎて泣きそう…なんだこれ。
とりあえず…オメガ仲間になる!!の巻でした。
オメガ君の技とかは…他のゲーム等から持ってくるのもありますので…
空を制するメビウス1。そして(イジェクト後に)陸を制するオメガ11。これが理想…!!

以下返信

ダンケ様
別のACで射突ブレード(パイルバンカー)があるのですが…ある人が射突を「とっつき」と呼んだためにそう言われるようになりました。
なのでオメガ君にもそう言ってもらいました。(汗
バルシリーズ…奴らは…量産です…そして…セガ時代の鉄球装備のバルに何度撃破されたことか…!!
…あれ?なんか何処かのハンマー装備の騎士が鉄球打ち出して気が…?

34様

誤字報告ありがとうございます。早速修正します。
思いっきりナイトレーベンですよね。あれは。
使い回しもいい所です。べ…別に出てきた時に喜んでなんていないんだからね!!
翼と翼の間を通り抜けようとして衝突なんてしてないんだからね!!


トーマ様

サンダーヘッドも何れは出したいキャラではありますね。電子戦記…果てしなくいい響きです…!!
しかし…メビウス1をサポートするのは…やはりプレゼントをねだって来るが…美声の彼でなくては…!!

nokan様
汁なんとかさんww。読者様にそういわれるあいつにザマァと思った作者は…(爆
奴は死亡フラグなにそれ?と思っていますよ。だってあいつは…真の(笑)主人公(爆笑)なんですからね!!(笑




[21516] 7話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:8f1d2142
Date: 2011/01/21 21:14
・フェイト・

「素敵な名前だね。」

そんな事を言われたのは初めてだった…
夜の公園であった彼は、顔はバイザーで分からなかったけど…とても優しい眼をしてると思う。
見ず知らずの私にジュエルシードを渡してくれた彼は…メビウス・ランスロットって名乗った、不思議な魔道師。
あれから数日たって、ジュエルシードの捜索を開始したけど…成果はよくない。
何かかに邪魔をされている気がするけど…その何かが分からないでいるのが現状。
小さく私の口からため息が漏れる…。こんな事じゃいけない。
私がしっかりしないと…

「フェイト?どうしたんだい?」
「…なんでもないよ、アルフ。」
「そうかい?けど、あまり根をつめすぎないでおくれよ。フェイトに何かあったら大変なんだからね。」
「うん、わかってる。」

ここは、私が海鳴市で本拠地にしているマンションの一室。
私の使い魔であるアルフと二人で暮らしている。
時計を見れば、そろそろ夕方。いけない、今日は一日なにもしないで過ごしてしまった。
夕ご飯を買いにいかないと…

「アルフ。ご飯買いに行こう。」
「良いけど…フェイト。また栄養食品かい?なにか弁当とか食べた方が…」
「良いの。あんまり食欲無いから。」

最近は栄養食品ばかり食べてる気がするけど…私はそれでも構わない。
それにあまり食欲もないし、お料理だって作れないから…
犬形態になったアルフと一緒にマンションを出て行く。
他に住んでいる人達とすれ違ったりするけど…軽く会釈するだけ。
深く関わる気も無いし、関わって欲しくない。私の正直な気持ち。

「またね!!」

けど…フッと頭に浮かぶのは…メビウスの事。会えるなら…私も…また会いたいな…
またね。と初対面の私に言ってくれた事を思い出して、直ぐに頭を振る。


(けど…もう、会うこともないよね…。)

近くのスーパーで何時ものように栄養食品の棚に足を運ぶ。
アルフは外で待っているはずだから…急いで買わないと。

「あれ?フェイトちゃん!!」
「え…?」

突然、名前を呼ばれて変な声が出ちゃった。それに…この街で私を知っているのは一人しか居ない。
顔を向ければ…蒼い髪をして優しく微笑んでいる…彼が居た。

「メビウス…?」
「あは。覚えててくれたんだ、よかったぁ。」

そう言って胸をなでおろすメビウス。
また…会えた…




・メビウス・


「ごめんなさい~。メビウスちゃん。今日の夜、私達居ないのよ~。」
「ミッドの知り合いに呼ばれてな。少し時間がかかりそうで、今日はかえって来れないかしれない。」
「あ、そうなの?」

朝食の時に父さんや母さんが忙しそうにしてけど…ミッドでなにかあったのかな?
そうなると今夜は私とガルム、そしてエクスだけになるね。
簡単に食事は作っていくと言った母さんだけど、流石に急いでるみたいだし、それは断った。
それに私も一応は料理は作れるし、料理自体好きだから問題は無いからね。

「それじゃ、俺達はもう行くが、遅刻しないようにな。」
「行って来るわねぇ。メビウスちゃん、良い子にしてるのよ~?」
「うん。気をつけていってらっしゃい。」
「戸締りはキチンとするように。アヴァロンの方は心配しなくても良いからな。いってくる。」


なんて事が今朝あったんだけど…今晩のご飯はどうしようかなぁ…
時刻は既に夕方だし、とりあえず…スーパーに行かないと。今晩のご飯のおかずも無いからね。

「ガルム。スーパーに行くよ。なにか材料買わないと。」
「我が行ってきますが…?」
「駄目。私も行くよ。」

久々に料理作るんだから、自分で材料を選びたいからね。
制服からラフなジーンズとシャツに着替えて、スーパーに向かう。
ちなみにガルムは犬の状態で居てもらう事にした。大して多く買う予定では無いからね。
まぁ…店内に入れないから外で待っててもらうんだけど…

スーパーに着くと…なんだか大きな…犬?が入り口近くに寝そべっている…
誰かの飼い犬かな?けど…大きいなぁ。それに…額にアクセサリーつけてる。
大きいと言ったら、ガルムもなんだけどね。

「それじゃ、ガルムはここで待っててね。買い物してくるから。」
「…」≪いってらっしゃいませ。≫

さて…今晩のメニューはどうしようかな。あ…今日は合い挽肉が安いんだ。それに玉葱もお買い得か。
うん、ハンバーグにしようかな。…あれ?確かガルムって…玉葱が駄目だったかな。
買い物籠に材料を入れていくと、私の視界の端に映る見覚えのある綺麗な金色。


「あれ?フェイトちゃん!!」
「え…?メビウス…?」

後を追いかけていくと、やっぱり、フェイトちゃんだった。
凄い偶然だ。向こうも私と会うとは思わなかったのか少し驚いている。当然だよね。私だってまさかここで会えるとは思わなかった。

「こんにちわ、また会えたね。」
「う…うん。また…会えた。」
「あは。もしかしてフェイトちゃんも夕ご飯のお買い物?」
「そう…だね。」
「そっかぁ。なに食べるの……え゛?」
「?」

そう言いながら籠の中を見る私だけど…中身を見て変な声を出して固まってしまう。
いや…だって…中身が殆ど…栄養食品だよ?カ○リ○メイトとかばかりなんだけど…
顔が引きつるのを感じつつ、フェイトちゃんに問いかける。

「あの…もしかして…これが…夕ご飯…?」
「うん。そうだけど?」
「…ご両親は?」
「…居ないよ。二人で暮らしてる。」
「あ…ごめんね。」

悪いこと聞いたなぁ…
視線を伏せながら言うフェイトちゃんに罪悪感を覚えるけど…それでも夕ご飯がこれじゃ流石に…
二人暮しって事は…兄弟とかかな…?
けど、こう言うのを食べるって事はご飯を作らないって事で…う~ん…そうだ!!

「ねぇ、フェイトちゃん。もし良ければ…私がご飯作ろうか?」
「え…?メビウスが…?」
「うん!!ほら…私たちは育ち盛りなんだし、そんなのよりおいしいご飯の方が良いよ!
それに私も今日は親が居ないからね。どうかな?」
「え…その…」

戸惑うフェイトちゃんだったけど、少し考えて小さくコクンと頷いてくれる。
よかったぁ。うん、皆で食べたほうがきっと美味しいし、ご飯も進むからね。
そうと決まれば、沢山材料買わないと。
そのまま私とフェイトちゃんの二人で今日のご飯の材料を買い集める。



「合い挽肉にしようかな。」
「合い挽肉?普通の挽肉と違うの?」
「そうだよ。牛と豚が混ざってるんだ。少し白っぽい部分は脂が強いところだからね。」
「へぇ…知らなかった。」
「あはは。私も教えてもらったからね。次は…」

「ん~、卵は…ミックス卵で良いかなぁ。」
「ミックス?普通の卵とは違うの?」
「あぁ。ミックスって言うのはMサイズとSサイズが混ざって入ってるんだよ。時々、特売になるから要チェックだね。」

「フェイトちゃんのお家にお米ってある?」
「えっと…無いと思う。」
「そっかぁ…うん、それじゃインスタントのお米を買っていこうか。流石に生米は持っていけないからね。」
「インスタント?」
「そうそう。電子レンジで暖めれば食べれるって言う便利なのだよ。」


「後は…コショウかなぁ。」
「これ?」
「あ、違う違う。それは塩コショウだよ。塩が混ざってるからステーキとかに使うんだけど…今日は普通のコショウにしようね。」
「そうなんだ…。物知りだね。」
「料理は楽しいからねぇ。」



こんな会話をしながら籠に商品を入れていく。
うん、玉葱と合い挽肉とパン粉で今日はハンバーグに決定!!
荷物を二人で分け合って持つけど、大丈夫かな?フェイトちゃんって細いし…
心配して私は声をかける。

「重くない?」
「大丈夫。メビウスに全部持たせるの、悪いから…」
「そっか。けど気をつけてね?ガルム~、そろそろ行くよ。…どうしたの?」
「アルフお待たせ。…なにしてるの?」

スーパーを出て、待っていたガルムに呼びかけるんだけど…なんだかさっきの大きな犬と、睨み合いみたいなのをしてる。どうしたんだろう?
それにどうやらフェイトちゃんの飼い犬みたいだし…いや、もしかすると…使い魔…かな?

「ねぇ、もしかして…その子って、フェイトちゃんの使い魔?」
「う…うん、アルフって言うの。そっちの犬はメビウスの?」
「そうだよ。ガルムって名前なんだ。けど、そっかぁ。フェイトちゃんの使い魔かぁ。」

やっぱり、そうだったみたい。うん、正解だね。二人で暮らしてるって事は…アルフは人間形態になれるって事だよね。
アルフに軽く会釈すると不思議そうに、私とフェイトちゃんを交互に見る。ガルムは静かに私の隣に移動してくるけど…警戒してる。
あぁ…そう言えば、私達とアルフは初対面だったね。ガルムは用心深いから警戒してるんのかな?少し大げさな気がするんだけどね。
そう思いながら小さく苦笑しながら、アルフに声をかける。

「始めまして、フェイトちゃんの友達のメビウス・ランスロットです。よろしくね。」
「…友達…?」
「うん。そうだよ。…フェイトちゃんは私と友達はいやかな?」
「ち…ちがうよ!その…初めてだから…。」
「あはは。私なんかで良ければ友達でいようね?」
「…うん。」

友達と言ったのにアルフより先に驚いたフェイトちゃんだったけど…良かった。
てっきり、私と友達は嫌なのかとおもったけど…小さく笑ってくれた。
あれ?笑ったフェイトちゃんを見てアルフが驚いたようにしてるけど…どうしたんだろう?
ガルムはガルムで…何故か勝ち誇ったようにしてるし…

「それじゃ、フェイトちゃんの家に行こうか。腕によりをかけて作るよ!」
「あ…ありがとう。」

ちなみにフェイトちゃんの家に向かう途中で夕食を作ると言う事を説明して、軽く自己紹介もする琴にした。
さて…今から楽しみだなぁ。


フェイト宅。キッチン。


「さて…ではメビウスのお料理タイム!!」
「パチパチパチ」
「?」

フェイトちゃんの家のキッチンで気合を入れたんだけど…うん、少し戸惑ってるね。
そしてガルム。拍手は少し恥かしいかも…
とりあえず…髪を邪魔にならないようにアップで纏めて…よし、これでOK。

「エクス、展開。」
『エプロンモード起動します。』
「え…エプロンモード?」

エクスに声をかけるとバリアジャケット構成と同じ感じで、蒼いエプロンが出来上がる。
料理するときはエプロンしないとねぇ。…後ろでフェイトちゃんが驚いているのは気のせい。

「さて…まずは玉ねぎを切らないとね。」
「我はどうしましょうか?」
「それじゃ、ドレッシング作っておいてね。」
「御意。」
「わ…私も手伝う。」
「そう?それじゃサラダの方お願いね。」
「うん…えっと…」

ガルムにはフレンチドレッシングの作成をお願いする。私と一緒に料理を作るからなのか、結構上手なんだよね。
ちなみにアルフは部屋の掃除をしてるみたい。
そして、フェイトちゃんがぎこちない感じで包丁を持つけど、大丈夫かな…?
野菜を切ってもらうんだけど…って危ない危ない!!

「待ってフェイトちゃん!左手は猫の手にしないと…」
「猫の手?」
「そうそう。こう…手をグーにして…軽く抑える感じで…」
「こう…?」
「そうそう。それだと手を切らないからね。」
「包丁で切った傷は痛みますのでご注意を。」
「う…うん。」

さてと…サラダはフェイトちゃんに任せて…時々、様子は見るけどね。
では、美味しいハンバーグを作りますか。

まずは…玉ねぎを細かくミジン切りにして色付くまでよく炒めて、ボールへ移して熱を取る。
眼に染みるけど、我慢して細かくしないとね。これは肉との間に隙間を作らないためなんだ。隙間が出来るとボソボソになっちゃうんだよなぁ。
それに玉ねぎを炒めるのって、ハンバーグは蒸し焼きにするから玉葱の水分を飛ばす為なんだよね。
それに焼きやすくなるし、甘味も引き出すことが出来るんだよね。

「掃除は終わったよ。あたしも手伝うかい?」
「アルフは…それじゃ、そこの挽肉を練っておいてくれる?目安は2、3分かな?」
「これかい?…なんだかベトベトするね。」
「生肉は脂があるからな。手を洗浄してからにしろ。」
「分かってるよ!…あんたはなに作ってるんだ?」
「我はドレッシングだ。サラダにかけるのだからな。…残すなよ?」
「あたしは肉が良いんだけどね。」

挽肉に対して…大体、1%の塩を入れると良いんだよね。今回は400gだから4g位かな?
後はパン粉を水に加えて、軟らかくしてっと。
ちなみに牛乳でもいいんだけど、今回は水にしようかな。
水はしっかりと絞っておかないとね。そうすると肉汁を吸ってくれるからね。

「アルフ。良く練ってね。」
「はいよ。」
「練らないと駄目なの?」
「うん。肉汁が逃げて、食感がボソボソになっちゃうんだよ。」
「つまり、お前の責任は重大という事だ。抜かるなよ。」
「あんたは一々…そっちこそドレッシング、ミスるんじゃないよ?」
「愚問だな。次はケチャップを…」
「あ~!!ガルムだめ!!今回は普通のドレッシングで良いから!」
「ぬぉ…!?」
「ほ~ら。言った側から。」
「アルフ、時間過ぎちゃうよ?」
「へ!?」

まったく…二人とも、大丈夫かな?フェイトちゃんの方は…ぎこちないけど、うまく出来てるみたい。
次はアルフが練っている挽肉に材料を加えてっと…
ここで香辛料とか加えるとまた、変わるんだけど…今回は普通にしようかな。

「卵を割るときは、軽くコンコンしてからね。」
「卵か…ドラマとかで額で割るってのがあったよ?」
「あれは…結構、痛いんだよ?それに…下手すると中身が顔面に…うぅ…トラウマが…」
「メビウス…やったことあるの?」
「正確にはサイファー様ですね。…あの時のメビウス様は…可哀想としか…」

…黒歴史と言うかトラウマが出てきたからここまでにしよう。
フェイトちゃん…可哀想にこっちをみないで…
練った材料を4等分にして…手でキャッチボールみたいにして空気を抜いて形を整える。

「こんな事するのに意味あるのかい?」
「こうすると中の空気が抜けて型崩れとかしにくくなるんだよ。形や厚さを均等にするのあるんだ。」
「へぇ~。ならしっかりとやらないとね。」
「おい、アルフ。お前の分だけ大きくないか?」
「あ…本当。少し大きいよ?」
「き…気のせいだよフェイト!!」
「…ちなみに大きすぎたり厚すぎても肉汁が逃げて、美味しくなくなるからね?」
「え゛!?」

焼くときは真ん中を少しへこませると、焼きやすくなるんだよね。
蓋をして蒸し焼きにしてっと…火加減は中火かな?

「っ…!」
「フェイト!?大丈夫!?」
「少しだけだから…」
「あ…もしかして切っちゃった?」
「うん…。」

フェイトちゃんの人差し指を見ると、確かに小さく紅い雫が出てきている。
痛いからなぁ…とりあえず…

「フェイトちゃん、ちょっと動かないでね。」
「え?」
「…んっ。」
「!!?????!?!めめめめめめめめメビウス!!????」
「…………」
「アルフ、呆けてないで絆創膏もってこい。」

口の中に広がる鉄の味。まぁ、慣れるものじゃないね。
フェイトちゃんの指を口の中にいれて怪我した部分をなめとる。

「ん…ちゃぱ…ちゅる…れるれる…」
「あ…ん…!メビウス…くすぐった…ん!」
「……」
「おい、口を金魚みたいにパクパクさせてないで、絆創膏持って来いと言ってるんだが…えぇい、場所は何処だ?」

ガルムは隣で思考停止してるアルフを引っ張って、絆創膏を探しに行ってくれた。

「ちゅぽ…この位かな?」
「あ…その…ええっと…」
「後は軽く濯いで絆創膏を張ってね。」
「う…うん。」

ガルムが絆創膏を持って戻ってくるんだけど…アルフはリビングに置いて来たみたい。
どうしたんだろう?
濯いだ指に絆創膏を張って…うん、血はあまり出てこないから大丈夫かな?

「とりあえず、後は私とガルムで出来るから、待っててね。」
「フェイト様はそちらでお待ちください。アルフも置いてきましたので。」
「わ…分かった。…メビウス。」
「ん~?」
「……ありがとう。」
「どういたしまして。…なにが?」
「うぅん。良いの。言いたかっただけだから。」

そう言ってフェイトちゃんは顔を紅くしてリビングに向かっていった。


・フェイト・

どうしよう…
それが今の私の頭の中。きっと顔は恥かしいぐらいに真っ赤になっている。
チラッと視線をキッチンで料理しているメビウスに移し、張られた絆創膏を見る。
そして…メビウスが舐めた…指。
思い出すと物凄い…恥かしさがまたやってくる。まさか…舐められるとは思わなかったから。
…アルフがさっきから呆然としてテレビ見てるけど…どうしたのかな?

「…あっ。」

キッチンの方から凄く美味しそうな匂いがして来た…
アルフも隠していた耳や尻尾をピンと立ててそわそわし始めている。
すると、私のお腹が小さく「きゅるる」と鳴る。…うぅ…聞かれてなくても恥ずかしい…

「はい。お待たせ~。メビウス特製フワフワハンバーグの完成!!」
「食事はこちらのテーブルで良いのですか?」
「あ、うん。こっちで良いよ。」
「いい匂いがするねぇ。」
「アルフは食器並べててくれるかな?」
「はいよ。」

テーブルの上に並べられていく美味しそうな夕ご飯。
本当に…いいにおいがする。

「本当はデミグラスソースも作りたかったんだけどね。」
「メビウス様、それは致し方ないかと。今はこれで我慢しましょう。」
「そうだね。また今度にしようかな。」
「また…今度?」
「うん、迷惑じゃなければね。また作りにくるよ?」
「良いのかい?」
「もちろん。」

また今度。という言葉に戸惑う私の代わりにアルフが問いかける。
それにメビウスは戸惑う様子も無く、直ぐに答えてくれた。
なんだか心が…温かくなるのを感じる…

「今度はお米もキチンと用意しないとね。」
「次回は我が人間形態で行きましょう。そうすれば問題は無いかと。」
「そうだねぇ。あ、後でレシピ書いていくからね。もし挑戦する気になったら作ってみてね。」
「うん。」

短く答えるのが精一杯。
心が一杯になっていく…色々なもので満たされていく感じがする…

「それじゃ、いただきます。」
「いただきます。」

メビウスが椅子に座って、皆でご飯を食べ始める。
本当に…本当においしい!
そんな私を…メビウスは優しく笑いながら見ていた。





あとがき

地理的位置関係は…ご都合主義でお願いします。
ガルムとアルフは使い魔と言うことで玉葱は大丈夫ということにしてみました。
王道イベント、料理作りに行くよ!!そして指を切る。
…料理作る男の子って萌えません?皆で料理作るのって楽しいですよね?
今回はこんな感じにしてみました。
そして…祝!!エースコンバットX2クリア!!(遅!
最後のスレイマニの機動なんだあれ?機関銃で倒したほうが速いじゃないですか…
しかし…クリアした時の感動が薄いと感じてしまった作者は一体…
ちなみにガルムさんはメビウス君の友達とかには基本敬語です。


以下返信

34様

はい。そのとおりです!!
いや…なんか…メビウスとメルツェルって…同じ感じじゃないですか?
あの位信頼関係が築かれて居とる思ってもらえれば良いのですが…



薺様

アンタレスも出したいとは思っているのですが…
序盤はメインキャスト?を一通り揃えてからですので…少し後になるかもしれません。



ダンケ様

パイパーシリーズはカッコいいですよね。クール?なイメージがありますねぇ。作者には扱える機体ではないですがね…
Fox2は誰かに言わせたいですねぇ…。候補としては今のところメビウス君だけですので…今後のキャラに…(笑
サイファーお母さんって実は…(超遠距離狙撃により通信途絶。




[21516] 8話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d5622272
Date: 2010/09/14 22:35
・閃・

ミッドチルダ、首都クラナガン、中央区、フレッシュリフォー本社ビル。
デバイス開発研究部

「どうも。閃ですが…」
「おお。閃君、良く来たね。まぁ座って座って」

折角の日曜日、なんでか知らないが俺は今、デバイスの開発部署に来ている。
あれか?ナイトレーベン分解案が通ったか?それともAI書き換え許可が出たか?
白衣を着た研究員が笑いながらお茶を出してくる。
とりあえず…礼を言って受け取る。…変な薬入ってないだろうな?

「そんなに警戒しなくてもいいよ。今回のは、何も入ってないはずだから。」
「待てこら。今回のは、とか、入ってないはず、とか怪しすぎんだよ!!」
「はっはっは。疑い深いなぁ。………ちっ…」

今舌打ちしたよな?小さく舌打したよな?
こんな危ないお茶なんて飲めるかよ…!!
しかし…研究員って…全員、こんなのかよ…。頭が痛くなるな…

「それで?俺を呼んでどうしたですか?」
「あぁ。君を呼んだのは主任で、僕は君の接待。」
「主任が?」

主任という言葉に俺は反応してしまう。
以前にナイトレーベンの開発案を提案したら、真っ先に食らいついてきたのが、主任、と呼ばれている研究員だ。

「主任は奥に居るからね。ちなみに…奥はカオス!!」
「なんだそりゃ…」

物凄く不吉な事を言って歩いていく研究員の背中に言葉を投げつける。
畜生…俺の周りにはメビウス級にまともな奴は居ないのか…。あいつはあいつで色々な意味で桁外れだけどな
痛む頭を抑えながら、奥へと続く扉を開ける。

「うへぇ…相変わらず汚ねぇな…」

小さな個室になっているその部屋は主任専用と呼ばれる部屋なんだが…
床や机の上に散乱している設計図や資料。足の踏み場もないぞこれは…
そして机で資料に埋もれるようにして、突っ伏して眠っている男…こいつが主任だ。
ちなみに名前は知らん。と言うか教えてくれない。

「お~い、主任。起きろ。」
「あ~…?…………男か………ぐ~」
「…この設計図燃やすぞ。」

適当においてあったライターに火をつける。こんだけ紙があれば直ぐに燃えるだろう。
設計図に火をつけようとした瞬間、主任が飛び起きて奪い取る。
最初から起きろよ。

「きききき…君はなんて事を!!僕の大事なデバイスちゃんを燃やすなんて!!それに、未来の魔法少女達が困るじゃないか!!ギンガとかスバルとか!!」
「だったら起きろっての。後、メタな発言は止めろ阿呆。」

資料を抱きしめる主任。そしてこいつの口から出たナカジマ姉妹の名前。
そう…実はこいつも転生者なんだよな。
ナイトレーベン開発案を出したときも「ナイトレーベン…挟まっちまったぜ!!ってやりたいのかい?」
知らない人は知らないだろうが、俺は物の見事に反応してしまった。
それで適当にネタを振ったら、大当たり。
結局はお互いの素性を話して、協力体制を作り上げたと言うことだ。名前を教えてくれないのは、リリカルに合わない平凡な名前だからだそうだ。なんだそりゃ。
実年齢も不詳。見た目的には結構若いと思う。…良くこんな奴を雇ったなフレッシュリフォー。…あ、人材採用したの家の両親じゃん。
ちなみにこいつの場合、デバイスに物凄く興味があったらしく、魔道師よりこっちを選んだみたいだと。実際、魔法要素も低くて研究者タイプらしい。
そして何より…主任はある意味で物凄い目標を掲げている。
その目標は…「ジェイル・スカリエッティと頭脳で並ぶ」だとよ。
まぁ、確かに…怪しさ満点の人物だが…掛け値なしの超天才であることには間違いない。
デバイスの開発やら医療関係とかでの功績は計り知れないと、父さんが言っていた。
実際、ナイトレーベンも主任が一人で完成させたようなものだ。俺も少しは手伝ったが、殆ど足手まといだったかもしれない。
しかし…天才となると人格破綻者ばかりなのか?…デバイス愛の変人だぞ…
とりあえず、俺は適当に資料を退けてソファに座る。
主任は机の上の資料を纏めて、外していたメガネをかけている。
…メガネを人差し指でクイクイってしてんじゃねぇよ。

「それで、俺をよんだ理由は?」
「中途半端に原作介入して、中途半端に悩んでいる君を呼んだ理由は…ごめんなさい焼かないで。」
「真面目にしてくれ…話が進まないだろうが。」
「…君から送られてきた資料を見せてもらったよ。…まさか、リボンの英雄にスライプナーが渡ってるなんてね。」
「主人公らしくて妥当じゃないのか?」
「確かにそうなんだけど…見事に使いこなしてるようだね。彼にスライプナーが渡っていると…他のVRシリーズも物語の主要メンバーに渡っているのかもしれない。」
「そうだと良いんだけどな。」
「しかし驚いたよ。まさかこの世界にリボン付きの英雄が居るとは。いやはや、転生はしてみるものだね。」
「だからメタな発言は慎めよ…」
「良いじゃないか。転生した人間の特権だし。っと…頼まれていた物をまとめて置いたよ。」

ちなみに、こいつとも情報交換を行っている。流石に俺一人だと限度がある。
そう言って主任は机の引き出しから数枚の資料を取り出して、俺に投げてよこす。
そこには、今まで開発されてVRデバイスシリーズが書かれていた。
だが…殆どに共通して書かれている文字、それは…

「行方不明…か。」
「そのとおり。誰が何時、どうやって持ち出したのか。それすら不明なんだ。…あれは開発期間、資金、人材を出鱈目に投入して作り上げたデバイス。
しかも、デバイス自体にも魔法出力がある。簡単に手放すような物じゃない。」
「…№1のスライプナーは見つかったって事は喜んでおくか。」
「しかも、それが主人公に渡ったんだ。いい傾向だと思う。」
「シリーズが開発された時期って分からないのか?そこからルートを調べるのは?」
「残念ながら記録が抹消されていてね。けど…懸念すべきはそこじゃない。」
「…ゴッデンシュタイナー、か。」
「そう…自己中心転生者。なにを勘違いしてるか知らないけど…やばいね。痛すぎる」
「こっちではどんな感じなんだ?」
「管理局と密接な関係を持っている一族。そしてベルカとも関係がある一族、って所かな。
これと言って、大して情報はないなぁ。近くに居る君はどうなんだい?」
「今のところは表立った行動はとってないな。逆に静か過ぎて恐いぐらいだ。虎視眈々と何かを狙ってる気がすんな。」


主任は額を押さえながらため息をつく。
奴との会話ログを先に送っておいたから、多分聞いていたんだろう。
まぁ…その気持ちは分かる。しかし…実際、ゴッデンシュタイナーは静かにしている。
あの夜以来、索敵をしてもまったく引っかからない。戦闘もしてなければ、魔法すら使っていない。
それが俺にとっては不気味でしょうがない。

「デバイスは、形状的にあれはVRシリーズじゃないね。」
「そうなのか?」
「あれはアスカロンだと思う。一つ目の仮面も特徴的だからね。」
「アスカロン?…竜殺しの剣だっけか?」
「そのとおり。僕達の世界にあった、あるゲームに同じような機体が出ていてね。双剣で一つ目の顔を持ってたかな?
…まぁ、悪役だったけどね。」
「…奴は竜殺しの英雄にでもなるってか?はっ、笑い話にしかなんねぇな。」
「それに設計図描いたの僕だし。」
「お前かよ!!」

にこやかに話す主任に突っ込みを返す。
なんこう事をサラっといってくれんだよ…
しかし…奴がどうあがこうと無駄。
すでに主人公であり英雄は存在している。
世界が既にそう決めてんだからな。それを無視すれば…消されるはずだ。

「当面は気をつけた方が良い。そろそろ管理局も動き出してくるはずだからね。」
「管理局か。そっちで何か良い事はないのか?」
「研究所入り浸りの僕に言ってもねぇ。何か情報が入ったら逐次、教えるよ。」
「そうか。こっちでも原作外の出来事が起きたら連絡する。」
「そうしてくれ。それじゃ、態々、足を運んできてくれたお礼にナイトレーベンのチェックでもしようかな。」
「ついでにAI設定変えてくれ。」
「無理。」
「即答かよ…」


・メビウス・

今日は日曜日。
オメガの所属しているサッカーチーム翠屋JFCの試合がある。
折角の休日でもあるし、ジュエルシードの回収もそれなりに順調という事もあって、観戦に行く事になった。
場所は河原のグラウンドで、私の他になのちゃんやアリサちゃんにすずかちゃんも、観戦している。
閃も誘ったんだけど、急用があってこれなかったみたい。
士郎さんがオーナーを勤めているからか、強いんだよね。
ちなみに、ガルムとユーノも動物形態で一緒に居る。なのちゃんにはユーノが人間の男の子と言うことは、以前に説明しておいたしね。

「けど…本当に良い天気だね。」
「そうね。晴れてよかったわ。」

そう言いながら、アリサちゃんが眩しそうに空を見上げとる。雲一つない快晴の青空が広がっている。
春の陽気でなんだか眠くなってくるなぁ。丸くなって眠っているガルムの間にユーノが入り込んで、眠っていた。
ん~…気持ち良さそうに眠っているし…起こさないで上げよう。

「あ、オメガ君にボールが渡ったよ。」
「マークが厳しそうだけど…抜けれるかな?」
「オメガ君!!頑張って~!!」
「行け!!オメガ!!」

すずかちゃんの言葉を聞いてグラウンドを見ると、オメガにボールが渡った。
サッカー好きのオメガは、ここでもエースとして活躍している。
私達が見ても、マークが厳しいと思うのに軽々と抜いて、シュートを決めた。
シュートを決めたオメガは、私やなのちゃんの声援が聞こえたのか、こっちに向いてガッツポーズを取る。
そしてチームメイトとハイタッチを交わしていく。
ん~、やっぱりオメガは凄いなぁ。実力もあるし、人望みたいなのもある。

「相変わらず、体力はあるわね。」
「オメガだしねぇ。サッカー命みたいなものだよ。」
「本当にあいつは…サッカー馬鹿よね。メビウスやらないの?」
「私は…どっちかと言うとバスケットボールが好きかなぁ。」
「ふ~ん。あら?けが人かしら?」

アリサちゃんの言う通り、試合が中断している。
確かに…翠屋JFCの選手の一人が怪我をした見たい。大丈夫かな…?
…あれ?オメガが士郎さんと話して…こっちに向かってくる?

「メビウス。」
「どうしたのオメガ?」
「脱げ、そして蹴れ。」

次の瞬間、私のキックが綺麗にオメガのわき腹に突き刺さった。
そのまま、奇声を上げながら土手を転がっていくオメガを冷たい眼で見る。
流石に…親友でも許せないことはあるんだよ?

「……公衆の面前で…」
「違ぁぁぁぁぁう!!!そういう意味じゃない!!」

転がっていく途中で体勢を立て直したオメガが再びこっちに走ってくる。

「さっき、怪我人が出たろ?それで、メンバーが足りなくなってよ。」
「補欠は居るんでしょ?」
「居る事は居るんだけどよ。みんな自信が無くてな。士郎さんと相談してメビウスにしたんだよ!!」
「…私に?」
「おう!!頼むぜメビウス!!」

いや…頼むよって言われても…
迷っているとクイクイとなのちゃんが私の手を引っ張る。

「メビウス君。」
「なのちゃん、なに?」
「頑張ってね!!一生懸命応援するからね!!」

なのちゃん、物凄く眼をキラキラさせてるんだけど…
結局、なのちゃんにお願いされたと言うことで、試合に参加することになった。

「メビウス!オメガ!!頑張りなさいよ!!」
「二人とも、頑張って!!」
「メビウス君!!カッコいい所見せてね!!」

背中に三人の声援を感じる…。
翠屋JFCのユニフォームを着て、グラウンドに立つ。うん、高揚感って言うのかな?悪くないと思っている自分が居る。
少し長い髪はリボンでしっかりと止めてあるし…準備OK。
私は1番、オメガは11番を背負っている。
あれ?向こうのチームに見たことのある顔がある。

「大変だ純!!相手はリボン付きだ!!」
「落ち着け勇次!!」

確か…隣のクラスの純と勇次…だったかな?
なんか二人して私を見て、驚いてるけど…

「ハッハー!!二人で一つのコンビネーションで行くぜ!!」
「あんまり期待しないでよ?」
「メビウスに期待するなって言うのが無理な話だぜぇぇぇ!!」
「その根拠はどこからなんだろうね。」

小さく苦笑しつつ、足元のボールを軽くリフティングする。
オメガと付き合っていれば、必然的にサッカーをすることにはなる。
少しだけど、リフティングとかは出来るんだよね。
軽く5回程度して、…よし、覚悟完了。

「さぁ…交戦開始だぇぇぇ!!」
「皆!!よろしくね!!」

後ろに居るメンバーに声をかけると、大きく「メビウスが居れば勝てる!!」とか色々と聞こえてくる。
まったく…オメガと似てみんな能天気なんだから…
けど…悪くないね。さて…なのちゃん達が見てるんだ。かっこ悪い所は…見せれない!!
審判がホイッスルを吹く。さぁ…開戦だ!!

「メビウス!!パス!!」
「っと…右から行くよ!!」
「二人に続けぇぇぇ!!」

「止めろぉぉぉ!!!」
「無理ですって!!11番だけでも手ごわいのに!!」
「あぁ!!純が抜かれた!!」
「慌てるな勇次!!お前が止めろ!!」



結局、試合は5-0で圧勝。
ちなみに私は2点でオメガが3点を決めた。
途中参加だけど、結構、楽しかったなぁ。
試合終了と共に、チームメイトにもみくちゃにされたけど…それもそれで凄く楽しい。
うん、やっぱり参加してみるといいものだね。
ベンチに行くと、何時の間にか、なのちゃんがタオルとドリンクを持ってきてくれていた。

「お疲れ様メビウス君!!とってもとってもカッコ良かったよ!!」
「あはは。ありがとう。なのちゃんのお陰かな?」
「わ…私の?」
「うん。なのちゃんの応援、良く聞こえたからね。ありがとう。」
「そっか…えへへ。良かったぁ。」

タオルを受け取りながら、なのちゃんにお礼を言う。
一番、なのちゃんの声援が聞こえたし、それが後押しをしてくれていた気がする。
けど…疲れたなぁ。

「この後、家でお祝いするんだって。メビウス君も来るよね?」
「あ、そうなの?それじゃ…折角だし行こうかな。」
「やった!!手作りのお菓子、用意するね!!」
「なのちゃんのかぁ…楽しみだね。」

隣ではしゃぐなのちゃんを見て、私も笑う。
なのちゃんのお菓子はおいしいからなぁ。
今から楽しみになってきた。
さぁ…翠屋でお祝いだ!!






主任。本名不詳年齢不詳。
転生キャラ3。基本変態&メタ発言キャラクター。
あと開発担当キャラ。


あとがき

ん~…相も変わらず文章が微妙…今回は日常?をモチーフにしてみました。まぁ…サッカーの試合ですけど。
しかし、それでも強行すると言うね。
閃君視点が物凄く書きやすい…あれか?メビウス君を主人公らしくかっこよく書こうとしてるからか?微妙に書きづらいのは?
純と勇次は一発キャラです。
いや…思いっきり、分かる人は分かると思うんですけどね。

以下返信


ADFX-01G-2様

メビウスが8人…そこまで考えていませんでした…
ゴッなんちゃらさんの活躍(笑)はもう少し後になると思います。
今のところは行動を起こしてません、なのはの観察のみです。
カリバーンですか…機体の出し方が今一分からずタイフーンでクリアでした…
機体の値段が高いです…


B=s様
誤字報告ありがとうございます。
普通に鳴海と打ってましたね。本当にありがとうございます。


ダンケ様

ばれたら確実に焼きもち焼かれますね。メビウス君。これが厨二クオリティ!!
作者の愛機はライデンでしたね。開戦同時主砲でごり押しでした。テムジンも使ったりはしてましたね。
サイファーお母さんは鬼神ですので、もう少しお待ちを…



[21516] 9話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:621d3fa3
Date: 2010/09/23 22:55
・なのは・

「レッツパァァリィィィィィ!!!!」
「ああもう!!オメガ!!少し落ち着きなさいよ!!」

そう叫びながら、オメガ君がジュースを一気飲みしてるのを、アリサちゃんが煩そうに止めている。
すずかちゃんは他のクラスの子達とお話をしている。
サッカーで勝ったという事で、翠屋でお祝い会をしてるんだけど…にゃはは、すごい元気。
さっきまで走り回ってたとは思えないや。
私もお母さんのお手伝いでジュースやケーキを運ぶのを手伝っているの。

(あれ?メビウス君は…何処だろ?)

お店の中を見渡すと、隅っこの方でジュースを飲んでいるメビウス君を見つける。
もぅ、メビウス君だって活躍したのになぁ。
途中参加なのにオメガ君と一緒にみんなの注目を集めていたメビウス君。
同じクラスの女の子達も見に来てて…すごく応援してた。それがなんだかいやで、私も大きな声で応援をしてたの。
優しくて、色々な事が出来るメビウス君は誰にでも好かれる。その…ラブレターみたいなのを貰って…困ったように笑ってた時もあった…。
小さい頃から何でも出来たメビウス君だけど…私はその秘密を知っている。
だって…ずっとずっと一緒にいたんだもん。メビウス君はいっつも努力していたの。
お勉強だって沢山してたし、運動だってしてた。オメガ君に誘われたサッカーだって、最初はすごく下手だった。
けど、練習して、沢山沢山練習してたのを私は知っている。だって…小さい頃からずっと見てきたんだもん。
お料理も、最初は手が絆創膏だらけだった。けど、今はすごく上手になってるの。
絆創膏を張った手を見て、私が泣いちゃったのは…恥かしかったなぁ。すごく痛そうで…悲しくなっちゃったんだよね。

「ふふ。なのは、こっちは大丈夫だから。メビウス君の所に行きなさい。」
「にゃ!?…うん!!」

お母さんが笑いながら、そう言ってくれる。うぅ…ずっとメビウス君の方を見てたからかな…?
直ぐに私は、さっき作ったばかりのクッキーとケーキをお盆に載せて、メビウス君に駆け寄っていく。
最初に食べて欲しいもん。

「メビウス君、隅っこで良いの?」
「あ、なのちゃん。私はここで良いよ。流石にちょっと疲れたからね。」
「そっかぁ。ねぇねぇ、隣良いかな?」
「はい、どうぞ。手伝いはもう良いの?」
「うん、一通りすんだから。はい、これ。約束のお菓子!」
「あはは、ありがとう。すごく美味しそう。」

笑いながらケーキを食べてくれるメビウス君。えへへ、嬉しいなぁ。
小さい頃に、私が最初に作ったクッキー。失敗作だったのに、メビウス君は食べてくれた。
美味しく作ると言って張り切っていたのに、失敗した私を優しく慰めながら、おいしい、とも言ってくれた。
それからかな。もっとおいしいお菓子をメビウス君にご馳走したくて、沢山お菓子作りの勉強もしたし、お母さんにも習ったもん。
…お料理の方はメビウス君の方が得意だけど…お菓子なら負けない自身はあるの!

「メビウス!!オメガの馬鹿をとめなさいよ!!」
「まだまだ食えるぜメビウゥゥゥゥゥス!!!」
「はぁ…単純馬鹿なんだから。」

オメガ君がジュースを持ってこっちに突っ込んでくる。
むぅ~…折角二人だけでお話してたのに…
けど…メビウス君の親友だもんね。ここは我慢しよう。でも…後でもっと、二人だけお話できると良いなぁ。
…そう言えば…さっき、ジュエルシードみたいなのを感じたような気がするんだけど…メビウス君が何も感じてないし…勘違いかな?



・メビウス・

こっちに突撃してきたオメガを軽くいなして、椅子に座らせる。
まったく…本当に体力が有り余ってるなぁ。

「どうしたメビウス!!なんか疲れてんな!!」
「あのね…流石に…疲れるよ。むしろフル出場してたオメガが元気なのが不思議なんだけど…」

これでも運動は出来る方なんだけど…流石に体力では敵わないな。
…まさか、毎朝、走ってるからとか…言わないよね?

「あれ?ユーノ君は?」
「ユーノなら、あそこよ。」

なのちゃんがユーノが見当たらないのに気が付いたのか、周りを見渡す。
すると、アリサちゃんが女の子達の固まっている場所を指差したんだけど…
あ~…愛玩されてる…。可愛いものに好きなんだものね。
けど…大丈夫かな?なんかグッタリしてるような…
ん~…しょうがない。

「ガルム。行って。」
「……」

足元で丸くなっていたガルムに指示を出す。
言いたい事が分かってくれたのか、静かに女の子達が居るところまで歩いていく。
そして、ユーノの首の部分を咥えて、戻ってくる。
女の子達には悪いけど…流石に、あれ以上はユーノが可哀想だからね。

≪た…助かった…。ありがとう。メビウス、ガルム。≫
≪とりあえず、ガルムの傍に居た方が良いよ。≫
≪我の影に居たほうがよろしいかと。≫

ユーノが念話でお礼を言いながら、ガルムの足元に隠れる。
そのまま、ガルムはまた丸くなって、長い尻尾でユーノを包むようにして隠してくれた。
これなら、大丈夫かな?

「本当にガルムって頭が良いわよね。オメガより良いんじゃないの?」
「にゃはは…。アリサちゃん、流石にそれは………」
「なのちゃん…否定してあげようよ…」

そう言いながら感心するアリサちゃんなんだけど…まぁ、ガルムは人間にもなれるからね。
実際、ガルムは冷静でとても頼りになる。用心深すぎの時もあるけど…それに助けられた事は何回もあるからね。

「メビウス、ガルムを家にお婿に出さない?」
「お婿?」
「ほら、私の家にも犬が沢山居るから、どう?」

確かに、アリサちゃんのお家には沢山の犬が居る。
それこそ、大型犬から小型犬まで色々と飼っているんだよね。
すずかちゃんは猫好きで、アリサちゃんは犬好きなんだ。
けど…ガルムにお嫁さんかぁ。
…あ~…ガルムが思いっきり、興味ありませんよ。見たいな視線を私に送ってくる。

「興味無いってさ。」
「そう、残念ね。…って言うかあんた…鳴きもしないのに、良く分かるわね。」
「家族だからね。」

足元に居るガルムを軽く撫でながら、答える。
私にとってガルムは家族も同然だから、表情が変わらなくても直ぐに分かる。
そんな話をしてる内に翠屋でも、結構な時間が過ぎて、チームのメンバーや、アリサちゃん達が帰っていく。
ちなみに、オメガもはしゃぎすぎて疲れたのか、家に帰ったみたい。
私はなのちゃんや桃子さんと一緒に店内の片づけをしている。
ガルムとユーノは先に帰ってもらった。いや…ユーノが凄くぐったりしていたからね。

「ごめんね。メビウス君、態々、手伝って貰って。」
「いえ、良いんですよ。ご馳走になりましたし。」
「そう?でも、もう大丈夫だから、帰りなさい。なのはもね。」
「良いのお母さん?」
「えぇ。二人とも、ありがとう。」

桃子さんがそう言うなら…良いのかな?
そのまま、私となのちゃんは、掃除道具を片付けて、翠屋を後にする。
少し家まで距離があるけど…なのちゃんとお話しながら帰ろうかな。
…ん?…これは……?

「エクス、魔力索敵かけて。」
『了解しました。少々、お待ちを。』
「ほぇ?どうしたの?」
「ん…少し、気になることがね。」

まさかと思うけど…。
連日のジュエルシードの回収で、私も魔力の波長を覚えている。
索敵魔法程じゃないけれど、多少の魔力は感知できると思う。
一瞬だけど…似たような波長を感じ取ったんだよね。
そして…エクスが報告すると同時に…更に大きな波長を感じ取る。

『マスター!!市街地にしてジュエルシードの反応を感知!!』
「やっぱりか…!!」
「市街地って…大変だよ!!」

なのちゃんの言うとおりだ…。
今までは人が少ない公園や、空き地といった場所だったけど…市街地となると不味い。
あれだけの高魔力体が、そんな場所で暴走を起こしたら…大惨事になりかねない!!
くっ…。私とした事が…疲れと、試合での高揚感の所為で見落としていたなんて…!!

「なのちゃん、走るよ!!」
「う…うん!!」
≪ガルム!!市街地でジュエルシードが暴走してる!!≫
≪了解しました。我等も直ぐに向かいます。ご無理は為さらぬ様に。≫

ガルムに念話を送りながら、市街地に向かって走り出す。
少しなのちゃんの体力が心配だけど…今は急がないと…!!


ガルム達と合流して、市街地に着いた私達の眼に映ったのは、そこら中から生えている…木の根っこだった。
道路やビル等の到る所から、木が生えている。
直ぐにバリアジャケットを展開して、空に飛び上がる。
やっぱり…市街地の被害が出てるか…。
中心部を見ると、巨大な大木がそびえていた。そして、魔力の反応が増大していくのが分かる。
速く本体の場所を見つけないと…大変な事になる…!!

「こ…こんな…」
「サテライト起動!!探せ!!ユーノは結界を!!被害を抑えて!!」
「分かった!!」

なのちゃんが隣で呆然している。無理はないけど…今はそんな暇はない!!
索敵魔法のサテライトを起動させ、蒼いサーチャーが天高く飛び上がる。
その間にユーノが結界を張り、空間を隔離してくれる。
よし…これ以上の被害は防げるはずだ。

「なのちゃんも、探して!」
「あ、う…うん!!エリアサーチ!!探して、災厄の根源を!!」
「メビウス様、気をつけてください。狙われています!!」

なのちゃんが集中するようにして、眼を閉じる。
私の方も索敵を再開しないと…
そう思った瞬間にバイザーに危険と表示される。
視線を向ければ、木の根や枝が、意思を持ったように襲い掛かってくる。
索敵はなのちゃんに任せるしかないか…!!
サテライトを中断して、ブリッツセイバーを展開。なのちゃんの前に出て、襲ってくる木の根を切り払う。
ガルムも足技や、バインドを鞭のように使って、枝を払っていく。
木の根とは言え…数が多いと…梃子摺るな…!!
今の私は、数を相手にする誘導魔法は持っていない。ソードウェーブは単体にしか効果がないし、ボムも連射はそんなに出来ない。
これは、後で何か考えないといけないね…!!

「メビウス君!!見つけたよ!!」
「よし、私が護るから、なのちゃんは砲撃魔法を!!封印効果も付加してね!」
「うん!!」

なのちゃんの周りに桃色の魔方陣が展開されていく。何時見ても…綺麗だね。
っと…見とれている場合じゃないね。今の私の仕事は…なのちゃんを護る事だ。
襲ってくる根をセイバーや、ソードウェーブで切り払う。
時々、纏まってくる時は、ボムやフリーケンシーで一掃する。動きが単調で、これならタリズマンを使わなくても済むかもしれない。

「いっけぇぇぇ!!」

なのちゃんの掛け声と同時に、桁外れの魔力の塊がジュエルシード目掛けて飛んでいく。
これが、なのちゃんの砲撃魔法のディバインバスターだ。本当にシンプルで、標的に魔力をぶつけるとのだけど…その威力は計り知れない。
これの直撃を食らった…多分、殆どの魔道師は堕ちるんじゃないかな?それだけの威力を誇っている。
訓練の時にタリズマンで防ごうとしたら、物の見事に消し飛ばされたことがある。ギリギリで回避できたけど…冷や汗が止まらなかった。

『ディバインバスターの直撃を確認。…目標…健在です!!』
「嘘でしょ!?」
「そ…そんなぁ…」
『…根の部分を細かくし、盾にしたものと思われます。完全には防げなかったのでしょう。反応は弱体化しております。』

声を出して驚くユーノとなのちゃん。流石の私も驚くよ…。まさか、あの砲撃で倒せないなんてね…
末端を盾にして、切り捨てて本体を護ったって言う事か。
けど、エクスの言う通り、確かに本体の幹にも亀裂が入っている。
そして、内部に居る男の子と女の子の姿を確認することが出来た。

「あの子達…どうして…?」
「願いを叶える宝石…か。願いが強いほど…歪んで強大になる、で良いんだよね?
「うん。そうなんだけど…。」
「ちっ…二人分だと更に強くなる、と言うことか…厄介ですね。メビウス様。どうしますか?」

ユーノに教えてもらったジュエルシードの情報を思い出す。
今までの暴走体を考えると、納得がいくかもしれない。最初に戦った犬も強くなりたい、とか、大きくなりたい、と願ったんだ。
それが歪んで…あんな姿になったんだろうね。

「なのちゃんは下がって。今度は私がやるよ。」
「で…でも!!」
『なのは様。マスターは貴女の事を心配しているのです。連日の回収や封印で限界でしょう?』
「なのちゃん、私を信じて…ね?」
「…うん。」

なのちゃんが心配そうに…だけど、頷いてくれた。
さて…反応が弱体化してる今がチャンスだね。確実に…決めさせてもらうよ。

「エクス、モード変更。一撃必殺。」
『了解しました。一撃必殺に移行します。』
「い…一撃必殺!?」

物凄く物騒な名前のモードだけど…私にとって、最強の単体攻撃魔法。
これを防がれると、不味いけど…防がれる気はしない。
キャンセルを併用して、一気にトップスピードまで速度を上げる。
急制動や急旋回以外にも、スピードが上がる時間を【キャンセル】することが出来る。
最も…使い慣れないと、自壊する恐れがあるんだけどね。
そのまま、エクスを巡航モードに変形させて、上にサーフィンするみたいに乗り、本体に魔力刃を展開する。
最後の足掻きなのか、枝や根が襲い掛かってくるけど…遅い!!

「ランスロット家戦闘家訓!!第一章!!」
『一撃必殺!!』
「ブルー・スライダー!!」

これが私の最強の単体魔法、ブルー・スライダー。
魔力を推進力として、機動と突撃を行う強引な技だけど…威力は最も高い。
しかも、私の周りにも不可視の魔力で防御してくれているから、実質、突撃中は無敵と言っても良い。
欠点は…魔力の消費が多いことなんだけどね。

「砕け散れぇぇぇぇぇ!!!!」

そのまま本体に突撃して…本体の幹を両断する。これなら…再生は出来ない!!
けど…これで終わりじゃない!!
ブルー・スライダーを一瞬で解除して、キャンセルで急旋回し、そのままランチャーで魔力弾を撃ち込む!!

「これで…終わりだ!!」

私の宣言の通り…本体の大木は、真ん中から折れて…崩れていった。


・なのは・
ジュエルシードを封印したけど…町に…沢山、被害が出ちゃった。
あの時…私が…早くに気が付いてれば…こんな事にならなかったのに…
メビウス君だって…疲れてたのに…私が、無理させちゃった…
少し、離れた所で私は町の様子を見ていた。ユーノ君は限界なのか、ガルムさんの腕の中で丸くなっていた。
結界をしても、町の被害は大きく、夕方の今でも混乱は続いている。
けが人や、混乱した人達の声が沢山聞こえてくる。建物も、殆どが壊れていて…滅茶苦茶になっちゃっているの。


「なのちゃん、大丈夫?」
「わ…私は大丈夫だけど…メビウス君は…?」
「流石に…疲れたね…。」

ジュエルシードを封印して、笑うメビウス君の顔は、本当に疲れているみたい…。
そのまま、エクスさんを地面に突き刺して、寄りかかっている。

「今回は…私のミス…だっかな。」
「え…?」
「ここまで注意力が散漫だったなんて…。今度からは厳戒態勢にしないとね。」

メビウス君が悪い訳じゃないのに…
言いながら、メビウス君は悔しそうに空を見上げる。

「メビウス君の責任じゃないよ!わ…私だって…」
「え?」
「どうして…メビウス君が責任感じちゃうの?疲れてたんでしょう?休みたかったんでしょう?
それなのに…私の事を気遣って…最後は自分で終わらせちゃった…。小さい時から…何時も何時も、私の事を考えてくれていた。
何時も何時も…私が迷惑をかけても、笑って、慰めて…助けてくれた。
けど…それでメビウス君が…メビウス君が怪我するのなんて私はいや!!私だってメビウス君の役に立ちたいよ!!」
「なのちゃん…」

気が付けば、私は泣きながら大声を出していた。
けど…メビウス君は困ったように笑って…優しく抱きしめてくれた。

「なのちゃん、ありがとう。…けどね?私もなんだよ?
私も…なのちゃんが怪我をするのなんて嫌なんだ。大丈夫。私は強いんだから。」

優しく笑いながら、メビウス君は私を見る。
…やっぱり、メビウス君はずるいなぁ…。その笑顔は…一番弱いのに…

「メビウス君…私…決めたよ。」
「ん?」
「私、もっともっと魔法の勉強する。遊び半分じゃなくて…しっかりとジュエルシードも集めるの。
それで…メビウス君の足手まといにならないようにするの!!」

メビウス君は、そっか、と言って私の頭を優しく撫でてくれた。
優しくて…暖かくて…とても…安心するの。



・メビウス・

そっか…心配させちゃったんだね…。
私の戦闘スタイルは、殆どが単独で戦える事をコンセプトにしている。
詠唱が長い魔法はラジカル・ザッパー位だし、速度を重視した戦いを私は好んでいるから。
けど…確かに、なのちゃん達と一緒に戦うなら…集団戦闘も学ばないといけないね。
一人で突っ走るなら、それこそオメガと変わらない。
けど…オメガはそうするのは、自分が突撃役に適しているからと言う考えがあっての行動。
近距離戦闘に特化しているからね。
けど…私は近距離から中距離まで対応できる。私が援護するって言う選択肢もあるんだ。
やれやれ…私もしっかりと勉強しないとね。

『マスター、接近する魔力反応を確認しました。』
「なに…?」
『該当データありです。…フェイト様のようですね。』

バイザーに表示された方向を向けば…こっちに来る金色の魔力光が見える。
私達に気が付いたのか、上空まで来ると降りてくる。

「メビウス…!?」
「あぁ…やっぱり、フェイトちゃんだったんだ。」

流石に驚くよね。町も大きな被害だし…私達もバリアジャケットを展開してるからね。

「メビウス君…その子誰?」
「メビウス…そっちの子は…?」

私の後ろに隠れていたなのちゃんが、フェイトちゃんを見つけて、フェイトちゃんも私となのちゃんを交互に見るんだけど…
あれ?なんか一瞬、空気が重くなった気が…?

「こっちは高町なのは。私の幼馴染。」
「幼馴染…」
「向こうがフェイト・テスタロッサ。私の友達だよ。」
「友達…」

交互に紹介するんだけど……二人とも、なんか…重いよ?
ガルムなんて様子見みたいにしてるんだけど…

「…フェイトちゃんは…どうしてここに?」
「…ジュエルシードを渡してほしい。」
「え…?」

そう言いながらフェイトちゃんは私達にデバイスを突きつける。
その瞳は…冷たく…無機質だ。あの時みたいに…優しい光はなにも見えない…。
流石に恐いのか、なのちゃんが私の背中に隠れるけど…
っ!?…一気に殺気みたいなのが膨れ上がった…

「…フェイトちゃん、落ち着いて…ね?お話しよう?」
「話す事なんて何もない。大人しく渡して。」
「…どうしたのフェイトちゃん?」

ほんの一瞬だけど…またフェイトちゃんの瞳に悲しそうな光が宿った。
それに…デバイスを持つ手が少し…震えていて、とても辛そうに私は見える。
エクスをなのちゃんの近くに突き立てて、攻撃する意思は無いとアピールする。

「フェイトちゃん、私もなのちゃんも攻撃しないから…デバイスを下ろして…ね?」
「……いで…」
「え?」
「来ないで!!」

叫ぶと同時に槍のような魔力弾が打ち出されてくる!?
エクスは無いし…やばい…!!
私に着弾はしなかったものの、地面に命中し、爆発を起こす。
その衝撃でバイザーが割れたのか、左目の上に痛みが入る。
多分…欠片で切ったな…!!

「メビウス君!!」

なのちゃんが悲鳴に近い声を上げながら、こっちに駆け寄ってくる。
まぁ…正直…かなり、効いた。体力の消費が激しい身体には…きつい。
あ…抑えても血が出てくるか…深くやったみたいだね。

「あ…あぁ…」

私の傷を見て、フェイトちゃんが…何かに怯えるようにして、後退りしていく。

「どうして…メビウス君はなにもしないって言ったのに!!なんで攻撃するの!!」
「……」
「メビウス様!?貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!」

なのちゃんが泣きながら、私を助け起こしてくれる。はは…血で視界が赤く染まってるよ…
眼は無事でよかった。流石にこの歳で隻眼とかはなりたくない。
異常に気が付いたのか、ガルムがこっちに走ってくる。そのままフェイトちゃんに攻撃しようとしたけど、私はそれを手で制止する。

「フェイトちゃん…一体どうしたの…?」
「……ごめんなさい…!!」

それだけを言うとフェイトちゃんは空に飛び去っていってしまった。
私も後を追おうとしたけど…背中に強くなのちゃんが抱きついて飛び上がれなかった。

「メビウス君…行かないで!!行っちゃ駄目だよ!!怪我もしてるんだよ!?」
「なの…ちゃん…」
「どこにも…行かないで…。一人にしないでよう…」

泣き顔でなのちゃんが私を止める。
私はただ…慰める事も…追うことも出来ずに…その場に立ち竦んでしまった…
…ごめんね…なのちゃん。フェイトちゃん…
私は…何も出来ない…




あとがき


はい、本日は休日に付き、午前中で仕上げてみました。
本日のノルマは達成!!駄文でも達成!
今回はなのちゃん決意する。フェイトちゃん迷うをコンセプトにしてみました。
うん、微妙もいいところですね。
女の子に抱きつかれる男の子って…萌えません?
抱きつく女の子に、じゃなくて、抱きつかれる男の子に。ですよ?
…作者だけですか?
ランスロット家の家訓は…ちゃんとしたのもありますが、今回は戦闘家訓を出してみました。
いや…だって両親が…ねぇ?
次回はフェイトちゃんと仲直り、でも書いてみようかと思っています。ではでは~

以下返信

34様

日本人らしくジャンを純にしてみました。勇次は分かりやすくて良いですね。
黄色の13番が居たら、逆に負けていると思います。(笑
04で初見のミッションは…トラウマです…。迫りくる恐怖が…!!

ザムB様
原作でも、確かにそうでしたよねぇ。
そしてキンピカ…確かに…苗字がそう見えるかも(笑
羽々斬は結構、カッコいいと思うんですよね。現在、思案しております。


ダンケ様
ベンチに居るだけで効果がある。なんと言うスーパーエース(笑
メビウス君は何でもこなせますが、努力もしていますね。サッカーはオメガ君が上、お菓子作りはなのちゃんが上です(笑
VRデバイスの入手経路は…少しずつ明かそうかと思っていますので…



[21516] 10話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/09/24 14:33
・メビウス・

「………」

ザーザーと雨音が聞こえる。天窓を見れば、滝のように雨水が流れている。…さっき降り始めたんのか…
今日、私は学校を休んだ。理由は…眼の怪我。
大事にはならなかったけど…左目は完全に包帯で覆われている。
眼の部分には傷は無かったけどね。でも結構、傷が深いんだけど…そんな事はどうでもいい。
私は一人で、自室のベットで仰向けになりながら考える。ガルムはアヴァロンの工房に手伝いに行ってもらっている。
…そうしないと一人でフェイトちゃんのマンションに、殴り込みを仕掛けそうだったからね…。

「…なんでだろう…?」

思い出されるのは怯えた表情をしたフェイトちゃん。どうして…悲しい眼をしたんだろう?
…絶対に私に怪我をさせるつもりはなかった。これだけは断言できる。
それだったら、最初から私に魔法を直撃されるはずだからね。あの状態で食らったら、戦闘不能になっているのは間違いない。
ザーザーと雨が降る。考えがまったく纏まらないまま、時間は夕方。

(悩むのは後でだぜ!!今は突っ走ろうぜ!!)

…浮かぶのは何時でも騒がしい親友の笑顔。まったく…今日は一回も会ってないのに、良くもまぁ…鮮明に思い出せるよ。
けど、確かに…何時までも悩んでいてもしょうがない…か。行動を起こさないといけないね。
…さっきと同じ、時間は夕方。雨が降ってても関係ない。さぁ、仲直りしに行こうかな!!
手ぶらで行くのもなんだし…今日は何を作ろうかな〜。
傘を差して、走り出す。目指すはスーパー!!


スーパー店内

「お前たち!!商品を死守せよ!!」
「無理です!!フォード店長!!特売中なんだ!!」
「貴様…後で譴責してや…!!」
「店長が人波に飲まれた!!」


…特売場は物凄い事になってるね…今回は用事が無いから、近づかなくて良かったかな。
…前はここで、フェイトちゃんと再会したんだけど…今回はそうは行かないよね…
さて…今回は適当に…鳥の唐揚げにでもしようかな。最近は、少量の油で作れる唐揚げ粉があるから便利で良いんだよね。
…店内でも相変わらず、外の雨の音が聞こえてくる。大雨だなぁ…

「1520円になります。」
「2000円でお願いしますね。」

会計を済ませて、買った物をマイバッグの中に居る。
さて…そろそろフェイトちゃんの家に行こうかな。
スーパーを出て、マンションを目指して歩き始める。
夕方で、しかも雨のせいで辺りは薄暗くなってきている。
…あれ?…どうしたんだろう?
視界に移る車椅子の女の子。傘を持っていないのか、店仕舞いをしてある商店の下で雨宿りをしていた。
…そう簡単には止まないし…マンションの近くでもあるし…別に良いかな。
そのまま、私は女の子の方に小走りで近づいていく。

「こんにちわ。」
「へ?え?…こんにちわ?」
「いきなりごめんね。雨宿りかな?」
「そ…そやねぇ。まさか、いきなり降るとは思わんかったから。」
「天気予報では曇りだったんだけどね。家は近いの?」
「あ〜…まだ少しあるなぁ。」

女の子が小さく笑いながら、濡れた髪を触る。
夕方から、いきなり降って来たみたいだからね。

「それじゃ、はい。この傘使って良いよ。」
「へ?ええの?」
「うん。困ってるんでしょ?」
「そうやけど…これ借りたら、キミが濡れてまうよ?」
「目的地はそこだから、大丈夫だよ。走ればすぐだからね。」
「ありがとうなぁ。」
「それじゃ!!暗くなってるから気をつけてね!!」

女の子に傘を渡して、私は雨の中を走り出す。
滑るから気をつけないとね…。さぁ、目的地のマンションまであと少し…



「あ…名前、聞けへんかった…。…男の子みたいやったけど…私って、言ってたしなぁ…」



・フェイト・

どうして…あんな事をしてしまったんだろう…
あの光景が頭から離れない。
フォトンランサーの爆発で…顔を怪我したメビウス。流れる血が…彼の顔を紅く染めていた。
そして…駆け寄った…白い魔道師、高町なのはの眼。あれは…私に対する怒りと…憎悪が込められていた。
どうして…?どうして…?私は攻撃してしまったの?
何で…二人が一緒に居るのを見て…心が痛くなったの?

「……私は……」

私の内面を表すように…雨が降っている。私はリビングで、膝を抱えて小さくなっている。
後悔、悲しさ、せつなさ、色々な感情が混ざって…気持ちが悪い。
怪我させたのに、私を心配そうにしていたメビウスの瞳と…なのはの憎悪の瞳。
心の底では、追ってきてくれると思っていたの私。それが…凄く嫌に感じる。
どうして…どうして…どうして…

「…フェイト、夕飯はどうする?」
「…いらない…。」
「要らないって…今朝からなにも食べてないじゃないか!食べないと、身体壊しちまうよ?」
「……ごめん、アルフ。…一人にして…」
「…分かったよ。けど、食事だけは後でとっておくれよ?」
「……」

アルフには悪いけど…食欲もないし…一人にして欲しい。
小さくうなずくと、アルフが部屋を出て行くのを感じる。
ごめんね…けど、今は…そっとしておいて欲しい。
メビウス…会いたい…会いたい…。けど…私には会う資格が無い…
彼を傷つけた…彼を悲しませた…彼…を…

「ぅ…あぁ…!!」

小さく嗚咽が漏れる。後悔と悲しさが私を押しつぶそうとしてくる。
誰か…助けて…!!

「…泣いてるの?」
「……あ…」

優しく誰かが私を抱きしめる。
顔を上げると…蒼い髪が視界の端に映る。私を知っていて…私が知っているのは…彼だけ…

「メビ…ウス…?」
「そうだよ…。フェイトちゃん。こんにちわ。」

優しく微笑む…メビウスが居た。会いたいと…会いたいと願って…
謝りたいって…謝りたいって…何度も何度も思って…
もう…何も考えれなくて…私は…彼に抱きついていて…謝っていた。

「メビウス…ごめんなさい…ごめんなさい…わ…私…私!!」
「…大丈夫だよフェイトちゃん。…怒ってないから…ね?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!!嫌いに…ならないで…!!」
「…嫌いになんてならないよ。大丈夫だから…辛いときは泣いたほうが良いよ。泣いた分だけ…心が綺麗になるから…
泣きたい時は、声を出して泣いて。私でよければ…受け止めるから。」

それでも涙が止まらない。彼の温もりを求めるのが止まらない。
私は…私は…!!



・メビウス・

「〜♪」
「えっと…手を猫にして…よいしょ。」

鼻歌交じりでキッチンに立つ私。
フェイトちゃんもさっきまで泣いていたけど…今は大丈夫みたい。時々、こっちを見て、顔を紅くしてるんだけど、まぁ…あんなに泣いたら恥かしいよね。
今は前みたいに一緒にキッチンに立って、料理を手伝ってくれている。
一人で作るより楽しいし、きっとおいしくなるね。


「今日は何を作るんだい?」
「鶏肉が安かったから、唐揚げだよ。」
「へぇ。しっかし、あんたって何でも作れんだね。」
「基本的なのは大体は、大丈夫かな?」

アルフが感心したように私の手元を覗き込む。
料理は楽しいしからね。…母さんが失敗しそうになると、私がサポートとかするからね。
何気に父さんも料理が上手で、もしかすると母さんより上手かもしれない。
母さんも最近は、父さんに対抗してか料理本も見てるんだけど…まだ少し下手かなぁ。


「野菜は、このくらいで良い?」
「それくらいで…良いかな?アルフ、前に作ったドレッシング、出しておいてね。」
「はいよ。確か・・・あったあった。」


・1時間後・

「ふぃ〜…おなか一杯だよ。」
「ご馳走様。」
「いえいえ、お粗末さまでして。」

唐揚げ…沢山作った気がするんだけど、全部食べちゃったなぁ。
バランスよく野菜も食べてくれたから、良いんだけどね。
さて、食べ終えた食器を、キッチンに持っていって洗わないとね。食器は貯めて置くと、洗うのが大変なんだよねぇ。

「メビウス、私も手伝うよ。」
「そう?それじゃ、洗ったのを拭いててくれる?」
「うん。」

カチャカチャと音を立てて、食器を洗っていく。
フェイトちゃんも手伝ってくれているからか、速めに洗い終わりそうだね。

「ねぇ、メビウス。」
「なに?」
「そう言えば…どうやってマンションに入ってきたの?」
「あぁ。入り口でアルフに会ってね。入れてもらったよ。」

あそこでアルフに会わなかったら、入れなかったからなぁ。
しかも、エクスがハッキングして開けようとしてたから、危なかった…。
ちなみに、今は新型の魔法を構築する作業をして貰っているから、静かなんだよね。

「…何も…聞かないの?」
「…うん、聞かないよ。」

フェイトちゃんが手を止めて、私を見つめてくる。
きっと、ジュエルシードの事だろうね。確かに気にはなるけど…

「きっと、理由があるんでしょ?それに…聞いたら答えてくれる?」
「…それは…」
「でしょ?だから、聞かないよ。まぁ…私達もあれを集めているけど…
今度はキチンと話をしようね?流石に、いきなり攻撃されるのは驚いたから。」
「あぅ…ごめんなさい。」
「ふふ。冗談だよ。」

フェイトちゃんは優しいから…なにか訳がある筈。けど、無理に聞こうとはしない。
何時か話してくれる時が来るまではね。
っと…洗物が終わったから…そろそろ、帰ろうかな。

「さてと…そろそろ、帰ろうかな?」
「え…。帰っちゃうの…?」
「うん。ごめんね。時間も時間だしさ。」

時計を見ると、8時近くになろうとしていた。
流石に、ガルムが居ない状態で、夜道を私一人で歩くのは不味いから。
今回の料理のレシピも、冷蔵庫に張ったし…洗物もしたし…良いかな?
すると、フェイトちゃんが、私の服の裾を握ってくる。

「……」
「フェイトちゃん?」
「あ…ごめんなさい…」

ハッとしたようにして、裾を離すけど…少しうつむき加減だ。
もしかして……

「…寂しいの?」
「……」(コク)

フェイトちゃんは、顔を紅くしたまま、小さく頷く。
ん〜…どうしようか。…怪我で、明日も学校は休む事になってるんだけど…

「…電話、借りるね?」
「え…?」



・フェイト・

顔が熱い、顔が熱い、きっと今は私の顔は真っ赤になっていると思う。
メビウスが帰ると言った時に、引き止めちゃった…
そうしたら…家に電話をかけて…

「連絡したんだけど…泊めてくれるかな?」

その…寂しかったのもあるけど…今は凄く恥かしい。
なんであんな事、出来たんだろう…?
今は、お風呂から上がって、リビングにいるんだけど…

「フェイトちゃんの髪って、綺麗だよねぇ。」
「そう…かな?」

座っている私の髪を、メビウスが丁寧に梳いでいく。
手つきが凄く優しくて…なんだか気持ちが良い。

「後は…リボンは…こっちで良いかな?」
「あ…そのリボン…」

メビウスが取り出したのは、彼と同じ蒼いリボンだった。
それを丁寧に、髪に結んでくれる。お揃い…になっちゃった…
恥かしいけど…嬉しい。

「どう…?」
「うん、似合ってるよ。」

髪に結ばれた蒼いリボンに触る。
なんだか…凄く…安心できる。何時も…メビウスが傍に居るような気がする。
…ありがとう、メビウス。ずっと…ずっと、大切にするね…





あとがき

うぉぉ…クシャミが止まらない、頭が痛い、妄想がまとまらない。
とりあえず、王道イベント、お泊り、をやってみました。
…お風呂とか一緒に寝るとかは…また今度です。妄想がまとまりません。
なのはより、フェイトにリボンを先にプレゼントしたメビウス君。さて…どうなることやら。
最後に…関西弁がぁぁぁ…いまいち分からない。
誰かお勧めの関西弁変換サイトを教えてください…


以下返信


ダンケ様

ブルー・スライダー。ゲームで決めたことは一度もありません(泣
チート主人公、それがメビウス君!!
今回はやきもち?フェイトでしたが…ヤンデレフェイト…ゴク…


筋肉大旋風様

ノリ的にはヴァオーみたいなのですねぇ。
まっすぐ馬鹿?と言いますか。(笑
A-10…使った事があまり無いという作者。対地任務にもファイターですがなにか?フランカーとか大好きです(笑
X2の彼は…な



[21516] 11話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/09/28 17:11
フレッシュリフォー本社ビル
応接室

・閃・

「…はぁ!?」
「だから…姫の子守げふんげふん。お相手をして欲しいんだよ。閃君。」

何時もの如く、呼び出しを受けて、来て見れば…どういうことだよおい。
姫って…何時から、ここはそう言う設定になった?
俺の目の前には、社の重役のおっちゃんが手を合わせて懇願している。
何度か会った事があるんだけど、いや…小学生相手になんつう事してんだよ…。

「…えっと…説明を求めてもいいすか?姫って…誰?」
「おぉ、すまないね。それを説明していなかった。」

そう言うと重役のおっちゃんが一枚の写真を取り出しして、俺に渡してくる。
一人の女の子が写っていた。…かなり小さいな…5~6歳くらい?
話の流れ的に…姫ってこの子か?

「名前はリリン・プラジナー。社長のご息女だ。」
「ぶっ!!??」
「…お茶が…」

噴出した俺は絶対に悪くない。飲んでいた緑茶をおっちゃんにぶちかましても、俺は無罪だ。
出たよ…超天才が。まさかとは思ったが…。
リリン・プラジナー。、プラジナー博士に娘して、トリストラム・リフォーの養女。天才と言っても良いだろうな
…ちなみに社長であるトリストラムは存命だ。かなりの多忙で、俺の両親も、年に1回会えるか会えないかとか言ってたな。
もし、同じなら…あと数年でトリストラムは暗殺されるんだろう…な。
だが…ここには管理局がある。流石に…奴らが居る訳はないと思いたい。
…奴らが居たら…最悪としか言いようが無いからな。


『あれですね?健気な少女を自分好みに教育すると…なんて光源氏!!閃!!恐ろしい子!!』
「黙ってろ。」
「閃君…君はそんな事を…」
「あんたも真に受けてんじゃねぇよ!!またお茶ぶっ掛けるぞ!!??」

人が真面目に思考の海に潜ってる時に、このボケデバイスがぁ…!!
重役のおっちゃんも変な反応してんだろ。
第一…俺にそんなフラグが立つわけ無いだろう。俺はあれだぞ?モブキャラだぞ?
なのはやらメビウスやらの主人公クラスでもないし、フェイトとかオメガの副主人公でもない。
そこら辺に居る一般ピーポーだ。

「まぁ…暇だからいいんですけど。」
「ありがとう!!実は先ほどから、奥で待っているんだよ。」
「はぁ…さいですか。」
「それじゃ、あとはよろしく!」

…とりあえず…行ってみるか。
軽くノックしてドアを開ける。

「失礼します。」
「こんにちわ、お兄様♪」
「……」
『ふ…不覚…。本気で萌える…萌えてしまう…これは面倒な事に…なった…』

あ…いかん、…花畑見えた。
目の前には可愛らしい服を着たピンクのお嬢様が、満面の笑顔で俺を迎え入れてくれた…
素でレーベンが萌えてるぞ…
いやいやいや…これはやばい…。何がやばいって…

「どうしました?お兄様?」

何でお兄様?狙ってる?狙ってるだろ?しかも、首を傾げるんじゃないよ!!45度とか完璧すぎるだろ!!??
天才の名に偽りは無いってのか!!??純真無垢すぎるだろ…!!護ってあげたいオーラが尋常じゃないんだがね!!??
…某白騎士が信奉者になる気持ちが分かるぞ。

「…確認しても良いか?」
「はい?」
「お兄様って…俺か?」
「はい、閃お兄様で間違いありませんわ♪」
『………今回ばばばばかりは閃…やりやりやりやりますね。』
「…処理落ちしてんぞ。一旦切れ。」
「了解してラジャー。」

拝啓、父さん、母さん。どうやら…俺にフラグが立ったかもしれません。…良いじゃん!!一回くらい言っても良いじゃん!!
10秒くらいフリーズしたが、深呼吸を10回以上繰り返して冷静になる。過呼吸にはならなかった。…それだけ冷静じゃなかったって事かよ。

「…えっと、初対面…ですよね?」
「はい。そうですわね。あ、敬語じゃなくて良いですよ。私が年下ですから。」
「…そうか…。なんで俺のこと知ってるわけ?」
「主任や重役の方達から、色々と聞いておりましたわ。」
「なんて…?」
「主任曰く、才気あふれる若き天才だと。発案するデバイスも、全て従来の思考にとらわれていない、奇抜なものだと伺っております。」

あのボケ主任がぁぁぁぁ!!!人の事を過大評価しすぎだろう!!
人生良すぎると碌な事が無いって、某アメフト選手のクォーターバックが言ってんだろうが!!
俺の脳裏に歯を光らせて、親指を立てる主任が過ぎる。後で奴に、世界で一番臭い缶詰を送ってやることを誓う。

「まぁ…んな事はどうでもいい。と言うかどうでも良いという事にしてくれ。。」
「?はぁ…」
「ところで、なんでお兄様?」
「私、こう見えてもそれなりに、お勉強ができるのです。」

知ってます。だって天才じゃん。

「以前、デバイスの開発部に行った時に、見慣れないデバイスの設計案がありましたの。
聞けば、まだ9歳の子供が発案したとか。それで興味持たない方がおかしくありませんか?」
「9歳の子供って…君…まだ5歳くらいでしょ?」
「私の場合は、自分でも異常と感じてますので問題ありませんわ。」
「開き直っちゃってるのね…」
「どんな人なのか、色々とリサーチしたところ。なんと、帝さんの息子さんだと言うではありませんか!!
それで、良い機会だと思い、お呼びしたわけですわ。」
「はぁ…」
「それに私、どうしてか近い年齢の方達とは、話が合わないと言いますか…。
いえ、別に自分が特別と思ってるわけじゃなくて…」
「…つまり、友達が欲しいって事か?」
「……はい。」
「素直にそういえよ…」

回りくどすぎるぜおい。
まぁ…流石に…友達になろう!!て言われたら…背中が痒くなって、のた打ち回る自信がある。
と言うか…転生前の小学生時代を思い出すと…黒歴史満載かもしれんな。友達になろう発言や、スカートめくなんでもないなんでもない。
若干、呆れたように見ると…リリンはモジモジしながら、小さくうなずいていた。
…ド真ん中直球ストレートだよちくしょう…

「ま…まぁ、別に良いけど…」
「本当ですか!!」
「あぁ、…けどよ、友達でお兄様って言うのは…変じゃないか?」
「そうなのですか?主任がこう呼べば喜ぶと、仰っていましたが…」

…臭い缶詰と世界で一番辛い唐辛子を、送ってやることに決めた俺だった。





管理局 本局
執務官室

ここでは二人の少年が作業をしていた。
一人が書類をまとめ、もう一人が眼を通していく。

「……次は?」
「これだ。…そろそろ昼食にしないか?食堂、混むぞ?」

書類を纏めていた少年が、壁にかかっている時計を指差す。
確かに、時間は12時を過ぎていた。

「そうしようか。午前はここまでだ。」
「約3時間でこの程度か。…まだかかりそうだな。」

それぞれの机の上にある資料を片付ける二人の少年。
一人はクロノ・ハラオウン。若干14歳で管理局執務官を勤める少年。
もう一人はブレイズ・トリスタン。執務官補佐として、クロノをサポートしている少年だ。
ちなみに、彼も14歳である。


食堂


・ブレイズ・

「久々に戻ってきたら書類の山とはな。」
「仕方が無い。管理局は、慢性的な人員不足なんだ。」

クロノが肩をしかめながら、ドリンクに口をつける。
食堂では、局員達が昼食をとり始めている。流石に、殆どが俺達より年上だ。
そんな事を気にしていたら、何も出来ないんだがな。

「エイミィにも、書類処理を頼めれば良いんだけどな。」
「無理だろう。さっき、リンディ艦長が呼び出しをしていた。」
「…帰ってきて早々に、また出港か。」
「諦めるしかないな。」

もう一人の補佐官であるエイミィに分配できれば、多少は楽になるんだが…うまく運ばないか。
やれやれといった調子で、食事を再開するクロノと俺。
確かに、管理局は人員不足だ。憧れを持つ職業だろうが…危険も隣りあわせだ。
俺達だって、過去に数回は死にそうな経験をしたこともある。
それがいい経験になったと言えば…言えるのだがな。

「次の任地はどこになるんだろうな。」
「僕に聞くな。それこそ艦長に聞いてくれ。」
「確かに。…速めに書類を片付けておくか。そうしないと溜まっていく。」
「よう、ブービー共、なにシケタ面してんだよ。」
「失礼するよ。久しぶりだね、クロノ君、ブレイズ君。」
「バートレット教官に…ランパート教官。」

ジャック・バートレット教官とマーカス・ランパート教官。
俺の恩師であり、指導してくれた教官達だ。
二人とも、トップエースの実力を持つ魔道師。教育隊でありながら、航空隊にも所属している。
俺はバートレット教官に、クロノはランパート教官に模擬戦や、訓練でお世話になっていた。
もっとも、俺達が勝てる訳もなく、惨敗続きだがな。
二人に言わせれば、魔法の素質より、経験値の差だというらしい。
確かに、二人の踏んだ場数は、俺達なんかとは比べ物に成らないほど多いはずだ。
二人はトレーを持って俺達の前に座る。

「お二人とも、昼食ですか?」
「さっきまで、新入りの訓練をしていたところなんだ。今年は何人残れるな。」
「まったく、最近のひよっ子共はだらしねぇな。あんなんじゃ直ぐに堕ちちまうぞ。」
「バートレット教官の扱きに耐えれたら、凄いと思いますが…」
「まだまだ序の口だぞ、ブービー。」

実際、バートレット教官の指導は厳しい。しかし、それは新人達を一流に育て上げたいという心だと思っている。
俺も彼に指導を受けなければ、14歳で執務官補佐や、死線を乗り越えられなかったと思う。
それはクロノも同じだ。ランパート教官は、バートレット教官と違い物腰は柔らかいが、そのハートはとても熱い。
まさに二人はエースとしての心と技術を持っていると、俺は思う。
彼らの指導を乗り越え、鍛えられた局員は優秀な魔道師として活躍もしている。…一応は俺達も含まれている。

「ランパート教官の方はどうなんですか?」
「それなりに良い生徒達だと思う。まぁ、クロノ君ほどの優秀な生徒は居ないけどね。」
「光栄です。」

そう言って笑うランパート教官にクロノ。
本当に師弟関係の絆が強い。

「まったく、ガキの時分から、光栄です、とか使ってんじゃねぇよ。」
「クロノですから。バートレット教官の方はどうなんですか?」
「あん?なんだブービー、お前も褒められたいのか?」
「違いますって。貴方の扱きに、耐えられる魔道師が居るかどうかが気になるだけですよ。」
「よく言うぜ。物になりそうなのは居るが…これからどうなるかだな。」

バートレット教官が難しい顔をしながら、ドリンクを口に含む。
人手不足と言うこともあり、上層部は訓練途中の魔道師達を、部隊に配属しようとすることがあった。
バートレット教官はそれに異議を申立てるために、昇進の道から遠ざかっている。
まぁ…彼を信頼する教官や部隊長は多いし、まともな幹部達にも信頼されている。
最も、教官は昇進などに興味は無いようだがな。
四人で賑やかに昼食を取っていると、クロノの小型端末から呼び出し音が響く。

「…ブレイズ、第8会議室に集合だそうだ。」
「了解。片付けていくか。失礼します、教官。」
「次の任務か?」
「大変だろうが、がんばってきなさい。」
「しくじるなよ。」
「はい。それでは、失礼します。」

両教官に軽く敬礼を返して、トレーを片付ける。
さて…次の任務はどうなることやら…


「ったく、ガキが大人ぶって働くこともねぇだろうに。」
「僕達、大人の責任だ。子供達が笑う未来を作れなかった…ね。」
「…まぁ、あいつ等ならうまく出来るだろう。」
「あぁ、君と僕の秘蔵っ子達のだからね。」
「頑張れよ。次期エース達よぉ。」



ブレイズ・トリスタン。
管理局、執務官補佐役。
アースラ所属、空魔道師。

ジャック・バートレット&マーカス・ランパート
管理局、教育隊及び航空隊所属。
バートレットの教え子、ブレイズ。
マーカスの教え子、クロノ。



あとがき

…今回は登場人物が一気に増えた!!の回でした。
さて…メインキャストのブレイズ君登場っと…
性格的には冷静沈着を目指して生きたいかと…出来るかなぁ…
そして…ある意味で素晴らしい教官達がある管理局。
いや…この人達に指導されたらすさまじい事に…
年齢は原作より10歳程度若いと思ってください。なのでマーカスは25歳。バートレットは32歳…かな?
リリン様は…イメージ的に某ピンクの歌姫様で行こうかと…まだ覚醒はしておりません。
さて…まだまだ出したいキャラは居ますので…考えなければ…

あとがき

ダンケ様

メビウス君無双は…失礼しました。厨二主人公として大目に…!!
とりあえず、フラグを立てれる限り立てておこうかと思いまして…
正直、一期ではオメガ君のフラグは微妙に立てづらいので…。一応は閃君が今回、フラグを立てたような感じになりました。
…どうやって地球にリリン様を介入させますか…いっそ転入させれば…


ADFX-01G-2様

A-10使ってみました。なにあの爆弾の威力。反則でしょう…!!
リムファクシがゴミのように…
流石は…現実に居た超チート人間の閣下が、作れといった対地攻撃機。安くて頑丈で操作性に癖のない機体…でしたっけか?
アイガイオンはロケットランチャーで片付けてましたが…今度A-10で挑んでみます!!



[21516] 12話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/01 23:47
・メビウス・

今日は連休の初日。
毎年連休を使って、温泉旅行をしている。
メンバーは高町家と月村家と私達。すずかちゃんのお姉さんの忍さんと、恭也さんは恋人同士なんだよ。
だから、結構な人数になる。ちなみに、他には私とオメガ、閃にアリサちゃん。父さんと母さんは急用で出掛けてしまって来れない。
そのかわり、ガルムが人間形態で参加している。名前は…ガルムのままなんだけど…。
小型のペットならOKと言うこともあって、ユーノもフェレットの状態で参加。
後ろで女の人達に、遊ばれてるんだど隙を突いて、少し離れた席で、恭也さんと話をしているガルムの元に逃げこんだ。
苦笑しつつ、膝の上に載せて撫でている辺り、ガルムもユーノに気を許しているんだろうね。
結構な人数のためか、忍さんがマイクロバスを頼んでくれたお陰でゆったりと向かうことが出来る。
私も今回の旅行は楽しみにしていた。連日のジュエルシード探索で、体力の消費が激しいからね。
息抜きするのには絶好の機会だ。

「あ~あ、ガルムさんの所に逃げちゃった。」
「仲が良いよね。…ねぇ、メビウス君?」
「はい?なんです美由希さん?」

なのちゃんのお姉さんの美由希さんが、声をかけてくる。

「ガルムさんは、アヴァロンの工房の人なんだよね?」
「はい、そうですね。」

流石に…使い魔なんて言えないから、工房で父さんの弟子をしているという事になっている。

「ふ~ん。大人っぽい人だよねぇ。…犬のガルム君も人間にしたらあんな感じになりそうだよね。」
「あ…あははは…」

美由希さんが、興味津々にガルムを観察している。…思いっきり犬のガルムなんだけどね…
まぁ…大人っぽいと言うか…冷静な態度をしてるからだと思う。

「温泉かぁ。楽しみだぜ!!」
「だなぁ。…しかしオメガ、なんだその荷物?」

閃がオメガのバッグを指差す。
うん…確かに着替えとか、洗面用具とか以上に…色々と詰め込まれている感じがする。
私や閃は着替えと暇つぶしの本以外、大して持ってきてないんだけど…

「決まってんだろ!!トランプに将棋に囲碁にオセロとゲーム機だろ?後はウノとジェンガに…」
「…なんでそんなに沢山持ってきたの?」
「皆で遊ぶためたぜ!!3人で24時間耐久ぷよぷよしようぜ!!」
「本気でそれを言ってるなら、俺はお前の友達止めるぞ。」
「なんだよぉ。ならメビウスやろうぜ!!」
「出来るわけ無いでしょ…。」

24時間なんて…出来ないし、やりたくない。折角の温泉なんだから、ゆったりしたいからね。
けど、諦めないオメガ。後ろで話している三人に声をかける。

「ちぇ~。いいや、アリサぁ!すずかぁ!!お前らはやるだろ!?」
「やらないわよ!!」
「オメガ君、温泉に入れないよ?」
「なのは…は、ヘナチョコだしなぁ。」
「へ…ヘナチョコ!?そんな事ないもん!!」
「だって、お前、2連鎖が限界だろ?」
「う…うぅ~!!」
「普通にやろうよ…」

けど…みんなで遊ぶのは良いかもしれないね。
折角の旅行なんだし…楽しみたい。



「温泉だぜぇぇぇ!!」
「オメガ!恥かしいから騒がないでよ!!」

旅館について第一声。飛ばすなぁ。アリサちゃんが止めるのも当たり前か。

≪部屋割りって…僕はどこになるんだろ?≫
≪先ほど、話を付けておきました。我らと同じ部屋になります。≫
≪ありがとう、ガルム。≫

荷物を降ろしながら、ガルムが肩に乗っかっているユーノに念話を送っている。
部屋割りは私、ガルムオメガと閃が一緒の部屋になった。
ユーノも、とりあえずは、一緒にしてもらった。流石に男の子だからね。
早速、荷物を置いてっと…


「さてと、温泉に行こうか。」
「良いな。とりあえず、汗を流そう。」
「おいおい。24時間ぷよぷよはどうすんだよ?」
「やらねぇよ!!アホ言ってないで行くぞ!!」


・温泉・

「はぁぁ…いい湯だねぇ。疲れが消えていくよ。」
「メビウス、じじ臭いぞ。けど、確かにいい湯だな。」
「でしょ?」

私と閃は、身体をお湯で流して湯船につかる。
本当に気持ちがいい。疲れが抜けていく感じがする。
少し離れた場所で、大き目の桶にお湯を入れて、ユーノも浸かってる。ガルムが近くで見ているから、大丈夫だろう。

「あれ?オメガは?」
「あぁ、サウナに入ってったぞ。」

サウナか…。いきなりだね。
さて、軽く温まったし、身体と髪を洗おうかな。閃は後で洗うといって、湯船でゆったりしている。
まずは髪を洗ってと…。私の髪は長いからか、結構時間がかかるんだよね。まぁ…母さんが手入れをしっかりとしなさいって言ってくるから、手は抜かないけど。

「おい、あの男の子凄いな。」
「あぁ。10分近く入ってるぞ…。しかも、微動だにしない。」

なんだろ?隣で身体を洗っている人達が騒いでいる。その人達が見る先にはサウナがあった。
髪と身体を洗い終わって、湯船に戻るけど…少し気になる。

「閃、オメガは?」
「あん?……まだサウナか…?」

二人して時計を見るんだけど…10分は過ぎている。
気になってサウナの小窓を見ると…オメガはまだ入っていた。
しかも、座禅を組んで…瞑想みたいなのをしてる。

「…あいつは何時から修行僧になった?」
「…さぁ?」

凄い汗をかいてるんだけど…大丈夫なのかな?
心配しつつも、オメガだし大丈夫か。という事にして湯船に戻る。

「やっぱり温泉は良いね。くつろげるよ。」
「流石に家の風呂はこんなにでかくないからな。まぁ、アリサ達の家の風呂はでかそうだからな。」
「お家も大きいからね。私の家の何倍だろ?」
「さてな。それを言ったら俺はマンションだぞ?」
「けど、高級マンションでしょ。充分広いと思うよ。」
「違いない。」

その後、5分後位に出てきたオメガは、汗だくだった。
そんなによく入ってられたね、と声をかければ…返ってきたのは、

「心頭滅却すれば業火もまた涼しだぜ!!」

…本当に何時から修行僧になったんだろ?
しかも、業火じゃなくて、ただの火なんだけど…


・ガルム・

今夜、寝泊りをする部屋に、服を置いて、我は散策に出ている。
…今は浴衣を着ているのだが…若干、涼しいな。
メビウス様達は、部屋で涼んでいる。オメガ様が持ってきた玩具で遊んでいるはずだ。
適当な自販機で、スポーツ飲料を買い、旅館内を歩く。
目的はこれといってない。強いて言えば、有事の為に、館内の構図を頭に入れている、と言ったところだろう。
用心深いかもしれんが、全てはメビウス様の安全の為だ。
そうしていると、前から、見たことのある女が歩いてくる。

「ん?あんたは…」
「…何故ここに居る?」

女---アルフが何故ここに居る?
我がここに居るのが不思議なのか、眼を丸くしている。我だって驚いてはいるがな。

「それはこっちの台詞だよ。…あんたがここに居るって事は、メビウスも着てるのかい?」
「質問を質問で返すな。我は常にメビウス様の近くに居る。それが答えだ。」
「回りくどいねぇ。ふ~ん。着てんだね。」

納得したように頷くアルフ、我がメビウス様の傍を離れるのは、メビウス様の命令以外にありえないことだ。
だが…ここに、こいつが居るということは、必然的に主である彼女も居るということだ。

「…フェイト様も着ているのか?」
「正解。ここら辺にジュエルシードがあるらしくてね。それを捜索してるよ。」
「お前は探さないのか?」
「目処はついたらしいからね。温泉にでも入ってこいってさ。まぁ、上がったところだけどね。」

そう言いながら我にタオルを見せる。
しかし…ジュエルシードか…どうしたものか。

「けど、メビウスが居るってなら…フェイトもこっちに、無理やり連れてくるべきだったね。」
「メビウス様に危害を加えるつもりか?」
「違う違う。…メビウスには感謝してるよ。最初にジュエルシードを渡してくれたそうだしね。それにね、メビウスのお陰で、フェイトはよく笑うようになった。
それこそ、始めてあったときの事や、スーパーでの事、料理を作ってた時の事を思い出して、楽しそうにしてたよ。
書いていったレシピで料理も作ろうとしてたしね。」

そう言いながらアルフは笑う。…メビウス様に話を聞けば、攻撃された時は混乱していただけ、と言われた。
本来ならば敵として排除すべきなのだろうが…メビウス様に攻撃するなと命じられている。

「…メビウス様が聞けば喜ぶだろうな。…我はもう行くぞ。」
「どうするんだ?あたしに会ったことはいうのかい?」
「…お前には借りがあったな。」
「借り?」
「メビウス様をマンションに居れてくれた事だ。…こちらに危害を加えなければ、我は何も言わん。これで貸し借りなしだ。」

そのまま、手に持っていたスポーツ飲料をアルフに投げ渡す。

「っと…これは?」
「湯上りなのだろう。水分補給はしておけ。…ではな。」

踵を返すと、我は部屋に歩き出した。



・閃・

現在、俺達は夕食までの間、部屋でトランプをしている。
ちなみにプレイヤーは、俺・メビウス・オメガ・なのはの4人だ。
アリサとすずかはオメガの持ってきたオセロで遊んでいる。ユーノ?座布団の上で寝てるよ。流石に起こすのは可哀想だからな。
三人とも湯上りで浴衣を着ている。眼福…か?…待て待て、俺は転生者だ…。中身は大学生… 
…リリンに萌えた時点で終わってる気がするがな…
なんにせよ、今はトランプでダウトしている。…しかし、オメガとなのは…顔に出すぎだろ。

「むぅ~…」
「ぬぉぉぉ…」
「二人とも…もう少し表情を隠そうよ。はい、8。」

メビウスが苦笑しながら、トランプをきる。

「…き…きゅー。」
「…ダ…。なのちゃん…そんな顔で見ないで…」

ダウトと言おうとしたメビウスだが…隣でなのはが物凄い涙眼で言わないで、と視線を送っている。
お前は…だったらダウトをやるんじぇねぇよ…。しかも、今、9じゃなくて…きゅーって言ったよな…
結局、メビウスが根負けで言わなかったけど…お前もお前で甘いなおい。
っと…次は俺か。

「んじゃ、10っと。」
「…11!!」
「ダウト。」

オメガの番だが容赦なくダウトする俺。オメガと11は切っても切れない運命だろ。

「Nooooooooooooo!!!!」
「はい、カードオープン。…8でオメガの負けね。」
「閃君、強いね。」
「むしろお前ら二人が弱すぎんだと思うけど…」
「うぅ…しょんなことないもん。」
「ま…まぁ。なのちゃんは隠し事苦手だから…」
「…覚悟しとけよ!!俺の手元には11が4枚あるぜ!!後で確実にダウトにしてやるぜ!!」

オメガが宣言してるが…どうなるかね…
そして、順番がまわり…メビウスが11のカードを出すターン。
迷わずに…出したな。

「11。」
「ダウトぉぉぉぉぉ!!!!」
「め…メビウス君、大丈夫?」
「ハッハー!!俺の戦略勝ちだぜぇぇ!!」
「知ってる?トランプで強いカードは三つある。キングと…エース。そして…」

騒ぐオメガを尻目に、メビウスは冷静に…そして、口元に笑みを浮かべながら、自分の出したカードを表にするが…
あぁ…オメガ、お前は勝てないよ…

「Joker…があるんだよ?」
「………」
「お…オメガ君が真っ白になったよ!!?」
「この位、予想しとけよ…」

結局、オメガがビリとなって、夕食の時間になった。



夕食はバイキング形式だ。まぁ…どこにでもあるのだな。
大人は大人達で別のテーブルに座って、ビールを飲んで楽しんでる。
…ガルムも酒飲んでるけど…良いのか?あいつ使い魔だろ?
何気に美由希が物凄く興味示してるぞ?…ばれなきゃ良いのか。

「がつがつがつがつ!!!」
「オメガ、少しは落ち着きなさいよ。」
「腹が減っては戦ができぬだぜ!!」
「だからって…ああもう、こぼしてるわよ!ちゃんと拭きなさい!」

…アリサとオメガって何気に似合いじゃないか?直線馬鹿とツンデレお嬢様って、鉄板の気がするのは俺だけか?

「このてんぷらおいしいね。どんな作り方してるんだろ?」
「うん、衣がサクサクしてる!」
「メビウスくんもお料理するんだ。」
「するねぇ。すずかちゃんは?」
「私も少しなら出来るかな?今度、何か作ってみるね。」
「あ!私もまたお菓子作る!!」
「それじゃ、三人で作って交換してみようか。」

なのはは…まぁ、言わなくても分かるから別にいいか。
…すずかも若干、メビウスよりか?…なのは見たいに正面から行くんじゃなくて、回り込むタイプなのかもしれんなぁ。
っと…俺も飯を食うか…。とりあえずは飲み物で喉を…

「ぶふぉ!!??」
「きゃぁ!?」
「せ…閃!?どうしたの!?」

コップの中に入ってたジュースを口に入れた瞬間に噴出す。少量なのが幸いしてか被害は少ないが…なんだこりゃ…!!
メビウスが心配して背中をさすってくれる。…ありがたい…

「げふ…ごほ…。なんだこれ…すんげぇ不味い…」

甘いと言うか…苦いと言うか…言葉に出来ないぞこれ…
なんでこんなジュースに…?
そこまで考えて…ハっと気が付く。これ…オメガが持ってきたんだけったか…

「おいそこの脱出マニア。」
「んぉ?」
「これなんだ…?」

若干、切れ気味にジュースの指差す俺。…視界の隅でなのはとすずかが怯えて、メビウスの後ろに隠れてるが、んな関係ない。

「決まってるぜ!!バイキングでドリンクがセルフなら、全部混ぜるのが当然だぜ!!Specially-made mix juiceだぜ!!」
「…そうか……こんなん飲めるかぼけぇぇぇぇ!!!」
「食いモンを粗末にするなぁぁぁ!!」
「作ったお前が飲めよ!!」
「ハッハー!!いやに決まってるぜ!!」
「なんでだよ!!??」
「だって、まずそうじゃん!!」
「…オメガ…天に還る時がきたようだな!!」
「ここで決着をつけるぜ!!!」
「あんたたち…いい加減にしなさぁぁぁぁい!!!」

アリサの声を合図に開始するバトル開始。
しかし、この1分後、士郎さんにより鎮圧されました。ひ…人の動きじゃねぇ…



・オメガ・

さて…夜はまだまだこれからだぜ!!
今、俺達は旅館内のゲームセンターで遊んでいる。
閃やメビウスはガンシューティングをしてる。なのはとすずかもそれを後ろで応援してるぜ。
俺はああ言うのは苦手だからしないんだぜ。
…そういや、アリサの姿がみえねぇな。どこにいんだ?
適当に探し回ると…お、見つけた見つけた。
クレーンゲームの前に居たぜ。

「アリサ。どうしたよ?」
「あ、オメガ。あの犬のキーホルダーが可愛いって思ってたの。」
「犬?…おぉ、あれか?」

確かに、中にはペアの犬のキーホルダーが置いてあった。俺が見ても結構可愛いと思うぜ。

「やんねぇのか?」
「何回かやってみたんだけど…難しいわね。なかなかうまくいかないわ。」

そう言いながら、コインを入れてクレーンを動かすアリサ。
おお、あと少しで取れるぜ!!…けど、あと少し届かないかぁ。結構、難しいところにおいてあるな。

「はぁ…仕方が無い、諦めるわ。」
「おいおい、諦めるのは速いだろ?」
「そう?けど、難しいわよ。」
「よし、俺がやってやるぜ!!アリサ、横でどの角度が良いか見ててくれ!!」
「え?…分かったわ。」

実は俺ってこう言うのが得意なんだよな!!
コインを入れて…。まずは横にクレーンを動かしてっと…。
そのまま奥の方に…

「ん~…そのくらいよ。」
「おう!!」

アリサの指示と同時にボタンを離す。クレーンが下がっていって…キーホルダーをキャッチ!!
そのまま、取り出し口の上まで来て…ゲット!!

「よっしゃ!!ゲットだぜ!!」
「へぇ、オメガってこう言うの得意なのね。意外だったわ。」
「すげぇだろ!!はいよ、これ。」
「え?良いの?」

取ったキーホルダーをアリサに渡す。俺は別に要らないからなぁ。

「おう!!」
「けど、オメガが取ったのよ?」
「気にすんな!!アリサの為だ!!この程度はお安い御用だぜ!!」
「なっ…!!?」

ん?なんか驚いて口をパクパクさせてるけど…なにしてんだ?金魚の真似か?

「どうしたよ?顔が紅いぜ?」
「~~…!!あんたって奴は…」
「いって!!叩くなっての!!」

なんでか知らないが…背中をばしばし叩かれる俺。アリサの為に取っただけなのになんで怒られんだ?

「…はい、これ。」
「あん?」
「ぺ…ペアで二つ付いてるんだから…一つはあんたが持ちなさいよ!!」
「俺が?別に全部、アリサにやるぜ?」
「良いから!!付けて大事にしなさいよ!!絶対よ!!」
「お…おう。」
「…ありがとう。」

最後に礼を言いながら、笑うアリサだった。
…怒ったり笑ったり…忙しいぜ!!




あとがき


オメガ君、どんだけ鈍いんだよおい。
やってきました温泉です。作者も温泉に入りながら考えたネタです。
旅館のバイキングは良いですよね。みんなでワイワイ食べれますし。…全部混ぜジュースも造れますし…くくく。
そして夜は夜で遊んで…。懐かしいなぁと思う今日この頃。
そして何気なく気が付いた…。今年って環太平洋戦争(ベルカ事変)の年じゃないですか?
…もっと早くに気が付けばよかった…!!

以下返信

オストー様

ブレイズ君の相手は…一応は考え付いております。
ライバル達は…検討中ですね。敵として出すには惜しすぎますし…出すにしても…どんな敵で出すべきか…
けど、まだ先になると思いますので…お待ちを。


ダンケ様

リリン様登場しました!本当の天才ですよ!
やはり親戚の子が無難ですよね。転入しても1年生ですが…確実になのはより勉強が出来そうで困ります(笑
お勉強会フラグ…良いですねぇ。是非ともなのはvsリリン様の勉強バトルを…勝敗が決まってる気がしますがね…!!


ADFX-01G-2様

A-10万歳A-10万歳!!(洗脳完了
まだまだ出したいキャラが居ます。
バートレットとマーカスが教官ですからねぇ。後はどうしますか…
…作者的に…バートレットの指導はなのは様レベルな気がします…


名無しの獅子心騎士様

狐とフラグを立てるオメガ君!!彼にはまだまだ動物と心温まる物語を…!!
閃にもフラグがたってきましたよ!
レーベンは…手遅れです(笑
電波に覚醒するリリン様…確実にレーベンと主任が原因だ!!


筋肉大旋風様

おっしゃるとおりです。頑丈ですよね。対地戦闘最強ですね。
潜水艦とか戦艦も簡単に沈めますし…すばらしい…!!



一陣の風様

作者も書き始めはどうなんだろ?と思っていましたよ(笑
気に入ってもらえてなによりです。面白いと言って貰えるだけで書いてよかったと思えますし、頑張れます!!
贔屓がシンシアとyellow4と謎の女・1号…物の見事に大人の女性ですな!!
けど…全員、後ろの二人はお相手が居ますよ?あの人達から奪える自信は…ありますか?(笑



[21516] 13話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/18 22:02
・なのは・

目の前でメビウス君と閃君がゲームをしてる。
新作のガンシューティングゲームで襲い掛かってくるゾンビ達を倒して進んでいるの。

「メビウス!上任す!」
「分かった!正面のゾンビは任せるよ!!」

画面の上と正面から襲ってくるゾンビを持っているガンコントローラーで打っていく二人。
私とすずかちゃんは後ろでそれを見ながら、応援。
最初に銃のタイプを決めれるみたいで、閃君はマシンガンを、メビウス君はハンドガンを選んだ。
それに閃君のコントローラーの持ち方は独特で、銃を横にしてプレイ中なの。
メビウス君は普通に銃を構える体勢でプレイしてる。
手数で押す閃君と、一発一発で倒して行くメビウス君はコンビネーションがばっちり。

「だぁぁぁ!!オメガはどうしたよ!!3人プレイも可能だろ!?」
「無理だって。あいつ、シューティングは苦手って言ってたよ!!」
「なら、なのはやれ!!シューティング得意だろ!!」
「えぇ!?むむむ無理だよぅ。」
「下!!下からも来たよ!!って…弾切れ!?」
「リロード急げ!!」

うぅ…私も出来れば手伝ってあげたいけど…こういうの苦手。
シューティングは苦手じゃないんだけど…ゾンビとか…恐いのは私は出来ない。きっと…夢にでちゃうもん。
けど、見てるのはあんまり恐くないの。…きっとメビウス君が倒してるのを見てるからかな?だって…夢の中でも助けてくれるから…。

「待たせたな!!俺…参上!!」
「決めポーズなんていらねぇよ!!さっさと100円入れろ!!」
「俺に任せとけ!!だがしかし!!シューティングは苦手だぜ!!」

オメガ君がアリサちゃんと一緒に歩いてきたけど…アリサちゃん、なんだか嬉しそうにしてる?
そう言えば…さっきまでどこに行ってたんだろ?

「アリサちゃん、そのキーホルダーどうしたの?」
「えっ!?な…なんでもないわ。き…気にしないで。」
「?」

あ、本当だ。すずかちゃんの言うとおり、犬のキーホルダー持ってる。可愛いなぁ、何処で買ったんだろ?

「アパーム!!弾持って来いアパーム!!」
「無駄撃ちしすぎだよ!!しかも大して当たってないし!!」
「お前戦力外もいいところだな!!しかも、バージョンアップアイテム取るんじゃねぇよ!!途中参戦の癖に武器性能が最大ってどういうことだよ!!」
「俺、ナイフクリアの方が得意なんだぜ!!」
「それは…やりこみすぎ。」

にゃはは…こんな風に言ってるけど、三人はとっても仲良しだよね。
だって、三人で最後のステージまで進んで…クリアしちゃうんだもんね。




次元航行艦アースラ
ミーティングルーム

・ブレイズ・

「ロストロギア及び行方不明者の捜索が今回の目的になります。」

艦内の一室、ミーティングルームに俺達は居る。
今回は説明役の俺とクロノ、そして、艦長でありクロノの母親であるリンディ提督の三人だ。
二人の前のディスプレイには、今回の航海の目的であるロストロギアと行方不明者、ユーノ・スクライアの情報が表示されているはずだ。

「スクライア…あの発掘一族か?」
「あぁ。輸送中に連絡が途絶え、期日になっても管理局にロストロギアが届かない。襲撃、あるいは事故により、第97管理外世界に漂着したと考えられる。
スクライアからも正式な捜索願が提出されている。」
「ブレイズ君、ロストロギアの情報はないのかしら?」
「残念ながら何も…。現在、スクライアの一族に情報提供を求めています。その後、管理局のデータベースと照会をする予定です。
過去のデータですが、何かしらの情報はあると思いますので。」
「そう。なら任せれるかしら?」
「お任せを。」

管理局のデータベースの情報量は膨大だ。
それこそ、過去の犯罪からロストロギアの情報にいたるまで保存されている。

「あと、3つほど報告があります。」
「どんな内容だ?」
「良い報告が1つに、普通の報告が1つ、そして悪い報告が1つで計3つだ。」
「それじゃ、悪い報告から聞きましょうか。」
「…今回、調査を行う第97管理外世界に…ゴッデンシュタイナーの御曹司が居ます。」
「…聞きたくなかった…」
「厄介な…事ね。」

クロノがため息をつきながら、額を押さえ、リンディ艦長も嫌な顔をしている。
実際、俺も眉間に皺がよっているだろう。この報告を聞いた時は…天を仰いだ。
ゴッデンシュタイナーは管理局の有力な支援者でもあるが…それと同時にきな臭い噂が絶えない一族だ。
それに時々、こうして圧力をかけてくる。まったく厄介な一族だ。
まぁ…これがアースラを出す理由だ。…御曹司の安全を考えていると言うパフォーマンスの為なんだが…やりきれないな。

「…それで、向こうはなんて言ってきてるの?」
「くれぐれも御曹司の行動の邪魔をしないように…と。後は御曹司の安全を第一に、それ以外は配慮するな、だそうだ。」
「…管理局であり、調査をする僕達が邪魔者扱いとは。」
「それ以外は、ね。一般人はどうでも良いと言うことかしらね。なんで御曹司はそんなところに?」
「現在、情報を秘密裏に集めていますが…厄介な事に変わりはありません。」
「…気分を変えるために、良い報告を聞こうかしら。」
「フレッシュリフォー社の帝重役が、第97管理外世界に在住しているようです。コンタクトを取ったところ、今回の調査には全面的に協力してくれるそうです。」
「帝重役が?それは助かるな。」

ゴッデンシュタイナー家と違い、フレッシュリフォー社の重役達は管理局に協力的な姿勢を見せている。
最も、無理は事は無理とはっきりと言うのが、気に入らない管理局上層幹部も居るようだが。
特に帝重役は人格者であり管理局と親交が深く、捜査などに協力を申し出てくれるありがたい存在でもある。
そして、息子の帝 閃は有能なデバイス開発者としても知られている。
実際、彼と開発チームの主任が作り出したVRデバイスの2世代目は、多くの局員が愛用している。
多くが消息不明のオリジナルの1世代と違い、制御しやすく、安価と言うこともあってか正式採用を検討する部署も出ているほどだ。

「流石はブレイズ君だわ。お陰で今回の捜査が捗るわね。本当に有能な補佐官で助かるわよ。」
「ありがとうございます。ですが、褒めた所で、今日の砂糖の量は増やしませんからね。」
「えぇ~!!そんなぁ!!」
「1日角砂糖で15個までと決めてあるはずです。先ほどのコーヒーに10個入れたので、今日は後5個だけですよ。」

まったく…リンディ艦長の甘党には困ったものだ。過剰摂取で身体を壊してしまわないか心配でしょうがない。
今のところは俺が管理できるところは、厳しく管理しているから問題ないと思いたいが…。
クロノから相談を何度も持ちかけられても居るし…手は抜けないな。

「うぅ…これが無ければ、ブレイズ君を家の養子にしたいのに…。別にあっても養子にしたいけど…」
「…嬉しいですが…如何せん艦長の為ですので…我慢してください。」

…俺の両親はクロノの父親であり、リンディ艦長の夫でもあるクライドさんと一緒に戦死している。
11年前にあったあの争乱でだ。バートレット教官やランパート教官も体験している…ミッド最大の争乱、【ベルカ戦争】。
…これは今語るべきことではないな。
リンディ艦長はそれ以来、俺に養子にならないかと良く持ち掛けてきてくれるが…俺は世話になっている方が居る。
その方に恩を返しきる、それが俺の決意だ。

「それじゃ…普通の報告を聞こうか。」
「管理局航空隊より3名、魔道師の借りる事が出来た。」
「3人も?こちらとしては大助かりだが、名前は?」
「今、呼び出す。…ブレイズだ。ミーティングルームに来てくれ。」

小型端末で魔道師達が待機している部屋に通信を入れる。
アースラの常駐戦力は少ない。故にこうして人員を借りる事がある。
本来ならばこの位の任務、クロノと俺、そして常駐している部隊だけでも良いのだが…前述したようにゴッデンシュタイナーに対するパフォーマンスだ。
まぁ…戦力が多いに越したことは無い。

「「「失礼します。」」」
「来たか。」
「…また…凄い魔道師達を借りてきたな。」
「光栄ですわ。アースラの切り札、クロノ執務官。」
「ふ~ん、どんな奴かと思ったら…ちっこいんだな。」
「あらぁ?私達より年上のはずですよ~?」

入ってきたのは3人の魔道師達。
彼女達は航空隊の所属であり、3人で運用すると最も効率がいい部隊でもある。
リンディ艦長が席を立ち、敬礼をすると、3人も敬礼をする。

「ようこそ、アースラへ。歓迎します。薔薇の3姉妹さん。」







・なのは・

私は今、部屋から抜け出して、外に居る。
肩にはユーノ君が乗っているし、レイジングハートも起動してるの。
時間帯は深夜だけど…ジュエルシードの反応を見つけたから。
…今回は1人。…メビウス君達は来てない。理由は閃君が同じ部屋だからね。ユーノ君はうまく抜け出してきたみたい。
本当は私が言わなかっただけなんだけど…。だって、メビウス君にも休んで欲しいもん。

「ユーノ君、ジュエルシードの場所、わかるかな?」
「待って。今調べてるから…」

こうしてユーノ君と2人だけで捜索するのは、初めて。
何時もはメビウス君が探してくれていたし、ガルムさんも一緒に待機しててくれたけど…今回は2人だけ。頑張らないと。

「ユーノ君、メビウス君は…どうだった?」
「どうだったって…?」
「その…眠ってた?」
「ん~…オメガ達とゲームをしてたけど、疲れて眠っちゃったみたいだよ。多分、起きてこないんじゃないかな?」
「そっか。」

ホッとすると同時に少し不安になる。だって、今では一緒に回収してきたから…
けど、前に決めたんだもん。メビウス君の足手まといにならないようにするって。だから、私が1人でも大丈夫って教えないと…

「…これは…なのは、魔道師が居る。」
「え?私達以外にも居るの?」
「…彼女だ…!!メビウスが友達って言ってた魔道師だよ!!」
「…どこ!!」

直ぐにユーノ君が示した方角を見ると、金色の魔力光が奔って、ジュエルシードの反応が消えた。
私はあわてて、反応が消えた地点に向かうけど…遅かったみたい。
中心にはあの女の子…フェイトちゃんが立っていた。

「あ…」
「……また会ったね。」

驚きながらこちらをみるフェイトちゃん。…忘れないよ私は。メビウス君を…傷つけたこと…!!
けど…ここは冷静にならないと。

「……メビウスは居ないの?」
「居ないよ。私じゃ不満かな?」

むぅぅぅ…、やっぱりこの子…メビウス君の事を狙ってる…
一緒に来なくて良かったかもしれない。来たら絶対に絶対にメビウス君と……うぅ、考えるのは止める!!

「それで…私になにか用?」
「決まってるでしょ。ジュエルシードを返して。それはユーノ君が集めてたものだよ。」
「それは出来ない。私にはこれが必要だから。」
「君は分かっているのか!?それは危険なロストロギアなんだよ!!」
「これはとても危険な物だって事は分かってる。」
「危険って分かってるなら、もうこんな事は止めようよ!!」
「それでも必要。だから集めているんだよ。これを返して欲しかったら…ジュエルシードを賭けて、私と勝負して。」
「勝負…するしかないの…?」

やっぱり素直には返してくれないのかな…。メビウス君を傷つけた事は許せないけど…。お話をしようって…言ってたもん。
だから、私も喧嘩はしたくない。それでも、フェイトちゃんが私にデバイスを突きつけている。
けど、改めてみると…フェイトちゃんって…可愛い。綺麗な金色の髪の毛だし、肌だって真っ白。
髪の毛を結んでるリボンも蒼くて…蒼くて………蒼?

「な…なに?」
「………………」
「なのは、どうしたの…?」

ジーとフェイトちゃんを凝視する。…前に会ったときは…黒いリボンをしてた筈だよね?それがなんで蒼いリボンになってるの?

「ねぇ、フェイトちゃん…?そのリボンはどうしたのかな?かな?」
「え…?」

一瞬、戸惑ったけど…直ぐに軽くリボンに触って…顔を紅くしてる。
あれれ?_おかしいなぁ。私の間違いじゃなければ、それ…メビウス君のリボンダヨネ?
そう言えば…怪我してた時に1日何処かに泊まりに行って筈。それで…帰ってきたとき、メビウス君以外の匂いもした。
おかしいなぁ?どうしてフェイトちゃんと同じ匂いがしたんだろうね?あれれ?おかしいなぁ?リボンからもメビウス君の匂いがスルヨ?



「な…なのは…笑ってどうし……」
「なぁに?ユーノ君?」
「ひぃぃぃ!!」

気が付くと私は満面の笑みを浮かべていた。それなのに、悲鳴を上げるなんてひどいなぁユーノ君は。
それに、どうしてフェイトちゃんは後ずさりするのかなぁ?どうしてだろうね?くすくすクス

「ねぇ?フェイトちゃん、それってメビウス君のリボンダヨネ?どうしてフェイトちゃんがつけているのかな?かな?」
「あ…これは…ちがう」
「嘘だっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!?」
「どうして嘘つくのかなぁ?」

私が間違えるわけ無いよ?メビウス君の事はなんでも知ってるんだよ?
嘘はいけないよね。嘘は駄目だよね。


「良いよ。勝負しよう。」
「それじゃ、お互いに1個ずつかける。それで良い?」
「ううん、私はジュエルシードなんて要らないよ?フェイトちゃんが賭けるのは…リボンで良いよ。」
「リボン…を?」
「なのは!?なにを言ってるん…」
「ユーノ君は黙っててね。今、凄く凄く凄く大事な事なんだから。」
「はははいいぃいぃ…!」

もぅ、駄目だよユーノ君?今は大事なお話してるんだかね。ジュエルシードなんかよりメビウス君のリボンの方が大切なんだからね。


「…良いよ。けど…これは渡さない…!!これは私のもの…私だけのもの…!!」
「それじゃ…はじめようか。」




・メビウス・

「はぁぁぁ。夜の露天風呂は最高だねぇ。」
「そのとおりですね。」
『はい。気持ちが良いです。』

深夜の時間帯だけど、私達は露天風呂に入っている。
オメガと閃は部屋で熟睡してるはず。私はガルム、そしてエクスと一緒に露天風呂を楽しんでいるんだ。24時間入浴可能だから良いよね。
エクスはお湯を入れた桶の中に浸かっている。ユーノがしてたのを参考にしてみたんだけど…良かったみたい。
満点の星空での露天風呂は、本当に最高だ。

「皆で遊んだし…騒いで本当に楽しかったなぁ。」
「夕食の時は、驚きましたよ。メビウス様に被害が無くてよかったです。」
「あはは、避難してたからね。」
『けど、楽しんでましたよね?』
「うん。騒ぐときは騒がないと。」
『私も話せればよかったのですが…魔道師では無い人達も居ましたからね。少し寂しかったかもしれません。』
「そっか、ごめんね。」
「エクス、あまりメビウス様を困らせるな。」
『私だってマスター達と騒ぎたい時もあるんですよ?』

エクスが拗ねたようにする。ん~…けど、士郎さん達は私達が魔道師って知らないから…下手に話せないからなぁ。
…魔道師と言えば…閃は…どうなんだろう?何気に閃にも魔力反応がある。私やなのちゃんに比べると小さいけど…それでも在ることには変わりは無い。
でも、一緒にいるけど、魔法の話とか全然しないから…違うのかなぁ…?まぁ…違っても言いようにばれない様にはしてるけどね。

「けど…綺麗な夜空。」
「えぇ。満点の星空に…」
『露天風呂ですし…』
「そして、夜空に煌く桃色と金色の魔力光……はい?」

いやいや…最後のは違うよね?…なんか上空で物凄く…見たことの在る女の子達が…戦ってるんですけど?
物凄く…魔力光を放っているんですが…?
一瞬、思考が停止する。それが不味かった。

「エクス!!感知できなかったのか!?メビウス様!!直ぐに退避を!!」
『すいません!気を抜いていました!!タリズマンを展開…マスター!?』
「え?」

思考が追いついたんだけど…こっちに向かって…黒いバリアジャケットの女の子、フェイトちゃんが…堕ちて来る!?

「ちょ…まっ!?うあぁあぁぁ!!??」





あとがき


若干、なのはヤンデレ化?むしろ魔王化してるかも
…さて…着々と準備の整うアースラ。そしてしっかり者のブレイズ君。リンディさんの管理はキチンとしてます。
3姉妹は今回は通り名だけの登場。うまく書けるか心配です。特に3女のジェニファーさん。…下手するとリリン様と口調が被りそう…
ちなみに閃君が魔道師と言う事はメビウス君達は知りません。ミッドでも開発者としての方が有名ですが、知る人は知ると言う感じです。
そして、作者的に物語の基幹をなす単語を出してみました。【ベルカ戦争】
まぁ…サイファーが出てきた時点で予想済みですよね。うまくミッドと混ぜれると良いのですが…
しかし…どうしますか。サッサと物語を進めるべきか…。それとも書きたい事を書きながら進むべきか…
下手な癖にアイテムを奪いまくるのは友人。ガンコンを横に構えるのはその彼女(激うまい)。まるでマシンガンのように連射&掃射してます。
ハンドガンでチマチマ削るのが作者です。


以下返信


春河様

良いですねぇ。F-14は戦闘機ファンなら誰でも知っている有名機ですよね。某映画での雄姿…痺れる憧れる…!!5での主役機でもありますしね。
何故引退した…金がかかる?愛で補え。トムぬこが居ない海軍なんぞ認めない!!
あぁ…ミックスジュース…同志よ…!!
兄機はバランスブレイカーです(笑 ライバル達の登場はもう少し後になると思います。


ADFX-01G-2様

確かに…デッドエンド臭…。しかし、忘れてはいけませんよ?
彼はオメガです。敵地上空だろうが、海だろうが、関係なくイジェクトして生還する存在ですよ?
2度出撃して2度撃墜され、それでも生き延びている超エース!!



ダンケ様
24時間麻雀…凄いですね。作者は直ぐに沈みそうだ。
閃君は魔道師って事はばれないようにしてます。用心深い性格ですので、隠すのは上手のようです(笑
汁なんたらさんは…あと少しで出てくる予定です。次回かその次辺りで…何かしらやらかして貰おうかと…
今回は実家の方が出てきましたが…よくあるモンスターペアレント?みたいなものです



[21516] 14話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/18 22:04
・メビウス・

頭が…痛い…
朦朧とする意識の中、私は気がつく。
額にひんやりとした感覚と、頭の下に柔らかな感触を感じる。それに…誰かが私の頭を撫でている…?

「あ…れ…?」
「あ、気が付いた…?」
「なのちゃん…?」

眼を開けると…なのちゃんが笑いながら、私の頭を撫でていた。
ここは、休憩室かな?私は長椅子に横たわってるようだ。
顔が近い…これは…膝枕状態…?

「なんで…私は…露天風呂に入っていたような…」
「あぁああのね、そのね…」

焦ったようにしているなのちゃんを見て、思い出した。
確か、なのちゃんとフェイトちゃんが露天風呂の上空で空中戦をしてたんだよね。…それで、撃墜されたフェイトちゃんがこっちに落ちてきて…

「そ…そうだ。フェイトちゃんは…くぅぅ…!!」
「まだ動いたら駄目だよ!!!おおきなたんこぶ出来てるんだよ?」
「そ…そう、だからこんなに頭痛いんだ。いてて…」

私は起き上がろうとして…頭に痛みが走る。
確かになのちゃんの言うとおり、たんこぶが出来ていた。結局起き上がれずに、なのちゃんの膝枕に逆戻りする。うう…情けない。

「なのは、冷やしたタオルもって来たよ。メビウスは?」
「あ、フェイトちゃん、ありがと。今、気が付いたところ。」
「やっほ。フェイトちゃん。」
「メビウス…良かったぁ。」

タオルを持って駆け寄ってくるフェイトちゃん。怪我はしてないようで、安心する。
徐々にさっきの事を思い出してくる。咄嗟に受け止めたんだけど…滑って頭を強打したんだっけか。
額を冷やしていたタオルを、なのちゃんが交換してくれる。冷たくて気持ちがいい。頭が冴えて来るね。

「ごめんなさい…。まさか、あそこにメビウスが居るなんて知らなくて…」
「まぁ、夜中だしね。…そこまで気にしないで、色々と言いたい事はあるけど…」
「あ…う…うん。」

しょんぼりして、床にペタンと座っていたフェイトちゃんの頭を軽く撫でる。指の間を滑る髪の感触がする。
少し嬉しそうにしてるから…元気になってくれたのかな?

「がるるる…」
「な、なのちゃん?」
「がう、がうがう。うぅ~…!!」

上から聞こえた…変な声。何故か、なのちゃんがフェイトちゃんの事を威嚇してる…?
何時からなのちゃん…犬っぽいのになったんだろう?…少し可愛いと思うけど…言わない方が良いか。

「その…メビウス、私は大丈夫だから…」
「そう?…よっと。フェイトちゃん、こっちにどうぞ。」
「あ…もう起きても良いの?」


身体を起こしてなのちゃんの隣に座って、スペースを空けてフェイトちゃんを座らせる。
流石に床に座らせるのは悪いからね。
少し頭が痛むけど…タオルのお陰で楽になるなぁ。すると、なのちゃんが私の腕をツンツンとしてくる。

「…ねぇねぇ、メビウス君、私も、膝枕とかしてたんだよ?」
「ん、そうだね、ありがとう。」
「どういたしまして。だからね…私も…撫で撫でしてほしいなぁ。」

確かに、膝枕のお陰で、長椅子に頭をつけなくて良かったんだけど…
小さく手をモジモジして何を言うかと思えば…。私は小さく笑いながら、なのちゃんの頭を撫でてあげる。
嬉しいのか、笑いながらすりすりしてくるのが…凄く可愛いと思う。…隣でフェイトちゃんが羨ましそうにしてるけど。
あれ…そう言えば、ガルムの姿が見当たらないし、エクスも身に付けていないな。

「ガルムは?」
「ガルムさんなら、メビウス君の着替えを手伝った後に、壊れた柵を修理するって言ってたの。ユーノ君とエクスさんもお手伝い中。」
「私が堕ちた時に壊しちゃったみたいで…さっき、アルフも向かわせたよ。」
「あらら…けど、それならそれで良かったのかも。ガルムに、お説教されずにすんだろうからね。」

露天風呂

「なんであたしまで、手伝わなくちゃならないんだい。」
「危害を加えなければ、構わんと言ったが…思いっきり加えてただろうが。文句を言わずに手を動かせ!!」
「あたしゃその場に居なかったんだよ!!夕食を買いに行っててね!!」
「そんな事は知らん!!」
「ガルム、その前に会ってたのなら教えなよ。止めなかった僕も僕だけど…エクス、こっちに誰も来てない?」
『問題ありませんね。…お二人とも、朝方までには終わらせないと大変ですよ?』
「えぇい!!エクスも手伝え!!簡単な資材なら運べるだろうが!!」
「ちょっ!?落ち着きなって、人が来たらどうするんだい!?」


場所は戻り、休憩室

「さて…色々と聞きたいんだけど、良いかい?」
「う…ど~ぞ…」
「私に黙って…何をしてたのかな?察しはつくけど。」
「うぅ…メビウス君が攻めだよう。」

攻めって…人聞きの悪い…
それから2人の話を聞いていく。ジュエルシードの反応を探知したこと、フェイトちゃんも来ていた事、賭けて勝負をした事。
まったく…この2人は…どうして自分1人でなんでもかんでも片付けようとするのかな。

「はぁ…まったく、2人が怪我しなくて良かったけど…。危ない事はしたら駄目だよ?」
「けど…」
「けどじゃないの。確かにジュエルシードの回収も大事だけど、私はそれ以上に2人が大切なんだからね?2人が戦って怪我したら、凄く悲しいんだよ?」
「あう…その言い方は…卑怯だよぅ。」
「うん、ずるいよ…。」

なのちゃんとフェイトちゃんは、私の大切な友達だから、怪我とかは絶対にして欲しくない。
だけど、お互い引くわけにも行かないよね。なのちゃんはユーノの為に、フェイトちゃんも必要としてるから、どうしようもないか。
私がどちらかに付けば、どちらかと戦うことになってしまう。…それは一番に嫌なことなんだよね。
私にとってなのちゃんは大切で、フェイトちゃんも同じくらい大切。どちらか選べといわれても…私は選べないと思う。これは…欲張りなのかもしれない。


「…2人とも、聞いて。確かに、決闘をするしか方法が無いんだろうけど…。その方法をとる場合は、私は中立の立場になるよ。」
「中立…?」
「うん。どちらの味方もしないけど、どちらにも協力しない。…そうだな、審判役をする、事でどうかな?」

例え、甘い考えだと言われても、私はこの方法をとる。
2人とも少し考える素振りを見せながらも、納得はしてくれたみたいだ。
けど…出来れば、それ以外では友達になってほしいな。そう言えば…なんでか私のリボンを賭ける琴になってたんだから…

「なのちゃん、少し良いかな?」
「なぁに?」

徐になのちゃんの髪に手を伸ばして、リボンを解く。驚いて動こうとしてるなのちゃんを制止して、髪を梳く。
後は今度は私の髪に結んであるリボンと、予備で持っていたリボンをなのちゃんの髪に結んでっと…

「わ、わぁ…わぁ!良いの?」
「うん。3人でお揃いのリボン。だから…なのちゃんもフェイトちゃんと友達になってくれるかな?」
「メビウス…?」
「確かに、ジュエルシードの事に付いては、お互い譲れないことがあるんだろうけど、それ以外では仲良くしてほしいな。
さっきも言ったけど、私にとってなのちゃんは凄く大切だけで、フェイトちゃんも同じくらい凄く大切なんだ。その2人が仲悪いのはいやだからね。」
「…そんな事言われたら、仲良くするしかなくなるよぅ…」
「なのは、メビウスのこれって…天然?」

自分でも凄く恥ずかしい事を言った気がする。現に顔は紅くなってるだろうね。それ以上に2人の顔も紅くなってる。

「フェイトちゃん、さっきはごめんなさい。これから…よろしくね。」
「うん、こちらこそ。次は…負けないよ。」
「私だって!!」

そう言って笑いあう2人。とりあえずは…仲良くなってくれた…かな?




・閃・
温泉旅行も終わって…数日がたったある日。俺は色々と考えていた。
旅行の日の夜は、多分色々とあったんだろうな。なのはがご機嫌で、何時も以上にメビウスにくっ付いてたし、お揃いのリボンだった。さり気なく朝食の時に「あーん」までしてたぞ。
反面、ガルムとユーノが疲れたようにしてたな。…なにをやらかしたんだかな。
現在、俺は毎度の如く、フレッシュリフォーに脚を運んでいる。まぁ…予想通り、リリンの呼び出しだ。
いや…知り合った日から毎日毎日連絡が来てたんだが…旅行中はしなかったからなぁ…怒ってんだろうか…
今回は煩いレーベンを主任に押し付けてきたから大丈夫だろう。…また変なこと教え込まないだろうな…

若干、冷や汗をかきながら、俺は軽くノックして応接室の扉を開ける。

「失礼し「閃お兄様ぁぁぁぁ!!!」げふぁ!!??」

扉を開けた瞬間に襲ってくる衝撃と泣き声。なんだ!!??なにが起こった!!??敵襲か!?
視線を下に向ければ…俺の胸に顔をうずめる…ピンクのお姫様

「お兄様…お兄様…!!」
「あ~…と。リリンさん?如何為さいましたでしょうか?」

なんか衝撃と混乱で変な言葉遣いになる俺。いや…だって、流石に泣かれるとは思ってなかったからなぁ。
…こんなテンプレ展開ある訳無いだろと思っていると…リリンが顔を上げる。…あらら、物の見事に泣き顔だ。

「りリンは…リリンは凄く凄く…寂しかったのです…。閃お兄様の声が聞けなくて…凄く凄く…不安でしたのに…!!」

はい、今俺の脳天に衝撃走りました。ズキューンて走りました。走りましたとも。
なんだこの可愛い生き物。言葉に出来ねぇよおい。しかも自分の事とを名前で呼んじまうとか…あれか?甘えモードか?
この後、5分ほど慰める事になる。別に…ロリコンでも良いかもしれん…なんて片隅で思ってしまう俺だった。
結局、落ち着きを取り戻したリリンはソファに座った俺の膝の上で、楽しそうにおしゃべり中。ちなみに、要望で後ろから抱きしめる形になっている。
…心底レーベンが居なくて良かったと思う。…これ…天然だよな。

「まぁ、それではお兄様は、温泉と言うところに行ってきたのですか?」
「あぁ、友達とその家族でな。それで連絡しなかったんだが…ごめんな。」
「いいえ、良いのですよ。こうして…ギュッと、してくれているのですから♪」

リリンが嬉しそうに胸に顔をすりすりしてくる。…可愛すぎるぞこら…。保護欲とか無限に湧き上がってくるんだけど。
内容的には地球の事、海鳴市での生活のこととかだな。リリンも興味心身に話を聞いてくれている。

「けど、不思議ですわね。自然のお湯が、肩こり等を治療できるなんて…流石は神秘の国日本ですわ。」
「神秘の国って…日本のこと知ってるのか?」
「はい!主任に色々と教えていただきました!」
「へ…へぇ、主任に…。どんな事を聞いたんだ?」

一番、この娘に近づけたくない奴の名前が出てきたよ…。どんな事を聞いたんだ?
そう思い、聞いてみれば…帰ってくるのは衝撃の数々。

「えっと…まずは首都はチバシガサガという名前だそうですわ。それで…ろけっとぱんちを使うす~ぱ~ロボットが、光の巨人のうるとらまんと激戦を繰り広げてるとか。
後はしょっかーと言う組織が、カラフルな全身タイツを身に付けた正義の味方さんや、チートなかめんらいだ~さん達と戦っていますの。
そんな人達が沢山居ても、頂点に圧倒的力を持つ、ごじらさんが居るから日本は平和なんですよね?」
「……ごめん、リリン。ちょっと待っててくれ。少し用事が…」
「まぁ。けど、速く戻ってきてくださいね?」
「あぁ……10分程度で戻ってくる。」

リリンを膝からおろした俺は、直ぐに開発部に走り出した。途中で資材部から鉄パイプを奪って。

「やぁ、閃、どうし…」
「何も言わずに昇天しろこらぁぁあぁぁあぁあ!!!!!!!」
「びでぶ!?」

10分後

「ただいま。」
「おかえりなさい。…あら?お洋服を変えてきたのですか?」
「あぁ、少し…汚れたからな。」

主任は成仏させてきたから大丈夫だろう。問題は…この娘の誤解をどう解くかだな
千葉滋賀佐賀って…思いっきりネタじゃねぇかよ。しかも、スーパーロボットとウルトラマンは戦わねぇよ。
全身タイツってなんだよ…。そう見える奴も居るけどよ…。

「とりあえず…リリン、色々と間違ってるぞ。」
「そ…そうなのですか!?」
「しょうがない。俺が説明するか…。良いか?日本は…」

こうして俺とリリンの日本講座が始まった。
1時間程度かけて、日本の事を説明し、分からない事があったらリリンが質問する、と言った形式だ。

「つまり…主任の説明は、でたらめだっと言うことですか?」
「まぁ…そうなるな。…と言うかな、そんな国だったら俺、暮らせないって…。ゴジラが頂点とか危険極まりないっての。」
「はぁ、なるほど。けど…お兄様の暮らす日本…私も…行ってみたいですわ。」

…えっと…リリンさん?なんですか、その上目遣い。俺を殺す気ですか?萌え死にさす気ですか?
そして…その若干、期待が込められた視線はなんですか?連れて行けと?私を連れてってという事ですか!?

「駄目…ですか?どうしても、閃お兄様の暮らす所を…見たいのです。」
「はぁ…しょうがない。俺が後で聞いてみるよ。それでよかったら、一緒に行こうな?」
「本当ですか!?約束ですよ!!」

軽はずみな約束しちまったかな。なんたって超巨大企業の令嬢を、管理外世界に連れて行くんだから。そう簡単に許可が出るかどうか…
だけど…首に手を回してほお擦りをしてくるリリンを見ていると…満更でもないんだよな。
籠の中の小鳥じゃ、可哀想だよな。広くて大きな世界を見せてやるとしますか。さぁ…頑張れよ。俺!!







??????

「くくく…準備は整った…。来るが良い。愚かな人造の化け物が…」

市外の外れに位置する廃ビルに蠢く人影。
その前には幾重にも封印を施されているジュエルシードがある。だが、何故か人影が手をかざすと、徐々に封印が解けていっている。

「もう少しで始めれる…僕のなのはの物語が。邪魔な奴は…ここで消せば良い。」

邪な笑いを浮かべ、周囲に眼を配る。何も無いはずの空間なのだが…何処かが可笑しい。
すると、何処からか迷い込んだ鳥が、内部を飛びまわっていた。

「ふん…。馬鹿な鳥だ。まぁ、どうでもいいけどな。…さて、後は時が来るのは待つだけだ。
くくく…はははははははははははははははははははははは!!!!」

人影が笑いながら揺らめき、そして消えていく。まるで最初からそこには居なかったように…
後に残されたのは、多数の槍で貫かれている…鳥らしきものの残骸だけだった。






あとがき

久々の更新になりました。遅い&駄文で申し訳ないです。
フラグをたてまくるメビウス君と、ラブラブ?しちゃっている閃君。うらやましいぞこんちくしょう。
リリン様は何も知らない無垢なお姫様です。ちなみに、リリン様の私は「わたくし」という事で…
次回からは一気に駆け抜けようかと思っています。多分、20話近くで無印を終わらせれる…筈です。
さて…頑張りますか。では、また今度。


ダンケ様
帝家両親は、管理局に憧れていた人たちですからね。出来れば協力したいと言う人達です。
閃君の素性については、無い頭絞って考えていました。本人もバレたらその時、と覚悟はしてますから。
アンベルさんは…少し迷っています。あの人…作者は設定だけでしか知らないので…


名無しの獅子心騎士様

ベルカ戦争については、後で色々と出して行こうとは思っています。
それに原作と、この作品でのベルカの違い等も後で書こうとは思っています。闇の書事件も関わっているようにはしてますが…心配です。
なのはさんは…やばいのが降りてましたね。メビウス君には被害皆無ですが…周りに被害が出るという厄介なヤンです。(笑




[21516] 15話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/11/06 22:05
・フェイト・

「材料は…このくらいかな?」

メビウスの書いたレシピに眼を通す。それには丁寧な字で、材料や調理の仕方が書いてある。
最初に作ってくれたハンバーグのレシピ。
今日は母さんの所に行く事になっている。何時も研究ばかりで、ご飯も食べてないかもしれないから…私が作ってあげたい。
料理なんて、メビウスと会うまでやったこともなかったけど…きっと大丈夫だと思う。
…髪に結んであるリボンに触る。蒼くて綺麗なリボンは、メビウスから貰った大切な宝物。
何時も近くに居てくれる。そんな気してもすごく安心できる。

「大切で大事なんだからね?」

温泉で言ってくれた言葉を思い出すと、顔が熱くなる。それに凄く心も温かくなる。
…それに、堕ちた時に庇ってくれた。それが凄く嬉しい。だから、彼の、メビウスの言葉を簡単に信じる事が出来たんだ。

「私は…独りじゃないんだよね…メビウス。」
母さんの所に行く前に、彼の好きな空を見上げながら…私は笑う。次も…笑顔で会いたいから。




時の庭園

薄暗い部屋で研究に没頭する女性、プレシア・テスタロッサ。フェイトの母親と呼ぶべき存在だ。
若干、優れない顔色をしながらも笑顔で時計を見る。

「…そろそろフェイトが来る時間ね。」


呼ぶべき存在とはどう言う事か?理由は隣の部屋にある。そこには1つのカプセルがあり、その中にはフェイトと瓜二つの少女が入っていた。
少女、アリシア・テスタロッサ。フェイトのオリジナルである。そう、フェイトはアリシアのクローンなのだ。
プレシアが求めたアリシアとは違う存在のフェイト。彼女自身、最初は偽者を造ったと嘆き苦しんだ。
しかしプレシアはフェイトを、己の娘として受け入れたのだ。たとえ、自分が生んだ娘から、造られた娘とはいえ、自分の娘なのだと、自分には【創った責任】があるのだと。
それを受け入れてしまえば、大切で大事で愛しい娘には変わりなかったのだ。フェイト自身も出生を受け入れ、そして、母と姉の為にジュエルシードを集めると言う事をやると言ってくれた。
フェイトにとっても同じだ。たとえ違くても、プレシアは母であり、アリシアは姉なのだ。家族の為に自分が出来ることをする。簡単な事で難しい事を彼女は成そうとしていた。
プレシアは扉を見つめながら、今か今かとフェイトの帰りを待っていた。軽いノックの音が響いて扉が開き、愛しい娘が姿を現した。

「ただいま、母さん。」
「あぁ…おかえりなさい、フェイト。怪我はしてない?風邪とかひいてない?」

怪我をしてないか、病気になっていないか、それを心配する姿は母親その物だ。
優しく…とても優しくフェイトを抱きしめるプレシアと、嬉しそうに抱きしめ返すフェイト。とても微笑ましく、優しくなれる光景だ。
フェイトがジュエルシードを集めに行ってる間は会えなかったので、その分を埋めるようにして抱きしめあう。
その光景を見ながらアルフも笑う。自分の主が幸せそうにしているのが、嫌なわけが無いのだ。

「うん、大丈夫だよ。…母さんは?研究ばかりで疲れてない?」
「ふふ、心配してくれるのね。ありがとう、私も大丈夫よ。フェイトの顔を見たら、疲れなんて吹き飛ぶわ。」

笑顔でフェイトに語りかけるプレシア。本当にフェイトに会えて嬉しそうにしている。
視線を下に向けると、フェイトの足元に何故かスーパーの袋が置いてあった。

「あら?これはなに?」
「あ…。えっと…母さんはご飯食べた?」
「ご飯?まだよ。」
「そ、それなら!!私が作る!それで、一緒に食べよ!」
「フェイトが…?」

突然の提案に驚くプレシア。確かに一緒に食事が出来るのは、彼女にとって最高の休息になるだろう。
しかし、誰が作るといった?目の前の娘がそう言った。
料理の仕方を教えたことが無いのに…疑問に思いながら、フェイトの提案を受け入れる。

「良いけど…料理なんて作れるの?」
「うん、その…レシピもあるから…」
「レシピ?」

抱擁から解放されたフェイトが、ポーチの中から数枚のメモを取り出してプレシアに見せる。
そこには、丁寧な字で食材、調理の仕方、ワンポイントアドバイスが書かれていた。

「これは…誰が書いたのかしら?」
「えっと…大切な…友達。」
「友達…!?」

フェイトの口から出てきた驚くべき単語、友達。一瞬、呆気に取られたプレシアだが、直ぐに笑顔になりフェイトの頭を撫でる。
この人見知りの激しく内気な娘に友達が出来た。それが、とてつもなく嬉しいのだ。
良く見れば、頭のリボンも変わっている。もしかすると、その友達からプレゼントされたのかもしれない。

「そう、よかったわね。そのリボンも友達から?」
「うん。…私の宝物。」
「あら、妬けちゃうわね。」

恥かしそうに、しかし、嬉しそうにリボンを触れるフェイトを見て笑う。

「どんな子なの?女の子?男の子?」
「…男の子。」
「ふ~ん。…もしかしてフェイト…その子の事好きなの?」
「……分からない。けど…一緒に居ると…凄く安心できて…暖かくなるの。」
「そう。…名前はなんていうのかしら?」

まだ良く分かっていない娘の恋心。1つの成長が微笑ましくて、娘が好きになった男の子は一体どんな人物なのか、母親ならば気になるだろう。

「…メビウス・ランスロット。凄く優しいんだよ。」
「メビウス…ランスロット…!?」
「…母さん、どうしたの?」
「あ…なんでもないのよ。…それじゃ、ご飯お願いできる?私も片付けて向かうから。」
「うん、頑張って作るね。アルフも手伝って。」
「あいよ。」

何故かメビウスの名前を聞いて驚くプレシア。
フェイトが疑問に思ったようだが、直ぐに誤魔化して、調理場に向かわせる。
扉が閉じると同時に、パソコンの中に登録されているデータに眼を通すプレシア。
そして、1つのデータを見つけ、深く大きなため息をつく。

「…神と言うのが存在するなら…なんて残酷なのかしら…」

表示されたデータと娘の口から出たランスロットという単語。プレシアの頭の中の記憶とも一致していた。

「…円卓の…鬼神…。そして…伝説…か。」

画面に出ているのは…若い2人の男女。顔に傷の在る男性と、メビウスと同じ蒼い髪をした女性だった。



・閃・

「あ~っと…ここがこうなって…」

現在、俺はフレッシュリフォーの開発部に居た。
なんだか最近、ここに来てばかりの気がするな。
俺の目の前のデスクには、デバイスの設計図が広げられていた。この部屋の主である主任は、学会に出席していて居ない。
あれでも天才科学者なんだが…変態にしか見えないんだよなぁ。

「っと…回路はこっちの方が良いか…?ん~…ん?」
「むぅぅぅ…」

悩みながら設計図を見ていると、隣から聞こえる不機嫌な声。
視線を移せば、リリンが俺の右腕に抱きついていた。
…顔に物凄く不機嫌です。と書いてあるぞ。

「どしたリリン?。」
「…さっきから設計図ばかり見てますのね。」
「まぁ…そうだな。…邪魔はしないって…言ってなかったか?」
「はい。言いましたよ。」

それじゃ今の状況はなんだよ?思いっきり右腕に抱きついてるぞ?
これが邪魔でなければなんだ?

「…なんで右腕に抱きついてんの?」
「だってお兄様、先ほどから設計図と睨めっこばかりしてます!!それに、私が話しかけても上の空はひどいです!!」
「う…それは…」

…否定が出来ないぞ。確かに、さっきからリリンが話しかけてきても、「あぁ。」とか「うん。」しかいってなかった気がする。
いや…集中してたのもあるんだが、少し失礼だったかもしれないな。
折角、わざわざこんな汚い部屋まで来てくれたのに、話もしなければ怒るのも無理は無いってか…

「あ~…ごめんな。少し夢中になってたかもしれない。」
「いいえ、分かってくれたのなら良いですわ。そう言えば…新作のデバイスですか?」
「ん~…試作で3世代目のVRデバイスも出しただろ?それで、製品版に改良しようかとな。」
「まぁ。もう3世代まで開発しましたの?」
「試作品だけどなぁ。問題点も多いから、実用化はまだまだ先の話だよ。今は管理局で、実地テストしてもらってる所だな。」
「テストとなると…お兄様も参加するのですか?」
「そうなる…なぁ・」

試作品でロールアウトしたデバイスは、管理局などに依頼して、実地訓練を行う予定になっている。
そう言えば…どっかの部隊が管理外世界に調査に行くとかで、試作品を渡した魔道師も参加するとか言ってたな。
あ~…不具合があると不味いから、一緒に随伴してくれって言われてたな。父さんからも、言われてるし。
もう出港してるだろうが…座標を教えてくれれば、後で飛べるからな。管理局に確認とっておくか。

「それなら、私も参加してみたいですわ!」
「リリンも?…まぁ、許可が下りればな。」
「はい!約束ですわ!!」


簡単に下りるとは思わないけどな。ってと、とりあえず、この設計図だけでも仕上げておくか。…転生前の工学科の実業がこんな所で役に立つとはな。
…とりあえずは、隣のお姫様の機嫌を損なわないように、適度に気を抜いてやりますかねぇ。



・フェイト・



「反応は…この辺りのはず…」
「あのビルからじゃない?」

市街地の外れの廃ビル。そこにジュエルシードの反応を見つけた私達。
今回はメビウス達は居ない。どうやら私達のほうが速かったみたいだ。
市街の外れで、廃ビルだからか、人の気配はまったくしない。これなら…簡単に封印できるかな?
飛行魔法で、反応がある部屋まで飛んでいき、進入する。廃墟になって時間がたっているからか、埃や汚れが沢山付いている。
あまり…長く居たくない空間…。

「あ、あったよフェイト。…けど…これ。」
「封印…されてる?」

部屋の一角に放置されていたジュエルシードを見つけだけど…封印が施されていた。それも…見たことの無い術式…
四角い箱の様にジュエルシードを封印したのが、宙に浮いている。その封印の一箇所が破れてて、魔力が流れている。

「なんだいこりゃ?見たことも無いね。」
「うん…ミッド式とも違う。けど、誰が封印を…?」
「メビウスじゃないのかい?」
「うぅん、違うと思う。固定封印…かな?一回解除しないと…」

メビウスの術式とも違うはず。それに…魔力の雰囲気や、色が…なんだか違う。
彼のは澄んだ優しい雰囲気をしてるのに、これは凄く…濁ってて嫌な雰囲気を持っている。
まずは、解除して、新しく封印をかけないと…。
バルディッシュを構えて、詠唱を始めると、私の足元に魔方陣が展開される。


「…封印解除、術式展開…」

バルディッシュの切っ先を封印術式に向けると…弾け飛んだ…?
っ!?違う…これは…バインド!?

「フェイト!?…うぐ…なんだいこれは!?」
「トラップ式のバインド!?くぅぅ…外せない…」

両手、両足をバインドで固定された…!?そのまま、空中で張り付けの状態になる…。アルフも拘束された…!!
それに…締め付ける力が強い…。バルディッシュで切り払おうにも…封印が弾け飛んだときに落とした…!!

「くく…まさか、この程度のトラップに引っかかってるとは…哂えるなぁ。」
「誰…!?」

何処からか…声が聞こえる。周りを見渡しても誰も居ない…?
いや…部屋の入り口の空間が…歪む?

「お前なんかに名乗る名前は持たないよ。フェイト・テスタロッサ。」
「お前…何者だ!!」

アルフと私の視線の先に居るのは…銀色の仮面をつけた…魔道師?
そんな…さっきまで居なかったはず…。それに魔力の反応も無かったのに…

「…っ!?どうして…私の名前を…!」
「ふん、化け物と話す言葉は持たないんでね。」
「ぐ…これを解け!!」
「ちっ、使い魔如きが、粋がるな。そこで転がってろ。」
「あ…あぁぁぁ!!」
「アルフ!!??」

仮面の魔道師が指を振ると、バインドがアルフを締め上げる…!?
苦痛の声を上げながら、睨み付けるアルフを尻目に、こちらに歩いてくる。

「どうして…貴方は誰なの…!?」
「教えてやる義理も無いんでね。…ふ~ん。案外、良い作りをしてるじゃないか。」

そう言いながら…私を舐めるように見る魔道師。
仮面で分からないけど…凄く…嫌な視線だ…!!バインドの拘束を解こうともがくけどどうにもならない…!!

「始末しようかと思ったけど…気が変わったよ。フェイト・テスタロッサ、僕のペットになれ。」
「!?なにを…言ってるの!!」
「言葉のままの意味だけど?ペットになれば…それなりの待遇をしてやるよ。まぁ…色々と…ね。はははは!!」

私が…ペット…!?冗談じゃ…ない!!
顔を背ける私の顎を掴んで、自分のほうに向けて哂う魔道師。
こいつ…狂ってる…!!それに、凄く嫌だ…!!こいつの声も視線も…全部、嫌だ…!!

「誰が…お前なんかのペットになるか…!!」
「ふ~ん。ますます良いね。そう言う強情なのを従順にするのも…面白いなぁ。…魔力吸収。」
「つぅぅ…魔力…が。」

手をかざされると同時に…魔力が抜けていく…!?
唯のバインドじゃない…!?…抜けた魔力が…あいつに吸収されていくなんて…!?

「…ペットにこんなのは要らないよな?」

力なく項垂れる私の顎から手を離した魔道師は、今度は髪のリボンに手を伸ばす。
それは…メビウスから貰った大切なリボン…。やめろ…ゆめろ…!!穢すな…!!メビウスとの絆に…!!メビウスとの想い出に…!!


「やめろ…さわ…る…なぁぁぁ…!!」
「後で綺麗な首輪を買ってあげよう。こんな汚いリボンなんて捨ててしまえ。」

仮面の魔道師が手を伸ばして…リボンに触れそうな距離になった瞬間…壁を貫いてくる蒼い砲撃。

「なにぃ!?…ぬぁぁぁ!!!???」

直ぐに魔力防壁を張り、防御する魔道師だけど…威力が抗えなかったのか、吹き飛ばされていく。
それと同時にバインドが解除されて…私は前のめりで床に倒れていく。
けど…倒れた先の感触は…冷たい床じゃなくて…暖かな…腕の中。
顔を上げれば…バイザーを外した彼の…顔。

「メビ…ウス…?」
「……」

無言で、私をギュッと抱きしめてくれるメビウス。…凄く恥かしいけど…凄く嬉しい…。
そのままの状態で、私に魔力を分けてくれているのか、少し身体が楽になっていく。

「フェイト!!」

アルフの拘束も解けたて、こっちに走ってくる。心配かけちゃった…ね。
メビウスはそっと私を離して、アルフに預けてくれた
なんだか…離れていく温もりが寂しい…
メビウスは、私達に背を向けて、バイザーを装備していた。
そして、無言で魔道師の吹き飛んでいった方向にエクスを突きつけて…

「…貴様ぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

初めて聞いて…初めて見るメビウスの…怒りの咆哮が…ビル内に響き渡っていた。








あとがき

前回の更新から時間が立ち申し訳ないです。
色々とゲームに嵌ってしまいました。
時間が色々と飛びまくってますが…ご容赦を…
さて…前半の母と娘の会話。作者がこの小説を書き始めた理由の一つです。
多分ですが…受け入れてしまえば、こんな感じになるんじゃないかなぁ、と。
親は子供を愛する義務と権利がありますし、子供には愛される権利があります。逆もまた然り。児童虐待する奴なんぞ親とは認めませんよ、作者は。
そして…定番の「女の子の危機に颯爽と駆けつける主人公」をやってみました。
よくよく見ると…メビウス君も一回しか喋ってない。しかも最後の咆哮だけとか。笑
しかし…ゴっなんちゃらさん…生前はオタクだったので…エロゲをやりすぎたようです。ペット発言とか。(笑

以下返信

34様

まさにその通りです!!
ゴっなんちゃらさんは確実にそんな役です!!と言うか自分でやってて気が付かないと言う手遅れ的な奴です!!
ラーメンズネタは、作者が始めてパソコンで見たフラッシュでした。懐かしいですねぇ。(笑
リリン様は純情ですので…色々と騙されるようです。
AC5…大統領が敵として出たら勝ち目皆無なんですが…。



ダンケ様

メビウス君…厨2主人公の恥じないフラグを立てていきます。
まぁ、ブレイズ君やオメガ君の相手には一切、フラグは立ちませんけどね。笑
閃君はリリン様は完璧にバカップル丸出しかもしれません。転入フラグ…どうたてますか…
小五とロリを組み合わせると…悟りとなる!!…言ってみたかっただけです。
ゴっなんちゃらさんは…確かに危険人物になってきましたね。それも3流悪役クラスの。


天船様

箱とPS3で出ますねぇ。ピクシーごっこ…すごく…やりたいです。
現実世界…トンネル潜りはあるといいんですけどね。笑



春河様

おおう、それだけの火力を持ってきてくれるとは…作者の狙い通り、ウザキャラとして受け入れられましたね(笑。
特攻兵器の無限コンボでお願いします。笑
あの3姉妹の相手は…まったくもって決まっていませんからねぇ。ラーズグリーズのメンバーも何れは出す予定ですので…楽しみに(笑


ノラポン様

そのまま、ヴォオーで良いですよ。笑
新作のエースコンバット…楽しみ半分、不安半分といったところですね。作者は。苦笑



リカルド様

作者も陸と空のACは大好物ですね。VOBで突貫とは…ありがとうございます。
確かに、同じ任地に居たらそんな感じになりそうですね。笑
3人は親友ですからねぇ。きっとそんな会話も楽しんでやってると思います。笑


ユーロ様

楽しみにして頂きありがとうございます。
作者の好きなエースですか…やはり彼…ですかねぇ。気高く誇り高く空をこよなく愛した金色の鷲【黄の13】。
ライバルとしては彼が最強の存在として作者の中には居ますねぇ。
ACE5の8492隊等には本気で殺意を覚えましたしねぇ。彼の愛した空を汚す存在は許せませんから。(苦笑

























蛇足&おまけ&…介入前?


???

「何もかも…消えてしまえば良い…!!」
「…深い絶望に身を委ねるか。…まったく、手間をかけさせる。しかし、これは…予想以上だな。」
「…全部…全部、壊れてしまえ!!」
「…彼女の心、どうしちゃったんだろう。」
「心と魔力…どちらも取り込まれる一歩手前、と言った所か。今なら助け出せる状況だ。」
「もう、私に構わないで…私は、ここで消えるのだから…」
「本体から魔力反応を確認。…消すと同時に、己も消えるつもりか?」
「…消えられては困る。助けに来たのにな。」
「…え?」
「貴女はまだ、消えるべき存在じゃないんですよ。だから、あきらめないでください。」
「無理…よ。力だけに…頼っているようでは私を解き放つ事は…」
「力を持ち過ぎた存在は、すべてを壊す。それは、私が一番良く知っていることだ。それに、君を取り込もうとしている存在は、倒さねば危険だ。
…だが、君はまだ…戻れる。だから、絶望するな。まだ生きれるんだ。」
「誰…貴方達は…一体誰なの…?」
「僕は、人が安心して暮らせる世界を望む者。さて、精霊よ。我が手に…」
「俺は、虚空の使者にして、世界の番人。ゲマトリア誤差修正。撃ち貫く…!!」
「私、人の可能性を…最も信じる者だ。…安心しろ。責任を持って…助け出す。
…ターゲット確認…排除…開始!!」


それは…時の闇に消えるはずだった女性。それは…現れるはずの無かった、時と界の使徒達。
そして…時の彼方の彼らと、少年達との運命は…何処かで交差する…



[21516] 16話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/11/12 07:54
「…貴様ぁああぁあぁあ!!!」

この日、メビウスとなのはとオメガ、そしてユーノの4人でジュエルシードの捜索を行っていた。ガルムは留守番。
その中でジュエルシードの反応と、フェイトの魔力の反応を感知したのは、やはりメビウスであり、新たに現れた魔力反応と、徐々に弱体化していくフェイトの反応も察知していたのだ。
サテライトと併用し、廃ビル内部の状況を確認し、ラジカルザッパーによる遠距離狙撃を行い、フェイトに危害を加えていた魔道師を狙撃した。
速度で一番優れるメビウスは2人を置いて、先に突撃していた。
フェイトの無事を確めても、彼の中にある怒りの感情は鎮まらなかった。彼にとってフェイトは大切で大事な友人。それに危害を加える存在は敵。
エクスを突きつけて、何時でも攻撃できるようにしていた。
だが、魔道師は、数部屋ほど向こうに吹き飛ばされ、舞い上がる土煙と埃で確認できない。
直ぐにメビウスは、バイザーを装着し、反応を見つけようとしたが、吹き飛ばした方向から数発の魔力弾が飛来するのを確認した。
しかし、それは彼の周囲に展開していたタリズマンが防ぐが、防御魔法であるタリズマンを減衰させるほどの威力を持っていた。

「タリズマンを減衰させた…!?エクス、単体の密度を上げて。それに、位置索敵も!!」
『了解しました。タリズマン密度上昇、索敵開始します。』
「…アルフ、フェイトちゃんを連れてここから離れて。」
「そうしたほうが…良さそうだね。フェイトが消耗しきっちまってるよ…」

後ろにいるフェイトとアルフを庇うようにして、エクスを構えるメビウス。先ほどの魔力弾以外は攻撃がないが、それでも負傷者である彼女達がここに居るのは危険と判断した。
抱き締めた時に多少の魔力供給を行ったが、吸収された魔力の方が多いのか、フェイトはアルフの腕の中でぐったりとしている。

「頼むからあたしとフェイトの分まで、あの野郎をぶっ飛ばしておいておくれよ!!」
「そのつもりだよ。…さぁ、行って!!」

アルフがフェイトの連れて逃げるのを確認すると、エクスをセイバーモードに切り替える。

「…何時まで隠れている気?それとも怖気付いた?」
「は…ははは!!言うじゃないか!!低俗な魔道師の分際で!!」

突如として、突風が巻き起こり土煙を吹き飛ばす。その奥には、魔方陣を展開し、哂う仮面の魔道師、シルヴァリアスが立っていた。
だが、2人とも、相手が誰であるかとは気が付かない。顔はバイザーと仮面で隠れているし、どちらもそんなに会話をしたことが無い、と言うか、転校して来た時以外、まったく言葉を交わしていなかった。だから、声でも気が付かないのだ。…仮に気が付いても、両者とも怒りで止まらないだろう。

「何者か知らないけど…僕の邪魔をするなんて、良い度胸してるじゃないか、えぇ!?死ぬかい?死んでみるか?むしろ、死ねえぇえぇ!!!!」
「っ…タリズマンを切り裂いただと…!?」

シルヴァリアスが、デバイス・アスカロンの一振りに魔力刃を展開し、斬りかかり、それを防ごうとしたタリズマンを両断した。
まさか密度を上げたのを切り裂かれるとは思わなかったのか、メビウスは驚くながらも、エクスで斬撃を受け止める。
両者の魔力刃がぶつかり合い、魔力光が火花のように散っていく。
主任が書いた設計図を入手したゴッデンシュタイナー家が、御曹司である彼の為に、金に糸目をつけずに最高級品のパーツを使って製造したアスカロン。
その性能は、従来のデバイスより上のランクなのだ。そして、シルヴァリアス自身も魔道師としての素質が高い。…性格に問題ありまくるのだが。
鍔競り合う2人だが、シルヴァリアスが口元に小さく笑みを浮かべる。

「くく…しゃぁぁぁ!!」
「もう…1本あったのか…!?」

左手で腰に下げていたもう片方のアスカロンを、逆手に握り振り上げ、顔を狙う。突然の攻撃に驚きながらも、顔を逸らし回避するメビウスだが、バイザーに皹が入り、前髪の数本が斬り飛ばされる。しかし、顔を逸らしたことで、上半身の防御が一瞬緩み、そこに蹴りが叩き込まれ吹き飛ばされた。

「がふ…!!」
「そらそらそらぁぁぁぁ!!!フラガラッパ!!」
「冗談じゃ…ない!!」

咄嗟に蹴りを受ける寸前で、バックステップをして衝撃を逃がしたメビウスだが、そこに追い討ちをかけるように、シルヴァリアスが4発の剣型の魔力弾を構成し、放ってきた。
狭い室内であり、この状況では回避行動が取れないと判断したメビウスは、ランチャーモードに切り替えて、迎撃していく。
2発迎撃したところで、肉薄されるがセイバーで1発も切り払い、最後の1発を後ろにそらし、旋回して、ソードウェーブで破壊する。
距離をとり、再び、正面を向き合い対峙する2人。

「まさかフラガラッパを防ぐとはね。モブの癖に中々やるじゃないか。」
「モブだか、モップだか知らないけど…何故、フェイトちゃんをあんな目に合わせた!?」
「ふん。ロストロギアを強奪している犯罪者には、当然の報いだと思うけどね。お前こそ…こんな事して唯で済むと思ってるのか?犯罪者に加担してるんだ。お前も共犯者だぞ?」
「どの口がほざく…。殺傷設定でためらいも無く攻撃してくる貴様が…!!」
「へぇ、気が付いてたんだ。」

メビウスが吐き捨てるように言うのを、哂いながら聞くシルヴァリアス。
魔法には殺傷設定と非殺傷設定があり、メビウスは非殺傷設定にしていた。これならば魔法が直撃しても、気絶する程度だ。
だが、シルヴァリアスは何の躊躇も無く、殺傷設定でメビウスと戦闘を繰り広げていたのだ。殺傷設定で直撃を受ければ大怪我、もしくは死ぬ事だってありえる。
冷や汗をたらして睨むメビウスの視線を受けながら、順手と逆手でアスカロンを構えるシルヴァリアス。相変わらず、口元には嫌らしい笑いが浮かんでいた。

「言っただろう?僕の邪魔をするなら…死ねってさぁぁぁぁ!!!」
「狂気が…!!」

転生者であるシルヴァリアスにとって、この世界は所詮は物語の中なのだ。そして、自分となのは以外は唯のモブキャラでしかないと思っている。
彼に選ばれた存在、だから転生できた、と考えているのだ。即ち、自分は主人公なのだと。
自分は主人公なんだから、殺しても大丈夫。自分の邪魔をするのは全て敵だから、殺しても誰も気にしない。
…ただの我侭な子供の考えだ。いや、もしかすると子供以下かもしれない。
エクスを構え迎撃しようとしたメビウスだが、シルヴァリアスの足元に見知った魔力反応を見つけて…こちらも、小さく口元に笑みを浮かべた。

「1つ、忠告しておくよ。調子に乗りすぎていると、足元を…」
「ぶち抜かれるぜぇええぇえ!!!!どおぉおおおぉぉりゃぁあぁぁあ!!!」
「なん…だとぉおぉぉおぉ!!???き…貴様誰だああぁぁあぁぁ!!!!!!」

突如として、立っていた床が爆発し、天井を打ち抜いて飛ばされるシルヴァリアス。爆発で舞い上がった埃が収まると、そこにはオメガが立っていた。
見ると、右手に装着されているパイルパンカーが熱を持ち、唸っていた。そう、オメガが下の階層から、アッパーで一気にここまで床を打ち抜いてきたのだ。
飛行魔法が苦手だが、単純なジャンプでここまで来たようだ。苦手であって飛べないわけではないだろうが…。

「はっはー!!悪人に名乗る名前なんて無いぜ!!だが、あえて言おう!!オメガ・ガウェインであると!!」
「どっちなの…?それに多分、聞こえてないと思うよ。」

自信満々にシルヴァリアスを吹き飛ばした方向を、指差し答えるオメガと、それを見ながら、苦笑しつつ頼りになる親友の登場に安心するメビウス。

「とにかく助かったよオメガ。下手すると負けてたかもしれないからね。」
「おう!!無事でよかったぜ!!」

親指を立てて笑うオメガ。メビウスも笑おうとしたが…バイザーに表示された情報を見て凍りつく。

「これ…は…!?」
「どうしたよメビウス…!!??おいおい、なんか…拙くないか?」

背中合わせにそれぞれのデバイスを構える2人。周囲には…2人を囲むようにして、幾多もの魔力刃が展開されていた。

「邪魔な存在は…消してしまわないとなあぁぁぁ!!」
「っ…!!しぶといな。」
「ゴキブリもびっくりだぜ!!」

聞こえてきた声は、恐らくシルヴァリアスのものだろう。しかし、2人には確める余裕は無かった。
これだけの数の魔力刃を撃ち込まれたら、怪我どころではすまない。ましてや、室内という限られた空間で、満足に避ける事も出来ないだろう。
これは、シルヴァリアスがフェイトを捕まえた時と同じで、トラップとして仕掛けていた魔法の1つだ。

「ふん。本当ならお前らなんかに使う予定ではなかっけど…まぁ、良いか。舞え!!鮮血の剣!!ダインスレイヴ!!
はははははははは!!!邪魔をするからこうなるんだよ!!!ははははは!!!」」

魔剣の名を冠した魔法が2人に襲い掛かるのを、高笑いしながら、崩壊していくビルを見るシルヴァリアス。
しかし、それで終わる2人ではないのだ。

「ふはははは!!だが、しかし!!正義は負けないんだぜ!!とっておき使うぜ!!」
「…やばいな。エクス、シールドモード!!オメガの攻撃を防げるだけ防いで!!」
『了解しました。』

オメガの轟く彷徨。バリアジャケットの肩と、腕の部分が開き、噴射煙と共に膨大な魔力が溢れ出す。
そして、メビウスの不可解な言葉。エクスを巨大な盾のように変形させ、周囲にもタリズマンを展開させていた。
何故、味方であるオメガの攻撃を防ごうと言うのだろうか?
理由は簡単だ。オメガのこの技は、一時的に魔力を解放し、自分の全周囲に攻撃するというデタラメ極まりない技。
力を更なる力でねじ伏せる方法だ。現状、2人でダインスレイヴを防ぐにはこれしかなかった。
それに言うではないか、攻撃こそ最大の防御なり、と。

「いっくぜぇぇえぇ!!!!!だりゃあぁあぁあぁ!!!!!」


魔力が縮退、そして膨張し、ダインスレイヴやビルの天井、壁を薙ぎ払う。
それを上空で見ていたシルヴァリアスは唖然としていた。

「ば…馬鹿な…。こんな方法で…。だ。だが!!まだフラガラッパの弾幕があるぞ!!

直ぐに周囲にフラガラッパを展開し、放とうとしてくる。

「ターゲット…ロック!!XLAA、FOX3!!行け!!」

しかしメビウスも、バイザーに表示されているターゲットをロックしていた。
メビウスの周りに構成された4発の魔力弾が、撃ち出されていく。エクスとメビウスが考案した、対空遠距離攻撃魔法XLAAだ。
戦闘機のミサイルを参考にした魔法であり、メビウスも気に入っている魔法だ。
それが、シルヴァリアスの周囲に展開していた、フラガラッパを撃ち砕く。

「ちぃ、悪あがきを!!なら、これなら!!」

舌打ちしながら、新たな魔法を展開しようとするが、彼は気が付いていない。それより上空で自分を狙う…膨大な魔力と殺気に…
そして…気が付いたときには…もう遅かった。

「ディバイン…バスタあぁああぁぁぁぁ!!!!」
「い…ぃいぃいぃ!!???」

上空から放たれた非常識までの桃色の魔力の塊がシルヴァリアスを飲み込み、地面へと激突させる。
放った魔道師は…高町なのは。メビウスとオメガの後を追っきて、上空で待機していたのだ。

「メビウス君に…なにするのぉぉぉぉ!!!!ディバインシューター!!!!」

若干、涙目になりながら叫ぶなのは。肩に乗っかっているユーノは青い顔をしている。なぜなら、周囲に魔方陣が展開され、スフィアと呼ばれる発射台が構成されていた。
そこから、墜落したシルヴァリアス目掛けて、ディバインシューターが打ち出されていく。その弾幕も非常識極まりない。

(メビウスと、ほんの少ししか練習してなかったはずのシューターを、使いこなすなんて…女の子って…怒らすと恐いんだ…)

ユーノが内心、手を合わせながら冥福を祈っていた。
だが、まったくその通りである。流石のメビウスも2~3回しか練習してなかった魔法を、ここまで使いこなされるとは思って居なかっただろう。

「な…なのちゃん、その位にしてあげた方が…」
「は…!!メビウス君!!大丈夫!?」


堕とした辺りを絨毯爆撃しているなのはを止めるメビウス。その顔は、かなり青ざめている。
ちなみに、オメガは離れた地面に大の字で倒れていた。どうやら、魔力をかなり消耗したらしい。
なのはを落ち着かせながら、オメガのところに戻っていく。

「けど…やりすぎじゃ…ないかなぁ?」
「だって、メビウス君をあんな目にあわせたんだよ?私が怒るのは当然だもん!!」

メビウスは、頬を膨らませて怒るなのはを宥めながら、絨毯爆撃の後を見る。
流石に非殺傷設定でも、トラウマに成りかねない弾幕ではある。

「あ、メビウス君、ホッペ…切れてるよ!?」
「どうりでヒリヒリする訳だ。多分、掠ったのかな?」

青ざめたなのはが、メビウスの右頬に手を伸ばす。どうやら、最初の攻撃で軽く切ったようだ。

「そんなに深くないから…大丈夫だよ。」
「で、でもでも、血が出てるよ?」
「唾でも…つけてりゃ大丈夫じゃね…?」
「つ…唾を…め…メビウス君。」
「なに?」
「う…動かないでね?絶対だよ?絶対だよ?」
「えっと…あの?」

後ろで倒れているオメガが疲れきった声を出すのを聞きながら、メビウスとなのはも近くに座る。
オメガの提案を聞いたなのはが、顔を紅くしながら、何故かメビウスの右頬に顔を近づける。
そして、そのまま、右頬の傷口の辺りをペロペロと舐めだした。

「ちょ…なの…ちゃん!?」
「ん…ぺろ…ちゃぷ…れるれる…」
「まさか本気でやるとはなぁ。」
「…ぺろ。…こ…これで大丈夫だよね?」
「…その、ありがとうね。」

どっちも顔を真っ赤にしながら、寄り添う2人。オメガとユーノは若干、置いてきぼりな感じだが、仕方が無いだろう。

「き…貴様らぁぁ…」
「…まだ動けたか…!!」

低い怒りの篭った声が響き渡る。
絨毯爆撃された地面から、再び這い上がってくるシルヴァリアス。
直ぐにエクスを構えて、なのは達を庇う様に立つメビウス。なのはも、背中に若干隠れながらもレイジングハートを構えていた。

「両者とも、そこまでにしてほしいな。」

一触即発の空気が流れるが、それを止める冷静な声。
両者の間に。転移魔方陣が開き、1人の魔道師が立っていた。

「誰だ貴様ぁぁ!!」
「管理局時空航行8番艦アースラ所属、ブレイズ・トリスタン補佐官だ。両者とも、直ちに戦闘行為を中止せよ。
こちらも交戦及び敵対の意思は無い。繰り返す、戦闘行動を中止せよ。そして、こちらに交戦及び敵対の意思は無い。」

シルヴァリアスの怒声を聞き流して、冷静に所属と、自分の名前を明かす魔道師、ブレイズ。
確かに、管理局の制服を身に纏っている。そして、その言葉をあらわすかのように、バリアジャケットすら展開していなかった。

「管理局だって…!!」
「ねぇメビウス君、管理局って…なに?」
「極端に言えば、警察と裁判所がまとまった組織だよ。白い魔道師。」

そう言いながら、メビウスとなのはに視線を向けるブレイズ。そして、そのまま後ろのユーノにも視線を向ける。

「…ユーノ・スクライアだな?」
「え!?あ、はい、そうです。」
「一族の方から捜索願が提出されている。それに、ロストロギア輸送の件に関しても色々と聞きたいので、一緒に来てもらいたい。
もちろん…お前達もね。」
「私達も…?何故…?」
「管理外世界で、これだけ派手に、魔法を使った戦闘行為を行われると、流石に見過ごせないんでね。それに、一緒に居るところを見ると…現地で見つけた協力者だろう?
悪い様には決してしない。少し聞きたいこともある。…来てもらえないか?」
「メビウス君、どうするの…?」

真っ直ぐな瞳でメビウスを見つめるブレイズ。
彼もメビウスがリーダー格と言うのがわかったのだろう。

「…1つ、約束して欲しい。」
「なんだ?」
「絶対になのちゃん達に危害を…加えないでほしい。」
「安心しろ。俺が責任を持って、お前たちの身柄を預かろう。それに、俺の上司は優秀だ。…協力に感謝する。」

少し考えたそぶりを見せたメビウスだが、ブレイズの指示に従うことにした。
笑みを浮かべるブレイズを見て、小さく安堵のため息をついて、バリアジャケットを解除しようとするメビウス達だったが、1人納得しない魔道師が居た。

「ふざけるな…管理局だかなんだか知らないが…そいつらは僕に攻撃してきたんだぞ!!??」
「モニターで見ていたが…先に攻撃したのはそちらではないのか?それも殺傷設定だ。…むしろ、お前は強制的に連れて行くぞ。」
「き…貴様ぁぁぁ!!僕が誰だか知らないのか!!??」
「知らんな。」

ため息をつきながら、怒鳴っているシルヴァリアスの言葉を流すブレイズ。
実は、ゴッデンシュタイナーから、御曹司がいる。とは聞いていたが、写真や画像など、一切提供されていないのだ。
ならば、しらなくても仕方が無い。最も、ブレイズにとって御曹司だろうがなんだろうが関係ないのだ。

「い…良いだろう!!貴様も消えろぉおおおぉ!!」
「…敵対行動をとるなら…自衛させてもらうが、良いのか?」
「平局員如きが、僕を止められると思う…がふぁ!!??」

ブレイズは一瞬で、魔力刃を展開しようとしていたシルヴァリアスを吹き飛ばし気絶させた。そして、そのままチェーンバインドで雁字搦めに縛り上げる。
あまりの早業に、驚きを隠せないメビウス達。だが、それ以上に驚いていたのは、エクスとイジェクトだ。
その視線はブレイズのデバイスに注がれていた。

『あれは…まさか…』
『ヒュ~。久々にすげぇ懐かしい仲間に出会ったな。』

エクスのすら驚きを隠せない声。
闇で染め上げたような漆黒の鎧のようなバリアジャケットを纏い、手にはエクスと同等の大きさのデバイスが握られていた。
その先端から、魔力刃が鎌の様に展開していた。その姿はまるで、悪魔のようだ。
エクスとイジェクトはそのデバイスの名前を知っている。そして、どれ程強力で扱いにくいデバイスなのかも…
静かに、エクスから零れる名前。

『スペシネフ・ラーズグリーズ…』





新型魔法 XLAA 使用者、メビウス・ランスロット
ゲームでのメビウスの必殺のあれ。(笑


あとがき

戦闘描写が苦手すぎて泣きたい気分になる作者です。
あ~…うまくなりたい。とりあえず、フルボッコになってもらいましたゴっさんです。
そして、最後に登場ブレイズ君。そして久々に登場のVRデバイスはスペシネフでした。まぁ…悪魔という事で…
バリアジャケットのイメージはそのまま、ラーズグリーズが着ている鎧ですね。
次回は介入前のアースラ内部の様子でも…


以下返信

ユーロ様
おおぅ、ハイテンションですね。それなのにこんな戦闘描写で申し訳ないです。
PJも出したいのですが…まだ少し先になるかもしれないですね。ジャック・Oは難しいですねぇ。苦笑
下手すると物語が破綻しますから…。けど、ネタとかでもいいなら考えて見ますね。


34様
スーパーメビウスタイムにはなりませんでしたが…終了のお知らせではありました。笑
スカイアイの誕生日…すっかり忘れていた作者…なぜだぁぁぁ!!
彼は絶対に登場させたいキャラですからね。メビウスとスカイアイのセットは最強です…!!



ダンケ様
原作知っていて転生したから選ばれた、と勘違いしてるゴっさんです。
プレシアさんはこちらでも、難病に犯されてますが…それに対する描写をしてませんでしたね。後の話で入れたいと思います。
ランスロット夫婦については…次回辺りにでも分かるようにしようかとは思っています。
NTRはやりませんよ!!??入れ忘れただけですからね!?





[21516] 17話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/12/14 21:31
・閃・

「…よりによってアースラかよ。」
「どうかしましたか、帝博士?」
「いや、なんでもないんですが…。後、博士と敬語は止めてくれません?違和感ありますし、そちらが年上なんですから。」
「そちらが良ければ良いのですが。」

俺のぼやきが聞こえたのか、前を歩く、ブレイズ・トリスタンと名乗った執務官補佐が振り返る。
…まぁ、メビウスが居るんだから、他のシリーズの主人公がいたって可笑しくはないんだよな。
AC5の主人公ブレイズは、作中での僚機システムの関係で、単体での戦闘は無い。だからか、メビウス1に比べると、エース性は薄い、とよく言われてた。
だが、忘れてはいけない。彼は、ルーキーから成長し、悪魔、亡霊、そして英雄と呼ばれるまでに成長したエース。確か、作中でチョッパーに、戦局を変えかねない、とまで言われてた。
そして何より、あのバートレットが、自分のあだ名であった【ブービー】を彼に付けた。そして、秘蔵っ子とまで言っていたんだ。それだけでも、エースとしての素質がよく分かる。
むしろ、ブレイズと言うエースは、仲間と戦うことで真価を発揮するエースだと俺は思っている。まぁ、居ても良いだろ?孤高の英雄じゃなくて、多くの仲間に支えられる英雄だってよ。
まぁ、今はそんなことより、俺は博士と呼ばれるのを止めてもらうことにした。理由?むず痒いし…それに…

「隣のこいつが笑ってますので、出来れば止めて欲しいんですが。」
「では、そちらも俺の事をブレイズと、これで対等な立場と言うことにしま…しよう。」
「了解。…んで、てめぇら、何時まで笑ってんだよ。」
「ぷぷぷ…だって、帝博士だってさ。プゲラ。テラおもしろす。これは笑わずに居られない!!」
『帝博士、キリッ!!プギャー!!』
「おーし、てめぇら、一回虚数空間に叩き落してやろうか?」
「い…良い拳もってるじゃん。世界狙えるよ…。…ごふげふグフザク。」
『あだだだだ!!!砕けるくだけるクダケル!!!ららら…らめえぇええ!!逝っちゃううぅぅう!!!』

隣を歩いている主任の顎にアッパーをお見舞いして、待機状態のレーベンを踏みつける。
主任も最後までネタを入れるなよ…。そしてレーベンは、なんつう悲鳴を出してんだよ。前の歩いてるブレイズがひいてんじゃねぇか!!

「…多少、勘違いしてたかもな。…憧れていたデバイス開発者がこんな人物だったとは。」
「ちょっ、まっ!?いやいや!!待ってくれ!!違うから!俺はこう言うキャラじゃないから!?むしろ、こいつらが駄目なだけだって!!」
「…冗談だ。だが、憧れていたのは事実なんだよ。…改めて、会えて光栄です、帝 閃博士。」

振り向き、笑いながら右手を差し出される。一瞬、戸惑ったが、直ぐに俺も右手を差し出し、軽く握手を交わす。
会ったばかりで、真面目な奴だと思ってたけど…堅実な方なのかもしれないな。しかも、考え方が柔軟のな。



・メンテナンスルーム・


「ここが2人に待機しててもらう部屋になる。機材などは自由に使ってくれてかまわないし、足りないものがあったら言ってくれ。揃えれるのは揃える。」
「ほぉ、流石は管理局。いい設備が揃ってるねぇ。…うんうん、これなら、開発から整備まで出来そうだよ。ふふふふ。」
「…この変態が、いきなり見てまわるなっての。ところで、3世代のモニターしてくれている魔道師の人達は?」
「今、こちらに向かっている。それまで、適当にくつろいでてくれ。」

主任が、機材を見ながら恍惚の笑みを浮かべている。…ちなみに、最近では逆光メガネを習得したらしく、怪しさが格段にアップしてる。
ほらみろ、ブレイズが苦笑を浮かべてんじゃねぇかよ。
機材をハァハァ言いながら、撫で回している主任を横目に、椅子に座って、デスクの上を眺める。
…そう言えば…ブレイズのデバイスってなんだろうな。…まさかVRデバイスか…?
軽く視線を向ける。管理局の制服を着こなしていて、見た目は完璧エリート然としてる。…耳に変わったピアス、いや、イヤリングをつけているな。
そんな、俺の視線に気が付いたのか、ブレイズが笑いながら、右耳のイヤリングに指を伸ばす。

「これが気になるか?」
「ん、まぁな。…ピアスに見えないし、男でイヤリングってのもなぁ、てさ。じっと見て悪い。」
「気にするな、慣れている。これは、俺のデバイスだよ。待機状態はこうなっているからな。」
『お洒落ですねぇ。私なんかこの丸っこいネックレス状態ですよ?まぁ、私が超プリティゴージャスになっても、付けるのがこんな坊やじゃねぇ…』
「…てめぇ、さっきのでこりてねぇのか。」

レーベンを握りつぶそうとした矢先に、扉が軽い音を立てて、開く。そして、3人の女子の魔道師がはいてくる。年齢は…俺と同じくらいか?
…ド派手だな。制服の色、真紅じゃねぇかよ。………待てよ、真紅だと…?真紅で3人だと…?
あるうぇ?俺達が作った3世代の試作デバイスって…マイザー・デルタをイメージしてた気がするんだけど…なぁ。デルタで3人って、俺の知る限り、彼女たちだけなんだけどなぁ…
そんな事を考えてる俺とは裏腹に、綺麗に俺と主任に敬礼する3人。

「始めまして。シルビー・ファング3等空尉よ。」
「デボラ・バイト。準空尉だ。よろしくな。」
「ジェニファー・ポイズン…です。階級は准尉です、よろしくお願いします。」
「あ…あはははははは。帝 閃です。よろしく。」
「…主任です。よろしく。……うぉ、メガネが…」
『…閃!!閃!!大発見ですよ!!』
「なんだよ…?」

ですよねー。薔薇の3姉妹ですよねぇ。当たり前デスヨねぇ。ここまで来ると突っ込む気力も起きないな。
乾いた笑いを浮かべる俺と、メガネがずれ落ちたのを直している主任。
そんな中、興奮気味に俺を呼ぶレーベン。なんか、大発見って言ってるけど…。
…はっ!!こいつ…まさか…!!

『この3人の名前をあわせると、毒へ』
「そおぉおおい!!!!」

刹那、俺の右腕が光った。あの言葉を言おうとしたレーベンを、部屋の隅にあるダストボックスに投げ入れる。
その速度はイチローのレーザービームにも勝るとも劣らない…と思う。突然の奇行に唖然とする3姉妹とブレイズだが、そんな事に構ってられるか。
どんだけ危険なブロックワード言う所だったか…。

「…閃君。ちなみに、レーベンはなんて言おうとしたんだい?」
「決まってんだろう、毒蛇3姉妹って言おうと…」

……空気が固まった。ついでも俺も固まった。
言っちまった…俺が言っちまった。主任の古典的な方法に引っかかった。

『ふはははは!!自分で言ってれば世話ないですねぇぇぇ!!!ざまぁぁぁ!!!ばーかばーか!!』
「やーいやーい、引っかかってやんの!!だっせー!!」
「……てめえらぁ…いい加減にしろこらぁぁああぁぁ!!!!」

空気をごまかすように、主任にハイキックをぶちかまし、レーベンと同じくダストボックスに叩き込む。そして、ボックスを大型のダストシュートに投げ入れる。

「…ゴミの分別はしっかりとしてほしいのだが。」
「知るかぁ!!」



5分後

「…先程のことは、心の底よりお詫びします。だから、許してください、お願いします。」
「本当なら、許さないところですが、私達のデバイスの開発者であり、整備もしてくれる帝さんの言葉です。今回は許しますわ。」
「まっ、主任って奴もお前がふっ飛ばしたからな。それでチャラにしてやるよ。だから、とりあえず土下座は止めろって…」
「あははは…この際、プライドは抜きだ!!許してもらえればそれで充分だ…」

土下座に近い形で、3姉妹の長女と次女に懇願する俺。

「ザルトホック乙。」
「主任…てめぇ、生きてたのか…。そして何回も言うが…メタ発言をすんじぇねぇよ…。誰の責任だとおもってんだこら。」
「あらあらぁ。2人とも落ち着いてください。紅茶を用意しましたから、飲んでください。」

ゴミが全身に付着したまま、俺の肩をポンと叩く主任。しかも、さり気なく入れた俺のネタに反応してんじゃねぇし…
こめかみに青筋が浮かびそうになる俺の前に差し出される紅茶。
視線を向ければ、ジェニファーが笑顔でティーセットを用意していた。なくとなくだが、リリンと同じような人種の気が…する。マイペースでお嬢様的な意味で。

「あ、どうも。」
「いえいえ、お姉さま方も如何ですか?」
「そう…ね。頂こうかしら。」
「やりぃ!ジェニファーの紅茶はうまいんだよなぁ。」

手頃なデスクをテーブル代わりにして、何故か始まったお茶会。
飲んでおきながら言うのもなんだが…良いのかこれで?一応、勤務中なんだろうに。
それにブレイズも居るんだが…、と視線を移せば、小型端末で通信を取っているが、その表情は、厳しい。

「すまない。緊急の事態が起きた。3人はここで待機、デバイスの調整を受けてくれ。」
「私達は良いの?」
「今回は俺1人でも大丈夫だろう。閃に主任もここにいてくれ。3人は護衛も兼ねているのだから。艦内とはいえ、よろしく頼む。」
「「「了解」」」

それだけ言うと、俺達に軽く敬礼して早足でメンテナンスルームを出て行くブレイズ。
俺と主任に合図をすると、主任も分かっている、と言った視線を返してきた。恐らくだが…なのは達が見つかったんだろう。
さて…どうやって、介入するか…





・ブレイズ・

「先ほどの言葉どおり、自衛を取らせてもらった。…聞こえてないと思うが、自業自得だからな。…俺だ、こいつを艦内で拘束しておいてくれ。後で色々と聞きたい。」

仮面の妙な魔道師をバインドで拘束し、アースラへと強制転移させる。まったく、派手に暴れてくれたものだ。
廃墟とは言え、ビルを1つ崩壊させるとは…。まぁ、それを言ったら、彼らもなのだが…協力的だから何も言わんが…


『マイロード。この程度でよろしいのですか?』
「戦闘不能にさせれば充分だろう。」
『はっ。愚かな魔道師もいたものですね。マイロードに喧嘩を売るなどと。』
「そういってやるな。処で、久しぶりでじゃ無いのか?兄弟に会えたのは。」
『…エクスとイジェクト…か。再開を喜ぶほどの仲でもありません。所詮、私は異端で罪ですので。』
「…俺のデバイスの内は、罪と言うのは禁止としていた筈だが?」
『失言でした、マイロード。』

自嘲するラーズグリーズに声をかけ、俺は蒼い魔道師、メビウスと言ったか…。そちらの方向に振り向く。
案の定、驚いた表情をしているのを見て、小さく喉で「くっ」と笑いながら、バリアジャケットを解除する。
展開したのは自衛の為であり、彼らに危害を加える気も無い。交渉の場に銃や剣を持っていく馬鹿も居ないからな。

「驚かせてすまないな。では、行こうか。」
「行くって…何処に?」
「時空航行艦アースラへ、だ。転移魔方陣を使用するから、動くなよ。エイミィ、よろしく頼む。」

端末で通信を居れ、魔法陣の展開を要請する。
そのまま、一瞬でアースラ艦内へと転移していく。転移魔法は初めてなのか、メビウスと白い魔道師、ナノハ…と言っていたか。驚いているな。
そして、艦内の通路を俺が先導するように進んでいく。

「えっと、ブレイズさん。私達はどうすれば?」
「まぁ、付いてきてくれ。とりあえずは最高責任者と会ってもらう。」

困惑気味のメビウス達だが、納得してくれたのか、大人しく付いてきてくれるが…

「ユーノ・スクライア。変身を解除したらどうなんだ?」
「え、あぁ、そういえば…気が付きませんでした。解除しますね。」
「んぉ?お前って、なのはの使い魔とかじゃなかったのか?」
「オメガ君は、知らなかったんだ。うんと、私が最初に助けたんだけど、怪我や魔力の消費が激しくて、フェレットの状態になって回復していたの。」
「…お前、イタチじゃなかったのか…」
「ち、違うよ!?僕は人間!!しかも、フェレットだし!!」
「けど、私もメビウス君に言われるまで気が付かなかったよ…?」
「はっはー!!やっぱり、お前はイタチだぜ!!なのはもイタチって勘違いしてたみたいだぜ!!」
「そ…そこじゃないもん!!人間ってところだもん!!」
「さ…3人とも、ブレイズさんが笑ってるって…」

まったく、愉快な4人組だな。ユーノがナノハの肩から降りて、身体が光に包まれていく。
それが収まると、恐らくメビウス達と同年代と思われる少年が佇んでいた。
確かに、捜索願の出されていたユーノ・スクライアと同じだな。

「おおう…。…女子?」
「男だよ!?どうしてここで間違えるのかな!?温泉の時だって男子部屋にいたでしょ!?」
「そういやぁ、そうだったな!!」
「あはは…。すいません、ブレイズさん、騒がしくて…」
「いや、構わないよ。下手に緊張しすぎているよりは、ずっと良い。」

困惑気味のメビウスと小さく笑う俺。まったく、会ったばかりだが退屈はしないな。
さっきから俺は笑いっぱなしだよ。3人の口論と、1人のそれを止めようとする声を聞きながら、俺は先導していく。付いてきてくれる辺り、立場を弁えていると思いたいな。

艦長室

「「「…………」」」
「…お前ら、表情を出しすぎだ。」

まぁ、仕方の無いことではあるな。俺が案内し、入室した艦長室は、俺から言っても…異質だ。
最先端技術を駆使した部屋なのだが…如何せん、盆栽やら茶室もどきやら…ミスマッチの物だらけだ。
日本育ちである彼らが、困惑するのも無理はないだろうな。
部屋の中央では、リンディ提督とクロノが正座して待っていた。一瞬、クロノから「どうにかしろ」的な視線が飛んできたが、軽く無視しておく。俺とて限界がある。

「あちらが、アースラ艦長のリンディ・ハラオウン提督。そして、その正面に居るのがクロノ・ハラオウン執務官だ。
艦長、こちらが先ほどの魔道師たちです。」
「えぇ。ブレイズ君、ご苦労様。先ほど紹介されたけど、リンディよ。」
「クロノ・ハラオウンだ。ブレイズの上司になる。よろしく。」
「さぁ、こっちにいらっしゃい、立ち話もなんだから、座って。お茶と和菓子もあるのよ。」
「色々と聞きたいといっただろう?メビウス、座ってくれるか?」
「あ、分かりました。」

嬉々とした表情で、お茶と和菓子を4人に勧めるリンディ艦長なのだが、4人は4人で困惑気味だ。
まぁ、仕方が無いとは思うのだが…、とりあえずは、リーダー格であろうメビウスを、座らせる。
その隣にナノハが座り、ユーノとオメガが並んで座る。
俺はクロノの隣に座りながら、リンディ艦長の話を聞いていく4人を眺める。

「貴方達が集めていたジュエルシードはロストロギアと言って、発達しすぎた科学や技術で滅びた世界の遺産。
そして、取り残された危険な遺産のことを、ロストロギアと呼んでいるわ。」
「使用方法などはまったくの不明だが、使い方次第で世界だけでなく、次元すら滅ぼせるほどの危険な遺産だ。」

艦長の言葉に続くクロノの声。メビウスやユーノは理解をしていた、表情を硬くしているが、オメガやナノハは今一、付いて来れて居ないようだな。
まぁ、ナノハは現地で見つけた魔道師のようだし、オメガは、失礼な言い方が馬鹿…なんだろうか?
なんにせよ、ジュエルシードは、ロストロギアの中でもトップクラスで危険なものだと言うことは理解してもらえたようだ。

「なら…なんでフェイトちゃんは…」
「なのちゃん!!」
「え…あ…」
「今、なんて言った?」

無意識になのか、ナノハの口からこぼれた言葉。咄嗟に止めたメビウスだが、それを聞き逃す俺ではない。

「…お前達と仮面の魔道師以外にも、集めている魔道師が居るのか?答えてもらおうか?」
「えっと…それは…」
「クロノ、落ち着け。脅迫みたいになってるぞ?」
「…これは次元世界に関わる重大なことだ。それを分からないお前じゃないだろ?」
「2人とも、静かにしなさい。」

艦長の制止の声を聞き、口を閉じる俺達。クロノは真面目すぎだと思うが、仕方が無いか。それがこいつの美点でもある。

≪彼らは俺達より年下なんだ。怖がらせるなって。≫
≪……気をつけるよ。≫

「正直に、全部話してくれるかしら?もし、手助けできるなら、したいのよ。」
「…わかり…ました。」

メビウスが代表してか、もう1人の魔道師、フェイトの事を話し始める。
内容は何か理由があってジュエルシードを集めている、と言ったことだが…、厄介だな。下手すると…犯罪者として捕縛しなければいけないか。

「なるほど。…貴方達は彼女を助けたいのね?」
「助けると言うか…理由を知りたいんです。それに、きっと話せば分かってもらえるはずだから。」
「…だが、下手すると犯罪者として、扱われるぞ?それを君達は理解しているのか?」
「それは…」
「…そう言えば、貴方たちの名前を聞いてなかったわね。」

重苦しい空気が漂ってくる。恐らく、メビウスはひかないだろうな。言葉の端からフェイトとやらを気遣う様子が見て取れる。
さて、どうしたものか…
その空気を察してか、艦長が笑顔を浮かべ、3人の名前を問いかける。
確かに、俺も曖昧だな。

「えっと、高町なのはです。」
「俺はオメガ・ガウェインだぜ!!よろしく!!」
「メビウス…メビウス・ランスロットです。」
「…なん…だと…!?」
「?」

クロノが驚いたように眼を見開くが…俺も同じような表情をしているだろう。
あのリンディ艦長ですら、驚いている。
ランスロットとガウェイン。この名をミッドチルダ全域で…知らぬ者は居ないはずだ。

「…もし、良ければ…私達に協力してくれないかしら?」
「艦長!?」
「これは民間人が立ち入るべき状況ではないと思いますが…?」
「2人は、静かにしてなさい。どう?メビウスさん。」
「協力…ですか?」
「えぇ。もし、貴方達が私達に協力してくれるのなら、彼女、フェイトさんの事はできる限り、良い方向に話をするわ。
…どうかしら?悪い条件ではないでしょう?」

…艦長の顔が…黒くなっている。何か企んでいる時の表情だ。
即答できない4人に気が付いたのか、艦長は柔らかな笑みを浮かべ、「今晩、ゆっくり考えて返事をして」と言って、別の局員を呼び退室させる。
部屋に残っているのは、俺とクロノ。それに艦長の3人だ。

「…母さん!!一体、どういうつもりだ!?」
「何が?」
「何故、民間人である彼らの協力を求めたんだ!僕達と薔薇の3姉妹でもこなせる筈だ!」
「俺もクロノと同意見です。その為に、3姉妹を借りてきたんですよ?」
「………」

俺達の質問に答える気は無いのか、静かにお茶を飲む艦長。…ちなみに、今日の砂糖の摂取量はこれで終わったな。
…そんな事を考える場合ではないか。…協力を仰いだ理由は、俺とクロノは察しがついているが、聞かずには居られない。

「…彼らが、メビウスが伝説と鬼神の、オメガが無敵の…子供だからですか?」
「…えぇ。そうよ。」

かつて、ベルカ戦争終結に導いた最強の傭兵達が居る。かの名だたるベルカの騎士達でさえ、彼らによって墜とされていた。
ミッドチルダ最大の英雄達。伝説、スカーフェイス・ランスロット、円卓の鬼神、サイファー・ランスロット、無敵、チャーリー・ガウェイン。
今尚、色あせることのない英雄だ。その息子達が、こんな所に居るとはな…

「理由を…お聞きしても?」
「…今の管理局は人員不足よ。それこそ、組織自体が悲鳴をあげているわ。それをなんとかするには…【ヒーロー】が必要なのよ。
多くの人の心をつかみ、管理局に憧れるを持たせる為にはね。」
「伝説と鬼神の息子なら…確かに最高の【ヒーロー】となるだろうが…。」
「それに、素敵じゃない?女の子の為に、一生懸命に身体を張って戦う男の子の姿。それだけでも充分な効果よ。」

この人は…とことん策士だな…何処まで読んでいるのか、時々、底が知れない。

「さぁ、2人は捕縛した魔道師の取調べにいってちょうだい。これから忙しくなるわよ。」
「了解しました。ほら、クロノ、いくぞ。」
「…あぁ。」

未だに納得できない様子のクロノを引っ張りながら、俺は退室する。さて、これからどうなることやら…





クロノ達が退室した後に、リンディは徐に通信端末を起動させる。
暗かった画面に光が宿り、1人の人物が映し出された。
そこに映し出されたのは、人を引き付けるような笑顔をした男性。
ハラオウン親子の友人でもある。

「おや、久しぶりだね。リンディ、元気そうで何よりだ。一体どうしたんだい?」

局員達だけでなく、ミッドチルダの市民達からも絶大な人気と支持を持つ提督。
その名は…

「お久しぶりです。ハーリング提督。」

…ビンセント・ハーリング。






あとがき

久々の更新でありながら、物凄くgdgdな内容になってしまいました。
いやはや…これからどうなることやら…
ネタ満載の転生者2人組、今日も彼らは何処へ行く。そしてヒーロー求める管理局。
最後の最後で出た大統領。うん、この人いたら、管理局、物凄く変わると思うんですよ。作者の実力が伴うかは不明ですが…


以下返信


ユーロ様

ユーロファイター…おぉ!!なるほど。気が付きませんでした。(失礼。
LRは面白いのですが…ラスジナさんが超強いデスヨネェ。勝率がかなり低い作者です。
ラプターは良いですよネェ。けど、作者はフランカー系統も大好物。…知人曰く「戦闘機は戦う芸術品」だとか。うん、心から賛成できます!!



天船様

おおう…まさかそんなキャラが居たとは…後で調べさせていただきます!!
…多分、ツカワナイトオモイマスヨ?


B=s様

時間系列とか場所とか色々とゴチャゴチャしてますからね。流石に、そう思うのも無理は無いですよね。
それでも、見てもらえるのなら、とても嬉しく思います。


ダンケ様

ナイスキル。言わせたいですねぇ。決め台詞でもいいかも?(笑
装甲の堅いメビウス。確かに違和感ありましたね、これから、そんな事の無い様にしていきます。
スペシネフの性能は…ブレイズ君の一応、主人公クラスですから、チート性能を居れて行こうかとは思っています。











蛇足&おまけ&介入前の様子見。

「プライマルア」
「サンダガ!!」
「ぎょぁあぁあ!!??」
「凄いな。あいつのPAを貫通したぞ。」
「恐ろしいくらいの潜在魔力だね。時の闇が狙うのも無理はないよ。」
「助け出せてよかったな。完全に取り込まれていたらどうなっていたか…」
「…ん~…」
「…どうしたんだ?」
「え?あぁ。どうにもおかしな世界の乱れがあってねぇ…。」
「ほぉ、調査に向かったほうが良いのか?」
「いや、まだはっきりと分かったわけじゃないから、様子見かな?とりあえず、覚悟はしておいてね。」
「了解だ。」





[21516] 18話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/02 18:11
・メビウス・

ランスロット宅 円卓…ではなく、食卓。

「メビウスちゃん、どうしたの?」
「え…?」
「さっきから少しも食べてないな。…今日は俺が作った料理だぞ?失敗はしてないはずだが…」
「…どうせ私の料理の腕は、フェイスには及びませんよ~だ!」
「まったく…子供じゃないんだから、いじけるな。まぁ、幾度ととなく、俺の胃を壊滅にまで追い詰めたお前にしては、上達したと思うがな。それでメビウス、何か悩み事か?」
「あ!!さては、なのはちゃんと喧嘩したわね!?駄目よ?女の子には優しく優しく、愛してあげなくちゃ!!」
「最後のは、関係ないだろう、最後のは。サイファーも茶化すな。…それで?どうしたんだ?」

心配そうに私を見つめる父さん。確かに、食事の手が止まってたかな。
…母さんも、ふざけてるようで、私の事を心配してくれている。
悩み事…か。今日だけでも、沢山のことがあった。仮面の魔道師との戦闘、管理局の介入、そして、協力要請。
私達が協力するなら、フェイトちゃんの罪は軽くなる…かもしれない。それなら、喜んで私は協力をする。
友達である彼女を…見捨てることなんて出来ないから。けど、それでも気になる。
私が…いや、私とオメガが名乗った時の、3人の反応。…正確には苗字のところだったと思う。
…父さんや母さんが・・・関係していること…?…全部、打ち明けてしまえば…楽になれるのにね。

「メビウスちゃん。」
「…なに?」
「私たちはね、家族なのよ?…もし、何か悩んでるのなら、教えてくれない?」
「1人で悩むより、3人で悩んだ方が解決するかも知れんぞ?」
「そうそう!!3人集まればもんじゃの知恵って言うのよ!!お母さん、物知りでしょ!!」
「…文殊だ。もんじゃは食べ物だろう。」
「冷えたビールともんじゃ焼きはピッタリなのよねぇ。…明日の朝ごはんは、もんじゃにしましょう!!私、ビールは飲めないけど!!」
「サイファー、そろそろ、俺は怒っても良いか?と言うか、怒るぞ?第一、朝からもんじゃ焼きなんか食べれるか」
「はは…父さん、そこなんだね…。でも、そうだよね、家族…なんだよね。」

私は、全部を話すことにした。フェイトちゃんのことも、管理局のことも、そして、名乗ったときの反応のことも…
少しずつだけど、父さん達の表情が変わっていく。父さんは真面目な表情に、母さんは困ったように微笑んでいる。
全部、話し終えると、父さんは静かに私の頭を撫でてくれた。…大きくて包み込んでくれるような…暖かい手だね。

「そうか。…メビウスは、その女の子を助けたいんだな?」
「うん…。絶対に助けたい。」
「そうね、女の子を見捨てるなんて、男の子の風上にも置けないからね。かっこいいぞ!メビウスちゃん!!」
「メビウスのやりたいように、したいようにすれば良い。俺達は、絶対にお前の味方だ。そして、どんな事があろうとも、守る。だから…後悔だけはしないようにしろ。」
「…ありがとう…母さん、父さん。」
「しかし、ランスロットって所で驚いてた…か。」
「もぅ、フェイスが目立ちすぎてたから、有名になっちゃってたじゃないの。」
「…よく言うな。お互い様だろう。」

苦笑しながら、頬をかく父さんと、むくれている母さん。
…目立ちすぎてたとか、有名とか…やっぱり、父さん達は過去に何かしてたのかな…?

「…気になるようだな。サイファー、話しても良いだろう。」
「そうね、メビウスちゃんも理解できる年頃の筈だものね。私達の馴れ初めを教えるのも良いわね♪」
「…馴れ初めでもあるが、俺達の過去の話だろ…」

キョトンとした表情の私に気が付いたのか、父さんが、少し顔を紅くしながら、咳払いをする。
それが、面白いのか、母さんは父さんの頬をツンツンと突っついて「照れちゃって」と言いながら笑っていた。

「…それでは、話そうか。俺達の過去を。」
「うん…。」
「メビウスちゃん。ベルカって…知ってる?」
「ベルカ…?ミッドの地名で、ベルカ自治領…だったよね?」

古代ベルカが存在した世界が滅びた時に、移民してきた人達が、治めている所…だったかな?
実は私は、ミッドの事をあまり知らない。正直に言うと、行こうとも思わなかったからね。

「そのとおり。だがな、今のベルカと俺達の知る【ベルカ】は違う。今では自治領となっているが、かつては違った。」
「…9年前までは、【ベルカ公国】と言う1つの国だったのよ。強大な軍事力と、魔道技術を誇っていたのよ。」
「かつて、世界を巻き込んだ戦争があった。ベルカ戦争。サイファーも言ったが当時のベルカは、軍事力、魔道技術両方においてに強大な力を持っていた。
それを使い、領土の拡大を推し進めていった。当然管理局は危険視し、両者の関係は悪かった。」
「けどね、当時のベルカは、無理な領地拡大が原因で、財政難に荒れていてたの。
だから、一部の領地を有力貴族達に自治運営させることにしたのよ。それで、財政難を乗り越えようとしたけど、無理だったのよ。
それだけ当時のベルカは逼迫していたのね。そして、ミッドや管理局が、その有力貴族たちを取り込んで、権限と領地を拡大して言ったの。…それで、お互いの関係は最悪。」
「その際に、極右政党が政権を獲得した。…強く正統なベルカを取り戻すためにな。…そして、ミッド派有力貴族【ウスティオ家】の領地から、膨大な魔道資源が発見された。
それを機に、ベルカはミッド等に侵攻を開始。ベルカ戦争の始まりだ。」

そこまで言うと、父さんはコップの飲み物を飲んで、喉を潤した。
私はと言う…一言で言えば…唖然としている。
だって…そんな大事件…いや、戦争があったこと自体、私は知らなかった。

「準備不足の管理局とミッドは、伝統のベルカ空戦隊の前に次々と敗走していった。…ベルカの騎士と言えば、管理局員たちの恐怖の的だったからな。
殆どの管理局員たちは、相手にならなかったな。」
「結局、ウスティオ家の領地は瞬く間に占領されて、一部の辺境地域以外は完全に支配下にされてしまったの。たったの1週間でね。」
「1週間で!?…そんなに凄かったんだ…」

ベルカ空戦隊…、どれだけ凄かったんだろう…?
たった1週間で、領地の大半を占領するなんて、それこそ、エース級が多数居ないと出来ることじゃない。

「そして、ウスティオ家は、辺境地のヴァレーに傭兵部隊を組織。ミッド及び管理局との合同反攻に託すことした。」
「そこで、フェイスと私が出会ったのよ~。…今でも覚えているわ、雪の中に佇むフェイスの姿…。あぁ…」

母さんが頬を両手で包みながら、クネクネとし始める。…時々、こうして妄想状態に入るから、困るなぁ。
けど、傭兵部隊なら…まさか、2人は…?

「もしかして…父さん達も傭兵だったの…?」
「あぁ、俺も傭兵として参加していた。ちなみに、オメガの父親のチャーリーもな。」
「スカーフェイス1とチャーリー11と言ったら、凄腕の傭兵として有名だったのよ~。」

…そうだったんだ。けど、納得できるかもしれない。
父さんって、なんていうか…凄く傭兵といった感じの雰囲気がある気がする。
士郎さんとの組み手でも、対等以上に戦っているから、納得できる。

「あれ?それなら、母さんは…?」
「むふふぅ~。私もね、傭兵だったのよ!!まだまだ、駆け出しだったけど!!」
「駆け出し所か、初陣だっただろうが…、俺やチャーリー、そして、あいつがどれだけ苦労したか…」
「あいつ…?」
「……いや、なんでもない。話が反れたな。聞きたいこととかあるか?」
「…なんで、ベルカは負けちゃったの…?」
「俺達や管理局の猛攻の前に、ベルカの騎士達も、少しずつだが墜ちていったのもあるが、最大の原因は…」
「ベルカはね…自国領内で…魔核弾頭を使用したのよ。進撃する連合軍を…食い止めるために。」
「魔核…弾頭…?」

聞きなれない単語に私は首をひねる。けど、父さん達は、険しい表情をしながら、何かを思い出すようにしていた。

「…至極簡単に言えば…魔力を用いた核弾頭だ。…結果、ベルカの街7つが…蒸発した。」
「蒸発…!!??そんな…ロストロギアじゃないか!!」
「そうよ。ロストロギア級に危険な物を、ベルカは作り上げることができたの。」
「…それだけでなく…他にもある物を作り上げても居た。」
「ある…物…?」
「…時空因果律制御機構、タングラム。…運命さえ書き換える装置だ。」
「そんな物まで…狂気の沙汰じゃないか…」
「あぁ。…結局、ベルカは自身の作り上げた狂気で潰れていった。敗戦後、自治領として残ってはいるが…な。」

そこまで話すと父さんは、母さんが入れたコーヒーを口に含む。
…魔核弾頭に…時空因果律制御機構。そんな物を作り上げてしまう、ベルカ公国。…それだけで、どれだけの技術を持っていたのか分かる…

「…その戦争で、父さん達が、活躍したから…管理局は私に反応したんだね…?」
「その通りだろうな。…どうする?もしかすると、管理局は、お前を何か利用する気かもしれないぞ?」
「……」

はは…そう言うことだったんだ…。父さん達の名前を、私を何かに使う気だったんだね。
けど、それでも良い。私は…フェイトちゃんを助けたい…

「それでも…私はフェイトちゃんを助けるんだ。私に出来るなら…私にしか出来ないのなら…」
「…決意は固いようだな。なら、約束しろ。」
「約束…?」
「最強になるな、最高を目指せ。最強は誰でもなれる、簡単になれる。
だが、最高は簡単になれるものじゃない。それでも最高を目指せ。最も強いと、最も高いは異なるものだ。
平和を目指すなら、平和のために血を流す覚悟をしろ、自分のだけじゃない、他人の血を流す覚悟もしろ。
平和の名の元に何万ガロンの血が流れていることを忘れるな。どんな正義をかざしても流れ出る血を止めることは出来ない。血で血は止められないんだ。
それでもお前は飛び続けろ。答えにたどり着くまで…覚悟し、背負い続けろ。誰かの為に泣け、その涙の数だけお前の心は強くなる。
希望を持て、理想を持て、だが現実を見つめろ。逃げるな、立ち向かえ。真実を見極めろ、偽りなどに騙されるな。」

真剣な表情で話す父さん。…血は血で止められない…か。
それでも、前に進む覚悟がなければ…護る事なんて出来ないんだ。真実を見極めて…戦えって…事だよね?

「ふふ。フェイス、回りくどいわよ。たった一言でいいじゃないの。」
「…それはサイファー、お前がいってやれ。」
「そうねぇ。厳しいことを言うのは父親の役割だものね。それじゃ、私が言っちゃうわね。メビウスちゃん!!」
「は…はい!!」
「頑張りなさい!!!ちなみに、家族が増えても大丈夫だからね!!むしろ大歓迎よ!!」
「え…あ、うん…?」

笑顔で親指を立てる母さんと苦笑する父さん。
一瞬、呆気にとられるけど、私も直ぐに笑顔になる。
頑張りなさい、か。母さんらしくて、凄く…凄く頑張れそうな気がするね。
私の覚悟は決まった。…大丈夫、大丈夫。まだ…飛べる…!!




深夜、ランスロット家リビング

「…管理局も出てきたか。」
「そうね。…きっと、あの子なら大丈夫よ。」
「そうだな。…念の為に、連絡を入れておくか。あの人にも苦労をかけるな。」
「ふふ。良いじゃないの。親友同士なんだから。…大丈夫よ。運命は切り開くもの。彼女が…良く言っていたわ。」

笑いながら、窓から満月を眺めるサイファー。いや、満月というより…何か懐かしむ表情を…していた。







あとがき

今回も短めです。そして、会話部分多!!
戦争部分はこじ付けも、良いところですね。
ベルカの科学力は世界1ぃいぃぃいい!!!!!


以下返信



ユーロ様

軍曹…確かに、磔にされてたのに、戦闘終了後に余裕で脱出してましたよね。
きっと、エネルギーを吸収されていたと思えば…!!
X2…スレイマニの変態機動にブチ切れそうになってた事がありますね。笑
デスモード…作者はないですが…友人がありますね。
友人、自分の彼女を騙しデスモード起動させる→友人調子に乗る→彼女、覚醒&種割れ→友人、ゲーム&リアルで撃破される。
まぁ、お互い、HPが少ない状況だったんですがね。苦笑


ダンケ様

3姉妹はそろそろ動き始めますね。…あぁ、戦闘描写が不安すぎる。
確かに、極端に言えばプロパガンダですね。リンディさん黒モード搭載してるかもしれないです。
ハーリングさんは…某紳士提督の代わりになっているかもしれないです。笑


ADFX-01G-2様

とりあえず、その大統領来たら、色々な意味で終わります。笑
敵の方々に合掌するしかなくなりますよ。
まだまだ出したい人物は居ますので…頑張ります…!!



[21516] 19話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/09 22:05
管理局 本局

本局の廊下を歩く1人の男性。軍帽を被り、猛禽を思わせる鋭い眼をしている。だが、他者を威嚇するだけでなく、優しさも併せ持つ不思議な眼をしていた。
制服の袖には魔術師のエンブレムが刺繍されていた。
通路を歩き、目的の部屋につくと、一呼吸置いて扉を開ける。

「失礼します。」
「ん?あぁ、もうそんな時間か。すまないね。」
「いえ、時間を作っていただきありがとうございます、ハーリング提督。」

軍帽を取り、見事な敬礼を返す男性と、机の向こうでも、ハーリングは敬礼を返す。
男性の名前はヴィクトル・ヴォイチェク。管理局時空航行艦【ケストレル】、それに所属する航空部隊【シュトリゴン隊】の隊長を務めている。
ヴォイチェクや、彼の部下達は9年前のベルカ戦争を戦い抜いてきた猛者たちであり、航空隊としての実力はトップエースだ。
彼の所属するケストレルも歴戦の艦であり、名将と呼ばれる艦長が指揮している。

「お忙しいところすいません。少しお話がありまして…」
「ふむ。なんだね?あぁ、ソファーに座りたまえ、立ち話もなんだろう。」
「いえ、大丈夫です。…実は先日、私の古い友人から連絡がありました。」
「ほぉ、彼からかね?」
「えぇ、どうやら、リンディが何かを企んでいるとか…。ご存知ですか?」

姿勢を崩さないが、ヴォイチェクは苦笑しながらハーリングを見つめる。
ハーリングも椅子に深く腰掛けながら、やれやれ、といった調子で首を振っていた。

「ランスロットという名前が出てきたところで察しはついてたよ。実はね、彼女の担当する事件で…。その前に長くなるから、座りたまえ。」
「では、お言葉に甘えましょう。」

今度は断らなかったヴォイチェクに満足し、ソファーに座った彼の対面に移動しながら、数枚の資料を渡すハーリング。
事の顛末を教えながら、呼び出した秘書官が入れてくれたコーヒーを口に含んだ。

「プロパガンダ…ですか。彼女の考えそうなことですな。」
「未だに伝説、鬼神、無敵の知名度は衰えていない。その息子達を担ぎ上げれば、管理局の信頼も高くなるだろう。だが…」
「提督は反対…なのですね?」
「うむ。彼らはまだ9歳なのだ。そのような重荷を背負わせたくは無い。リンディが私、ひいては管理局の為に考えてくれるのは分かる。だが、若すぎる。」

英雄の息子を担ぎ上げれば、管理局、そして見つけたリンディや、採用したハーリングの株も上がるだろう。
だが、9歳という若さ、いや、幼さで危険な管理局の仕事を押し付けるのは、大人としての良識ではどうなのだろうか。

「スカーフェイスからも聞きましたが、フェイト・テスタロッサと言う少女を助ける為に、彼の息子、メビウスは協力するようですが…。
もしや、プレシア・テスタロッサが関係してるのかもしれませんな。」
「テスタロッサ…か。彼女は優秀な技術者であり、魔道師だったからね。関係ないとは言いきれないな。」
「ジュエルシードを使い、何かを企てていると?」
「なんとも言えんよ。だが確かに、この事件の解決に貢献したとして、メビウス君達を大々的に表彰すれば、知名度も跳ね上がるだろう。」
「…どうするおつもりですか?スカーフェイスは、出来れば、そっとしておいて欲しいようでしたが…」
「…リンディには悪いが、今回ばかりは昔の好で彼らの側に立とうか。なに、話せばわかってくれるさ。
なにより、まだ未来ある少女を犯罪者として、過酷な人生を歩ませたくは無い。私の方からも手を回して置こう。もしかするとヴィクトル、君の力を借りるかもしれないから、
その時はよろしく頼むよ。」
「はい、お任せください。」
「ははは。頼りになる友をもてて、私は幸せだな。」

優しげに笑うハーリングを見ながらヴォイチェクは思う。
誰よりも優しく、誰よりも暖かく、懐の大きな人物だ。この人こそ…管理局のトップに立つべき人間だろう。なにより、我々の事を友と呼んでくれる。
忠誠を誓うのに値するほどの人物だ。

その後、ハーリングと軽く雑談を交わし、部屋を出て行くヴォイチェク。今日は珍しく訓練もなく、手持ち無沙汰になってしまっていた。

「お、隊長じゃないですか。お疲れ様です。」
「ん?あぁ、ジンか。ご苦労、今日はどうしたんだ?」

エントランスに行くと、制服にシュトリゴン隊のエンブレムをつけた男性が、自販機で飲み物を買っていた。
ジン・ナガセ。シュトリゴン隊の副隊長を務める男性であり、ヴォイチェクの右腕でもある。

「いや、隊長は今日、オフでしょう?よければ、家で食事なんてどうかな…と思いましてね。部隊の連中も誘ってんですよ。」
「ふ…大方、娘の自慢でもしたいんだろう?」
「はは、ばれちゃいましたか。いいじゃないですか、ケイだって、隊長に懐いてんですよ。」

カラカラと笑うジンと軍帽を深く被り、口元に笑みを浮かべるヴォイチェク。
それなりに、年齢の差はあるが、良き友人、上司と部下として関係を築いていた。

「実は、グランガイツ隊長にナカジマ夫婦も誘ってるんですよ。ケイもあいつらの娘達とは、仲が良いですから。」
「まったく…私が行くことは既に決定してたのか?」
「部隊の連中に隊長も連れてくる!!って大見得きっちまってんですよ。さぁ、行きましょう!!」





アースラ、情報管理室

・ブレイズ・

「……」


カタカタとキーボードを打つ音だけ、室内に響き渡る。
現在、作成しているのは事件の報告書の一部。未解決だから、事の始まり程度しか作れていない。
最も、これはカモフラージュであり、本当の目的は違う。報告書なら自室でも作成できる。

「…突然、地球に行くと言い出し、学園を退学。行動原理がさっぱりわからんな…」

まさか、仮面の魔道師がシルヴァリアス・ゴッデンシュタイナーだったとは…。
厄介な事になると思ったが、なぜか奴は「不問にする代わりに、協力させろ。」と言ってきた。
ますます意味が分からん…。何が狙いだ…?
開口一番に、高町 なのはが協力するのか?と聞いてきたが…彼女が何か関係しているのか…?
先ほど、彼女達は協力する意思を表明、今頃はリンディ艦長から規則等の話を受けているところだろう。
俺は、1つのデータを画面に表示させる。
自己申告のデータと、こちらで計らせてもらった簡単な魔法系統のデータだ。

「高町なのは、性別、女、年齢9歳。…3人兄妹の末っ子で、私立聖祥大学付属小学校に在学。なお、魔力はAAAクラスに匹敵…か。
…魔法要素以外は、ごく普通の小学3年生にしか思えんデータだな。」

シルヴァリアスとの接点は、同じクラスと言うだけか…。なんなんだ…?
彼女の魔法要素が狙いなのか…?

「メビウス・ランスロット、性別、男、年齢は9歳。…学校及びクラスはなのは等と同じ…か。
気になるのは…魔力の量だな…。」

多すぎて、測定不可能なら、まだ分かる。仮にも伝説の息子だ、それだけの魔力を持っていても不思議ではない。
だが、彼は違う…。魔力の量が…一定ではなかった。計測中も絶えず上下を繰り返していた。故に計測不能。
大雑把に見れば、Sクラスなのだろうが…。

「何かしらのスキル持ち…か?」

徹底的に精密検査を行えば、わかるだろうが…。時間もない。後で簡単なメディカルチェックも行うが…どうなることやら。
そして何故か知らんが、現場指揮権限が俺に回ってきている。本来はクロノの権限のはずなのだが…
あいつ、押し付けたな…

「部隊戦術…本格的に勉強しはじめるかな。」

背伸びをした後、俺はまたパソコンのキーボードを叩き始めた。




・閃・

え~…俺、自分でもヘボいと思ってます。
いや、どう介入すっかなぁと、考えてたのはいいんだよ。と言うか、考えてる時って、滅茶苦茶楽しいんだよね。
祭りも、準備の方が楽しいって言うし…。

「閃君、現実逃避はやめようか。」
「ねぇ、閃…?どうして、ここに…居るの?」
「え?あれ?えぇ!?せせせせ…閃君?な…なんで?」
「だはははは!!!白衣とめがね!!完璧に、理系オタクだぜ、せぇぇえぇぇぇん!!!」

あ~…首を傾げるなメビウス。ただでさえ、女の子っぽいんだから。可愛いだろ、惚れるだろ。
なのは、お前もメビウスの真似してかしげんなよ。さり気なく、そいつの腕を握ってんじゃネェよ。小動物か?
あとオメガ、こっち指差して笑うな。俺だって白衣と眼鏡は、似合ってねぇとおもってんだよ。そして謝れ。全国に居るメガネ白衣さん達に謝れ。

「閃と君たちは、知り合いだったのか?」

「あ~…ん~…まぁ、そうなんだが。…説明すっか。」

5分後

「そっか。閃もミッドの人間だったんだ。」
「そうだな。ごめん、今まで黙ってて…」

部屋の中央の、テーブルを囲んで座る俺達。クロノは用事があるとかで、部屋を出て行った。
簡単に説明を終えた俺は、メビウス達に頭を下げる。流石に秘密にしてて、悪くないって開き直るわけにはいかないしな。

「あ、良いよ。閃が悪いわけじゃないし…」
「そ、そうだよ!!私達も魔道師って事を秘密にしてたんだから、お互い様だよ!」
「あ~…そう言って貰えるとありがたいな。サンキュー。」
「おう!!それに、閃が居るなら心強いしな!!」

こいつら…どんだけ御人好しなんだか…。少し涙出てきたぞ。
メビウスとなのはは笑顔だし、オメガなんか親指立ててるし…
まったく、こいつらは俺にとって大事な友人達だな。
けど、俺は戦力外も良い所なんだが…

「うん、オメガの言う通り。閃が居るなら安心できるよ。」
「いや、俺はお前らみたいに、強くないぞ…?むしろ、雑魚いぞ?」
「そんなの関係ねぇ!!俺達3人!!親友パワーは最強だぜ!!お前を信じる、俺を信じろ!!」
「そうそう、私達は親友同士なんだから…きっと大丈夫!!」

……やべぇ、マジで泣けてきた。
なんつうか…認識に違いがあったんだな。
俺は友人って思ってたけど、この2人は…親友って思っててくれたのか…
今更だけど、俺…転生して…こいつらに出会えて…本当に良かったって…思えるよ。

「ねぇねぇ、閃君。そっちの人は…誰なの?」
「始めまして、主任です。よろしく。」

俺の隣に座っていた主任を、指差したなのは。それに気が付いて、主任も何故か優雅に一礼する。

「あ…高町なのはです。よろしくお願いします。…あの、主任さんの名前…」
「主任です。」
「え?…あの、名前は…」
「主任です。」
「…なま「主任です。」うぅ~…メビウス君…」
「あははは…よしよし、ほら泣かないで。」

涙目でメビウスに縋り付くなのは。…いやぁ、完璧に被せたな主任。
お前、どんだけ本名言いたくないんだよ…。しかも、初対面で泣かせんなよ…。

「泣き顔なのちゃんハァハァ…!!」
「鼻息を荒くしてんじゃねぇよ…!!」
「だって、生原作キャラで、主人公で小学生で泣き顔少女!!ロリコンには堪らげふぁ!?」
「廊下で頭でも冷やしてろ!!」

メタ発言&危険発言を繰り広げる主任に、アッパーをブチかまして、廊下にたたき出す。
まったく…油断も隙もあったもんじゃねぇ…
冷や汗をたらす俺を苦笑しながら見ているメビウスと爆笑しているオメガ。
ちなみになのはは、何故かメビウスの背中にピッタリとくっ付いて赤面している。…恥かしいならくっ付くなよ。
ドアが軽く音を立てて開く。主任が復活したのか?
そう思い振り返った俺は…表情を固くした。

「て…めぇ…」
「やぁ、帝君。クロノから話を聞いている。まぁ、仲良くしようじゃないか。」

白々しく笑顔を浮かべる…シルヴァリアスが立っていた。

「シルヴァリアス君!?」
「やぁ、ランスロット君にガウェイン君。先日は失礼したよ。まさか、君達とは思わなくてね。」
「先日…?」
「はは、仮面をつけた魔道師がいただろ?アレは実は僕なんだよ。」
「っ!?君…が…!?」
「おっと、今は争う気なんて無いよ?僕が、彼女を捕まえようとしてたのにも理由があるし、助けた君達にも理由があったんだろう?
それに、先に攻撃してきた君も悪いんじゃないのかな?」
「…それ…は。」
「まぁ、お相子と言う事にしよう。…僕も混ぜてくれるかな?」

笑顔を浮かべ、なのはの対面に座るシルヴァリアス。
3人の表情は、かなり硬い。メビウスなんて、苦虫を噛み潰したような顔をしてるぞ。
まぁ、俺も人の事いえない表情してるがな…

「クロノから話を聞いたけど…なのはは凄い魔力の持ち主なんだってね?AAAクラスだって?」
「え……うん…」
「凄いじゃないか!!僕はAクラスなんだけど、だからかな?君とは何か合う気がするんだよ!」
「……」

完璧に…引かれてんぞ…。AクラスとAAAじゃ差が在りすぎるだろう…
しかも、高町さんから、何時の間にか、なのはって呼び捨てにしてるし…
名前を呼ばれた瞬間、なのはの顔が怯えたようになってたな…。今じゃ、完全にメビウスの背中に隠れてるよ。

「始めてみたときから、なのはは普通の子とは違うって思ってたんだ!!どうかな?今度、僕の家に遊びに来ない?色々な魔法の道具もあるんだよ!!
それか、一緒に魔法の訓練なんてどうかな?こう見えても、僕は魔法に詳しいんだ!今からでも…」

それに気が付かずに、必死に自分の自慢話を繰り広げてる…。ある意味で…大物だな。
…よくもまぁ、空気も読まずに…しゃべり続けれるな。メビウスも、何かを感じ取ったのか、なのはを庇うようにしてるし…オメガなんて殆ど敵意丸出しだ。

「…ここに居たのか。3人とも、これからメディカルチェックをするから、付いてきてくれるか?閃も一応、立ち会ってくれ。」
「…なのちゃん、行こう。」
「う…うん!」

天の助けとばかりに登場したブレイズ。唯単に呼びに来ただけだろうが…助かったな。
直ぐになのはの手を引っ張りながら、出て行くメビウス。…さり気なく握る辺り…好感度高いだろうな。
遅れて、俺とオメガも部屋を後にする。…ちなみにシルヴァリアスは、自分によっているのか、誰も居なくなった部屋で延々と自慢話を繰り広げている。

「……不安要素が…大きすぎるな。修正が必要だ…」
「ハスラーワン乙!!」
「主任…もう一回、沈んどけえぇぇぇ!!!」





あとがき

さて、次回から色々とすっ飛ばして行こうかと考えております。
厨2はウザくかけているでしょうか…?
…書いてる作者は、ウザイと思っております。
そして、今回も出ました、ACEのキャラとオリキャラ。
苗字で分かるとおり…彼女の父親です。さて…これからどうなることやらで…



以下、返信

34様

ん~…詳しいこと言うと、後々の物語の楽しみが無くなる?ので…PJや相棒の事は秘密で…申し訳ないです。
v2は…危険すぎると思っていただければ、結構です。その危険度をどう書くかは…作者の実力次第…(汗



ダンケ様

タングラムについては設定集の部分で、少しですが書いてみました。自我を持たせたのはリリン嬢ではない事は確かです。
パパの言うあの人はヴォイチェク中佐でした。予想外…だったでしょうか?笑
フォース…出ましたね…!!ACE6の為に箱を買いましたが…フォース…やってみますか!!


ユーロ様

ははは!!同志よ!!作者もあの動きが可能と思い込んでいました!!蓋を開ければ、マルチロールというね…。
スピード特化のX02が愛機の作者には物足りない…!!
ベルカ戦争の話は…いつか書いてみたいとは思っていますが…確実に、メビウス君達のお話が終わってからですね。すいません。
オメガ隊100機…勝てる気がしません…!!





[21516] 20話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/15 23:18
・メビウス・

アースラに乗船してから数日がたった。その間に色々とあったんだ。
オメガが薔薇の3姉妹さん達の事を、毒蛇3姉妹って言って、本気で戦ったときもあって大変だった。ちなみに、私とユーノも何故か巻き込まれたんだよね…

「蒼い奴は後回し!!この熱血馬鹿を先に黙らせるわよ!!!」
「ハッハー!!かかって来ぉおぉぉおい!!!!ComeComeComeCome!!!」
「ちょ!?魔法障壁をただの蹴りで破壊するって、あんた何者よおぉおおぉ!!!???」
「ゆ…誘導弾を片手で弾き飛ばすな!!こ…こっちに来んなぁあぁぁ!!!!」
「あらあら~。」
「……まぁ、オメガだしね…。ユーノ、私達は、邪魔にならないようにしてようか。」
「デタラメじゃないか…。」

閃の知り合いのリリンちゃんとの、初対面のときも、大変だった。閃がお兄様って呼ばれてたのには、私も少し笑っちゃったな。
けど、頼りがいがあるから変じゃないんだけどね。リリンちゃんって、凄く頭がいいんだ。まだ小さいのに凄いなぁ。
そうそう、なのちゃんと直ぐに仲良くなっても居たね。なのちゃんも、「妹が出来たみたいで嬉しい!」て笑ってた。
食堂で、クッキー作りとか教えで上げてたりしてる。ちなみに、それにジェニファーちゃんも参加してる。

「なのはさん、こちらはこうで良いのですか?」
「うん、それで大丈夫だよ。あ、リリンちゃん、計量カップはこっちを使ってね!」
「はい!なのはお姉様!」
「リリン様、張り切ってますね。」
「えぇ、閃お兄様に、美味しいクッキーを差し上げたいのです!」
「えへへ、そうだよね!私も、メビウス君においしいの作ってあげないと!」
「あらあら、それでは、私はお姉様方に作りますわ。」

そして今日は、シルヴァリアス君とブレイズさんが模擬戦をするから、モニターで見学させてもらうことになっている。
私のほかに、なのちゃんとクロノさんも一緒。薔薇の3姉妹さん達と、先に模擬戦をしていたオメガとユーノは、船室で休んでいる。
ガルムは艦橋で索敵の手伝いをしているはずだし、閃と主任さんはエクス達のデータを取って、解析とかをしてるみたい。

「あ、メビウス君、始まるみたいだよ?」
「さて、ブレイズに何処まで通用するかな。」
「クロノさん、ブレイズさんって、そんなに凄いんですか?」
「あぁ、強いぞ。僕も本気で戦って、勝てるか怪しいところだからな。」

モニターから視線を外さないままのクロノさん。横顔だけだけど、ブレイズさんを信頼しているのが良く分かる。
私も、モニターに視線を戻す。ブレイズさんはデバイス、スペシネフに鎌のように魔力刃を展開して、空中に待機している。
シルヴァリアス君もアスカロンを順手と逆手に構えて、周囲に魔法を展開しているけど…あれは、フラガラッパ…かな?

「フラガラッパあぁあ!!」
「サンダーボルト、打ち砕け。」

ブレイズさんの周りに、バレットスフィアが2つ展開して、魔力弾が打ち出されていく。
まるでガトリングみたいに、掃射していく。弾速自体はそんなに速くないけど…弾幕が凄い。フラガラッパを文字通り、撃ち砕いていく。

「ちぃ…!!ロンギヌス!!」
「集束魔法か…!!」

槍のように魔力光が、一直線にブレイズさんに向かっていくけど、回避しようとしない…!?
ブレイズさんが左手をかざすと、空間が揺らめきだす…?

「ファントム、返すぞ。」
「…なにぃ…!?」

揺らいでいた空間に魔力光が吸い込まれたと思うと、直ぐに撃ち出されて来る…?
まさか…空間をゆがめて反射したって事!?

「ねぇ、メビウス君、今のって…なに?」
「空間を歪めたのはわかったけど…反射したのかな?」
「ブレイズは空間制御は得意な方だから。簡単に言えば、小型のワームホールを作り出したんだ。それを反射専用にしてるだけだ。」

クロノさんが、補足で説明を入れてくれる。ワームホールって…そんなに簡単に出来るものなのかな…?

「…えっと???」
「メビウス、後でなのはに分かるように、説明しておいてくれるか?」
「あはは…そうしますね。」

頭の上に???マークを浮かべるなのちゃんを見て、溜息を付くクロノさんと、苦笑する私。
「なんで笑うの~!」といじけそうになったなのちゃんを、撫でて慰めながら、モニターに視線を戻す。
ブレイズさんは、さっきから場所を移動していないのに対して、シルヴァリアス君は周囲を旋回するように攻撃してるけど…
全部、ファントムで返されるか、スペシネフで切り払われている。実力差がありすぎる、私でも勝てるかどうか…。

「ナイトホーク、起動。」
「フラガラッパ…!?…なんで追尾しない!?貴様、なにをした!?」

フラガラッパが追尾しないのに驚くシルヴァリアス君。ある程度の追尾性能は持ってるようだけど、ほんの少し上昇したブレイズさんを追尾しないで、そのまま飛んでいく。
可笑しいな…?普通なら、追尾していくはずなのに…?

「ん?一々、説明するのも面倒だが…仕方がないか。俺のバリアジャケットには、ステルス性能が搭載されている。
今、使っている魔法は、その性能を更に上げている。」

シレっとして話すブレイズさんだけど…凄いことだと思う。
ステルス性能があれば、索敵魔法にだって引っかからないし、誘導魔法だって、ある程度は無効化に出来るんだろうからね。

「ひ…卑怯だぞ!!それは禁止だ禁止!!それに、そのファントムとかもだ!!」
「別に良いが…。…ミラージュ。」

溜息をつきながら、スペシネフを振って魔法を解除する。けど、なにか新しいのも展開したみたいだね。
あれ?一瞬…ブレイズさんの周りの空間が…揺らいだように見えたけど…?

「…彼も馬鹿だな。ブレイズのあれが…一番厄介なんだよ。」
「あれ…ってなんですか?」
「見てれば分かる。」

丁度、シルヴァリアス君がブレイズさんの周囲に、ダイスンレイヴを展開していたところだった。
ただ、旋回してただけじゃなくて、これを仕掛けていたんだね。…えげつないなぁ。

「これならどうだ!!」
「ミラージュ、出力上昇。」
「…嘘ぉ…!?」
「あれがブレイズの切り札、空間湾曲だ。」

ダインスレイヴがブレイズさんに襲い掛かるけど、全部手前で曲がっていく。中には同士討ちのように、ぶつかって消えていくのもある。
肉迫すらしない…。クロノさんが言っていた空間湾曲。…自分の周りの空間を、自由に歪めれるって事だよね…?

『スペシネフは、空間制御機構が搭載されていますので、あのようなトリッキーな魔法が使用できるのです。』
「エクス、空間制御機構って?」
『魔道師自身が持つ空間把握能力を、最大限に引き出し空間制御のアシストをするのですが…。用意に扱えるものではありません。』
「…ブレイズは努力家だからな。確かに天才だが…、あいつの場合、努力の天才と言った方が良いか。」

そうか…。エクスとスペシネフは同じVRデバイスなんだよね。
空間把握能力…かぁ。クロノさんの言うとおり、ブレイズさんって、凄く努力してきたんだろうね。

「ふ…ふざけるなぁあぁぁ!!貴様!!さっきからなんなんだ!?妙な魔法ばかり使って!!」
「仕方が無いだろう。別に攻撃しても良いが、後悔するなよ?」
「ふん!!貴様程度に負ける僕じゃない!!なのは!!見てて!僕が勝つ…」
「よそ見してると…堕ちるぞ?」

距離が離れてるのに、ブレイズさんが魔力刃を展開させたスペシネフを振り下ろす。
届くはず無い距離なのに、なんでたろう?
けど、次の瞬間、私は眼を見開いた。

「き…貴様あぁぁ…!!」
「だから言っただろう…後悔するぞ…と。」

ブレイズさんの斬撃がシルヴァリアス君に襲い掛かっている。…斬撃が飛んだ…?
いや、違う。空間を…跳躍した!?空間湾曲の他に跳躍まで出来るのか!?
1閃、2閃と振るうたびに、シルヴァリアス君の目の前に、現れる斬撃。

『ありえません…。空間跳躍まで使いこなしている…!?そこまでの適合率とは思いませんでした。こけは…私とマスター並みの適合率です。』
「えっと、メビウス君、どういうことなの?」
「至極簡単に言っちゃうと…攻撃がワープしたんだよ。」
「わ…ワープって…えぇ!?そ、そんなのどうやって避けるの?」

シルヴァリアス君を尻目に、驚く私となのちゃん。実際に避ける方法なんてあるんだろうか…?
私が思いつく限りでは、速度で振り切るか、先読みで防御するしかない。
モニターに視線を戻すと、ブレイズさんの左手に魔力光が収束していた。それを、開けたワームホールに撃ち込んでいる…?

「これで、チェックメイトだ。…シンファクシ!!」
「う…うわあぁぁ!!??」

声と同時に、シルヴァリアス君の周りに開く無数の黒い穴、ワームホール。
そこから、さっきブレイズさんが撃ち込んだ魔力弾が放たれていく。それが、直撃して堕ちていく。
結局、模擬戦はブレイズさんの圧勝だった。
すごいなぁ…。私もまだまだ強くならないと…



・閃・

現在、俺と主任はメンテナンスルームでVRデバイスである、エクスとイジェクト、それにスペシネフのデータの解析を行っている

「ん~…本体部、コアの部分は完璧に自立してるね。これさえ無事なら、外装を弄っても問題は無いみたいだねぇ。」
「いや、そうでもないみたいだな。…神経みたいに回路が、張り巡らされてるぞ?」
「むしろ、コアから出てるし…、もしかすると。自分で出してるんじゃないかな?別なのにも接続可能かも…?」
「おいおい、つまりなにか?極端な話、1世代のコアを別なデバイスに接続すれば、直ぐに活動可能…ってか?」
「多分ね。しかもコア自体にも、ある程度の自己修復機能も付いてるね。」
「んで、魔力を自己変換、別なエネルギー体に変換可能って…凄まじいな。…デビルガンダムもびっくりだな。」
「自己増殖は付いてないみたいだから、安心して。けど、変換方法次第では、魔力をレーザーやビーム体に変換可能のようだね。魔法が使えない空間でも、戦闘可能って事か。」
「本体自体、魔力発生装置付きっと。…それなんてGNドライブ?つうか、本当に作ったの誰だよ…。超高性能過ぎるわ…。」
「…一応はうちの会社のはずなんだけど…。これだけ凄いと自信なくすよなぁ…。」

俺達は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべる。いやぁ、仕方が無いだろう。
高性能だって事は知ってたけど、ここまでとは思わなかったしなぁ。正直、下手なロストロギアなんかより、謎なんじゃないかと思える。
コア本体に備え付けられている魔力発生装置に自己修復機能。この2つをつけるだけで、どれほどの費用がかかることやら…

「正直言うと、ここまでとは思わなかったよねぇ。」
「…だよな。」

俺の心を代弁するかのように呟く主任。どうやら、こいつもここまで高性能とは思ってなかったみたいだ。
しかし、なんでか、俺の顔を真面目に見つめてくる。

「…ところでさ、閃君。」
「ん?なんだよ?」
「…君ってさ、何か…持ってる?」
「はい…?某ハンカチ王子じゃねえぞ?」
「いやいや、違うよ。僕の場合はデバイス関係については、下地もあるから理解できるんだけどさ。君の場合って…何にも無いはずでしょ?
なのに、なんで設計やら解析やら出来るのかなぁ…とね。なにかレアスキルでも持ってんじゃないのかなって思ったんだよ。」
「……おぉ。気が付かなかった。」

確かに、なんで俺ってこんなに簡単に理解できてんだ?
生前が大学生とはいえ、リリンのように天才でもないし、専門知識を学んだわけでもない。むしろ、独学と我流だ。

「本当に、何かレアスキルでも持ってんのかな?」
「流石は転生者!!それらしいのを持ってるんだね!!」
「いや、知らねぇって…。第一、主任の下地ってなんだよ?何処で勉強したんだよ?」
「……それは…」
「それは?」
「男の子のひ・み・つ♪てへ!」
「……ぶん殴って良いか?全力全開でぶん殴って良いか?」
「…ごめんなさい。と言うかすでに、ぶん殴ってる…。ごふ」
「これはぶん殴ったんじゃねぇよ。殴ったんだ。」

主任の顔面に右ストレートをブチかまして、デスクに沈める。
ったく、本当にこいつは真面目な時とそうでないときのギャップが激しすぎるわ。

「まぁ、冗談は程ほどにしといて…。1世代目って、過剰性能もいいところだよね。」
「それは言えてる。何の為に、ここまでの性能を持たせたん…だ…か。」
「……………閃君、気が付いちゃった?」
「……気が付きたくないけど、気が付いた。もしかすると…あいつら…か?」
「それ以外、考えられない気がするんだよねぇ…。」

顔を上げて、天井を見つめる主任。
あぁ、気が付いちまったよ。これだけの性能を持つデバイス。唯単に、犯罪者とか、テロ鎮圧になら、ここまでの過剰性能をつけなくても良いだろう。
そう、【人間相手】なら…。だが、俺達は知っている。本当のVRが、フレッシュリフォーのある世界が、どんなのだったのか。そこに、どんな【敵】が居たのかも。
…多分だが、1世代を作った人間は、奴らに備えていたんだろう…。虚数空間に潜む…過去の亡霊…【ダイモン】に…。







スペシネフ・ラーズグリーズ。魔力刃は鎌の状態で固定。空間制御機構搭載。
バリアジャケットには、強力なステルス性能が付加。

サンダーボルト バレットスフィアから魔力弾を撃ちだす。
ナイトホーク   バリアジャケットのステルス性能を向上。
ファントム    任意の空間にワームホールを作成。
ミラージュ    自分の周囲の空間を湾曲させる。
シンファクシ   ワームホールに魔力弾を撃ち込み、ターゲットの周囲に出現させ、攻撃。

あとがき

とりあえず、汁なんちゃらは、フルボッコになってもらいました。もっとスピーディーな戦闘描写にしないと…
ブレイズさんの魔法の名前は、戦闘機とかから持ってきてみました。
上に簡単に、説明モドキを書いてみましたが…要らないかな?
次回は、海上決戦を書いて…また飛びます。目標は、後5話以内で無印終了!!


以下 返信 

ユーロ様

ナガセとブレイズの年齢差ですか。
とりあえず、ナガセはギンガと同い年…と言う事になっています。そして、仲も良いということに…。
マルセラ姐さんとエスパーダ1…ですかぁ。正直、あの人達は幸せになっていて欲しいですね。
…ミッドの何処かで小さなお店でも営んでいるとか…ありかも?笑
オメガ隊は豊富な人脈に、コミュニケーション能力が半端ないそうです。某所でそんなのが書かれてましたね。


ダンケ様

いや、こんな奴に友達も出来ないと思います。
まぁ、だからこいつは生前、引きこもりオタクと言う設定なんですけどね。笑
ん~、リンディさんは管理局と言うか…ハーリング派? けど、一応は親としての心も持ち合わせては居ますよ。
今回は、そんな風に見られても仕方が無かったとも思います。すいません。
リリン嬢にも一応は見せ場を作る予定にはしてますので…頑張ります!!


真っ黒歴史様

そんな!!失礼ですよ!!ス○オに!! 笑
彼は映画とかではやるときはやる男なんですから!!
こっち?…後で物凄くウザイ事をやるのでお楽しみに…




[21516] 21話 伸ばしても届かない手
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/18 22:19
・ユーノ・

「そう言えばユーノは両親に、元気って事を報告しなくて良いのか?」
「え?」

それはオメガの何気ない一言で始まった。
僕達は、アースラの食堂でなのは達が作ったクッキーでおやつを楽しんでいたんだ。
ジェニファーさんの入れた紅茶と、なのはのクッキーは相性抜群でとても美味しい。
メビウスは、ブレイズさんの要請で何故かもう一度メディカルチェックを受けてるけど、それが原因で、クッキーを作ったのに、食べさせれないって、なのはがいじけてた。

「ん~、実は僕には両親居ないんだ。」
「…すまん。聞いちゃいけなかった。」
「良いよ。慣れたし、部族のみんなが家族同然で育ててくれたから、寂しくないよ。」

困ったように頭をかくオメガに、僕は笑いかける。
スクライアの皆はとてもよくしてくれている。部族自体が1つの家族だから、僕も特別寂しいと感じたことは無い。

「オメガ達には、両親居るんでしょう?」
「おう!!俺の父さんは警官やってるぜ!!昔は傭兵だったみたいだけどな!!」
「家は平凡なサラリーマンだな、うん。」
「重役がサラリーマンって…」
「閃お兄様、いけませんわ。帝さんは、わが社にとってしても重要な方ですわ。もちろん、閃お兄様もです!!」

閃の両親が、有名なフレッシュリフォーの重役だとは知らなかった。あそこの重役を、普通のサラリーマンって言ったら駄目だと思うなぁ。
けど、あのリリン・プラジナーとも知り合いだったなんて、今更ながら、閃やメビウス達には驚かされるよ。

「そう言えば、なのはとメビウスって幼馴染なんだよね?」
「うん、そうだよ。小さい頃からずっとずっと一緒に居たの。オメガ君とは少し後だよね。」
「だなぁ。俺は一時期、海外に居たからよ!!」

なのはは、嬉しそうに笑いながら、髪に結んでいるメビウスとお揃いのリボンに触る。
幼馴染…か。なのはが、メビウスにそれ以上の感情を持っているのは、誰が見ても明らかだと思う。
…それを向けられている本人は妹のような感じで扱っているから、少し不憫だけど…

「幼馴染…私と閃お兄様もそうなるのでしょうか?」
「あ~。少し遅いからな、残念だが、違うと思う。」
「そうですか…残念ですわ。」

落ち込んだリリンを苦笑しつつ、撫でながら慰める閃。
こっちの方は、本当に兄妹って感じがすね。こう…なんて言うのかな…。閃は少し大人びてて、同い年なのに年上に思う。
メビウス達も、そういってたし、頼りになるって、よく言っていた。

「そう言や、なのはと俺が会う前に、士郎さんって…事故で大怪我したんだっけか?」
「うん。それで、お母さんやお兄ちゃんが忙しくて、家の中でひとりぼっちの時があったの。」
「寂しく…なかったの?」
「どうだろう…。寂しくなかったかもしれないし、寂しかったかもしれないね。」
「なんだそりゃ?」
「大方、メビウスが一緒に居てくれたから!!とか言うんじゃないのか?」
「わ、凄い!!閃君、なんで分かったの?」
「……分かるっての…」

驚いたなのはを無視して、呆れたようにしてクッキーに手を伸ばす閃。
流石の僕でも、この位は予測できたよ。

「まぁ、素敵ですわ!」
「でしょ!!寂しい時は、私がずっと傍に居るから、って言って夜も一緒に居てくれたときもあったし…」
「お~い。誰か、なのはの惚気を止めろ。」
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて冥界行きだぜぇぇぇ!!」
「…つまり、命がおしいって事だね。」

幼馴染の事や、そう言う女の子の好きそうな話題で盛り上がるなのは達を見ながら、僕達は紅茶とクッキーを楽しむ。
まぁ、そう言いながらも、閃はリリンの事を暖かい眼差しで見守っている。

「僕も…君たちみたいな友達が出来て、良かった。」
「……ユーノ、恥かしいなら言うなよ、顔が赤くなってんぞ。」
「ハッハー!!今更だぜユーノおぉお!!俺達とお前はBest friendsだぜ!!」

小声で言ったはずなのに、聞こえちゃったかな。けど、そう言いながら、閃の顔も少し赤い。
オメガは何時ものように、明るく笑って親指を立ててくれる。スクライアのみんな、こんなにも暖かくて、優しい友達が…僕にも出来たよ…。





・ブレイズ・

「現状報告、一体どうなっているんだ?」
「あ、ブレイズ君。海上で膨大な魔力反応が感知されたのよ。」

エイミィから通信を貰った俺は、艦橋まで走りこんできていた。
視線をまわりに配れば、クロノと艦長は既に自分の席についていた。

「エイミィ、映像をモニターに映せるか?ブレイズ、メビウス達にも見てもらえ。」
「了解。今呼び出している。」

端末を起動させ、メビウス達に連絡を入れると同時に、アラートを起動させる。
艦内にけたたましく鳴り響くアラートは、何時聞いても心地の良いものではないな。
それが表情に出たのか、艦長が笑いながら、「私も慣れないわ」と言っている。心配してくれたのか、その一言で俺はもう一度、表情を引き締めなおす。

「ブレイズさん!!なにかあったんですか?」
「海上で魔力の反応が見つかった。恐らくは…残りのジュエルシードだろう。」
「今、モニターに映像出すからね。あ、なのはちゃん、クッキーご馳走様、おいしかったよ!!」
「あ、はい!よかったです。」
「エイミィ、真面目にやってくれ。」
「了解です、クロノ執務官殿。」

通信とアラートを聞いたメビウスとなのはも駆け込んできた。…他の奴らはまだか。
おどけたような口調でエイミィが、端末を操作していく。クロノは溜息をついて額を押さえているが、まぁ、分かっているだろうな。
これが彼女なりのリラックスの方法だ。現に、彼女だけでなく、少し緊張してたようななのはもリラックスできている。

「…本日も海上は大荒れ注意報…か。」
「クロノ…?」
「いや、なんでもない。」

…なんでもない…か。なら、俺も聞かなかったことにしようか。…こっちを少し睨んでいるクロノの視線を、キッチリと無視する。
第一、聞こえたのは俺だけじゃないんだがな。ほら、艦長だって、少し笑ってるぞ。
視線をモニターに移すと、金髪の少女が巨大な魔方陣を展開していた。その魔力の影響でか、天候がかなり悪い。

「やっぱりフェイトちゃんだ…。」
「…あれがそうか。」
「魔力の増大を確認!…まさか、海中のジュエルシードを暴走させる気!?」
「エイミィ、ジュエルシードの数量と魔力量を確認。各員はその場で待機。」
「待機って…どういうことですか!?」
「そのままの意味だ。メビウス達も待機だ。」

クロノが冷静に指示を飛ばす。おそらく、フェイト・テスタロッサはジュエルシードを、故意に暴走させ一気に封印しようとしているのだろう。
…客観的に見ても、無謀すぎる方法だ。展開してる魔方陣の維持で、かなりの魔力も使っているだろう。

「このままいけば、確実に自滅するだろう。それか弱体化したところを一気に叩く。残酷だが…現実だ。」
「そんな…」
「メビウス君…フェイト…ちゃん。」

それに納得できなかったのは、メビウスは異を唱えるが…クロノが押さえつける。
うつむくなのはとメビウスだが…、何か意を決したかのように顔を上げ、艦橋から出て行こうとする。

「待ちなさい!!2人とも!何処の行くの?」
「決まってます。フェイトちゃんのところです!!」
「見捨てるなんて…出来ないです!!」
「駄目よ。今、海上は魔力流で危険な状態。そんな所に2人を向わせるわけには行かないわ。」

静かに、諭すように2人を止める艦長。確かに、魔法を受けて空中に浮いた6個のジュエルシードが暴走して、海上はかなり大荒れだ。

「…私は…私達はフェイトちゃんを助ける為に協力する、と言いましたね。誰も彼女を捕まえる為に協力するなんて…言ってません!!」
「フェイトちゃんは大切な友達なの…。だから!!絶対に助けるんです!!」
「あ!2人とも!!」

やはり…か。制止を振り切ると、そのまま走っていく2人を眺める俺。
クロノと艦長はどうにか止めようとしているが…無理だろうな。
だが…ある意味で好都合だ。

「エイミィ、頼みがある。」
「え?なに、ブレイズ君。」
「メビウスのデータを取っておいて欲しい。」

そうエイミィに頼むと、俺はモニターに視線を戻す。

(さぁ、メビウス・ランスロット。実力の程…見せてもらおうか。)

だが、ふとそこまで考えると、1つの不安要素が浮かんでくる。

(奴が…居ない…?)



・メビウス・

艦橋から飛び出した私達は、転送ポートのある場所まで走っていく。
確かに、フェイトちゃんの自滅を待つ方が捕まえやすい。けど、私達は…フェイトちゃんを捕まえたいんじゃない、助けたいんだ…!!
目の前で、苦しんでいるのに…見捨てるなんて出来ない!!

「メビウス様!こちらです!!」
「ガルム!?」
「せ…閃君にユーノ君!?それにオメガ君も!?」

転移ポートに行けば、閃達が待っていてくれて、端末のほうを見ると、主任さんが操作している。
閃も呆れたように、空中に映し出してたモニターを消して、端末を操作し始める。

「やれやれ。まぁ、んな事だろうとは思ってたけどよ。ほら、行くんだろ?」
「手伝って…くれるの?」
「当たり前だよ、なのは。ほら、すぐに転移させるから準備して!!オメガ、僕と一緒に魔力装填して!!」
「おう!!メビウスも早くするんだぜ!!」

ユーノ達が転移装置に魔力を注ぎ込んで、起動させていく。

「さてと…いっちょやりますか。主任、急ぐぞ。」
「愚問だねぇ。転移シークエンス、4から8まで省略。座標軸は…こんなところかな。」
「転移させるのは、メビウス、なのは、ガルムの3人だ。ほら、準備しろ!!いきなり空中だからな!!バリアジャケット展開しとけ!!」

閃の指示に従って、慌てて転移ポートの上に乗る私達。
みんな…協力してくれている。

「魔力は充分!!よし、転移させるぞ!!」
「皆!!ありがとう!!」
「なのは!!礼は終わってからだ!!序に説教も一緒に受けてやるよ!!」
「頑張れよ、なのはぁぁぁ!!メビウゥゥゥウス!!」

閃達の応援を聞きながら…私達は海上まで転移していく。

光が収まると、私達はフェイトちゃんが展開していた結果に居た。
視線を向ければ、フェイトちゃんとアルフが暴走した魔力流に弾き飛ばされていたところだった!!拙い!!

「危ない!!」
「え…?」
「まったく…無謀極まりない。」
「あ…あんたら…!?」

フェイトちゃんを私が、アルフをガルムが受け止める。ふぅ…間一髪だったね。
なのちゃんは、私達を庇うように、障壁を展開してくれていた。

「メビウス、どうして…ここに?」
「決まってるでしょ。フェイトちゃんを助けに来たんだよ。…その前に…」
「あう!?」

私は軽くフェイトちゃんの頭を小突く。それに驚いたのか眼を丸くして頭を押さえるフェイトちゃん。

「まったく…心配かけさせないで…。こんな危ない事したら駄目だよ?」
「…ごめんなさい…」
「うん、よろしい。」

素直に謝ったフェイトちゃんの頭をなでながら、私は一安心する。まだ、限界までは無理してないみたいだね。
視線を移すと、ガルムがアルフにフィジカルヒールをかけているところだった。

「まったく…お前も無理をするな。」
「わ…分かったから、サッサと離しなよ!!」
「まだヒールをかけているところだ、大人しくしてろ!!」

抱きとめた状態で、ヒールをかけられるのが恥かしいのか、顔を真っ赤にしているアルフ。
ガルムは顔色1つ変えてないんだけどね。

「フェイトちゃん。」
「…なのは…」
「メビウス君の言ったとおりだよ。もぅ、心配したんだからね!!」
「なのは…も?」
「そうだよ!!私とフェイトちゃんはもう友達なの!!」

そう笑いながら、フェイトちゃんの手を握るなのちゃん。フェイトちゃんもぎこちないけど、小さく笑っている。

「それじゃ、はい、ふたりできっちりはんぶんこ!」
「あ…。ありがとう、なのは…」

なのちゃんが、消耗しきっているフェイトちゃんに魔力を供給する。これで大丈夫だろうね。

「エクス、解析を。」
『既に済んでおります。まぁ、見ての通りの状況…なのですが。6個の暴走体はかなりのものです。』
「みたいだね…。」

空中に浮いて、球体に包み込まれているジュエルシード。そこから、非常識なまでの魔力流で辺りを荒らしている。

「2人とも、聞いて。タイミングを合わせて、3人で特大の魔法を撃ち込むよ!」
「3人で…?」
「そう、3人で、せーので一斉に…ね。」
「うん、分かった。やろう!!フェイトちゃん!!」

戸惑い気味のフェイトちゃんだけど、なのはの明るい声を聞いて、静かにうなずいてくれる。
その瞳には、決意が現れていて、とても綺麗だ。

「レイジングハート…力を貸して!」
「バルディッシュ、お願い…!!」

2人の周りにピンクと金色の魔方陣が展開されていく。それを私は少しはなれた場所で眺めている。
…凄いな、ジュエルシードに匹敵する魔力量だよ。

「ディバイン…バスター!!」
「サンダーレイジ!!」

それぞれの魔法がジュエルシード目掛けて飛んでいくのを見て、私も自分の魔法を展開させる。
そう、最強の単体攻撃魔法を…!!

「はああああ!!!!一撃必殺!!ブルー・スライダー!!」

キャンセルで最高速度までスピードを上げて、周囲で荒れ狂う魔力流も纏めてなぎ払いながら、空中のジュエルシードに突撃!!
エクス本体に展開している魔力刃と、暴走体の魔力がぶつかり合い、魔力光が辺りに撒き散らされる。
くぅ…周囲に展開してる障壁が…持たないか…?
速さは質量に勝てないのか…!!いや、そんな事はない!!速さを一点に集中させて突破すれば…どんな分厚いものだろうと…!!

「砕けちれえええぇぇぇえ!!!!」

私の声と同時に、ジュエルシードの暴走集体を包み込んでいた魔力を貫き、力ずくで暴走を止める!!
そのまま、空中で封印を施す。

「はぁぁ…。疲れた…。」



・ブレイズ・


「…予定が違ったが…仕方がないか。」

メビウス達が暴走を鎮圧したのを見計らって、俺は転移ポートで移動していた。
ちなみに、今頃、閃達は艦長に説教を貰っているところだろう。

「あ…ブレイズ…さん。」
「そう構えるな。別にどうこうしようというわけではない。」

フェイトを庇うようするメビウス達に苦笑しつつ、攻撃する気は無いとアピールする。
メビウスに観察するが…可笑しいな。あれだけ無謀な突撃と魔力を使えば、疲労してるはずだが…してないだと?

「メビウス、誰…?」
「フェイト・テスタロッサ…だな?俺は管理局所属、ブレイズ・トリスタン執務官補佐役だ。」
「管理局…!?あんたら、まさかあたし達を捕まえにきたのか!?」
「アルフ、落ち着け。メビウス様はそんな気は全くない。」
「こちらとしても、穏便に済ませたい。攻撃する気も無いしな。」

飛び掛ってこようとして使い魔らしき女性を、ガルムが止めてくれる。
ありがたいな、攻撃されれば、望まぬ戦闘をするところだった。

「フェイトちゃん、私はフェイトちゃんを助けたいんだよ。…何か理由があるんでしょう?…ね?一緒に行って、話を…してくれないかな?」
「こちらとしても、悪いようにはしない。メビウス達も君を心配している。どうだろうか?」
「……私…は。」

何か迷うようにしているフェイト。その視線を優しく微笑むメビウスに向けられている。
…彼の説得で揺らいでいるようだが…。

「甘いなぁぁ!!ブレイズ!!」
「きゃぁ!?」
「フェイトちゃん!?」

突然、フェイトを拘束する…バインドだと!?誰だ!?
視線を上に向ければ…一番、来て欲しくない奴、シルヴァリアスが居た。


「何をしてるんだよ!?」
「決まってるだろ!!犯罪者は…懲らしめないとなぁぁぁ!!」
「シルヴァリアス君やめて!!フェイトちゃんは何もしてないんだよ!?」
「なのは、君はこいつに騙されてるんだよ!!」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー、今すぐバインドを解け!!」
「ふざけるな!!消耗してる今が消すチャンスだろ!!」

こいつ…聞く耳持たないか…!!メビウスがバインドをエクスで叩き切ろうとしているが、うまくいかないようだ。

(ち、あの馬鹿にシンファクシを叩き込むか…)

そう思い、ワームホールを作成しようとしたが…背筋に悪寒が走った。
シルヴァリアスの真上に…巨大な魔方陣が展開されている…!?

「ブレイズ、気をつけろ!!次元跳躍魔法だ!!」
「っ…!!各員、退避!!避けろぉおぉぉ!!」
「なに…があぁああぁ?!!!????!??」

クロノから通信が入ると同時に、魔方陣から強大な雷光が襲い掛かってくる。シルヴァリアスを直撃し、海面に叩きつけていく。
生命反応があるから…一応は無事か。だが、気にかけている余裕など…ない!!
俺はファントムを作成し、雷光をワームホールに吸い込ませていくが…くそ、消費が洒落にならない…!!

「フェイトちゃん!?」
「なのちゃん!危ない!!」

フェイトの傍まで、行こうとしたなのはをメビウスが抱えて、雷光を回避していく。
雷光はフェイトを庇うように、俺達に襲い掛かってくる。メビウスは、強固な障壁を展開していたガルムの近くに、なのはを連れてくると、自分は直ぐにフェイトの方に向かっていく。
それに気が付いたのか、雷光は執拗にメビウスを狙うが、それを回避していく。

「フェイトちゃん!!」
「メビウス…!!」

お互いに手を伸ばしあうが、その間を遮るようにする雷光と、フェイトの周りに展開される強制転移魔方陣。
あと少しというところで…メビウスの手はフェイトをつかむことなく、虚空をきる。
強制転移…させられたか…

「…フェイトちゃん……」

後に残ったのは、先ほどまでの荒れ具合が嘘のような空と…メビウスの零れる言葉だった。






あとがき

休みなので一日かけて書いてみました。
…ちょっとですが、テンポがいい感じじゃないか!?と作者は思っています。
ストーブつけようと思ったら大破しているというね!!新しいのを買わないと…
話のタイトルは思いついたところは入れようかと思います。

あと返信って…感想掲示板の方が…見やすいですか?



以下返信

春河様

確かに…性能的にグランゾン目指してます。笑
まぁ、後で更に色々と追加していく予定ではありますよ。今の時点では確かに過剰ですね。
チョッパーのデバイス…考えてなかった(おい。




34様

実は当初、汁さんの名前はセマカ・ラヤキブモと言う案もあったのですが…変なので却下でした。笑
反対に読むと、噛ませ・モブキャラというね…。
主任がセラフ…ACERのトンでもセラフですね!!…デバイスで…あり・・・か?





名無しの獅子心騎士様

作者は汁さんに後々、今回以上にウザい事をやらせる計画を立てております。
リリン嬢とジェニファーさん、若干、キャラが被るのが悩みどころです。作者の実力不足名だけですが…
ダイモンは…何時から出てくるのかは秘密にしておきますね。ただ、灰色の男達との関係は…どうなるでしょうね。笑



ダンケ様

踏み言うか…自業自得?笑。まぁ、自己中厨二はこんな扱いでしょう。
確かに…ブレイズさん、単独戦闘向きになってしまった…!!ウォードック隊について…ハードル上げないで…!!作者の実力が…!!
シャドウVRフラグは…ふふふふ…ということで、笑




[21516] 22話 決意の母は美しく、恋する乙女は可憐なり。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/20 22:57
・フェイト・

「フェイトちゃん!!」

あの時、彼が伸ばした手を…私は咄嗟に握ろうとした。
けど、その前に母さんの転移魔法で、私は時の庭園に連れて来られていた。

「フェイト!!大丈夫だった!?」
「あ…」

名前を呼ぶ方を向くと、母さんが心配そうに駆け寄ってきてくれた。そのまま、優しく抱きしめて……嬉しいけど、少し苦しい…
アルフは「ジュエルシードおいてくるよ」と言って、先に部屋から出て行った。気を…使ってくれたのかな…?

「か…母さん、少し苦しいよ…」
「あ、ごめんなさい。…怪我はしてないようね、安心したわ。」

抱きしめる力を弱めてくれる母さん。…心配をかけちゃったみたい。

「…ごめんなさい。ジュエルシード…3個しか…」
「良いのよ、フェイトさえ無事なら…。けど、あんな方法を使えなんて…危ないのよ?」
「うん…分かってるけど…」

少しうつむきながら、私は母さんの顔を見る。…やっぱり、顔色が悪い。
…母さんは秘密にしてるけど、私は知っている。母さんが重度の病気を患っていることを…。きっと、私に心配をかけたくないから秘密にしてるんだ。

「…ところで、フェイト。」
「なに?」
「もしかして…あの蒼い魔道師が、メビウス・ランスロット?」
「あ…うん、そうだよ。」
「そう……。良い子みたいね。フェイトを庇ってくれてたみたいだし…ね?」
「うん…。メビウスと居ると…凄く安心できて、それなのにドキドキ…するの。」

そこまで言うと、母さんが眼を丸くして、すぐに微笑んでくれる。

「フェイト、そう言うのを…好きって言うのよ?そして、それは恋をしてるのよ。」
「…恋…?」
「そう、彼と一緒に居ると嬉しいでしょ?楽しいでしょ?それはフェイトが、メビウス・ランスロットが好きで好きで仕方が無い証拠。だから、貴女は恋をしてるのよ。」
「あ…う…」
「ふふ、少し早かったかしら?けど、母さんは嬉しいわ。フェイトもそんな年頃なのね。」

私が顔を真っ赤にするのを見て、楽しそうに笑う母さん。
…うん、そうだよね…。私はメビウスが好き…大好き。だけど、言葉にする勇気は…無いと思う。きっと、彼の傍に行けば、嬉しくて、恥かしくて…それどころじゃないと思う。
もし私が、彼女のように…なのはのように強くて、けど…優しく笑えるならこの気持ち…伝えられるのかな…?









「はぁはぁ…時間が…無い…わね。」

フェイトを自室で休ませた後、プレシアは研究室の椅子に座り、口元を押さえていた。
愛する娘を助けるために次元跳躍魔法を多用したのが、病によって弱っている彼女を更に衰弱させていく。。
激しく咳き込むと、口の中に広がる鉄の味。どうやら、少し吐血してしまったようだ。

「…管理局まで出てきたのね…。もう、どうにもなら無いかもしれないわ…。」

アリシアの入ったカプセルを見つめながら、自嘲気味に呟く。
愛する娘を蘇らせたい一心で研究を続け、病に冒されながらも突き進んできた。その際に、もう1人の愛しい娘が出来たのだから、後悔はない。
自分の命はもうすぐ消えるだろうが、それはそれで別に構わない。しかし…

「フェイトは…どうするの…?」

こんな自分を母親と慕ってくれる娘を、1人残すのか?管理局に犯罪者として捕まったらどうするのだ?
そう考えるだけで、プレシアの心は締め付けられ、痛んでいく。

「…私は…本当に最低な母親ね。…愛しておきながら…幸せにすることなんて出来ない…。」

知らず知らずに涙がこぼれていく。だが、ほんの少しだけ…希望はあった。
フェイトが好きと言った、1人の少年の存在。彼なら…フェイトを幸せにしてくれるのではないか?少年は伝説と鬼神の息子だ。愛する娘を確実に守ってくれるだろう。
だが、管理局はどうなのだ?希望と不安、ごちゃ混ぜになりながら、頭を中をまわっている。

「そうね。最低な母親なら…最後まで最低な母親を演じましょうか…。」

自分は犯罪者の、最低な母親の烙印を押されても構わない。だが、娘だけは…愛しい娘だけは…幸せにしたい。
決意を新たに、立ち上がるその姿は…どこまでも母親であり、どこまでも、美しかった。




・なのは・

海上での騒動から次の日、私達は一回お家に帰る事になったの。
…メビウス君は、少し元気がなかった。やっぱり、フェイトちゃんの事が心配なんだ…。

「…のは?なのは?」
「え?あ…なに、お母さん?」
「もう、なにじゃないでしょ?さっきから、ご飯一口も食べてないじゃない。どうしたの?」
「なにかあったのか?」
「メビウス君と喧嘩とかしちゃった?」
「なん…だと…」
「わぁわぁぁ!!お兄ちゃん!!違うからね!!」

お姉ちゃんの言葉を真に受けたお兄ちゃんが、怒ったように椅子から立ち上がろうとするのを、私はあわてて止める。
もぅ…別に喧嘩したとか、そんなんじゃないのになぁ。今、私はお家で家族みんなでご飯を食べているところ。
メビウス君達と食べるご飯も美味しいけど、やつぱり家族で食べるご飯も凄く美味しい。
慌てる私を見て、楽しそうに笑うお父さんとお母さん、もぅ、笑わないで欲しいなぁ。

「それで、何か悩み事かい?」
「…うん、その…ね。メビウス君、少し元気がなくなっちゃって…」
「あのメビウス君が?…何かあったんだね。」
「それで、なのはは心配でしょうがないって訳ね。…姉ながら、妬けちゃうわ。」
「メビウスは何時も、笑っているイメージがあったんだが…。」

お父さんやお兄ちゃん達も、心配そうにしてくれる。にゃはは、メビウス君は凄いなぁ。色々な人から心配されてるよ。

「そうだ!!いい考えがあるわ!!」
「いい考え?」
「えぇ。少し待ってなさい。」

お母さんがキッチンに行って、何かをラッピングして持ってくる。
あれ?これって…私がさっき作ったクッキー?

「お母さん、これ、私が作ったクッキーだよね?」
「そうよ。これをメビウス君にプレゼントして、元気を出してもらいなさい。」
「…元気になってくれるかな…?」
「大丈夫よ。なのはみたいな可愛い女の子で、しかも、好きな子から貰ったら誰でも嬉しいわ!」
「すすすす…好き!?メビウス君が!?」

あわわわわ…メビウス君が私を好きで、私がメビウス君を好きでメビウス君が好きな私で好きな私が…

「なのは、落ち着くなさいって!!ああもぅ、母さん、なのはの頭から煙出てるよ?それに、顔も真っ赤。」
「好意を隠さないのに、言葉にすると駄目なのか…」

…はっ!?お姉ちゃんが、私の肩をゆすってくれる。…うう、あと少しでメビウス君と…ごにょごにょ…
って、こんな事、考えてる場合じゃないの!!
深呼吸を繰り返して、少し落ち着く。

「わ…私、メビウス君に会ってくるね!!」
「…言っても無駄だろうが、もう夜だぞ?」
「大丈夫なの!!それじゃ、行ってきます!!」

お父さんの言葉を聞きながら、私はポーチにクッキーの袋を仕舞つて、お家から飛び出していく。
そうだよね、言ってたもんね。

「寂しい時は、私がずっと傍に居るから。だから、我慢なんてしないで?思いっきり甘えて良いから、我侭言っていいから。だから、自分を…いらない子なんて言わないで?」

小さい頃、メビウス君が私に言ってくれた言葉。ずっとずっと、一緒に居てくれて…一緒に笑ったり、泣いたりした。
落ち込んだ時も励ましてくれたし、助けてもくれた。だから…今度は私がメビウス君を元気にしてあげるの!!




ピンポーン。

チャイムの音が響き渡る。何時もより、大きく聞こえたのは、静かだからかな?

「はいは~い。…どちらさま~?」
「こんばんわ!サイファーさん!!」
「あらぁ、なのはちゃん、こんばんわ。どうしたの?」
「えっと、メビウス君に会いに来たんですけど…」

玄関を開けてくれたのは、サイファーさん。私は、メビウス君に会いに来たことを伝えるとサイファーさんは、困ったように笑う。
あ…やっぱり、親子なんだ。なんだか、メビウス君の困ったときの笑顔とそっくりなの。

「ごめんなさいね。メビウスちゃん、天体観測に行っちゃったのよ~。…あら?」
「そうなんですか…。臨海公園にですか?…あれ?」

私とサイファーさんは、2人して眼を丸くして、すぐに笑いあう。
だって、ずっと前にも同じ様なことをお話したんだもん。そう、私がユーノ君に会って、魔道師になった夜と同じ。
あはは、なんだか可笑しいな。

「ふふ。なのはちゃん、メビウスちゃんの事を元気付けに来たんでしょ?」
「ふにゃ!?…はい、そうです。」
「あらあら~。良いわねぇ。…なのはちゃん、途中まで一緒に行きましょう♪」
「え?あ、はい。」

そう言うと、サイファーさんは私のお家に電話をかけて、少し遅くなるって言ってくれた。
そして、2人で夜の道を歩き始める。所々に街灯もあって道は明るい。

「綺麗な星空ねぇ。メビウスちゃんが好きそうな空ね。」
「メビウス君、空が大好きですよね!」
「そうねぇ。…ねぇ?なのはちゃん。」
「はい?」

サイファーさんは、夜空を見上げながら、優しく微笑んでいる。こうしてみると、メビウス君って本当にお母さん似なんだなぁ。

「メビウスちゃんはね…弱い子なのよ?」
「え…?」

メビウス君が…弱い?…どういうことだろう?メビウス君は、何時でも笑顔で…

「メビウスちゃんの笑顔は、弱い自分を隠す為の仮面なのよ。あの子は…優しくて、優しすぎて…弱いの。」
「……」
「けどね、少しずつだけど…仮面を本物にしてるし…強くなっているのよ?貴女のお陰ね。」
「私の…ですか?だって、私…何時もメビウス君に迷惑ばかりかけてます…。」
「ふふ。だからよ。」

サイファーさんが、笑いながら私の頭を撫でてくれる。…少し恥かしいな。
けど…なんで私のお陰なんだろう?

「なのちゃんは私が守るんだ。なのちゃんが寂しくないように一緒にいるんだ。…士郎さんが入院してたときに、メビウスちゃんがよく言ってたわ。」
「え…?」
「ふふ、なのはちゃんって言う大切な人が居るから、メビウスちゃんは強くて優しくなれるのよ。それにね、私達も…なのはちゃんを大切に思っているのよ?
メビウスちゃんの大切で大事な人は、私たちにとっても大切で大事なのよ。」
「サイファー…さん。」
「フェイスもね、そう思っているわ。恭也さんが…1人で無茶してたときがあったわよね?」
「あ…はい。」

お父さんが入院してたとき、お兄ちゃんは1人で我武者羅に修行してたときがあった。
あの時の私は、凄く…暗かったと思う。皆に迷惑をかけたくなかったから…何も言わないで、全部全部我慢してた。
けど…そんな私をメビウス君は…助けてくれた。暖かく…包み込んでくれたんだよね。

「その時に、なのはちゃん、メビウスちゃんに私は要らない子って…言ったのよね?」
「うう…はい、そうです。」
「それをフェイスが、聞いた時は本当に怒っていたわ。…その後に恭也さんを、本気で殴ったのよ。」
「えぇ!?お兄ちゃんをですか!?」
「そうよ~。まだ幼い子に気を使わせるとは何事か!!貴様1人の自己満足のために、家族を犠牲にするな!!その程度では、士郎さんにはどう足掻いても届かない!!って、説教までしたのよ?あの時はフェイスは、怖かったけど、かっこよかったわぁ。」

…そっか、だから次の日、お兄ちゃんは泣きながら私に謝ってきたんだ。ごめん、ごめんって…本当に泣いていた。
あはは、私もなんでか一緒に泣いちゃったんだけどね。
けど、そんな事があったんだ。なんだか…メビウス君だけじゃなくて、サイファーさんやスカーフェイスさんにも迷惑かけちゃってたんだなぁ。

「ふふ…。なのはちゃん、家の空が大好きな息子を、よろしくお願いするわね?」
「は…はい!!」

何時の間にか、臨海公園のすぐ近くまで来てたんだ。サイファーさんは、私を見送ると来た道を戻り始めた。
…けど、何がよろしくなんだろう?


臨海公園


メビウス君…何処に居るんだろう?
私は周りをキョロキョロと見渡して、考える。
そして、フッと前の時のことを思い出して、あの場所に向かうことにした。
2人で天体観測をした…展望台に。

「…なのは様?」
「あ、ガルムさん!!」
展望台に続く階段を見つけると、上からガルムさんが降りてきた。ここに居るって事は、メビウス君も一緒って事だよね。

「こんな夜分遅くにどうかなさいましたか?」
「あの!!メビウス君って…上に居るんですか?」
「えぇ、メビウス様は現在、展望台で天体観測を行っておりますが…。あぁ、なるほど。」

ガルムさんは、私のポーチを見つけると、少し笑いながら「我は少し散策してきますので…」って言って、階段を下りていった。
…えっと、2人きりにしてくれたって…事かな?
私は、少し顔を赤くしながら、階段を上っていく。


・ガルム・

メビウス様の事は、なのは様にお任せしてよいだろう。我は辺りを散策しながら、ある人物を探していた。

「……念話を飛ばしておいて、出てこないつもりか?」
「ちっ、本当にあんたはって奴は…」

物陰から現れる女性-アルフが、我を軽くにらみつける。

「お前が先に我を呼んだんであろうが。」
「あ~はいはい。そうですよ。あたしが呼んだんですよ。」

ぞんざいに返事をしながら、我の隣にアルフが並ぶ。…何故、並ぶ必要がある?

「…少し歩くよ。」
「別にここでもよいだろう?メビウス様達からは、充分な距離が…」
「良いから!!気分の問題だろう!!」

顔を赤くしながら叫ぶな。みっともない…。結局、我は何故かアルフと臨海公園内を散策する事になった。

「……」
「……」

……歩き始めて数分たつが…一言も話さんな、我らは。

「…だぁぁぁ!!あんた、なんかしゃべりなよ!!」
「無茶振りだな。第一、何か用事があって我を呼んだのであろう?」
「…あ~…そうだった。2つあるんだけどね。1つは、フェイトが明後日の早朝、ここで決着をつけよう…だってさ。」
「ほぉ…相手は、なのは様か?」
「当たり。流石のフェイトもメビウスと戦う気もしないみたいだし、そっちもだろ?」
「もちろんだ。…なのは様は強いぞ?」
「はん!フェイトも充分強いさ。」

明後日…か。それまでになら、メビウス様やなのは様達もベストコンディションであろう。まぁ、向こうも同じだろうが…

「あと…もう1つは…その、…り…とう。」
「…なんだ?」
「だから…あ…と…」
「…聞こえんぞ?」
「ああもう!!ありがとうって言ってるんだよ!!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶアルフと、耳を抑える我。…聞き取りにくいから、耳を近づけた瞬間に大声を出すんじゃない…!!
しかし…何故、ありがとう?

「昨日、ヒール使ってくれただろ?結局、礼をいえなかったから…」
「それで言いに来たのか?…なんとも、律儀な奴だな…」
「悪かったね!!」

そう言ってアルフはそっぽを向く。…しかし…なんとも…見てて面白い奴だ。
我は知らず知らずに、笑みを浮かべていた。

「あ……」
「ん?なんだ?」
「あんたって、そう言う風に笑うんだね。」
「…なに?」
「あたし達と居るときは、常に仏頂面だったじゃないか。」
「…放っておけ。」
「なんだい?機嫌悪くしたか?」

アルフが笑いながら、我の顔を覗き込む。…言われっぱなしは好きではない。
それに…我も始めてみたな。我はジッとアルフを見つめる。

「ほぉ…。」
「な…なんだよ?」
「いや、案外、可愛らしく笑うものだな…と。」
「んな!?」

音がなりそうな程に顔を赤くするアルフ。…まったく、見てて退屈しないな。

「ああああ…あんた、何を!!」
「あんたではない…ガルムだ。覚えておけ、アルフ。」
「それは今関係…って…へ?今…あたしの名前…」
「アルフ…だろう?」
「え~…あ~…うん。」

なんなのだ…本当に感情の突起が激しいな…。
っと、そろそろ戻らんといかんか。

「ではな、我は戻る。…伝言はしっかりと、伝えて置こう。アルフも早く帰ることだ。」
「言われなくても、分かってるよ…ガルム。」

こうして我らは、分かれる事にした。







「あ~……まだ顔が熱いよ…。どうしてくれんのさ…ガルム。」

その夜、アルフは少し時間を潰しながら、顔が冷めるのを待つ事になった。





・なのは・


階段を上りきると、展望台と空が広がっていた。
メビウス君は…居た!!

「メビウス君!!」
「うぇ!?…なのちゃん?」

展望台の端で、シートを広げて望遠鏡を覗き込んでいるメビウス君を見つけると、私は駆け寄っていく。
いきなり名前を呼ばれたのに驚いてか、メビウス君は変な声を上げる。あはは、おもしろい。

「えへへ、こんばんわ!」
「あ、うん、こんばんわ。こんな所まで…来てどうしたの?あ、座って。」
「ありがとう!」

メビウス君がシートをあけてくれたから、一緒に並んで座ると、すぐに私はポーチを開けて、メビウス君にクッキーを手渡す。

「はい!プレゼントなの!」
「あ…クッキーだ。…ありがとう。」
「うん!!」

お礼を言って笑うメビウス君だけど…やつぱり元気がない。すると、風が少し強く吹き始める。
うう…寒いなぁ。

「くしゅ…!」
「メビウス君?」
「ああ、大丈夫。少し肌寒かったから…毛布、あるから使おうかな。」

そう言ってメビウス君は、置いてあるリュックから毛布を取り出す。…そうだ!!

「メビウス君、毛布貸して!」
「え?良いけど。」

私は毛布を受け取ると、最初にメビウス君の背中に毛布をかけて…。そのまま、私はメビウス君の正面に回って、毛布に前を閉じる!!
前に一緒に毛布に包まったときと…同じ事を私はしている。けど、ほんの少し違うのは…

「えへへ、メビウス君の鼓動、トクントクンって聞こえるよ?」
「あはは…この体勢なら…しょうがないよ。」

違うところは…私とメビウス君が向かい合っているところ。私が抱きつくような形で毛布に包まっているの。
そのまま、メビウス君の胸に顔を擦り付ける。はふぅ…メビウス君だぁ…。メビウス君の匂いだぁ…。
って、違う!!ふにゃ~ってしたいけど、今は違うの!!

「…ねぇ、メビウス君。」
「なぁに?なのちゃん。」
「私…メビウス君に何が出来るのかな?」
「え?」

メビウス君の声はすごく優しくて、私を…包み込んでくれる。
心地よくて…凄く…凄く安心できる。

「寂しい時は、私がずっと傍に居るから。だから、我慢なんてしないで?思いっきり甘えて良いから、我侭言っていいから…。ね、覚えてる?」
「…うん、覚えてるよ。あはは、今聞くと、生意気なこと言ってるね。」
「ううん…そんなことないよ?メビウス君のお陰で…私は笑えたんだよ?」

メビウス君の胸に耳を押し当てる。聞こえるのは…確かな温もりと…鼓動。

「メビウス君は強いよ?けど…なんでも全部、1人で背負い込まないで…。今度は、私がメビウス君の傍に居るから…
我慢しないで、泣いてもいいんだよ?私が慰めてあげるし、一緒に泣いてあげるから…。」
「なの…ちゃん。」
「メビウス君が私を支えてくれたみたいに、私もメビウス君を…支えたいの!1人で…無理しないで?」
「あはは…そう…だよね。なのちゃんは…強いんだよね。」
「そうだよ?メビウス君のお陰で、私は強くなれたの!だから、今度は私が助ける番!!」
「…うん、ありがとう。なのちゃん、…これからもよろしくね。」
「うん!!…ねぇ、メビウス君。」
「なに?」
「…ぎゅーって…してほしいなぁ。」
「…うん。」
「えへへ…気持ち…いいなぁ。」


ねぇ、メビウス君?まだ…まだ、伝えられないけど…いつか伝えるね。…大好きだよ…。







あとがき

…時々、無性に甘いものを食べたくなりませんか?
ただのラブコメに1話使うという、作者の暴挙をお許しいただきたい。
タイトルの通り、母親は強く美しいと言う事と、恋する乙女は可憐で、どこまでも可愛いと言う事が伝われば…!!
さて…多分ですが…あと3~4で終わりに出来る!!予定…です。あぁ、どんどん伸びていく…



以下 返信


ユーロ様

まぁ…汁は…救いよう皆無ですから…。と言うか、こんな奴、本当に居たら作者が全力でぶちのめします。笑
ゲーセンでバーチャロン…やりましたねぇ。作者はコクピットタイプのバーチャロンをやりましたねぇ。
神操作のおばちゃん…物凄く・・見てみたいです。



ADFX-01G-2様

溺死してくれれば、多分、作者的には良かったんですが…物語的には、子悪党が消えてしまうというね…
まぁ、撃墜フラグをたてまくるでしょうネェ…。真の主人公(笑)と思ってますし…。笑


ダンケ様

娘をあんな風にされたら、誰でもブチギレるでしょうに。笑
プレシアとアリシアについては…少し考えがあるので…少しお楽しみに…。




[21516] 23話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/25 00:21
・なのは・

臨海公園の上空、そこで私とフェイトちゃんは向かい合っている。
まだお日様が昇る少し前だから、辺りは薄暗い。
フェイトちゃんは、静かにバルディッシュを握って、私を見つめてくる。
…にゃはは、なんだか、凄く綺麗で…凄く強い眼をしてるね。

「…私は…絶対に負ける訳にはいかない。母さんの…為に…!!」
「……」

リンディさん達にお説教してもらった後で聞いたけど、フェイトちゃんのお母さん、プレシアさんが関係してるみたい。
ずっと前に、違法な実験を行って行方不明になっていたみたい。
そのお母さんの為に、フェイトちゃんはジュエルシードを集めてたのかな…?

「…そっか。だけどね、フェイトちゃん。私も…負けれないの。」

レイジングハートを両手で握り締めながら、私は眼を閉じる。
魔法の事を教えてくれたユーノ君。何時も明るく笑って、楽しくさせてくれたオメガ君。呆れたようにしてても、私にアドバイスしてくれている閃君。
私の事をお姉さまって言って、懐いてくれたリリンちゃん。アースラで色々とお世話をしてくれたクロノ君にブレイズ君。
そして…私の近くにずっとずっと…一緒に居てくれたメビウス君。みんなが私を支えてくれて…ここに私は居ることが出来る。
眼を開けて、展望台の方向を向く。心配そうに…困ったように笑いながら、私達を見守ってくれているメビウス君が立っていた。
もう、心配性なんだからなぁ。

「私ね、少しフェイトちゃんが羨ましいの。」
「…なのは?」
「だって、こんなにメビウス君が心配してるんだもん。きっと、それだけフェイトちゃんが大切ってことなんだね。」
「わ…私はなのはの方が…羨ましい。」
「にゃ?」

フェイトちゃんが真っ赤にうつむきながら、メビウス君の方を見つめる。
あ、気が付いたのかな?メビウス君が、小さく手を振っている。

「…ずっと…一緒に居れるから…」
「…フェイトちゃん…。にゃはは、なら同じだね。」
「同じ?」
「うん!フェイトちゃんもメビウス君のことが…大好きなんだよね?」
「…うん。そうだよ、けど…言葉にする勇気は…」
「私もそうだよ。…まだ伝えれないと思うの。けど、大丈夫!!メビウス君なら絶対絶対、受け入れてくれるから!」
「…ふふ、そう…だよね。優しいもんね。」

私達は、一緒に笑いあう。…こうしてると、フェイトちゃんはやっぱり可愛いなぁ。うぅ…私も頑張らないと。

「だからね…。私も負けれないの。」
「なのは…。うん、そうだよね。…それじゃ、始めよう。」
「うん!…高町なのは!!全力全開でいきます!!」
「負けない…!!」


・メビウス・

あぁ…始まっちゃったけど…大丈夫かな…。
上空で交差する桃色と、金色の魔力光。それを、私はさっきから冷や冷やしながら見上げている。
後ろに立っているアルフも心配そうに、フェイトちゃんの事を見ているね。

「…落ち着かない…。」
「メビウス様、心配なのも分かりますが…少し落ち着かれては?」
「私もそうしたいけど…あぁ、2人とも怪我しなければ良いんだけど…」
「あんたって…本当に底抜けに、優しいねぇ。」
「それがメビウス様の美点だ。今更気が付いたか?」
「…ガルムも一々、ムカつく言い方するね…。」

後ろで、取っ組み合いを始めそうな2人は無視しながら、上空を見上げ続ける。
…幾度となく、魔法が交差して、ぶつかり合って消えていく。まるで花火みたいだ。
フェイトちゃんは、スピードでかく乱して攻撃してるけど、なのちゃんの強固な防御障壁を突破は出来ていない。
けど、なのちゃんも、フェイトちゃんのスピードに中々付いていけなくて、攻めきれてないね。

「フェイトちゃん…速すぎるよ!!」
「そう言うなのはこそ…防御が硬すぎ…!!」

どっちも、決め手が出ず…か。…いや、違う…フェイトちゃんが…仕掛ける?

『フェイト様の周囲に、高魔力反応を確認。…どうやら、必殺の魔法のようですね。』
「一気に決着をつけるのかな…。なのちゃん、フェイトちゃん、どっちも…無理しないでよ…。」

祈るように私は、空の2人を見つめる。
フェイトちゃんが詠唱を始めようとしたのに気がついたて、なのちゃんが誘導弾で妨害しようとするけど…その前にバインドで拘束されたね…。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ…

っ…!?周囲に多数展開されるフォトンスフィア。…物凄く…嫌な予感が私の背筋を走る。
一瞬、エクスを展開して、飛び出そうとした私の肩をガルムが静かにつかんで、押しとどめる。
それに気が付いたのか、フェイトちゃんが私に視線を向けて…けど、すぐに詠唱を再開する。


「バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト!!撃ち砕け、ファイアー!!」

発動の声が響き渡り、槍型の魔力弾がなのちゃんに襲い掛かっていく。
これは…流石に、なのちゃんの防御障壁でも…無理か…!?
幾度となく、爆音が轟き響き渡る。
それが、終わる頃には、フェイトちゃんの魔力は底を付きかけていた。正に…必殺って言うことか。
肩で息をしながら、爆発しで出た煙を見つめている。

「うう…ま…まだまだだもん!!」
「う…そ…!?」

…フェイトちゃん、その声には…なのちゃんには悪いけど、私も同意する…。
あれだけの攻撃を受けて…無事って…ありえないよ…。しかも、ほぼ無傷。

「それじゃ、今度は私の番だね!!捕まえて!!バインド!!」
「しまった…!!」

呆気に取られていたフェイトちゃんを、バインドで捕まえる。体力、魔力の消費ともに激しくて、身動きが取れないみたいだね。

「うわ…。なんだいあの魔力…。反則じゃないか…。」

アルフの言うとおり。なのちゃんが自分の周りに、展開している魔方陣は凄まじいの一言だ。太陽の光をあびて…見惚れるくらいに綺麗…。
集まる魔力も、維持する魔力も何もかもが桁外れ。…これがなのちゃんの…必殺か…。

「私の全力全開!!受けてみて!!いっくよおぉおおぉお!!!メビウス君直伝!!」

いやいや!!??私は何も直伝とかしてないけど!?

「一撃必殺!!スターライト!!ブレイカァァァァ!!!」

あ…そこなんだ…一撃必殺ね…。
レイジングハートから放たれた魔力は狙いたがわずに、フェイトちゃんへと向かっていく。



・フェイト・

なのはの桃色の魔力光が目の前に迫ってくる。避けようにも…もう私は動けない。
激流に飲まれ、全部貫かれたような衝撃を受けながら、私は力尽きて堕ち居てく。

(ごめんなさい…母さん…。約束…守れなかった…。)

けど、静かに…静かに海面に向かって堕ちていく私を誰かが…フワリと抱きとめてくれた。
何度も何度も感じた事のある温もりで……何時までも感じていたい温もり…。

「…フェイトちゃん、お疲れ様。」
「あ……」

眼を開けると、優しく優しく微笑む…メビウスの顔があった。
堕ちていく私を…受け止めてくれたんだ…。

「ふぅ…一時はどうなるかと思ったけど…。」
「心配してくれた…の?」
「当たり前でしょ?…さぁ、アースラに一緒に行こう?…キチンとお話すれば、みんな分かってくれるからさ…ね?」
「…うん。」

良い子、と言ってメビウスが更に笑みを深くする。
抱き止められているからか、彼の顔が近い……。あれ…?
私は、落ち着いて自分の状態を見る。……あ…う…この状態って…

「あぁ~!!フェイトちゃんだけずるい~!!」
「ずるいって…なのちゃんが撃墜したんだよ…?」
「けどけど!!お姫様抱っこしてもらってる!!」

…なのはの言うとおり、私はメビウスにお姫様抱っこをされている状態だった。
そっきから、心臓が聞こえちゃうかと思うくらいに、高鳴っている。
けど…なのはだって…甘えてるんだから…私も甘えちゃっても…良いよね…?
私は顔を真っ赤にしながらも、彼の胸に顔をうずめる。なのはが何か騒いでるけど…今は少し…甘えたい。

「もう、2人して甘えん坊なんだから…。」
「ずるいよ!!ずるいよ~!!」

5分位して、私はメビウスから離れる。正確には、なのはが引き剥がしたんだけど…。
そして、私はバルディッシュからジュエルシードを取り出すと、メビウスに手渡す。負けちゃった…からね。

「うん。確かに、さぁ、アースラに…!?」
「きゃ!?」

何故かメビウスが私を突き飛ばして、そのばから離れる。どうして…!?そう聞こうとする前に、彼のいた場所に襲い掛かる雷光。
そんな…これって…母さん…!?

「メビウス君!?」
「クロノさん聞こえますか!!すぐに2人をアースラに転移させてください!!」

なんで…どうして母さんが、メビウスを攻撃するの!?決着を付けにいきなさい、って言ったのは母さんなのに!?
なのはと私が、彼の近くに行こうとする前に、転移魔法に私達は包まれていった。


・ブレイズ・

「なのは及びフェイトの収容を確認!!メビウスも転移させろ!!」
「無理だよ!!あんなに動き回られていたら、転移させられない!」

エイミィの悲痛な声が艦橋に響く。
先ほどまでの戦闘は、俺達もモニターで見ていた。ジュエルシードの受け渡しまでは、うまくいってたんだが。
跳躍魔法での襲撃…くそ、考えてなかった自分の無能さに腹が立つ…!!海上でも似たような事があっただろうが…!!
だが、すぐに俺は頭を振って思考を切り替えて、端末を操作し始める。

「跳躍魔法の発射位置の座標を調べるぞ!!そこにプレシア・テスタロッサが居るはずだ!!」
「分かっている!!」

クロノの指示で、艦橋の局員達が端末や装置を使い、座標を割り出していく。
メビウスもそれが狙いなのか、さっきから回避に専念している。
…止まったと思えば、一瞬でトップスピードまで速度を上げて飛び回っている。
直進してたかと思えば、直角に上昇したり、下降したりとありえない機動をしているな。

「…慣性の法則というのがないのか…?」
『エクスには、慣性制御機構が搭載されてます。ある程度なら、無視できるはずです。』

なるほど…。スペシネフにも空間制御機構が搭載されているから、別段不思議ではないな。
っと、冷静に分析してる場合ではないか…!!

「座標軸特定完了!!メビウス君、退避して!!」
「了解…ぐぁ…!?」

エイミィの通信で、一瞬気を取られたのか、メビウスが被弾する。
いや…辛うじて回避したようだが…その衝撃でジュエルシードを落としたか…!?
すぐに拾いに行こうとするが…くそ…物質転移させられたか…。
狙いはジュエルシードと言うことか。跳躍魔法も既にやんでいる。…面倒な事になったかもな。
俺は、メビウスを転移させたのを確認すると、武装局員たちに戦闘を準備を始めさせる。
さて…どう動くか…。


10分後



「さて…モニターに映像が出るが…良いのか?」
「…はい。」

メビウスに寄り添うようにしていたフェイトがうなずく。全部見届ける覚悟は出来ている、と言うことか。
先ほど、フェイトから多少の事情は聞くことが出来た。…彼女の出生についても聞いたが…
アリシア・テスタロッサのクローン…か。だが、そんな彼女を娘と扱っているプレシア・テスタロッサ。
…願わくば、こちらの指示に従って欲しいものだ。そして、罪を償って、彼女と共に生きて欲しい。

「映像…出せ。」
「了解。」

モニターに映し出される映像は…薄暗くて陰気な雰囲気の広間。
そこの中央にプレシア・テスタロッサは佇んでいた。…サーチャーを撃墜しない所を見ると…話し合いつもりと言うことか?

「プレシア・テスタロッサだな。」
「…えぇ、そうよ。」

フェイトが何か口を開こうとするのを、メビウスが止める。…まぁ、今は話をややこしくしない方が良いだろうな。
クロノも、気にせずに話を続ける。

「多数の違法行為及びロストロギア強奪の容疑で逮捕する。直ちに武装を解除し、こちらの指示にしたがってもらいたい。」
「……断ると…言ったら?」
「遺憾ながら、こちらも実力行使を取るしかない。繰り返す、直ちに武装を解除せよ。」

クロノの呼びかけにも答えずに、佇むプレシア。…さて、どうしたものか。
流石のクロノも、少し戸惑っている。攻撃してくるなら、武装局員を送り込むのだが…何も行動しないとなると…困ったな。
クロノが静かに、フェイトに目配せをする。彼女に説得してもらうしかないと判断したんだろうな。

「母さん、もう、止めよう?まだ、間に合うから…。お姉ちゃんだって…」
「……黙りなさい…。」
「え…?」

冷たく響く無機質なプレシアの声。…なんだこれは?彼女の言っていた…優しい母親の声なのか…?

「貴方に母さん…だなんて呼ばれたくないわ。」
「な…んで…?」
「…フェイト、貴方も知ってるでしょう?所詮は、アリシアのクローンなのよ。分かる?つまり…ニセモノ。」

…しまった…。プレシアが行っていた実験は…クローンだけじゃない…!!ある種の蘇生術だった。
これ以上、フェイトに聞かせる訳にはいかない…!!
メビウスやアルフも気が付いたのか、すぐにフェイトを連れて行こうとするが…彼女が動かない。

「作り物でしかない貴方に…母さんなんて呼ばれる度に、虫唾が走ったわ。」
「あ…あぁ…。」
「作っても作っても…アリシアに1つも届かなかった。貴方は、偶然にうまくいっただけ。」
「貴様…!!」

クロノの怒りの声が漏れる。それだけじゃない、艦長やエイミィでさえ、怒りを隠していない。

「けど、もう良いのよ。貴方みたいなニセモノ。いえ、こう言ったほうが良いわね。失敗作には用はないの。
ジュエルシード…これがあれば、アルハザードにたどり着ける…。ほんの少しだけ、役に立ったわね。失敗作で…ニセモノの貴方でも。」
「……」
「だから、もういらないわ。何処かに…消えなさい。」

冷たく笑うプレシアを見たフェイトが、力なく崩れるのをメビウスとなのはが抱きとめる。
その眼は…暗くて虚ろだ。

「くくく…あははは!!」

…最悪な奴が笑い出しやがった…。シルヴァリアスがフェイトを指差して笑い声を上げる。

「だから言ったじゃないか!!そいつは化け物だと!!人の形をした人じゃないものだ!!だから、消すべきだと僕はいったんだ!!」
「…れ…」
「だが、貴様も同じだ!!こんな化け物をつくった貴様も、人間ではない!!ただの薄汚い犯罪者には、正義の鉄槌が…」
「黙れえぇぇえ!!!」

メビウスが、思いっきりシルヴァリアスを殴り飛ばす。魔力の補助でも使ったのか、軽く吹っ飛んで壁に激突させる。
…まぁ、あと少し遅ければ、俺が全力で殴り飛ばしていたがな。

「き…貴様、なにを…!!」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー。今すぐ出て行け。」
「クロノ!?貴様まで僕に歯向かうのか!?僕はただ、化け物は」
「出て行けといっている!!」

クロノがS2Uを解除して突きつける。どうやら、こいつもかなり頭にきているようだな。その眼光はかなり鋭い。
それに、気が付かないのか?シルヴァリアスには、多数の敵意の眼が向けられている。あの温厚そうななのはまで…だ。
小さく舌打ちをしながら、出て行くのを見届けずに、メビウスが静かに前に歩み出る。

「どうして…そんな事を言うんですか…?」
「事実よ。私はその娘を…」
「物としか見てないのなら…その【娘】なんて…使わないはずです。それとか…あれって言う筈です。」

静かに、力強く響くメビウスの声。

「……」
「フェイトちゃん…言ってました。料理を作ったら、美味しそうに食べてくれたって。笑って褒めてくれたって…。
そんな事、いらないものには…絶対にしないはずです。」

傷ついたのは、自分じゃないはずなのに、泣きそうなメビウスの声。
その声が届いているのか、プレシアも押し黙る。

「怪我をしてないのか…心配もしてくれたって言ってました。今度、一緒に料理をしようって…約束してたっても言ってました。
どうして…どうして、フェイトちゃんに本当の事を言ってあげないんですか?どうして、そんな冷たい事を言うんですか?」

視線をフェイトに向ければ、虚ろな表情で、メビウスを見つめていた。
なのはやアルフの呼びかけには、反応しないのに…。

「いらないなんて…うそですよね?」
「本当よ。ニセモノなんて…」
「なら、どうして…貴方はそんなに…泣きそうなんですか?」

ハッと息を呑むプレシア。…薄暗いモニターの向こうで、俺には表情は良く分からない。
何か言葉を続けようとしたが、突然映像が乱れる。
なにがあった…!?

「どうやら…時間が来たようね。…さようなら。」
「プレシアさん!!」

メビウスの声が届く前に、映像が途切れる。ち…一体、なにがあった…!?

「え…。と…時の庭園内で戦闘を確認!?」
「どこのどいつだ!?」
「し…シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナーです…!!」

ふざけるなあああぁぁ!!!!!!!!!!と叫びたい俺のクロノ。
転移ポートに連絡を入れれば、無理やり起動させて、出撃したらしい。
額に青筋浮かべるクロノと、口元をヒクヒクさせる艦長。俺は…小型端末を握りつぶしている。

「ジュエルシードの発動を確認!!次元震も発生している模様です!!」
「各員出撃!!クロノとブレイズ君も出て!!私は次元震を抑えるわ!!」
「「了解!!」」
「わ…私も手伝います!!」


なのはがバリアジャケットを展開して、付いてくる。
クロノが端末で3姉妹と閃達にも連絡を入れているから…戦力は申し分ないか…!!






時の庭園


「ごめんなさい…ごめんなさい…フェイト…!!!」

両手で顔を覆いながら泣き崩れるプレシア。
思い出されるのは、崩れ落ち、虚ろな表情のフェイト。
こんな方法しか思いつかなかった。非道な母親に利用された哀れな娘。愛する娘を助ける方法は、これしかなかった。
だが…代償はあまりにも大きかったかもしれない。フェイトの心は壊れかかっているのかもしれない。
…しかし、犯罪者として、暗い場所で生きるよりは…時間がかかっても、明るい場所で生きていくほうが数倍良い。

「…ここまでが私の役割…後は貴方の役割よ…。メビウス・ランスロット。」

人の為に、泣いてくれたメビウス・ランスロット。
彼ならきっと……フェイトの心を治してくれるだろう。

「さぁ…最低な母親らしく……迎えるとしましょうか…。」

悲しみを捨て去り、彼女は歩く。愛する娘の為に…母親は修羅にもなれるのだと言う事を…正銘してみせる。






・メビウス・



「メビウスさん。」
「リンディ…さん。」

皆が出て行った後、動けない私に優しく声をかけてくれる。

「…今は泣いても良いのよ?大変な時だけど…貴方もつらいでしょう?」
「いえ、私は…まだ泣けないです。」
「…強いのね。ごめんなさい、貴方を利用するみたいな事を…最初に言ったわね。」
「あはは、後で気が付きましたよ。父さん達の名前が…必要だったんですよね?」
「…えぇ、けど、これだけは信じて。貴方達が協力を拒否しても、無理強いはしなかったし、フェイトさんの事は穏便にすませる気だったのよ。」
「分かってますよ。…リンディさんは優しいですから。」

この人も母さんと同じ…凄く優しい母親だって事は、私にも理解できる。
だから、私も素直に協力する気になったし、ブレイズさん達だって信頼してるんだからね。
笑顔を浮かべながら、リンディさんが私の背中を押してくれる。目的地は…決まっている。


・医務室・

「フェイトちゃん。」
「…メビ…ウス…」

よかった…。呼びかけには反応するね…。
私は静かに、フェイトちゃんのいるベットの近づく。
アルフはここにつれてきた後に、「プレシアを殴りに行く!!」と言って、庭園に向かったらしい。
…彼女なりに、何か思うところがあったんだろうね。

「私…要らない子…なんだって…どうして…どうして…。」
「うん…。」
「母さんに笑って欲しいから…どんな事でも一生懸命にやってきた…。母さんとお姉ちゃんと一緒に暮らしたいから…」

フェイトちゃんの口から零れてくるプレシアさんとの思い出。縋り付く様に…思い出が消えないように…零れてくる。
魔法がうまく行ったときに褒めてくれたこと、病気になったときに必死に看病してくれたこと。眠れないときに一緒に眠ってくれたこと。
一緒なら、全然さびしくなかったこと。沢山の思い出を、私に話してくれた。

「けど…全部…いらないって…言われちゃった…。どうしよう…メビウス…!!私、母さんに捨てられたら…なんにもないよ…。何処にもいけないよ…!!」

フェイトちゃんの瞳から、大粒の涙がこぼれてシーツをぬらしていく。
私はソッと優しく抱きしめて、背中をポンポンと叩く。

「…フェイトちゃんは…プレシアさんの事…好き?」
「……好きだよ…だって…だって、私のおか…あさん…だから…。」
「そっか…。なら、その想いを…言葉にして、プレシアさんに伝えよう?」
「つた…える?」
「そう…。お母さんの事が好きだって…一緒に居ようって…伝えなくちゃ」
「…でも、それでもいらないって…言われたら。」
「その時は…私と家族になろう?」
「家族…に?」

腕の中で、フェイトちゃんが驚いたような表情をする。
前に母さんが言ってたからね。家族が増えても大丈夫って…。

「うん。そうだなぁ…私の妹になっちゃえば良いんだよ。」
「メビウスの…妹…?」
「うん。…それならずっと…ずっと一緒居れるからね。」
「けど…私は…人間じゃなくて…クローンなんだよ…?ばけも…ひゃ!?」
「…そんな悲しいこと言わないで。」

化け物。そう言おうとしたフェイトちゃんを、力いっぱい抱きしめる。だめだよ…。そんな事は…絶対に言っちゃ駄目。

「約束するから…私が絶対に…フェイトちゃんを必要にするから…。絶対に離さないから…ずっと一緒にいるから。」
「メビウス…。」
「だから…もう2度と、自分が化け物なんて…要らないなんて言わないで…。約束だよ?」
「…良いの?私…ずっと…ずっと…メビウスの傍にいても…良いの?」
「うん…。良いよ。だから、今は…泣いて…ね?
「…メビウス…メビウスメビウスメビウス…!!」

背中を手を回して、フェイトちゃんも抱きついてくる。
優しく抱きしめれば、聞こえてくる泣き声。…辛かったんだね。
背中をなでながら、私はフェイトちゃんが落ち着くまで、ずっとそうしてあげる事にした。

「落ち着いた?」
「うん…ありがとう。」
「それじゃ…伝えにいこうか?プレシアさんに…好きだって事を…ね。」
「…うん、この気持ち…伝えてみる。」

そういって微笑む【フェイト】の手を私が握ると、照れながらも握り返してくれる。

「さぁ、行こう!!フェイト!!」
「うん…!!お兄ちゃん!!」












あとがき


…あぁ、3時間かけてこの程度~。泣けますね…
予定では、あと2話…!!
…そして例の計画もあと少しで…成就する…!!
次回は意外な人が本領発揮!!



ユーロ様

あぁ…容赦なく、叩き落しますからね…。
X2の散弾は…泣けますよね。モルガンのを見習えと言いたいです…!!


名無しの獅子心騎士様

いえいえ、お粗末さまでした。
今回もKYすぎる汁なんとかさん、如何でしたでしょうか?
まだまだ、こいつのKY差とウザさに磨きをかけて生きたいと思います!!


ダンケ様

修羅の皮を被りましたね。…作者の実力ではこの程度…なんですがね。泣
救いの手を差し伸べる人は居ますが…この物語の人物では…ないですね。
ずっと前に書いたおまけが仄かに…関係してるかもしれません。笑



[21516] メイン 【偉大なる母の愛。】 サブ 【凡人の本気。】
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/25 23:58
・ユーノ・

「A班は遊撃!!B班は現地の確保だ!!C班は後方援護!!2人で1体の敵に当たれ!!単独戦闘は禁止だ!!」
「「「了解!!」」」

スペシネフで傀儡兵を切り伏せながら、ブレイズが指示を飛ばしている。
僕達は、時の庭園の門前で足止めを食らっている状態だ。傀儡兵の数が多くて、思うように進めない。

「おい、オメガは何処だ!?」
「どぉおぉりゃあぁあ!!」
「あの馬鹿…突出し過ぎだっての!!」

閃が呆れたように、前線を眺める。なんか……傀儡兵が…纏めて吹っ飛んでるように見えるんだけど…

「ねぇ、閃。オメガって…ベル」
「ユーノ、もし、あいつの戦い方をベルカ式とか言ったら…ベルカ魔道師を敵に回すぞ?」
「……」

さて、僕は黙って、後方からサポートしようかな。閃も空中に開いたウィンドウを何か操作している。…なんか物凄く…手の動きが速い。
視線を戦場に戻すと、シルヴァリアスが魔力剣で傀儡兵を両断している。
……彼が先走らなければ、こんな事にならなかったのに…

「フラガラッパあぁあ!!雑魚はどけ!!」

フラガラッパの数本を、回転させながら放って、傀儡兵を纏めて砕いていく。
…性格に問題あるだろうけど…魔道師としては一流みたいだね。アスカロンで切り伏せながら、上空に飛び上がって…

「軍神の槍よ!!雷神の怒りよ!!悪しき者に裁きを!!グングニル!!」

槍のような魔力弾を作り出て、雨のように降らせていく。…感心したくないけど、かなりの数をそれで撃破してる。
けど…戦っているのが、他の局員達と連携の取れない密集地帯だから…大して意味がない。

「ち…3姉妹は上空から爆撃!!C班も長距離砲撃だ!!」
「分かったわ。行くわよ、デボラ!ジェニファー!!」
「あいよ!!久々に腕が鳴るね!!」
「それじゃ、皆様、行ってきますね。」

シルビーを筆頭に、3姉妹が上空に飛び上がって、高速で動き回る。
凄い…フェイトやメビウスにも勝る速度だ!!魔力弾を前線で戦う局員達の前に、落としながら上空に飛び回る。
いや、飛んでいるというより…舞ってるみたいだ。

「ちっ…クロノ、敵増援を確認!!何処かに供給源があるはずだ!!ブレイズ、総数30だ!!」
「やはりか…、閃、割り出しを頼めるか?」
「了解。…んで…あいつらはまだか!?」

クロノがシューターで傀儡兵を一体ずつ確実に撃破して、周囲に目を配る。
ブレイズが部隊指揮を執っているから、彼も単独で動きやすいんだよ。僕?僕は、閃の近くで障壁を展開している。もしもの時のためにね。

「…閃お兄様、私も戦いますわ!!」
「うぉわぁあ!!??リリン!?なんでこんなとこに!?」

閃並みにじゃないけど…僕も驚いた。彼女はアースラで待ってるはずなのに…

「梃子摺っているのですよね?なら、手を貸しますわ!!」
「貸すったって…お前、戦えるのか…?」
「はい!!任せてください!!」

戸惑い気味の閃に、元気に返事をしながら、リリンがポケットからハート型のデバイスを取り出す。

「ビビットピンクにナイトな私!!リリン・プラジナー、参りますわ!!」
「「………」」

僕と閃は2人して、呆気に取られている。リリンがバリアジャケットを展開するのはいいんだけど…
フリフリスカートで腰には大きなリボンが結んである。……えっと凄く…女の子らしい…って言えば良いのかな?
手にはレイピアのようなデバイスが握られている。

「それでは、行きますわ!!」
「はっ!!リリン、待ちなさい!!そんな格好で飛び回るな、見えるだろ!!こら!!少し俺の話を聞け!!ちょっとぉ!!」

正気に戻った閃が呼び止めようとしてるけど…無理じゃないかなぁ。
…いや、別に僕はなにも見てないよ?だから、閃…そんなに睨まないで欲しいんだけど…





・ガルム・

「まったく…数が多くて面倒だな。」
「ああもう!!邪魔だね!!」

我とアルフが背中合わせで、傀儡兵どもと対峙する。周囲には、我らが砕いて、朽ちた傀儡兵の残骸が散らばっている。
近づいてきた1体を回し蹴りで破壊し、その回転を利用し、後方にいたもう1体に飛びまわし蹴りを叩き込んで粉砕する。
アルフも1体ずつ破壊していくが…ちっ、きりがない。

「…ほぉ、なかなかやるではないか。」
「そう言うあんたこそね。」

再び、背中を合わせ、軽口を叩き合う。ふ…以前の我らではこうもいかなかっただろうな。
やはりメビウス様、そしてフェイト様のお陰…なのだろうな。アルフの存在が頼もしく感じる。

「…フェイト…大丈夫だと良いんだけど…」
「なんだ?心配なのか?」
「当たり前だろ。フェイトは、あたしの大切なご主人様なんだからね。」

まぁ、その気持ちは我にも理解は出来る。使い魔である以上、主とともに在るのが常だ。
それに、魔道師にとって、使い魔は使い捨ても出来る存在。だが、メビウス様は我を家族として迎えてくれた。
ならば、我もその想いに答えねばならぬ。それが、我が絶対の忠誠を誓っている所以。

「案ずるな。メビウス様ならば、フェイト様を救ってくれる。」
「はは、あんたは本当に…メビウスを信じてんだね。」
「当然だ。我の主だぞ?」
「…それもそうだね。なら、あたしも…信じてみようか。あんたの…ガルムのご主人様をね!!」

そう笑い合うと、我らは再び傀儡兵の無理に飛び込む。
さて…久々に我も…本気を出さねばな。
両手に魔力を収束し、2本の鞭を作り上げ、振るう。それが傀儡兵に直撃するたびに、縦に、横に両断していく。

「アルフ!!しゃがめ!!」
「うわっと!?」

アルフがしゃがむのを確認すると、我は身体を回転させ、鞭を振るう。周囲にいた10数体の傀儡兵はこれで一掃できたな。
鞭が通った後は、焼き切れた様な断面の傀儡兵どもが転がっていた。

「あんたねぇ…。危ないじゃないか!!」
「だから、しゃがめといっただろう?」
「もっと早くに良いなよ!!第一、今のはなんだい!?」
「…ヒートロッド…とでも名づけておこうか。さぁ、無駄口を叩く暇はないぞ!!」

続々と沸いてくる傀儡兵に向き直ろうとした瞬間、上空から見慣れた魔力光が降ってきた。
…来ましたか…我が主よ!!


・閃・

「ラジカル・ザッパー!!」

前線を奔る蒼い砲撃魔法。数10体の傀儡兵を纏めて消し飛ばしていく。
まったく…やっと登場かよ。

「遅いぞメビウス!!遅れてきた分、きっちり働けよ!!」
「はは、閃、厳しいよ。」

やっと現れた主人公、メビウス・ランスロットに俺は軽口を叩く。
ったく、こいつがいれば、最初から苦労なんかしなかったんだろうがなぁ。
隣にはフェイトが寄り添うようにして立っている。ん…顔色も良いみたいだし…もう大丈夫だろうな。

「始めまして、帝 閃だ。まぁ、詳しい自己紹介は後にしようぜ。」
「あ…はい。フェイト・テスタロッサ…です。」
「いや…敬語じゃなくても良いんだぞ?同い年だし…」
「え…?そうなの、お兄ちゃん?」
「うん。閃は私と同い年だよ。」

ったく…俺が年上に見えるのかよ。まぁ、転生者だし…もしかすると、そんな雰囲気が出てたのかもしれないな。
…って…おいおいおい。まてマテ待て。いま…フェイト、なんて言った…?

「なぁ、フェイ…」
「ディバイン…バスタァァァァァ!!」
「ビビットピンク・エクストラ!!」
「うぉぉ!!??」

叫び声とともに、奔る2つの桃色の魔力光。…うへぇ、こっちはこっちで、凄まじい威力だな…。
ハート型の魔力と、魔力そのものの塊が、まとめて吹き飛ばしていく。

「あ!!フェイトちゃん!!」

いち早く、気が付いたなのはがこっちに飛んでくる。…あぁ、凄く安心したって顔してるな。
ったく・…こっちの主人公もお人好しで…優しすぎるな。まぁ、それが良い所なんだろうけど。

「なの…ひゃう!?」
「もうもう…心配したんだよ!?話しかけても返事してくれないし!!ずっと下向いたばっかりだし!!」

なのはが勢いそのままに、フェイトに抱きつく。本人は、精一杯心配してたことをアピールしてるんだろうが…。
フェイトが眼を白黒させてるぞ。そこに…加わるもう1つの人影。

「フェイトォォォ!!」
「あ…アルフまで!?」

傀儡兵をなぎ倒して、こっちに走ってくるアルフ。いや、お前…最初からそれやってくれよ…。
一緒に戦ってたガルムが、ポツーンと呆気に取られてるぞ…。
とりあえず俺は後ろで、なのはとアルフにもみくちゃにされているフェイトを放っておいて、メビウスに声をかける。
あの単語についてだな。

「…さっき、お前の事…お兄ちゃん言ってたけど…。まさか…」
「え?あぁ、フェイトは私の妹になったんだ。」
「…妹って、お前…良いのかよ。そんなに簡単に決めて…」
「ん~…まぁ、大丈夫だよ。」

いや、お前…そんなにあっけらかんと重要な事決めて良いのか?
義理の妹なんて…それなんてエロゲだよ。

「それに閃だって、リリンちゃんにお兄様って呼ばれてるでしょ。」
「お兄様ぁぁ!!私の活躍、見ててくださいね!!」
「………」

しまったあぁああぁぁあぁぁ!!!!!!!!人のこと言えねぇえぇぇえ!!!
い…いや!!俺の場合はただ単にお兄様って呼ばれてるだけで、決してそう言う関係ではないのであって…。
ええい!!誰に言い訳してんだよ俺は!!笑いをこらえているユーノを軽く睨みつけ、俺は無言でウィンドウの操作を再開する。

「さて…前線を押し上げてこないとね。」
「突出してる馬鹿がいるから、援護してやってくれ。」
「…どっちの方を言ってる…?」
「決まってんだろ。俺達の親友のほうだよ。」
「…だよね!!」

軽く親指を立てて、戦場に向かうメビウス。蒼い魔力光が尾を引いていくが…って、おいこら。
そのまま魔力光が消えないで…下にいた傀儡兵に攻撃してるんだが…爆撃か!?

≪メビウス、お前、なんの魔法使った?≫
≪SFFSだよ。飛んだ後の魔力光に攻撃属性を持たせたんだ。≫

SFFS…本当に戦闘機の武装を再現してやがる…。確かに、こんだけ密集してるなら、効果は期待できるだろうな。

「って、お前ら!!さっさと戻れ!!ここが片付かなきゃ話にならないっての!!」
「わ!?…そうだね、行こう!!フェイトちゃん!!」
「うん!アルフ…また一緒に付いてきてくれる?」
「当然だろ、フェイト。どこまでも付いていくよ!」


後ろで未だに抱き合ってる3人を叱責しながら、左右と正面に展開しているウィンドウを再び操作し始める。


「ったく…俺はお前らと違って凡人なんだぞ…。少しくらい、楽させてくれ…」
「…いや、閃、3つのウィンドウを操作してる時点で…凡人じゃないと思うよ…?」

そうなのか?ユーノの言葉を聞き流しながら、眼はウィンドウから離さない。
左右のウィンドウは両手で操作してるし、正面のウィンドウは、俺の眼の動きで操作が可能にしてある。
斜め上には、小型のウィンドウで前線の状態が逐一、報告されるようになっている。

「ブリッツトルネード!!」
「パワーウェイブ!!」

メビウスがエクスを構えた状態で、コマのように回転して傀儡兵をなぎ倒し、その勢いのまま上昇してラジカルザッパーで周囲を掃討して行く。
慣性制御が搭載されているならではの動き…か。高速で飛び回りながら、魔力弾で爆撃なんかをしている。
オメガは…ただ単純に、殴る蹴るで破壊してるな…。地面を殴りつけると、魔力が柱のように一直線に突き進み、さえぎる敵を破壊していく。
…なんつう技だよ。あいつの場合は、魔法というより技だな。…しかも、なんかの格闘ゲームで似たような技を見たことあるぞ…。
別ななウィンドウに視線を向けると、クロノとブレイズが映し出されている。
こいつらは…別段、派手な魔法を使ってはいないが、撃破数は1番だろうな。確実に堅実に撃破してるようだ。
ブレイズがスペシネヌで切り伏せると、クロノがシューターで援護、もしくは牽制している。

「サンダーボルト。スペシネフ、ショットガン。」
『イエス、マイロード。』

掃射しながら、スペシネフの銃身部をスライドさせると、放たれる散弾の魔力弾。弾幕が半端じゃないほどに凄いな。
確かに…ショットガンってのも理解できるな。…空間制御とかそれ以外にも、長けてるなブレイズは。

≪閃、増援の位置情報は特定できたか!?≫
≪っと、特定できたけど…結構、奥だぞ?≫
≪…仕方がない、クロノ、俺がここを抑えるから、突撃してくれるか?≫
≪現状、それしかないか…。≫

念話で2人と相談しながら考える。確かに、なのはやフェイト達が纏めてなぎ払っても、後から後から沸いてこられては、流石に洒落にならない。
それには、傀儡兵を作っているだろう施設を破壊しないといけないんだが…庭園内の奥まった場所にある。
…仕方がないか、あれを使う。

「よーし、レーベン、派手にやるぞ。」
『お、やっちゃいます?むしろ殺っちゃいます!?』

興奮気味の相棒に軽く笑って、ウィンドウを切り替える。
さてと…出てきたターゲット全てにロックカーソルを合わせて…っと。

「閃…凄いことしてるね…」
「そうか?」
「…一瞬で100体以上をロックするなんて、考えられないよ…。」

いや、ユーノ、驚くなって。多分、お前でも出来ると思うぞ?

「さて…いくぞ、俺の最強魔法!!各員に告ぐ!!その場を動くなよ!!」
『いっきますよおおぉおおぉ!!!』
『「アサルト・セル!!」』

俺の有りっ丈の魔力を上空に撃ち出し、ロックした傀儡兵に襲い掛からせる。全部の標的をロックしたはずだから、恐らくは1発も外れは出ないだろう。
まさに天から降り注ぐもの…って所かな。

「す…凄いよ閃!!…閃?え…ちょっと!?」

はしゃぐユーノの声を聞きながら、俺は地面へとダイブする。もう…全部使い切っちゃいましたよ…。




・ブレイズ・

「これから庭園内部を攻略する。3姉妹とB班は入り口を維持。僕とユーノは動力炉とジュエルシードの確保だ。
A班とC班は、傀儡兵の製造施設の破壊だ。」
「「了解。」」
「シルヴァリアスは…どうします?」
「…あんな奴のことなど知らない。放っておけ。」

庭園内部でクロノが簡単に役割分担を支持する。閃の活躍で外の傀儡兵は一掃できたが、まだ内部の攻略が残っている。
ちなみに、閃は魔力を使い切って倒れてしまった。これ以上の戦闘続行は不可能と判断して、アースラに帰還させた。
その付き添いでリリンも撤退したから…今頃、医務室で手厚い看護を受けているのかもしれないな。

「ブレイズ達は…プレシア・テスタロッサの確保だ。」
「任せろ。そっちも気をつけろよ」
「あぁ、ブレイズも…油断するなよ。各員、気を引き締めろ!!行くぞ!!」
「ユーノ君、頑張ってね!!」
「うん、なのはやメビウスたちも…無事で!」

クロノと軽く拳をぶつけ合い、それぞれの分担場所に向かって進み始める。

「フェイト、案内を頼めるか?」
「うん、こっち。通路が遮れてなければいいんだけど…。」

庭園内部は所々が崩れ落ち、何時崩壊しても可笑しくない状況だ。
しかも、虚数空間の穴が開いているから、下手に飛行魔法を使うわけには行かない。
結局は、徒歩で移動するしかないんだが…。フェイトの心配も杞憂に終わった。

「うなれ!!パイルバンカー!!」
「…便利だな。」
「あ…あはははは…。」

崩れた壁で通路が遮られていようが、オメガが問答無用でパイルバンカーで粉砕する。
…まるで削岩機だ。途中で、傀儡兵に遭遇するが、なのはやフェイトがピッタリのコンビネーションで撃破していく。
メビウスに頼りっきりの2人かと思ったが…考えを改めなければな。
彼女達も…立派な魔道師だ。手を取り合う2人を見て、メビウスも笑顔を深めている。

庭園内部 大広間


「ここまで…きてしまったのね。」
「…母さん…!!」

プレシアと対峙する俺達。ここには既に、虚数空間に通じる穴が出来、天井が崩れてきている。
彼女の後ろには、フェイトのオリジナル、アリシアが入ったカプセルが鎮座していた。
一歩、フェイトが歩み出ると、彼女の足元に撃ち込まれる雷光。

「失敗作の分際で…ここまで来たのね。それに、母さんなんて呼ばないでといってるでしょう?」
「……」
「目障りなのよ!!アリシアの偽者の癖に…母さん母さんだなんて!!」

フェイトはただ、無言でプレシアとアリシアを見つめている。メビウスやなのはも、何も言わずに佇んでいるだけだ。
…俺も…何も言わないさ。

「…それでも…良い。私は、母さんの…プレシア・テスタロッサの娘で居たい!!」
「っ…!!」

俯いた顔を上げると、眼に涙を溜めて叫ぶフェイト。

「母さんが一緒なら…私はどんな事にも耐えられた!!母さんの温もりがあったから夜も恐くなかった!!」

耐え切った感情があふれ出るかのように…フェイトはプレシアに訴える。

「笑ってくれたから、私も笑うことが出来た!!私の名前を呼んでくれるたびに…凄くうれしかった!!」
「だ…だからなんだというの…?今更、貴方を…娘だと思えと…?ふん、作り物の分際で…」
「作り物でも、偽者ではなんでも良い!!それでも、私は…私は母さんの娘なの!!」
「…どうして、こんなにも私が嫌っているというのに…!!」
「だって…だって…私は母さんの事が…大好きだから!!!ずっとずっと一緒に居たいから!!」

大広間に響くフェイトの泣き声。…母親…か。俺の両親は…ベルカ戦争で戦死しているからな…。こんな事言う相手なんか…いない。

「…貴方は…どうして、こんな私を…好きでいてくれるのよ…。」
「かあ…さん。」

プレシアが泣き崩れる。口から漏れるのは…悲しいまでに…母親の言葉。

「私だって…貴方が…フェイトが大好きよ!!愛しているのよ!!けど…もう巻き込めないじゃない…。
私1人の欲望の為に…貴方の未来を奪うことなんて…私には出来ないのよ…!!」
「だから…私をいらないって…」
「そうよ…。貴方が私を嫌いになっても…私を憎んでくれても、光の当たる場所で生きてくれれば…それでよかった!!
貴方が私を忘れて、生きてくれれば…私はそれで充分だった!!…ごふ…!!」

っ…!!吐血しただと…!?彼女が重度の病を患っていると聞いたが…ここまで進行してるとは…!!

「母さん!!」
「来ないで!!」

駆け寄ろうとしたフェイトの足元に炸裂する雷光。

「貴方は…非道な母親に利用された悲しい娘。…良いわね…。」
「どうして…私は母さんが一緒に居てくれるなら耐えられる!!だから、一緒に!!」
「…貴方が…メビウス・ランスロットね。」

プレシアがメビウスを見つめる。彼も静かに「はい。」と返事をして、フェイトの傍に歩み寄る。

「……貴方は…フェイトを守ってくれるのかしら?幸せに…してくれるのかしら…?」
「当然です。彼女は…私の家族ですから。」
「そう…家族…ね。ふふ、私も…アリシアとフェイトと一緒に…笑って…料理して…眠りたかったわ。」

そういってにこやかに微笑み、アリシアのカプセルへ歩き始める。その顔は…慈愛に満ち溢れた、聖母の顔。

「…フェイト、こんな身勝手で…最低な母親からの最後のお願いよ…。」
「…幸せになりなさい…」

彼女の足元に…カプセルと一緒に虚数空間が開き…堕ちていく…。
「お母さぁあぁぁああぁあぁん!!!!」




・メビウス・

…私は手を力いっぱい握り締めていた。…助けれなかった事と…悔しさで…

「メビウス君…。」
「なの…ちゃん。」

ソッとなのちゃんが私の手を握り、指を一本ずつ優しく離していく。

「落ち込んじゃ駄目だよ。フェイトちゃんの事…支えてあげなくちゃ。」
「…そう…だよね。」

アルフに抱きついて泣きじゃくるフェイトちゃんを、見つめる。
…アルフも…分かってたんだね…。プレシアさんがこういう行動を取るって事が…。
何か言葉をかけようとした瞬間に、庭園が揺れる!?

「…次元震の活性化か…?至急脱出するぞ!!」
≪ブレイズ、聞こえるか!?厄介な事になった!!≫
≪クロノか、厄介なことってなんだ!?≫
≪第1種…せ…ぐぁぁ!?≫
「おい、クロノ!?クロノ!!…急いで脱出するぞ!!」

焦り気味にブレイズさんが、指示を出す。…クロノさんとの通信がなんで突然切れたんだろう…?
崩壊を始めている庭園内部を私たちは走り出す。堕ちてくる破片は、ガルムが鞭で払いのけてくれるから助かる…!!



庭園 入り口付近。

「ここまでくれば…」
「ぐおおぉぉお!!!」
「うぉ!?」

突然、上空から落ちてくる人影。…シルヴァリアス君!?
バリアジャケットがボロボロになっている…!?上空に眼を向けると…

「ジュエルシード…?」

9個のジュエルシードが円陣になってまわっている。そこから、海上の時とは比べ物にならないほどの、魔力があふれ出ていた。

「クロノぉぉ!!」
「ブレイズか…!!他の局員達は退避させた!!君達もすぐに退避…ちぃ…!!」
「うわぁ!?」

魔力流にクロノさんとユーノが吹き飛ばされる!?

「大丈夫ですか?クロノ執務官。」
「しっかりしろよ!!」

けど、地面に激突する前に…シルビーさんとデボラさんが受け止めるのに成功した…。ふぅ、よかったぁ…。

「あらあら~…けど、これは大変な状況ですね。」
「あぁ…最悪の状況だ…!!」
「ブレイズさん…一体…?」

そのとき、ジュエルシードがまばゆく光り始め、回転する。
それが徐々に速くなり…何かを形作るようにして…砕ける…!?

「やはり…奴らか…」
「あぁ…第1種接触禁止目標…。」

そこに現れたのは、2つの人型。1つは男の人の形で…1つは女の人の形をしている。


「戦闘結晶構造体…アジムとゲラン…!!異界の破壊者だ」








帝 閃 所持レアスキル、超演算・思考回路及び処理能力上昇。並行計算速度上昇
なぉ、常に発動しているので、彼の魔力量が少ない原因でもある(現在、本人には使用している自覚はない。)



あとがき

ふははは…閃君も転生者として恥じぬ活躍!!…だと思います。
そして最後の最後で出てきたアジムとゲラン。さて、彼らとどう戦う!?どうする作者!!
遂に…次回で最終回を迎える無印…地味に時間がかかって申し訳ないです…!!
現在、作者の妄想力フィーバー状態ですので…早めに更新したいです!!




Corporal様

画面外と言うか…存在自体、消しちゃったほうがいいと思う、作者です。
IBISの台詞…分かりましたか。カッコいいボスなのに、今一、性能が…泣


ユーロ様

いつかは…その台詞、言っちゃうでしょうね…。主に3期辺りにでも…
お父さんすげぇ!!F-15Eのキーホルダーとか…物凄くうらやましい…。
ラプターのプラモ…俺、この小説書き終わったら、メビウスカラーで作るんだ…。


真っ黒歴史様

母親の愛とはこれほどまでに美しい。そう言う想いが一応、こめられています。
父親は逞しく背中で語り、母親は優しく包み込む。作者の両親論です。苦笑


ダンケ様

一応は…予定ではそのつもりでいました。その方が後々、書きやすいことも出てきますので…主に入学前とか…。
ん~…現金な娘に見えましたか、少し気を付けるようにします。後でアルフとのモフモフ話でも書いて見ましょうか。
リニスは消滅したという事にしてます。使い捨てじゃなくて、寿命とか、そう言うので…。
中二はAKY(あえて 空気 よまない)で突き進みます。本人はあれでなのはが惚れてくれると信じているようです。



[21516] 一期最終話 ただいま、と、おかえりなさい。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/28 21:41
・メビウス・

「これは…流石に拙いな…。」

ブレイズさんが障壁を展開しながら呟く。アジムとゲランが出現してから、次元震が更に大きくなり、しかも虚数空間に通じる穴が大きく開いてきている。
脱出しようにも、魔力流とアジム、ゲランの攻撃で身動きが取れない状況…!!
ブレイズさん、なのちゃん、ガルム、オメガの4人で強固な障壁を作り上げて、なんとか防御してる状態だ。

「クロノさんにユーノ、大丈夫…?」
「なんとか…だが、魔力が底を付きかけている…。」
「僕も…ごめん、こんな時に…」

私はフィジカルヒールをかけ続ける。2人は、他の武装局員達の退却の時間稼ぎで、ジュエルシードを抑えていたから、既に魔力を使い切ったしまったみたい。

「っ…!!くっそ、特大の来るぞ…!!」
「フェイト!!フォトンランサー使って!!迎撃するよ!!」
「うん!」
「ワームホールを開く!!そこに叩き込め!!」

ゲランが腕を振るうと、幾条ものエネルギー弾がこちらに向かって襲い掛かってくる。流石に…あれを食らったら拙い。
すぐにブレイズさんが、小型のワームホールを開いて、私のランチャーと、フェイトのフォトンランサーを転移させエネルギー弾と相殺させる。
ワームホール自体で、エネルギー弾を無効化すればいいんだろうけど、魔力の消費が高くて今の状況では使いにくいらしい。

≪エイミィ!転移は出来ないのか?≫
≪無理だよ!時空軸が滅茶苦茶で転移させても、別な所に行っちゃう可能性があるよ!!≫
「本当に…打つ手なしですわね…。」
「だったら早い話、総攻撃かければ可能性あるんじゃないか?」
「駄目よ。これだけの魔力流が起きてると、私達の装甲じゃ持たないわ。」

デボラさんの提案をシルビーさんが一蹴する。…正直、3姉妹さん達と私やフェイトちゃんの装甲は…かなり薄い。
私は、エクスがシールド形態にもなれるけど、逆に速度が低下するから、大して意味がない。
今は速攻でアジム、ゲランを無力化しないといけないから…。
…けど、デボラさんの言う通り、攻撃を仕掛けなければどうにもならないのは確かだ。

「…メビウス、お前なら、全ての攻撃を…回避できるか?」
「………可能性はあると思います。」

ブレイズさんの問いかけに、私は静かに答える。
…エクスの慣性制御をフルに使えば、急制動、急加速を駆使して、攻撃を回避することも出来ると思う。
まぁ、当たったら…文字の如く、終わりなんだけどね。

「まさか…メビウス君、駄目だよ!!危ないよ!!」
「絶対に…駄目!」

まだ何も言ってないんだけど…感じ取ったのか、なのちゃんとフェイトが私を止める。
ん~…こう言う所は鋭いんだから。

≪エイミィ、俺が時空軸をなんとか合わせるから、こいつらを転移させれるか?≫
≪や…やってみるけど…ブレイズ君は大丈夫?≫
≪やるしかないだろ。このまま続けたら、押し負けるか、虚数空間に飲み込まれるのかの2択しかないしな。≫
「…聞いたでしょ?私なら…避けれる可能性があるんだから、オトリ役にはぴったりなんだよ。」
「け…けど、メビウス君1人なんでしょ!?その後、どうやって逃げるの!?」
「お兄ちゃんが行くなら…私も行く…!!」
「なんとかするよ。フェイトも付いてきちゃだめだよ?」

はは…2人して、心配性なんだから…。まぁ、どうやって逃げるか…なんて事は考えてないんだけど…。
こんな所で、終わるなんて絶対にいやだ。まだ母さん達に、フェイトの事を紹介してないし、まだまだやりたい事だってたくさんある。

「スペシネフ、空間制御最大。時空軸強制介入、再構築。」
『イエス、マイロード。』
「さてと…エクス、出力最大、リミッター解除。」
『了解です。マスター、ご武運を…』

エクスのリミッターを解除すると、淡く蒼い光が私の周りに集まってくる。
未だに泣きそうなフェイトと心配しているなのちゃんを交互に撫でて、私は障壁の外に歩き出す。
ブレイズさんも隣に並んで、スペシネフを構えている。

「メビウス君!!」

なのちゃんの呼び声に、軽く手を上げて…私は一気に加速して宙に舞う。
魔力流を減速して、やり過ごす。アジムが腕を突き出すと、巨大なエネルギー弾が私に向かって放たれる。

「時空…固定!!いまだ!!」

ブレイズさんがエネルギー弾をスペシネフで両断し、その衝撃波を開いたワームホールに無理やり叩き込んで内部で爆発させる。
その影響でなのか次元震が一瞬静まった。それを確認したエイミィさんがなのちゃん達の回りに転移陣を開いて、アースラへと導いていく。

「レイジングハート…!!お願い!!」
「バルディッシュ!!」

転移させられる寸前に、なのちゃんとフェイトがアジムとゲランにバインドを使ってくれた。まったく…本当に優しいんだから…。

「これは…好機かもしれない。」
「…どう言うことですか?」
「どうやら奴らは、完璧に具現化してないようだ。通常なら、バインドなんて直ぐに引き剥がされるはずだからな。」
「倒せるって…事ですか?」
「いや、現状では倒す事は不可能だ。しかし、虚数空間に押し戻せるだけなら…或いは。…その為には、奴らの構造体を更に減少させないといけないがな。」
「ここで放って置いたら、無差別に攻撃を繰り返すんですよね。なら…やるしかないですよ…!!」
「あぁ!」

ブレイズさんはゲランに、私はアジムへと向かっていく。
大体の攻撃パターンは読めている。腕を振るったときに来るエネルギー弾の1つをエクスで切断して、更に速度を上げる。
攻撃は少し大振りなのが多いのが、せめてもの救いだったよ!!
追尾してくるエネルギー弾は、ぎりぎりまで引き付けて、すれ違うようにして回避して、後ろに回ったところをソードウェーブで撃破!!
一瞬、弾幕が途切れたのを見過ごさずに、ランチャーを撃ち込めば…

「よし…!!確かに外郭が割れた!」

っと…!!こちらに向かってくる魔力流を真横にスライドして回避する。なるほど…魔力流もあいつらの攻撃手段って事か…!!
また放たれるエネルギー弾…、こんどは追尾性能が高い…!!
トップスピードでまで速度を上げて、後方から追尾してきたエネルギー弾をバレルロールで避ける…!!
旋回して…周囲にありったけのXLAAを構築して…撃ち出す!!

「XLAA、FOX3!!」

数十発以上のXLAAがアジムへと襲い掛かる。反撃する暇を与えずに、ラジカル・ザッパーで砲撃を加える。
ブレイズさんの方は、シンファクシを使って、連続で魔力弾を叩き込んでいる。そして、大型のチェーンバインドで拘束している所だった。

「いけ…、アークバード!!」

スペシネフの銃口部に魔力が収束し、魔方陣が展開される。その魔方陣を貫くように、圧縮された魔力が撃ち出される。
まるでレーザーの様に圧縮された魔力は、障壁ごとゲラン本体も貫いた。私の方も、弾幕がはれると、アジムが半壊状態になっていた。
これなら…押し戻せるか…?

「開け…時空の扉!!」

ブレイズさんが、2体の後方に巨大なワームホールを開き、バインドを使い、中に引きずり込もうとする。
具現化が中途半端なのと半壊状態が幸いしてか、2体とも反撃はしてこない。

「よし、これなら…ぐぁぁぁぁ…!!」
「ブレイズさん!?」

突然、ブレイズさんが胸元を押さえて苦しみだす。その影響でか、ワームホールが制御下から外れた!?暴走して全てを吸い込んでいくか…!?
しかも…引きずり込もうとしていたバインドも外れて、アジムとゲランが這い出るようにして戻ってこようとしている。

『マイロード、これ以上の侵食率は危険です!!撤退を!!』
「よりによって…こんな時に…!!」
≪ブレイズ君、今すぐ撤退しなさい!!≫
「しかし…艦長。」
≪これは命令よ!!これ以上続けては危険だわ、メビウス君も撤退して!!≫

リンディさんから通信が入る。その声は、焦りと心配に満ちている。確かに…ブレイズさんがこの状況じゃ…どうにもならない。
けど…ここでアジムとゲランを倒しておかないと…近い私達の世界にまで影響が起きる。それだけは…絶対にいやだ…!!

「…いえ、最後まで…やります。」
≪メビウス君!?分かっているの!?もう、この空間は崩壊するの、貴方まで巻き込まれるわ!!≫
「あいつらを…倒せば問題はないんでしょう?今なら…出来ます!!」
「…艦長、ここは彼に…託しましょう。何より、あいつらを倒さないと…メビウス達の世界も危ない…。それが分かっているんですよ。」
≪…………≫
「一撃です。それでだめなら…あきらめます。」
≪…分かったわ。ただし、必ず無事に帰ってくる事。…なのはさん達も心配してるのよ。≫
「了解です。…ブレイズさんも、撤退してください。」
「最後の最後まで…すまないな。」

ブレイズさんが転移するのを確認すると、私はアジムとゲランに向き直る。

「エクス、…やろうか。」
『はい、マスター。』

ソッと私は空を見上げる。…力を…貸して…!!





アースラ艦橋

「ブレイズ、大丈夫か…?」
「あぁ…なんとかな。お互い、満身創痍だな。」

包帯を巻いたクロノと青い顔をしたブレイズ。艦橋に付くと、緊張感に包まれていた。
正面のモニターに移るのは、蒼い少年、メビウス。その姿を心配そうに見つめ、祈るようにしている2人の少女、なのはとフェイト。
少年が対峙するのは、異界の破壊者、アジムとゲラン。

「メビウス君、お願い…神様…!!」
「………ずっと一緒にいるっていったんだから…帰ってきて…!!」

2人の祈りの言葉。親友であるオメガ、閃、ユーノも静かに見守っている。
願いは1つ、少年の無事の生還。

「…エクス、フルドライブ…!!」

メビウスが静かにエクスに命じると、ラジカル・ザッパーのように砲身が伸びるが、その長さは倍になっている。
そこに収束される蒼い魔力。周りの空間からも、徐々に集まり、光を増していく。

「え…うそ!?」
「どうした、エイミィ?」
「め…メビウス君の魔力が…測定不能…!?」
「いや、前もそうだったんだろ?」
「そうなんだけど…今回は一瞬で、メーターを振り切っちゃったよ!!」
「なに…!?」

クロノが慌てて、エイミィの前にあるメーターを確認する。そこに移る文字は測定不能。
以前から、メビウスの魔力は計れなかったが、正確な量が分からないだけで、測定はある程度可能だった。
しかし、今回は文字の如く、測定不能。そう、彼の魔力がまったく分からないのだ。

「…ソラノカケラ…ですね。」
「ソラノカケラ…?」

メビウスの従者たるガルムが零した言葉に、なのはが反応を示す。

「メビウス様の所持するレアスキルです。…ソラノカケラと名づけていましたね。」
「レアスキルだと…?」
「ソラノカケラ。メビウス様は、常に空と言う空間から、魔力が供給され続けているのですよ。」
「空から…常にって…、つまり、空がある限り…メビウスの魔力は無限と…言う事か…?」
「そう解釈しても良いでしょう。…もっと簡単に言えば…【空】がメビウス様のリンカーコア…と言えるでしょうね。」
「…デタラメも良いところだ。」

驚くクロノとブレイズ。その反応は最もだろう。メビウスの輪、無限を表す輪の如く、彼の魔力は無限なのだ。
ある意味で、卑怯極まりないレアスキルである。

「…その結果が、あの魔法か。」

閃がモニターを見て、つぶやく。
超巨大な砲身になっているエクスに収束する魔力。だが、全てが集まるわけでもなく、メビウスの周りにこぼれていくのも存在する。
しかし、それは霧散する訳でもなく、球体として収束し、彼の周りを漂っている。
それが10、20と収束するたびに増えていく。それが収まる頃には…彼の最強の広域殲滅魔法は…完成していた。

「これで…最後だ。…堕ちろぉぉぉぉ!!ユリシィィィィィィズ!!!!!!!!」

発動キーと共に放たれる、蒼い極光、その姿は、まさに流星群。その全ての魔力がアジムとゲランを飲み込み…ワームホールすら消滅させていく。
蒼い極光が収まれば、全てが消え、ただ1人、メビウスが…静かに漂っているだけだった…。







・閃・

メビウスがアジムとゲランを撃破して、帰還すれば、歓声が上がっていた。
そりゃそうだろ。途中まで、ブレイズと協力してたとはいえ、接触禁止目標を1人で撃破したんだ。
局員達に揉みくちゃにされた後で、なのは、フェイトに泣き顔で、抱きつかれて困ったように笑ってたよ。
ちなみに、俺は背中を思いっきり、叩いた。心配かけさせやがって…。とここで終わりなら良かったんだが…

「ふざけるな!!そいつは犯罪者だぞ!!」
「それでも、情状酌量の余地はあるはずだ!!」

艦橋に響く声、神経質そうなのがシルヴァリアスで、もう1つはメビウスの声だ。
内容はもちろん、フェイトの処遇についてだ。ち…医務室で眠ってりゃ良いのに、今更出てきやがって…。

「しかも、クローンだ!!人間じゃないんだ!!すぐに消すべきだろうが!!」
「そんな事は、関係ない!!フェイトは1人の人間で、私の家族だ!!」
「貴様ぁぁ!!そいつに家族なんて居ないんだよ!!母親にすら、捨てられた化け物だぞ!!??」
「そんな事無い!!フェイトちゃんは捨てられてないよ!!どうして分からないの!?」
「なのは、君はそいつに騙されてるんだ!!そいつのせいで、アジムとかゲランて言う化け物が現れたんだよ!?」

…さっきから、好き勝手言いやがる。本気で反吐が出そうだな。第一、アジムとかは関係ないだろ。
メビウスとなのはがフェイトを庇うようにして立ってなければ、すぐにでも攻撃しそうな勢いだ。
フェイトも…何もいわずに、健気に我慢してるな。アルフはガルムが何とか押さえつけているから良いけど…。
そう言えば…クロノ達は?艦橋内に視線を巡らせると、艦長席の辺りで、何か話し合っている…?

「クロノ!!貴様もそう思うだろ!!」
「…お前に呼び捨てにされる覚えはないんだが…確かに、犯罪者は…処罰しないといけないだろうな。」
「クロノさん!?」
「ふん、ほらみろ、僕の言ったとおりだ!!今すぐ、フェイト・テスタロッサをこちらに…」
「…ん?なぜ、彼女が犯罪者なんだ?」

シルヴァリアスの言葉に、わざとらしく驚いてみせるクロノ。…ちなみに、これには俺やリリンも一枚かんでいる。
さて、これからどういった反応をしめすのか…楽しみだ。

「は…なにを言ってるんだ!?後ろのそいつがフェイト・テスタロッサだろ!?」
「君こそ、なにを言ってるんだ?彼女は…フェイト・T・ランスロット。…メビウスの妹だろう?」
「な…に…!?」

ああ、もう駄目。笑いがこらえられない。シルヴァリアスの動きが一瞬止まる。メビウス達も、驚いた表情をしているが、俺が目配せをする。
そう…フェイト・テスタロッサと言う人間は…確かに存在しない。その代わり、フェイト・T・ランスロット…という少女なら存在する。
…プレシアの最後の願い、それが…聞き届けられたって事だな。

「ふ…ふざけるな!!貴様ら、僕を馬鹿にしてるのか!!??」
「静かにしろ、今、通信が入っているんだ。」

ブレイズが無視して、モニターに映像を映す。誰からだ…って…は?

「やぁ、クロノ君、ブレイズ君、久しぶりだね。」
「…ハーリング提督、お久しぶりです。」

モニターに男性が移った瞬間、艦橋に居た全局員が敬礼を返す。
…しかも、ハーリングって…まさか…ビンセント・ハーリング!!??大統領!?
俺が知っている大統領より少し若いが…確かに面影がある。…一体、とう言う世界なんだよ…。

「お久しぶりですわ、ハーリングおじ様。」
「おじ様ぁぁ!!??」
「やぁ、リリン、元気そうだね。」

スカートの両裾を持って、優雅に一礼するリリンとにこやかに笑うハーリング提督。
…えっと…どう言う関係なんだ…?

「君が…帝 閃君だね。」
「え、はい。そうですけど…」
「ははは。驚かせてすまない。私はビンセント・ハーリング。君の父上や彼女の父上とは友人でね。よろしく頼むよ。」
「…は…はい。」

笑いかけるハーリング提督。それを見た俺は、確実に固まっただろう。
いや…だって、仕方がないだろ。あの笑顔は卑怯だって…メビウス以上のニコポだぞ。無条件で膝を付いて、忠誠を誓いたくなるって。

「おい!!僕を無視するな!!」
「君は、シルヴァリアス君だね?」
「あぁ、そうだ!!ハーリングとか言ったな!!こいつらの上司なら、なんとか言え!!」
「ほぉ、なにをだね?」
「こいつらがフェイト・テスタロッサを庇ってるんだよ!!犯罪者には正義の鉄槌を与えるべきだ!!」
「…はて?フェイト・テスタロッサとは…誰のことかな?私の所には、フェイト・T・ランスロットと言う少女が協力者として参加してくれた事なら届いているが?」

そういって惚けるのを見る限り…なるほど、ここまで根回しが出来てるって事か…。
ブレイズを見れば、軽く笑っている。流石は…未来の英雄。やることが凄いな。

「き…貴様も無能か!?」
「無能は…貴方ではありませんの?」
「あ゛あ゛!?」
「1人でなにを喚いてるかと思えば…居ない人間の事を何時までも言ってますの?」

あの…リリンさん?なんか…黒いオーラ出てるんですが…?

「それじゃなにか?こいつがフェイト・T・ランスロットって言う証拠があるのか!?」
「はい、ありますわ。我がフレッシュリフォー社が後見人ですもの。それ以上の証拠がありまして?」
「ふむ、フレッシュリフォー社が保障してくれるのなら、安心だ。それで言いかね、シルヴァリアス君?」
「言い訳あるかぁ…!!貴様もばかか…!!」
「そろそろ…黙れ。」

まだ何か喚こうとしているシルヴァリアスを、ブレイズが見事な背負い投げて沈めて、片腕をひねり上げる。

「ききき…貴様!!なにをする!!」
「犯罪者は…処罰すべきなんだろう?クロノ。」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー。現時刻を持って、名誉毀損、器物破損及び傷害罪と公務執行妨害の罪で、管理局執務官権限で逮捕する。」
「はぁぁぁぁ!!??」

クロノが宣言すると、数名の武装局員がシルヴァリアスを羽交い絞めにする。
…凄いな。本当にドラマみたいな感じになってるぞ…。

「僕が何時、そんなことをした!?」
「…フェイトに攻撃、及び、殺傷設定でのメビウスとの戦闘。そして、停戦勧告を行っているブレイズへの攻撃。それに、彼らに対する暴言の数々。更に、先の無断出撃で転移ポートの一部が破損。挙句、無差別に魔法を使った結果、数名の武装局員が負傷した。…どこをどう見ても…立派な犯罪者だ。」
「ら…ランスロットだって僕に攻撃しただろ!?」
「彼等は、今回の事件解決に尽力、更にアジム、ゲランの撃破に多大な貢献をしてくれた。よって…まぁ、厳重注意だけだろうな。連れて行け!!」
「なのは…心配しないで、僕はすぐに戻ってくるから…!!」
「…二度と、なのちゃんと…フェイトに近づくな。…もし近づいたら…」
「メビウス、それ以上は脅迫罪だ。我慢しろ。」

シルヴァリアスが、なのはに何か言おうとしたのをメビウスが遮る。その眼は…殺意と憎悪に満ちている。…こいつには似合わない感情だな。
連行されていくシルヴァリアスを全員が、視界に移らないようにしている。最後まで何か喚いていたけど…とのあえず、無視だな。
画面でハーリング提督も困ったように笑っていたが、すぐにメビウスに視線を移した。

「メビウス君…だね?」
「あ、はい。」
「なるほど、良い眼をしている。君の父上や母上と同じ…空の瞳だ。」
「……フェイトの事…ありがとうございます…!!」
「ありがとう…ございます…!!」

深々と頭を下げるメビウスとフェイト。その眼には涙が浮かんでいる。それまでに…嬉しかったんだろうな。
それを満足げに見て提督はうなずく。

「もっとゆっくり話したいが…時間がなくてね、すまない。…後でこちらに遊びにおいで、美味しいお茶と菓子を用意して待って居よう。もちろん、皆で来なさい。」
「はい…!!」

皆、気が付けば、笑顔を浮かべていた。なのはとフェイトは抱き合って喜んで、メビウスとオメガ、ユーノは笑顔で、俺の周りに集まってくる。
リンディさんや、ブレイズとクロノもそんな俺達を眺めて、嬉しそうに笑っていた。
こうして…俺達の長くて短いような…PT事件は幕を閉じた…。






・メビウス・

「ただいま~。」
「お…お邪魔します。」

緊張気味に、家に入ってくるフェイト。あの後、色々な手続きとかあって大変だったけど…フェイトは晴れて、私の妹という事になった。
聞いた話では、既に父さん達が話を付けておいてくれたらしくて…本当に助かった。

「お、いい匂いがするね。」

アルフり言うとおり、扉を開けると、凄くいい匂いが漂ってきた。その匂いと一緒にパタパタと聞こえてくる足音、母さんだ。

「メビウスちゃん、フェイトちゃん。おかえりなさい~♪」
「うん、ただいまって…母さん…苦しい。」

いきなり私を抱きしめる母さん、流石に…いきなりで驚いたし…苦しい。
フェイトも、眼を丸くしてる。

「あ…えと、…サイファーさん…ですよね?これからよろしくお願いします。」
「サイファー…さん…?あぁ…!!」
「…え!?」
「どうした、サイファー?」

フェイトとが挨拶するけど…なぜか。母さんか悲しそうな顔をして…崩れた!?
その音に気が付いたのか、父さんもリビングから出てきた。…オタマもってるって事は…今日は父さんの料理か。

「あぁ…フェイス…!!フェイトが反抗期よ!!私の事、サイファーさんだなんて…!!しかも、よろしくお願いしますって…!!」
「…難しい年頃だからな…。しかし、それは悲しいな…」

そう言って、母さんの肩に手を置いて慰める父さん。えっと…なにこの寸劇…?
まぁ、言いたいことは…分かる。未だに訳が分からずに混乱しているフェイトの手を私は握る。

「お兄ちゃん…?」
「フェイト、違うでしょ?…ここは私達の家。…それで、今帰ってきたんだよ。なら、言うことは…1つでしょ?」
「あ……た…ただいま…?」
「うん。おかえりなさい、フェイト。」
「おかえりなさい♪フェイトちゃん♪ああもぅ、可愛いわ~。」
「おかえりフェイト。さぁ、お腹も減っただろう?食事にしよう。」
「…うん…!!お父さん、お母さん…それに、お兄ちゃん…!!」

返事をするフェイトの顔は…まっすぐで…凄く綺麗な笑顔だった…。






あとがき

このような駄文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
無印はここで終了となります。ここまで読んでくださった読者様には、感謝しても仕切れないです。
最後の最後まで、グダグダでしたが…楽しんでいただけたでしょうか?
ここまで書いて多数の反省点があると思いますが…1つずつ直していけるように努力していきます。
次回からは、フェイト祭りと2期までの物語を計画しております。
これからも、習作 リリカルなのは×ACE COMBAT ×色々&オリ主&転生キャラ と、作者 へタレイヴンをよろしくお願い致します。
では……タイトル…考えないといけないですね。




[21516] ランスロット家温泉旅行記 家族団欒 ポロリもあるよ!!その1
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/29 18:35
「そうだ!!温泉に行きましょう!!」
「…はぁ!?」

フェイトがランスロット家の一員になって数日が立ったある日の夕食。
唐突にサイファーが提案をする。

「えっと…お母さん、どうして温泉?」
「だって、フェイトちゃん。まだ学校の転入手続きまで時間があるでしょ?学校に行くようになると、家族団欒の時間も、少し減っちゃうと思うのよ!!
そして、日本には裸のお付き合いって言うことわざもあるくらいだからね!!だから転入前に、みんなで温泉に行って絆を深めたいもの!!それに、私も行ってみたいし!!」
「あの…母さん、私は学校在るんだけど…」
「休みなさい!!」
「ちょ…!?」

最もなメビウスの意見を、笑顔で切り捨てながら、サイファーは何故か新幹線の時刻表をチェックする。

「そうと決まれば、明日は速いわよ!!みんな4時起きね!」
「待て待て、サイファー!!一体、どこの温泉に行く気だ!?」

スカーフェイスが慌てて、サイファーに問い詰める。当然だろう、彼はてっきり、すぐ近くの海鳴温泉に行くと思っていたのだ。
だが、彼女は笑顔でテレビを指差した

「ここよ!!凄く景色もよさそうだし!!」
「……おいおい。冗談だろう…?」
「ふわぁ~。お兄ちゃん、楽しみだね!」
「…あの、私、学校…」

「東北で一番高いところにある温泉!!源泉かけ流し!!眺めも最高!!」

…東北は岩手県にある…ある温泉のCMが流れていた。


【ランスロット家温泉旅行記。家族団欒、ポロリもあるよ!!】


「……眠い。」
「アルフ、寝るな。」
「ガルムごめん。ちょっと…寝る。」
「ちっ…支えてるから、気をつけろ。」
「ありがと……。」

ガルムが立って寝そうなアルフを支えながら、荷物を下に置く。
現在、ランスロット家は新幹線の駅に勢ぞろいしていた。前日にいきなり決まった旅行であり、荷造りも時間がかかってしまったのだ。
そして、朝4時起きと言うかなり厳しいタイムスケジュール。正直、ガルムも気を抜けば、睡魔に負けそうな状況だ。
現に、メビウスとフェイトはベンチに座り、寄り添うようにして眠っている。流石に、9歳にはつらい時間帯でもある。
だが、1人元気な人物も居る。

「ん~…!!気持ち良い朝ね!!」
「…周りは未だに薄暗いがな…。」

自分の妻であるサイファーの元気さに呆れながら、眠気覚ましのコーヒーを飲むスカーフェイス。実はサイファー、興奮して一睡もしてないそうだ。
まるで遠足前の小学生である。

「しかし…岩手県か。…名産はなんだったか…。」
「やっぱり前沢牛に、三陸海岸の海の幸じゃないかしら?」
「後で高町家にも、お土産を買って帰らないとな。」
「そうねぇ、なのはちゃんから、メビウスちゃんを取っちゃったものね。フェイトちゃんは、喜んでくれたけど。」
「…すぅすぅ…」
「くぅ…。」
「ふふ、本当に可愛いわ♪」

静かに眠るメビウスとフェイトの頭を笑顔で撫でるサイファー。少しくすぐったかったのか、フェイトは身じろぎをして、更にメビウスにくっついていく。
それを見て、スカーフェイスも笑みを深くする。優しい息子と可愛らしい娘。彼らにとって、掛け替えの無い宝物だ。

「さて、そろそろ時間だな。ほら、2人とも起きろ。」
「ふへ…?…時間…?」
「すぅ…すぅ…」


東北新幹線内部


「…眠い。」
「なんだい?今度はガルムの番か?」
「あのな…我が支えてたお陰だというのに…えぇい、寝る、起こすなよ。」
「はいはい。まっ、ゆっくり寝てな。」

隣のアルフに視線を送り、ガルムが椅子に深く腰掛ける。
新幹線に乗れ込み、一路岩手県に向けて出発したのだ。席の割り当ては、サイファーとスカーフェイス、メビウスとフェイト、そしてガルムとアルフである。
やはり、フェイトはまだ眠いのか、メビウスの肩に頭をチョコンと乗せて、夢の中に居る。メビウスは、持ってきた本を読みながら、動かないようにしている。
サイファーとスカーフェイスも、パンフレットを読みながら、旅行の計画などを考えているところだった。
ソッとガルムを起こさないように、アルフは顔を覗き込む。

(へぇ、結構、綺麗な顔してんだね。)

何時ものガルムと違い、安心しきった寝顔を、不思議そうに見つめるアルフ。
メビウスの傍に居るときは、常に周囲を警戒している彼なのだが、今はみんなが傍に居るということもあってか、完全に熟睡していた。
アルフはその顔を少し見つめた後に座りなおし、フェイトと同じようにガルムの肩に頭を乗せて、眼を閉じた。
なんとなく…やってみたい気分になったようだ。最も、少し顔が赤くなって入るようだが…。

(…なんだか、いい夢が見れそうだよ…ガルム…。)



「…んん…ふにゃ…。」
「…ふふ、フェイト。」
「ん~…。」

メビウスが小さく笑って、名前を呼んで頭を撫でれば、満足げに再び眠りにつきフェイト。頭を撫でれば、金の髪がサラサラと指の間を流れる。
再び、メビウスは持っている本に視線を戻し、大切な妹を起こさないように静かにページをめくり、続きを読み始める。

「お兄…ちゃん…。」
「ん?」
「すぅ…すぅ。」

呼ばれて反応してみれば、どうやら寝言のようだ。くっ付いているからか、その顔は安心しきっている。
メビウスも本にしおりを挟み、眼を閉じる。フェイトの寝顔を見ていたら、自分もまた眠たくなってきたのだ。
小さくあくびをしながら、メビウスも夢の世界に旅立つことにした。



「やれやれ。我が家の子供と使い魔達はみんな、夢の世界…か。」
「ふふ。仕方がないわよ。朝早いもの。」
「……」

一瞬、誰の立てた計画だ。と、突っ込みたくなったスカーフェイスだが、そんな事を言えば、笑顔で色々とされるので黙っておくことにした。
彼女の笑顔の圧力は…凄まじい。

「しかし、レンタカーまで準備してるとは…何時の間に…。」
「そうと決まったら即行動よ!!」
「…無計画な一面もあった気もするが…。もっと事前に教えてくれればよかったのに。」

ため息をつきながら、パンフレットを捲るスカーフェイス。…これもサイファーが準備してたのだが、一体何時から行く気だったのだろうか。

「しかし、二泊三日とはね…。」
「そうよ~。久々の家族旅行、思いっきり満喫しなきゃ!!まずはリアルグルメレースをやって…あ!!わんこ蕎麦大会があるじゃないの!!」
「…それだけはやめろ。というか、止めてくれ…」

本日、10回以上のため息を付いているスカーフェイス。ため息をつくと幸せが逃げる…とよく言われているが、恐らく迷信だろう。
何故か?理由は簡単だ。こんな事を言っているが、彼は今、最高に幸せだからだ。
愛する妻と大切な息子、娘。頼りにしている使い魔達。家族で一緒に居ることが…彼にとって何よりの幸せだ。






「さぁ、着いたわよ!!岩手県!!」
「か…母さん、周りに人が見てるよ。」

両手を挙げて、宣言するサイファーを顔を赤くしながら止めるメビウス。…流石に恥かしいようだ。
スカーフェイスとガルムは他人の振りをしながら、レンタカーに荷物を積み込んでいた。息子に頼らずに止めてやれ。

「フェイト、フェイト。なんだか珍しいのがあるよ?」
「あ…本当だ。玉子…?」
「お菓子みたいだよ。へぇ、おもしろいねぇ。お、試食があるから、食べてみるかい?」
「うん。あ…甘くておいしい。」


フェイトとアルフは着いて早々に、駅のお土産コーナーを見てまわっていた。
文字の如く、初めての旅行なのだ。お土産探しも、旅の醍醐味である。

「さぁ!!メビウスちゃんも一緒に!!着いたぞー!!」
「え…えぇ!?」
「はい!!ついたぞー!!」
「つ…着いたぞ~…。」
『マスター…恥ずかしそうにしながらもやるのですね…。……録画録画…。』

顔を真っ赤にしながらも、サイファーと一緒に叫ぶメビウス。…親子である。

「メビウス様…可哀想に…」
「…すまない。」

いや、だから止めてやれ。



・レンタカー・

本日、僕が乗せるお客様は、とても元気なお母さんと、静かなお父さん、そして、可愛い子供さん達と…犬?
人間と同じ姿をしてるけど…まぁ、お客様には代わりありません。僕のお仕事は、みんなを運ぶことですから。

「いざ!!山登り!!」
「…本当に疲れ知らずだな。」
「お兄ちゃん、顔真っ赤だよ…大丈夫?」
「フェイト、なんでもないよ、大丈夫…だと思う。」

男との子は、さっきお母さんと一緒にやったことが恥かしいのか、顔が真っ赤になっています。僕が見てて、珍しい光景でした。
女の子は、そんな男の子、お兄ちゃんが心配なのか顔を扇いであげたり、飲み物を渡したりと、甲斐甲斐しくお世話をしてあげてます。
凄く仲が良いんですね。

「ガルム、あれってなんだい?」
「あれは…」

一番後ろに座っている女性が、隣に居る男性に街中の珍しいものを指差して、質問をしています。
男性も邪険にせずに答えてあげてますから、こちらも仲は良いみたいですね。…恋人同士とは…少し違う気がします。

『………』

すると、男の子のペンダントさんが、ジッと僕を見つめてきます。なんだか、同族の気がします。

『始めまして。エクスです。今回はよろしくお願いしますね。』
あ、どうも。僕はレンタカーです。レン太って呼んでください。
『レン太…。分かりました。』
なんだか賑やかな家族ですね。
『そう思いますか?』
はい、僕も結構レンタカーしてますけど、ここまで賑やかなのも久々です。初めての旅行ですか?
『そうですね。フェイト様とアルフ、女の子がフェイト様で、後ろの女性がアルフです。家族になった記念で旅行をすることになったんですよ。』
へぇ~。そうなんですか。家族になった記念…良いじゃないですか。
『えぇ。実は私も始めての旅行なんですよ。柄にもなく楽しみで仕方ありません。』
ここはいいところですよ~。緑も多くて、美味しいものも沢山あります。ご紹介しましょうか?
『それじゃ、お願いします。』


僕はエクスさんとお話をしながら、ようやく冬季封鎖が解除された山道を登っていく。
目的地は、どうやら山の上にある温泉のようです。あそこは見晴らしも良くて、正に天然温泉ですからね。お肌にもいいはずですから。

「自然が一杯だね。」
「うん、…あ、何か動いたよ?」

女の子が男の子と窓の外を眺めて、遠くの何かを見つけたようですね。あぁ、多分、狐かな?ここら辺は、狐や狸が良く出ますから。

「あらぁ。きっと狐じゃないかしら?あ、ほら、こっち向いたわよ?はい、双眼鏡。」
「あ、ありがとうお母さん。…本当だ、可愛いなぁ。」
「そうだね。私も始めてみたよ。」

狐なんてそんな頻繁に見ることないから、僕も得した気分です。ところで、母親さん、…その双眼鏡、何処から出したんです?
更に僕は山道を登って、トンネルを潜る。さぁ、ここから先はとても綺麗な景色ですよ。

「ふわぁ~…凄いよ、お兄ちゃん!!」
「本当だ…雪の壁だ!」
「もう溶けてなくなったかと思っていたが、まだこんなにあったんだな。」

はしゃぐ男の子と女の子。特に女の子は始めてみたからか、男の子の手を凄く引っ張っています。
ふふふ~。有名なところには劣りますが、ここの雪壁凄いんですからね。僕の倍はある高さですから。
山の上にはまだまだ沢山、雪があるからこういう光景が楽しめるんですよ。
山頂に着けば、いい景色が見れますからね。


・山頂・

「凄い凄い!!父さん、こんなに空が近いよ!!」
「雪も沢山残ってる…、きれい…。」

はしゃぐメビウスと、残っている雪に触るフェイト。流石はソラノカケラを持つ少年。空に近いだけで、かなり元気になるようだ。
山頂の施設で休憩をとることにしたランスロット一行。周囲には、観光バスや、他の旅行者たちの姿も見える。
まだ地面には雪が残っており、肌寒い。しかし、そんな事はお構い無しに、空を見上げるメビウスと寄り添うフェイト。

「凄いね、ここの空は…凄く澄んでる。」
「そうなの?」
「うん。あぁ、こんな空を飛べたら…気持ち良いだろうなぁ。」
「ふふ、お兄ちゃん、すごくはしゃいでる。」
「そう言うフェイトだって、雪を見てはしゃいでだでしょ?」
「あう…。そうだけど、初めての旅行だし…」
「あはは、冗談だよ。けど…ん~、いい気分だよ。」

眼を閉じて背伸びをするメビウス。そんな2人を眺めて笑う彼等の両親。
ガルムとアルフは休憩所に行き、人数分の飲み物を買っているところだ。

「つれて着て、よかったわね。」
「あぁ、フェイトも喜んでくれてるみたいだからな。」
「メビウスちゃんと一緒なのが…良いのかもしれないわね。」

どちらからともなく手をつないで、景色を眺める子供達を見てサイファーは思う。
自分がこんな暖かい家庭をもてるなんて…夢にも思わなかった。きっと、夫のお陰だろう、とその横顔を見つめるのだった、

「くしゅん…」
「あ、フェイト、寒い?なかに戻ろうか?」

小さくフェイトがくしゃみをする。やはり雪が残っているだけあって、山頂は寒いようだ。
しかし、フェイトは首を振って、メビウスの腕をつかんで、もっと寄り添うようにした。

「こうしてれば…暖かいから…。」
「そう?けど、無理しないですね。」
「うん…。」

肩に頭を乗せて、フェイトは幸せそうに笑顔を浮かべていた。




「…なんか、変な匂いがする。」
「硫黄の匂いだな。大丈夫か?」
「うん、少し鼻がむずむずするけど、大丈夫だよ。」

山頂から出発し、少し進むと感じる硫黄の香り。いち早く、匂いを感じ取ったのは、やはりガルムとアルフだった。
流石に嗅覚は優れているようだ。確かに、少し向こうから湯気が立ち上っているのが見える。

「あれって…温泉!?」
「海鳴の温泉と違う…。本当に湧き出てる。」

メビウス達も驚いている。ここは源泉がすぐ傍に、見えるところにあるのだ。
そして、硫黄の匂いも強く、まさに天然温泉であり、秘湯。
その先に見える、小さな温泉宿。東北で一番高いところに存在する温泉だ。(実在)
一行は車から降りて、温泉宿を見上げる。ある意味で風情がある。

「あ、荷物は乗せてて良いわよ。泊まるのは下だから~。」

荷物を降ろそうとしたスカーフェイス達を止めて、サイファーは館内に歩き出す。
その後ろを追いかけていくメビウスとフェイト。

「えっと、子供2人と大人4人でお願いします。」
「はい、こちらですね。お昼は12時から2時までとなっております。時間内にきてくださいね。休憩室は向こうですので。」
「ありがとう~。」

受付に軽く礼を言いながら、休憩室に向こう一同。歩くたびに床がギシギシとなるが、造りが悪いわけではないのだろう。
そうでなければ、数10年と東北の雪等に耐えられないはずだ。

「あ…ねぇねぇ、お兄ちゃん、これなに?」
「ん?…山菜や木のマップだね。何処になにがあるのかって、ここに書いてあるんだよ。」

メビウスの手を引っ張って、廊下に張り出されている地図を指差すフェイト。他にも、野鳥や野生動物達の生息地域などが書かれている。
その上には、野花などの写真も飾られており、見ているだけで楽しい。

「しっかし、誰も居ないねぇ。」
「冬季封鎖が解除されたばかりだからな。山頂の観光程度で終わるのだろう。」

ガルムとアルフはタオル等が入ったバッグを休憩所に置き、周りを見渡す。
確かに、彼ら以外、客の姿は見えない。

「ふふふふ…好都合ね…!!そうと決まれば、温泉よ!!」
「…う…寒気が…」

密かに怪しく眼を光らせ、笑みを浮かべるサイファー。そして、売店でお茶を買っていた、スカーフェイスが感じる特大の寒気。


露天風呂


「はふぅ~…最高…。」
「メビウス様、とろけてらっしゃいますね…。」
「まぁ、確かに最高だな。」

男性陣が入っている露天風呂。これがこの温泉の自慢の風呂だ。周囲は大自然ということもあって、何も遮るものはなく、山脈を眺めることが出来る。
そして、上は澄み切った青空に、周囲にはまだ白い雪が残っている。
ここの露天風呂の特徴は、6つの露天風呂を、木の板で出来た通路で結んでいるのだ。しかも、見えるところに、源泉が流れており、それを眺めて楽しむ事も出来る。
そして、白濁した湯のそこには、湯の花が溜まっており、それを身体に塗ることも出来るのだ。

「最初はどうなるかと思ったけど…こんな良い温泉があったんだねぇ…」
「本当だな。天気も良いし、眺めも最高だ。…紅葉時はもっと綺麗だろうな。」
「先ほど、日の出の写真や、星空の写真を見ましたが、とても綺麗でした。ここに一泊しないのが少し残念です。」
「日の出と星空かぁ。見たかったなぁ。」
「また来ればいいさ。今度は、秋にしよう。紅葉もみたいからな。」
「良いの父さん!!」
「あぁ。その場合はまた4時起きだけどな。」

3人で温泉につかりながら、笑いあっている。すると、後ろのほうで扉が開く音が聞こえた
誰か来たのか?と後ろを振り向いたスカーフェイスは…硬直した。

「フェイス~、来たわよ!!」
「なんであんた等がここに!?…って、サイファー!!タオルタオル!!」
「当然よ!!ここは混浴だもの!!」
「え!?こ…混浴!?って、お兄ちゃん!?え…えぇ!?」

そこに居たのは…服を脱いだサイファーと、タオルを巻いたフェイトとアルフ。
石化の魔法を受けたように固まるメビウスとガルムと…

「た…タオルを巻けえぇえぇぇええぇぇぇえ!!!!!!」

スカーフェイスの声が…露天風呂に響き渡っていた。

続く!!




あとがき

やってみたかった、後悔は…してないはずです…。
騙して悪いが東北人なのでな、自慢させてもらおう。

興・千「さぁ、みんなも温泉で、裸のお突き愛を…や・ら・な・い・か?」

ここの温泉は実在します。行ってみてください、本当に気持ちが良いです。作者もお気に入り。年に数回しかいけないですが…。
とりあえず、こんな話を少し続けてから、二期に突入したいと思います。
予定は…立てません。多分、守れる自信ないです…。
次回、明かされるサイファーお母さんのプロポーし(通信途絶。

以降も返信は感想掲示板に載せる事にしました。













おまけ


堕ちる…堕ちる…母と娘は堕ちて行く。
深淵の闇の中…堕ちて行く。
だが…そこに聞こえる…優しき声。

「おい、界…誰か倒れてるぞ?」
「んな訳ないでしょ。誰も呼んでないし…って、なにぃ!?本当に倒れてる!?」
「先ほど、巨大な次元の揺れがありましたから…それに巻き込まれたのでしょうか?」
「時の迷い人…か。…助けるぞ。」
「ふふ!!今こそ、コジマの真髄を見せるとき!!」
「絶対に来るな、お前は絶対に来るな!!」
「……だ…れ…?」

母と娘は消えるはずだった。しかし…世界は見捨てなかった。
この優しき母と…悲しき娘を見捨てずに…世界は界に導いた。
たどり着くは…時の果て。出会うのは…果ての使徒。
そして、この出会いにより…彼らと少年達の運命が交差する。



[21516] ランスロット家温泉旅行記その2&ブレイズさんの休日
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/01 16:55
ランスロット家温泉旅行記、家族団欒。露天風呂!!

現在、露天風呂には妙な雰囲気が漂っていた。
1つの風呂に入るランスロット家。顔色、機嫌などはさまざまだ。

「………」
「ふふふふ~♪」

何時にもまして、仏頂面のスカーフェイスとその腕に抱きついてご機嫌のサイファー。ちなみに、フェイトとアルフの尽力により、タオルを巻くことに成功していた。
彼女の豊満な胸が、スカーフフェイスの腕に当たっているが…誰も突っ込みを入れない。と言うか、入れれる状況ではない。


「絶対にこっちをみるんじゃないよ!?絶対だよ!?」
「だったら、別な風呂に行け…。態々、我の真後ろに来ることもなかろうに…!!」

ガルムと背中合わせに、温泉につかるアルフ。タオルの胸元をしっかりと押さえ、顔を真っ赤にしている。…チラチラとガルムの背中を見る辺り、何か可愛らしい。

「……」
「あのさ、フェイト…。」
「ひゃ…ひゃい!?」
「いや、そこまで驚かなくても…。」

フェイトもアルフに負けないくらい、顔を真っ赤にしながら、メビウスの隣で温泉に浸かっている。恥かしいのと、離れたくないので、色々と混乱しているようだ。
メビウスも困ったように笑いながら、景色を眺める。…もしかすると、この少年が一番冷静かもしれない。

「凄いわねぇ。天然温泉でこの絶景。ん~…いい気分!!」
「お前は…。はぁ…もう良い。旅行に着たのに、一々、怒ってもしょうがないか…。」

笑顔のサイファーに拍子抜けしスカーフェイスも表情を和らげる。

「さっすがフェイス!!優しいわねぇ♪」
「だからと言って抱きつくな!!子供達がいるんだぞ!?」
「は…はわわ…。」
「ちょ!?フェイト!?フェイト!!???」

更に抱きついてこようとするサイファーを引き剥がすスカーフェイス。仲睦まじいと言うより…バカップルである
そして、それを見て真っ赤な顔をして、眼を回したフェイトを、必死になって沈まないように支えるメビウス。…子供達の苦労をわかってやれ。

「…ところで、フェイス?」
「なんだ…?」
「ここの湯の花って、身体に塗ると美容に物凄くいいらしいのよ。」
「まぁ…温泉の成分だから。底に沈殿もしているぞ?」
「…塗って欲しいなぁ?背中とか届かないし~。」
「な…に…!?」

そう言いながら、サイファーの眼が怪しく光る。その眼は…狩人の目だ。
スカーフェイスの脳内でレッドアラートが起動し、悪寒が走る。
この表情をされた時は、碌な事が無い。それだけに、回避しなければいけない事態なのだ。
とりあえず、優しい息子に救援を…

「メビ…」
「あ、私、フェイトの事、看病しないと…。ほら、下の温泉に行こう?雪で頭を冷やせるし。」
「はにゃぁ…」

メビウスは、放心状態のフェイトの手を引きながら、下の露天風呂に向かう…。
…どうやら、見放されたようだ。なならば、頼りになる使い魔に…。

「ガル」
「アルフ、向うの方が眺めがよさそうだ。行くか?」
「へ!?…そ…そうだね。付き合ってやっても…良いよ?」

景色を見に行ったガルムと、赤くなりながらも後を追うアルフ。
どうやら…みんな、何か感じ取ったのだろう。立ち去り際に、みんなが「無理」と言った表情を一瞬浮かべていた。

「………どいつもこいつも…!!」
「ふふ…フェイス~♪」
「ちょ…まて…おいやめ…!!」

後に残ったのは…サイファーに追い詰められるスカーフェイスだけであった。



・フェイト・

「大丈夫…?」
「う…うん…。」

お兄ちゃんが持ってきてくれた雪を額に当てながら、私はうなずく。雪の冷たさが、火照った顔に丁度良くて、気持ち良い。

「父さん…大丈夫かな。」

さっきのお父さんとお母さんのやり取りを思い出して、私も少し心配にな。…お母さんの眼、少し恐かったなぁ。
けど…胸、大きかった…。…私もいつか、あの位になるのかな…?

「…何時ものことか。」
「?」

首をかしげる私に、「なんでもない」と答えながら、お兄ちゃんは少し乱れた髪を、頭の上でまとめて、温泉につかる。
私はまだ熱いから、ふちに座って足だけを入れて、景色を眺める。

「2人だけにして、良かったの…?」
「ん~…。多分、母さんは父さんをからかってただけだと思うけどね。」


「お前は…人をおちょくって…!!」
「あはははは!!だってフェイス…顔が真っ赤で…!!あはははは!!!」

「ね?」
「ふふ、本当。」

上か聞こえてくるお母さんの笑い声を聞きながら、2人で笑う。
ん…少し、身体が冷えてきたかな…?私も、ピンで髪を留めても、お兄ちゃんの隣で温泉につかる。
はぁ…温かい…。

「海鳴と違って…山の景色だね。」
「うん、あっちは海が多いから。」
「…始めてあった時は…臨海公園で海が見えたよ。」
「あぁ、懐かしいなぁ。天体観測に行った時だったね。」
「ふふ、懐かしいって…そんな前のことじゃないよ?」
「そうだっけか?色々あったからさ、そう思うだけかな?」

笑いながら、私は初めて出会った時の事を思い出す。あの時…お兄ちゃんに、メビウスにあってなかったら、私はどうなっていたんだろ?
あの時の私は、彼とこんな風に話したり、こんな関係になっていると想像がついたかな…?
ふふ…多分、つかなかったと思う。

「…ふふ、お兄ちゃん。」
「ん~、なに、フェイト?」
「なんでもないの。ただ、呼んでみたかっただけ。」

甘えるように、また肩に頭を乗せてお兄ちゃんに寄り添う。呼べば答えてくれるし、私の名前を優しく呼んでくれる。それが堪らなく嬉しいと感じる日々。
頭に?マークを浮かべながらも受け入れる彼は、やっぱりやさしい。

(母さん…今、私は…とっても幸せです…。)




・ガルム・

あの後、それぞれが風呂を満喫、昼食の時間となったので、食堂にと集まっていた。

「アルフ、大丈夫?」
「うぅ…野菜ばっかりじゃないか…。」
「あはは…。山菜尽くしだね。」

メビウス様の言うとおり、食堂で出されたのは、山菜の天ぷらのバイキングだ。
落ち込むアルフを心配するフェイト様。…そう言えば、名産が牛肉と聞いて、喜んでいたからな…アルフは。

「我侭言ってもしかたがない。アルフも我慢して食べろ。」
「はいよ…。はぁ…」

フェイス様が、人数分の水を配りながら、アルフをなだめる。

「あ…凄く冷たくて美味しい。ただのお水じゃない…?」
「天然水だな。フェイト、お代わりは?」
「え?…あ…。」

それほどまでに美味しかったのか、フェイト様のコップは直ぐに空になった。フェイス様が苦笑しながら、フェイト様のコップに再び水を入れてくる。
サイファー様は、先ほどから、料理人と何か話をしている。


「どうやら、調理法を聞いているらしい。…うまくいくと良いんだが…」
「お母さんの料理…時々、すごいもんね。」

フェイト様の言う通り、サイファー様の手料理は…時々、凄まじい破壊力を持っていることがある。

「メビウス様、蕎麦はどうしますか?」
「あ、お願いできるかな?フェイトも食べる?」
「うん。私は少なめが良いな。」
「御意。」

フェイト様と一緒にバイキングに向かうメビウス様を見送りながら、我は蕎麦の湯に通す。
ここでは、自分で蕎麦を茹でて食べることが出来るようだ。網に入れ、軽く湯に通し…上げて湯を軽く切ってと…

「へぇ~、あんた、なかなか様になってるじゃん。」
「お前も食べるか?」
「うん。頼むよ。」

背中越しに、我の手元を覗き込むアルフに食べるかと聞けば、用意の良い事に、自分の分の入れ物を持ってきていた。
まったく…再び、同じ手順で蕎麦を入れ物に入れ、汁を注ぐ。これで3人分完成だな。

「アルフ、それ以外は食べないのか?…焼き魚もあるぞ?」
「あ~…あたしは肉が良いんだけどねぇ…。それに、魚って骨あるじゃないか」
「好き嫌いをするな。それにその発言、猫に喧嘩を売ってるぞ…。」
「別にいいだろ。あんたもあたしも、猫じゃないんだから。」

ため息をつきながら、我は適当な三菜をバイキング用の皿にいれ、テーブルに持ってくる。
それを先ほど、作った蕎麦にいれ天ぷら蕎麦にして食べ始める。メビウス様達も、天ぷらや焼き魚等に舌鼓を打ち、楽しんでいるようだ。
アルフに視線を向ければ…蕎麦とご飯だけか…。それでも充分、楽しんでいるからいいんだが…仕方があるまい。

「…アルフ、これも食べろ。」
「あん?焼き魚は要らないって…あれ?」
「骨はとって置いた。…折角の天然ものだ。食べなければ損だぞ。」

先ほど選んでおいた魚の骨を取り除き、アルフに渡す。手間がかかったが…別に構わんな。
天然物の魚は美味しく、このような所でしか楽しめない味だ。

「あ…ありがとう。…お、本当だ、うまいじゃないか。」
「あらあら~…。ガルムとアルフ、仲が良いわね~♪」
「なっ!?そ…そんな事ないよ!?こいつとあたしは、なんでもなくて…って、そう言うことが言いたいんじゃなくて…」
「照れちゃって~♪」
「…ご飯粒が着いてるぞ。ほら、拭いてやるからこっちを向け。」
「~~~!!!」
「わ、顔真っ赤だよ、アルフ?」
「フェイトまで~…!!」

なにやら、顔を真っ赤にしながら喚くアルフ見ながら笑うフェイト様達。
…一体、なんだというのだ?…それが原因か分からんが、先ほどからアルフが我を睨んでくる。
…本当に訳が分からんぞ…?







ミッドチルダ

市街地のあるマンション。

・ブレイズ・

「ん…朝…か?」
『おはようございます、マイロード。朝と言うよりは…昼前ですね。』

ベットに備え付けられている時計を見ながら、起き上がる。
…寝心地が悪いと思ったら…制服のままか。眠気が覚めない頭で、昨日の事と今日の予定を思い出す。


「…久々の休みか…。」


寝癖でボサボサになった頭を振りながら、つぶやくようにしてベットから這い出る。帰ってきて、速攻寝たんだったか。
ここは俺の暮らしているマンションの一室。宿舎にも部屋があるが、あまりそちらを利用はしない。
1人暮らしには広すぎる家を与えてくれたハーリング提督には、本当に感謝している。
あの人に言わせれば「少し部屋が殺風景すぎるね」…だそうだ。自室には必要最低限の家具だけだからな。
カーテンを開けると、薄暗い空。肌寒いと思ったら、雨も降っているようだ。

『マイロード、シャワーを浴びられては?昨夜は、そのまま眠ってしまったようです。』
「…そうするか。お前も休んでていいぞ?」
『イエス、マイロード。』

整備用のデスクの装置にスペシネフをセットして、起動させる。ある程度の修復と整備はこれで出来る。
かなり高価な機器らしいが、ハーリング提督とリンディ艦長が融通してくれた。…本当にあの人達には頭が上がらない。
シャワールームに行き、頭からお湯を浴び身体を洗っていく。
…眠気でぼけていた頭がすっきりとしていくのが、分かる。冷えた身体が温まり、指先にも暖かい血流がめぐり始める。
ひとしきり、身体を洗い、バスルームから出て身体を拭く。

ぐう~

「………なにかあったか…?」

ため息をつきながら、冷蔵庫の中身を思い出す。…流石に帰ってきて、食事もとらなかったから…腹がへった。
タオルで頭を拭きながら、キッチンに向かい、冷蔵庫の中身をあさる。
…ベーコンに卵か…。目玉焼き程度で良いか。
少し水気の残った髪を気にせずに、フライパンに油を薄く敷いて、目玉焼きを作り始める。
トースターにパンもセットしておいたから…すぐに食べれるだろう。

「まぁ、こんなものか。」

独り言を呟きながら、リビングに玉子焼きとパンを運び、少し遅めの朝食で、早めの昼食をとることにした。
ソファにすわり、コーヒーを飲みながら、テレビをつける。

「昨夜、中央銀行で強盗事件が発生しました。なお、犯人グループは既に管理局が逮捕した模様です。今回は迅速な対応でしたね。」
「偶然にも、近くを局員の方が通りかかった時に起きた事件のようですからね。運が良かったのでしょう。」
「しかし、最近はこのような事件が…」

ピッ

すぐにリモコンでテレビの電源を切る。何故に自分が解決した事件のニュースを、見なけりゃいかんのだ。
…迅速な対応…ね。陸、海、空。この3つが全面的に協力し合い、隔たりなく行動できれば…人手不足やら、魔道師の無駄遣いやらがなくなるんだが。
それを実施しようとしているのが、ハーリング提督を筆頭にリンディ艦長やレティ提督、そして、バートレット教官やランパート教官も賛同している。
まぁ、確執やらでうまくいかないが、実施している部隊も存在する。ヴォイチェク隊長の率いるシュトリゴン隊だ。
あの部隊は管理局の中でも、別格だろう。現にあの陸でさえ、シュトリゴン隊に救援を求めることもある。
バートレット教官やランパート教官もその気になれば、入隊できるんだが…。2人は別なところで貢献してくれている。
すなわち、優れた魔道師の教育だ。…そういえば、教導官試験を受けるとか言っていたな。あの2人なら心配ないだろう。

「…メールか。」

テーブルにおいてあった端末が、電子音を立ててメールの着信を知らせる。
…誰からだ?と思いながら、操作すれば…。

「はは、あいつか。」

差出人は、メビウス・ランスロット。…PT事件後に、連絡先を閃やオメガ、ユーノとも交換していた。
それから、こうしてメールのやり取りをすることがある。内容は日常のことなど。たまに、魔法のアドバイスをしてやることもある。
ん…、内容を見る限り、家族旅行に行ってくるから、お土産を買ってきます…と言うことか。
時々だが、閃やオメガが地球の名産品を送ってくれることがあり、クロノ達と一緒に食べることがある。
あの納豆…だったか…、最初は食べれるのかと思ったが…案外、いけたな。何気にクロノもいける口だったしな。
流石に、リンディ艦長やエイミィは無理だったが、女性にはきついのかもしれんな。

ピンポーン

リビングに響く、呼び鈴の音。来客か…?
コーヒーカップを置いて、備え付けのモニターの電源を入れる。
そこに映ったのは、俺の2人の親友の姿。

「よぅ、ブービー!!遊びに来たぞ!」
「チョッパー、肩に腕を乗せるな。重いだろ…」
「クロノに…チョッパーか。今あけるよ。」

笑顔でクロノと肩を組むチョッパー。本名はアルヴィン・H・ダヴェンポート 。通称、チョッパー。
自分より、大柄な彼の腕が重いのか、クロノはしかめっ面をしていた。
俺達とは同い年であり、訓練をともにした仲だ。玄関のロックを解除して、2人を向かいいれる。

「久々だな。相変わらず、元気そうでなによりだ。」
「おう、ブービーも元気そうじゃねぇかよ。…お、メシの最中だったか?悪い悪い。」
「別に良いさ。待っててくれ、コーヒー入れるからな。」
「ありがとう。…チョッパー、くつろぎすぎだろ。」
「クロノも座れって。オイラ、1人は寂しいぞ~。」

フックに上着をかけながら、クロノもソファに座る。チョッパーは言わずもがな、自分の家のように寛いでいるよ。
まぁ、入隊前はこうして、俺のけで3人で集まってたものだな。俺とクロノは海に、チョッパーは空に配属され、こうして会うのは久々だ。

「ん…。なんだ、ブレイズにも彼からメールが来てたのか?」
「クロノにもいってたんだな。…まぁ、楽しみにしてようか。」

開きっぱなしだった端末に眼が言ったのか、クロノが笑いながら、こちらを見る。
こいつもメビウス達と連絡先を交換していたからな。…土産が楽しみなんだろう。

「おいおい、2人してなんの話してんだよ?俺だけ仲間はずれか?寂しいねぇ…。」
「仲間はずれって訳でもないんだが…。」

おどけた様にしながら、落ち込むチョッパーに苦笑しながら、出したコーヒーを飲むクロノ。
本当に…退屈しないな。俺は軽く掻い摘んで、内容を話す。

「へぇ~。地球の名産ね…。なぁ、それなら向こうの音楽とかも送ってらえんのかな?」
「どうだろうな?頼めば、送ってくれそうだが…。またロックか?」
「当然だろ。ロックンロールは俺の命だぜぃ!」
「僕やブレイズが頼んだら、驚かれそうだな。」
「違いない。」
「なんだよ~。お前らだって、ロックは好きだろ?」
「まぁ…否定はしないさ。」

小さく笑いながら、食事に使った皿などを片付ける。
俺やクロノがロックンロールのCDを頼んだら…あいつら、驚くんだろうな。
機会があれば、チョッパーにも紹介するか…。クロノも同じ事を思ったらしく、チョッパーに「後で紹介するよ」といっていた。

「よし、そうと決まれば…ブービー、コンポ借りるぞ?」
「別にいいが…。今日は誰の曲だ?」
「決まってらぁ、俺っちお勧めの、ローリングサンダーだぜ。」
「まったく…」

コンポから流れるロックを聴きながら、俺達は3人それぞれの近況を話し始める。
たまには…こう言う休日もいいものだな。



あとがき

ブレイズ・クロノ・チョッパー。関係的にはメビウス・オメガ・閃のような親友関係です。
…チョッパーらしさが出てれば良いのですが…。
とりあえず、旅行記は次回で最後で、また別な小話でも書こうかと。
さっさと2期に行けと言う意見が多数出てきた場合は、速攻で2期に突入しますので…では。




[21516] ランスロット家温泉旅行記その3&廻る歯車
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/03 23:59
・メビウス・

「と、言うわけで、ここが今日泊まる旅館よ!!」
「また…大きなところだな。」

最初に行った山の上の温泉から、車で移動してたどり着いたのは、麓に在る大きな旅館。
周りにも幾つか旅館があって、色々な温泉を楽しめるみたいだね。
私とフェイトは、自分の荷物を持て、母さんと一緒にロビーに向かう。
すると突然、フェイトが驚いたようにして、私の腕に抱きついてくる

「お…お兄ちゃん、あれ…なに?」
「え?…鬼…?」

フェイトが指差す先には、白い鬼面をつけて刀を持っている人形が飾ってあった。
その後ろには、その人形と同じ格好をした人が踊っている写真もおいてある。少し気になって、私は近くに居た従業員の人に声をかけることにした。

「すいません。あの鬼みたいなのって…なんですか?」
「はい?…あぁ、あれですか?あれは鬼剣舞と言う踊りの装束なんですよ。説明しますか?」
「あ、お願いします。」

母さんもフロントで何か手続きをしているから、少し話を聞くのも良いかな?

「ずっと大昔に、この地を荒らす鬼達がいたんですよ。畑や田んぼを荒らすから、作物も取れずに農民は困り果ててしまいました。
だから、お坊さんに頼んで、どうにかしてもらおうとしたんですよ。お坊さんは一度、鬼達の為に宴を開きなさい、といいました。
それを聞いて、村人達は鬼達の為に宴を開きました。すると、どこからともなく、一匹の猿がやってきたのです。」
「猿…ですか?」
「えぇ。実はその猿は仏様の化身で、宴をする鬼達に混じり、踊り始めたのです。その踊りに誘われ、鬼達も踊り始めました。
すると、鬼達の汚れた魂は清められ、仏様の化身となり、村を護る存在になったのです。」
「えっと、それじゃ、この鬼は…神様?」
「そうですよ。私も祖母から聞いた話ですから、本当かどうかは分からないですが…。守り神と思ってる人も沢山居ます。
だから、お嬢さんも恐がらないでくださいね。」

にこやかに笑って、従業員の人が戻っていく。
そっかぁ…守り神…なんだ。その話を聞いたからか、フェイトも恐がる様子はなくなった。
…実はこれより恐いのと、今まで戦ってたんだけどね。
けど、鬼の神様かぁ。………鬼神…?

「どうしたの?」
「なんでもないよ。さぁ、父さん達の所に行こう。」

小さく笑った私に気が付いて、首をかしげるフェイトの手をひいて歩き出す。
フロントの前では、母さんが何か…また怪しく笑いながら、私達を待っていた。
…ロビーに入ってきた瞬間、父さんがビクっ!!てなってたね…。

「それじゃ、鍵を配るわね。はい、メビウスちゃん。」
「え…?」
「こっちはガルムねぇ。」
「はぁ…?」
「後は私っと…。さぁ、部屋に向かうわよ!」
「待て待て待て待て!!!!!ちょっと待て!!」

エレベーターに行こうとする母さんの肩を物凄い勢いで、掴んで止める父さん。
その表情は…物凄く焦っている…。私も…少しおかしいと思う。
なんで…鍵が3つも…?

「サイファー…、つかぬ事を聞くが…部屋割りはどうなってるんだ…?」
「え?もちろん、私とフェイス、メビウスちゃんとフェイトちゃん、ガルムとアルフ、の組み合わせよ?」
「家族団欒の旅行だろう!?分ける必要性皆無だろ!?」
「今度は夫婦間、兄妹間、使い魔間の絆を深めるのよ!!つべこべ言わずに、行くわよ!!あぁ、夕食の時は、連絡するわね。」
「おい、まて…引っ張るな!おい!?…メビウス、ガルム助け…」
「さて、アルフ、部屋に行くか。」
「あ…あんたと同じ部屋…。い…良いさ、いってやろうじゃないか!!」
「う…裏切り者ぉぉぉぉ…」
「うふ…うふふふふふふ……!!!」

エレベーターが閉まる瞬間に聞こえた父さんの悲鳴と母さんの怪しい笑い声。…ごめん、私には何もできないよ…。
ガルムは私達に一礼すると、別なエレベーターで部屋のある階に昇っていった。


「まったく…、フェイト、私達も行こう?」
「う…うん。あ…その…手…」
「え?…あぁ、繋いでいく?」
「うん!!」

手を差し出すと、嬉しそうに握ってくるフェイト。こんな事でも喜んでくれるなら、繋いでよかったよ。




メビウスとフェイトの部屋。


「えっと…どうかな…?
「うん。似合ってるよ。可愛い可愛い。」
「そ…う?ありがとう。」

部屋について、私達は早速、備え付けの浴衣に着替える事にした。
私は少し青色が強い浴衣、フェイトは桃色がかった浴衣を着ている。
うん、女の子らしくて凄く可愛い。フェイトは顔を赤くしながら、その場でクルリと回転してみせる。
金色の髪と、白い肌が浴衣と相まって、不思議な感じがするけど…うん、やつぱり似合ってるね。

「夕食まで…1時間くらいかぁ。」
「どうすか?温泉に入ってる?」
「ん~…さっきまで入りっぱなしだったからね…。少しゆっくりしようか。」

そういって、私は畳の上に大の字で寝転ぶ。あ~……少し眠くなってきたかも…。
小さくあくびをすると、フェイトは何か気が付いたのか、私の近くに正座して座る。

「お兄ちゃん、その…頭、痛くない?」
「少し痛いかも。座布団を枕にしようかな…。」
「そ…それじゃ、私の膝…枕にする?」

ポンポンとフェイトが自分の膝を叩いてくる。
一瞬、戸惑ったけど、私はすぐにフェイトの膝に頭を乗せて、逆様のフェイトの顔を見つめる。

「大丈夫…?寝心地、悪くない?」
「全然…柔らかくて気持ち良い。」
「よかった…。お兄ちゃん、眠いなら…寝ていいよ?」
「ん、ありがとう…。」

優しく笑いながら、フェイトは私の頭を撫でてくれる。これじゃ…何時もと逆だね…。
フェイトの体温を感じながら、私は眼を閉じて…睡魔に身を任せる事にした…。




・フェイト・

可愛い寝顔…。
それがお兄ちゃんの寝顔を見た、私の印象。
膝に頭を乗せられた時は、心臓が破裂するかと思うくらい緊張した。
けど…乗せてみれば、心が凄く安らぐ。お兄ちゃんの…体温を近くで感じられるからかな…?
ずっと前に、なのはがしてたのを真似したんだけど…あの時のなのはの気持ちが良く分かる。
…凄く恥かしくて…凄く嬉しい。大好きな人が…こんな近くに居てくれるから…。
何時もされているみたいに、お兄ちゃんの頭を撫でてあげる。もう、眠ってるんだけど…ほんの少し身じろぎをする。ふふ…可愛いなぁ。

「…凄い…。髪がサラサラ…。」

まるで女の子に髪を伸ばしているお兄ちゃん。蒼い綺麗な髪は…確かに、切るのはもったいない。お母さんが切っちゃ駄目って言うのも、分かる気がする。
何時もはリボンで結んでるけど、今は解いてロングストレートの髪にしてる。それだけで、凄く印象が違う。

(本当に女の子みたい…。)

けど…凄く強くて…優しいのは知っている。女の子みたいだけど、凄くかっいいのも知っている。
……あう…抱きしめられた時の事を思い出したら、また顔が熱くなってきた…。
私はそのまま、お兄ちゃんが起きるまで、頭を撫で続ける事にした。





ゲームセンター

「さぁ、夜はまだまだこれからよ!!」

夕食のバイキングを終えたランスロット一家。現在、旅館内にあるゲームセンターに集合していた。
やはり、一番元気なのはサイファーのようだ。
最早、メビウスもガルムも止める気が起きないのか、諦めたような表情をしている。ちなみに、スカーフェイスは我関せずの表情だ。いや、お前の妻だろう…。
フェイトとアルフは初めてのゲームセンターなので、色々なゲームを見てまわっていた。

「ゲームセンターといえば…これよねぇ~。」

サイファーが笑顔で見つめるゲーム機。今人気のガンシューティングゲームの最新版だ。しかも難易度も高く、クリアが困難なことでも有名である。
メビウスが見守る中、何故か彼女は投入口に200円入れる。

「あれ、母さん?これ、1回100円だよ?」
「大丈夫よメビウスちゃん。…私はこうやって遊ぶのよ。」

そう言うと、彼女は1Pと2Pのガンコントローラーを両手に握る。

『ようこそ、プロジェクト・アビスヘ、歓迎しよう、盛大にな!!』

画面にオープニングが流れ、最初のステージが始まる。その瞬間にサイファーの眼が変わる。鋭く…正に歴戦の傭兵の眼だ。
両手に持つガンコントローラーのトリガーが引かれるたびに、画面に出てきた敵兵が倒れていく。しかも、全て頭を撃つ、ヘッドショットで撃破しているのだ。
その異様なプレイ方法、そして実力で周囲の利用客達も足を止めて、彼女のプレイを見守っていた。
1ステージをノーダメージ、そして最速、最高得点でクリアーした時には、周囲には多くの観客が集まっていた。


「見える…!!私にも敵が見えるわ!!」
「あの…母さん…?」
「円卓の鬼神は…伊達じゃない!!」
「…は…恥かしいんだけど…。」


意気揚々と、次のステージも敵兵達を撃ち倒していくサイファー。観客も大盛り上がりである。

「す…すげぇ!!全部一発で倒してるぜ…。」
「おいおい、あの敵…出て来た瞬間に撃たれたぞ!?」
「げ…ゲームのシステム上、こっちの銃弾で、敵の銃弾を打ち消せるらしいけど…やった人始めてみたぞ…!?」
「きゃ~!!お姉さん素敵!!」

……こんな所で、己の母の凄さを見せ付けられても、嬉しくないメビウスであった。



サイファーの周りが騒がしくなる一方で、フェイトはクレーンゲームのエリアで、ぬいぐるみを眺めていた。
やはり、女の子である。可愛いものが好きらしい。

「あれ…?」

すると、1つのクレーンゲームの前に、見知った後姿を見つけた。彼女の父親であるスカーフェイスだ。
その周囲には、何故か小さい子供連れの母親や、若い女性が集まっていた。
不思議に思いながら、トコトコとスカーフェイスの隣まで歩いていくと、彼の浴衣の裾をクイクイとひっぱる。


「ん?フェイトか。」
「お父さん、これ全部とったの…?」
「あぁ、こう見えても得意だからな。」

スカーフェイスの足元の袋には、小さなぬいぐるみやら小物やらが、あふれんばかりに詰まっていた。
その1つを近くに居た小さな女の子に渡すと、母親からお礼を言われる。

「すいません…。私じゃとれなくて…、ほら、お礼を言いなさい。」
「ありがとう!!」
「いや、お金はそちら持ちでしたから。」

母親から頼まれて、スカーフェイスが取った物のようだ。笑顔で、母親と手をつないでいく女の子を見送りながら、フェイトは再び、スカーフェイスに視線を戻す。
その顔は何処となく笑顔である。
どうやら、この精悍な父親とファンシーなぬいぐるみの組み合わせが、少し面白いようだ。

「ふむ、まぁ、こんなものかな。フェイトはそれだけで良いのか?」
「うん、お父さん、ありがとう。」

気が付けば、袋は2つに増え、フェイトも笑顔で、小さな猫のぬいぐるみを持っていた。彼が娘の為に取ったものだ。
2人で手を繋いで、サイファー達のところで戻る途中で、フェイトが立ち止まる。
何事かと、スカーフェイスが視線をたどれば…1つのクレーンゲームの景品があった。
少し大きめのイルカのぬいぐるみで、綺麗な青色とつぶらな瞳がとても可愛らしい。

「あれも欲しいのか?」
「あ…うん、けど…難しそう…。」

確かに、イルカのぬいぐるみは大きく、難しい位置においてあった。
スカーフェイスは少し考えるそぶりを見せたが、すぐに100円を取り出すと、コイン投入口に入れる。

「任せておけ。…ここで父の威厳を見せておかないとな。」
「良いの?」
「あぁ、すぐに取ってやるさ。」

クレーンゲームで父親の威厳を見せるのも如何なものかと…。
しかし…1分後、笑顔でイルカのぬいぐるみを抱きしめるフェイトと、満足げに頭を撫でるスカーフェイスの姿がそこにあった。


ガルムとアルフの部屋。

「ふぅ…良い湯だったよ。」

アルフが長い髪をぬらして、廊下を歩いていく。どうやら、温泉に入っていたようだ。時刻は既に遅く、館内の廊下も静まり返っていた。
24時間入浴可能の温泉はこういうときに便利で良い。入りたいときに入れるのが最高だ。

「…あいつと…一緒の部屋かぁ…。」

思い浮かぶのは、自分と同じ紅髪の使い魔ガルム。何故かサイファーの計らいで一緒の部屋になってしまっていた。
彼女のマスターでもある少女と、彼のマスターである少年も一緒の部屋になっている。
フェイトは大丈夫だろうかと…と考えてすぐに思い直す。兄であるメビウスに甘える彼女の姿しか想像できなかったからだ。

「…フェイト、暑くない?」
「ううん…。もっと…くっ付いていも良い…?」
「私は良いけど…」
「ん~♪」


顔を赤くしながらも、大好きな少年の温もりを感じながら、眠りつく少女。少年も少女を笑いながら受けていれていた。



「あ~…ん~…何時までもここでグタグダしてる訳には…いかないね。」

エレベーターホールの椅子から立ち上がり、部屋に向かうアルフ。
思えば、あの使い魔をなんとなく意識し始めたのは何時からだろうか…?
最近の気もするし、ずっと前からの気もする。…まぁ、クヨクヨと考えるのは彼女には合わないので、そこまでで中断する。
静かに扉を開けて部屋に入ると、中は薄暗かった。

「…ガルム…?」
「なんだ?」
「ひゃ!?って起きてるんじゃないか…。」

てっきり部屋が暗かったので、寝てたのかと思ったが違うようだ。
眼を凝らせば、窓際に座り、空の満月をガルムは眺めていた。その幻想的な姿に一瞬、眼を奪われるアルフ。

「入り口で固まってどうした?」
「うえ!?な…なんでもないよ。」

ガルムの声で正気に戻り、部屋の中に入ると、視線は床--2つの布団に向かう。
そこで、自分はここで寝るんだ。と改めて自覚して、何故か緊張する。
そんなアルフに気が付かないのか、ガルムは側においてあった酒--日本酒を一口飲んで、また空に視線を戻す。

「お酒、飲んでるのか?」
「まぁ…な。スカーフェイス様の相手をするときがある。…後はたまにだな。」

そう言うと再び、日本酒を飲む。アルフもガルムの隣に座り、夜空を眺める。
満天の星空で、その中央には丸く綺麗な満月が優しく光っていた。

「…綺麗だな。」
「あ、うん。綺麗な満月だね。」
「そうだな…ほぉ…。」
「ちょ…!?」

ガルムの手が、そっとアルフの頬にそえられる。突然出来事に戸惑うアルフを面白そうに見つめ笑う。

「お前の眼にも満月が映っているな。」
「あ…あんたの眼にも映ってんだろ…。どうしたんだい?なんか…おかしいよ?」

何時ものガルムと違いよく笑い、優しげな眼をしていた。アルフが初めて見る表情だ。

「確かにな…。まぁ、酒の責任とでもしておこう。」
「あ…。」

そえられた手が離れ、見つめられていた眼が再び夜空に向かう。
ほんの少しの寂しさを感じながら、アルフは横顔を見つめる。

(…あんたがその気なら…!!)

しかし、負けず嫌いな彼女のことである。すぐに気を取り直して…隣に座るガルムに寄り添うアルフ。
…彼女なりに考えた精一杯の方法のようだ。

「…どうした?」
「さぁね…。あたしは満月のせいでおかしくなったのかもね。」
「ふ…そうか。…我は酒でお前は…」
「アルフだよ。…あたしはガルムの名前、よく呼んでんだから、そっちもそう呼びなよ。」
「なら、言い直そう。我は酒で…アルフは月でおかしくなったか。」
「…そうだよ…全部満月の責任さ。」

ガルムの手が彼女の肩に回り、ソッと抱き寄せる。
満月が2人を照らし、部屋に伸びる2つの影が…1つになった。



管理局本局

・ブレイズ・

「お~い。ブレイズ!!」
「チョッパー、どうした?」

本局の廊下を歩いていると、聞き覚えのある声で呼ばれる。
振り返ると、航空隊の制服を着崩したチョッパーがこっちに走ってきていた。

「よっ、奇遇だな。お前も今からメシか?」
「あぁ、チョッパーもか?」
「おう、よし、なら一緒に食おうぜ。」

チョッパーが俺の肩に手を回し、軽く引っ張っていく。
こいつは俺よりも大柄だからな。…結構、力強いな。

「そう言えば、クロノはどうしたんだ?」
「会議だそうだ。昼食も後で取るらしい。」
「へぇ~…。良いのかぉ?執務官補佐役が会議をサボって?」
「俺は出なくても問題無いといわれたからな。…チョッパーこそ、訓練は良いのか?」
「メシくらい食ったっていいじゃねぇかよ。あ~、腹減ったぜ~。」

笑いあいながら、食堂に向かう。
適当にメニューを選んで、受け取り、席を探すと見知った姿を見つける。
あいつは…。
チョッパーも気が付いたようで、俺の視線を向けて、指差す。

「ハミルトン、久しぶりだな。」
「よっ!元気そうだな。」
「…トリスタンにダヴェンポートか。なんのようだ?」
「メシでも一緒に食おうぜ。」
「…断る。」

そう言って俺達を軽くにらむのは、訓練生時代に同期であったアレン・C・ハミルトンだ。
チョッパーは軽く受け流して、向かいにトレイを置いて座る。俺は少し戸惑い気味に、チョッパーの隣に座る。
更に視線が冷たくなっているんだが…やれやれ、こいつと一緒に居るのは…辛いんだよな…

「おいおい。冷たいこと言うなよ。俺たちゃ、同期だろ?」
「ふん、お前とトリスタン、そして、ハラオウンは同期だろうが、私はそうではない。」
「…ハミルトン、一緒に食事するぐらい良いだろう?」

…正直言うと、こいつとは訓練生時代から、あまり良い付き合いをしているとはいえない。
何故か一方的に敵視されている気がしてならない。

「残念だが、私はすぐにベルカに行かなきゃいけないのでね。
「ベルカ?何しに行くんだ?」
「…長期演習だ。では、失礼するよ。」

自分のトレイを片付けて、足早に立ち去るハミルトン。
知らず知らずに俺の口から、ため息が漏れていた。こちらとしては、仲良くしたいんだがな…。

「おいおい、ブレイズ。ため息つくと幸せ逃げるぜ?」
「そうは言ってもな…。あそこまで露骨に嫌われると流石に…。」
「あ~…未だに演習で俺達の班に勝てなかったのを根に持ってんのかね…。」

バートレット教官の指導の下で、何度かハミルトンの班とは演習をしたが、全部俺達の勝ちだった事は覚えている。
だが、クロノやチョッパーの活躍があってだと思うんだが…。

「それか、一度も総合成績でブレイズに勝てなかった事とかか?」
「それは関係ないだろ…。第一、最終成績はクロノがトップだぞ?」
「あれはお前…、最終試験日に風邪をひいたからだろ」

面白そうに笑うチョッパー。…確かに、あの時は風邪をひいて、まともに試験を受けれなかったな。
クロノにもあきれられたようにされたな…。思い出しても恥かしい…。

「しかし、ベルカ…ねぇ。…どこに行くんだろうな?」
「考え付くのは…白虹騎士団か…」
「うへぇ…超エリート部隊じゃねぇかよ。」

白虹騎士団。ベルカだけでなく、ミッドにもその名を轟かす超エリート部隊だ。
聖王協会所属の魔導師達であり、かのベルカ空戦隊の流れを組む接近戦のプロ達だ。
だが…管理局とは演習は行わないはず…。そうなると……

「もしくは…評議会直轄地だな。」
「それはそっちで辺境じゃねぇかよ。デリケートで繊細なオイラは耐えれそうにないなぁ。」
「良く言う。まったく…。」

笑って食事を再開する俺達。
だが、何故か分からないが…ハミルトンを引き止めたほうが良かったんじゃないか?と…何処かで思っていた。





あとがき


メビウス君達が惚気てる間に少しずつ回り始める運命の歯車。
さて…次回は…ほんの少し真面目な話を書こうかと思っています。
2期までは、まだかかります。
あと以下、おまけ


家族旅行終了後、高町家に向こうメビウス。
目的はもちろん、お土産を配りにだ。

「あら、メビウス君、おかえりなさい。旅行楽しかった?」
「桃子さん、はい、楽しかったです。これお土産…」
「めびうすくぅぅぅん!!」
「な…なのちゃん!?って…わぁぁ!?」

突然奥から現れた泣き顔のなのはに引っ張られ、彼女の自室に連行されるメビウス。
後に残ったのは、お土産を渡されて、娘の行動に笑う桃子1人だけ。

「…えっと、なのちゃん、機嫌直して…」
「うぅ~…!!やだもん…。今日はずっとこうしてるもん。」
「言葉が…小さい頃に戻ってるよ…?」
「良いのよ!!…メビウス君…寂しかったよぉ…。」
「あ~…うん、ごめんね?」

結局、なのはを抱きしめながら、慰める事に一日を費やしたメビウスであった。




[21516] 鉄拳餓狼の少年&ナイトの少年
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/07 10:10
・オメガ・

「よっしゃ、今日も学校が終わったぜ!!」
「あんた…放課後になると本当に生き生きしてるわね…。」

アリサが呆れたようにしながら、俺の隣を歩いている。
授業は退屈でしょうがないんだぜ…。メビウスや閃はよく真面目にしてられるよなぁ。
俺は、ネットに入れたサッカーボールで軽くリフティングをする。

「さて、今日も神社で自主練でもすっかな!!」
「態々、神社でしなくても、校庭でやればいいじゃないの。」
「いやな、あそこにチビ狐が居てよ。」
「チビ狐…?」




神社



「お~い、ちび狐、居るかぁ?」
「…」(トコトコ)
「わ、本当に居た。…あら、逃げちゃった…。」

アリサがどうしてもちび狐を見たいと言うことで、一緒に神社までやってきたんだけど…。
俺の声に反応して、奥から出てきたチビ狐がアリサに驚いて、また奥に引っ込んでいっちまった。
おいおい、アリサが悲しんでんじゃねぇかよ、困るぞ。こんな顔させるために、連れて来たんじゃねんだぞ。

「チビ狐~。油揚げあるぞ~?しかもちょっと高い奴。」
「あ、尻尾が見えたわね。」
「今日は特別に2枚付けるぜ!!」
「走ってきたわね。」

やっぱり狐。油揚げの魅力には勝てなかったようだぜ!!
すんごく眼をキラキラさせながら、袋を開けるのを今か今かと待っているチビ狐を見ながら、俺はアリサに油揚げの袋を渡す。

「ほいよ。お前があげろよ。」
「え、私が…?」
「おう!!その方がチビ狐と仲良くなれるぜ!!」

アリサに袋を手渡して、俺は荷物を境内において、軽くストレッチを始める。
おっかなびっくりで油揚げを食べさせるアリサ。おおう、チビ狐も食べ方がぎこちないぜ。

「…可愛いわねぇ。」
「……」
「チビ狐。その油揚げはアリサの奢りだからな。礼を言っとくんだぜ!!」
「!!」(ぺろぺろ)
「きゃっ。もう、くすぐったいわよ。」

チビ狐がアリサの手を舐めて、感謝してるみたいだな。アリサも嬉しそうにしてるから…良かったぜ。
さて、軽くリフティングでもしてと…









その日、すずかは朝から嫌な予感がしていた。家を出てから、ずっと誰かに見られている感じがしたのだ。
彼女は…普通の人間と違い、夜の一族の血が流れていた。すなわち、吸血鬼。
ただ、人の血と混ざり合っている為に、一定の周期で血を求めることはあっても、常にではない。
そして運動神経や直感がとても優れているのだ。

「あ…すずかちゃん。」
「メビウスくん?あれ、お家はあっちの筈じゃ…?」


周囲に注意を払っていると名前を呼ばれ、その方向を見ると、メビウスが笑顔で走りよってきた。
彼の家は、少し離れているのに、何故ここに居るのだろうか?
しかし、妙な気配は気のせいだったと思い、安堵の表情を浮かべ、メビウスの持っている雑誌に気が付く。

「その本…買ってきたの?」
「そうそう、本屋に寄ってたんだよ。それでついでに散歩してたら、すずかちゃんを見つけたら、声をかけたんだ。」
「あ、そっか。俺んちページ、今日発売だったよね。」
「すずかちゃんも買ってるんだ?」
「うん、お料理の事とか、乗ってて面白いから。」
「それなら、先月号の手羽先のすっきり煮込みの記事、見た?」
「見たよ。あんなに簡単にできて、少し驚いちゃった。前はちょっと、手間をかけてたんだけど。」
「だよねぇ。そうそう、今月号に…」

一緒に道を歩きながら、料理の話に花を咲かせる2人。
すずかも、メビウスが近くに居るということもあって、すっかり気を抜いていた。
それが…拙かったのだろうか。ほんの少し人通りの少ない道に入った瞬間に、異様な静けさを感じた。
先ほども述べたように、すずかは直感がとても優れている。故に異様な空気と…前から歩いてくる男の異様さに気が付いたのだ。

直感が告げている。目の前の男は…自分と同属だと。

「月村すずか嬢…ですね?」
「…どちらさまですか?」

薄く笑みを浮かべる男を警戒しながら、すずかは警戒するように後ろに下がると、メビウスが庇うように立ちふさがる。
男は、一瞬驚いたようにするが、すぐに笑みを浮かべる。

「ほぉ…。か弱い姫を護るナイトのつもりですか、少年?」
「初対面で失礼ですが…貴方は怪しすぎるんですよ。それに、すずかちゃんも警戒してる。なら、私が護るのは当然でしょう?」
「なるほど。まぁ、確かにそうですね。」

メビウスは庇うように立ちふさがり、周囲に人の気配がないかと、眼を配る。

「無駄ですよ。周囲に結界を張らせてもらいました。」
「…貴方は、何者ですか?」
「貴女と同じ…夜の一族ですよ。まぁ…ほんの少し、特別な力をもっている…ね。」
「夜の一族…?」
「ほぉ!少年は何も知らないのですか。なるほどなるほど…」

聞きなれない単語に、戸惑うメビウス。そし、男は愉快そうに笑いながら、すずかに視線を向ける。
すずかの表情は、硬くなっていた。

「夜の一族。それは高貴なる闇の眷属。まぁ、簡単に言えば…吸血鬼ですよ。」
「やめて…」
「そのすずか嬢も、人間のような姿をしていますが…血を求める人外の存在なのですよ。」
「やめて!!違う…私は…私達は…」

すずかの悲痛な叫びを上げ泣き崩れるのをみながら、男は愉快そうに笑う。

「……」
「さぁ、少年よ。ここから立ち去って、何も言わずに過ごすなら…見逃してあげましょう。」
「断る…といったら?」
「まったく…利口そうな少年だと思いましたが…所詮は子供ですか…良いでしょう。」
「メビウスくん…?」

男が懐からカードを取り出す。それが光り、1本の杖と形を変える。
そして杖を一振りすると、魔方陣が展開し、数体の人形が現れる。

「そんな…自動人形…!?それに今のは…。」
「ほぉ…流石は、月村の娘。自動人形は知ってましたか。しかし、これは知らないでしょう?」
「っ!?」

メビウスの足元に、突然穴が開く。男を見ると、周囲に光でできた球体が浮遊していた。どうやら、それで穴を開けたらしい。

「すずかちゃんをどうするつもりだ!!」
「決まってるでしょう?夜の一族の癖に…光の当たる世界で生きている彼女達が気に食わないんですよ。」
「どうして…私達は、ただの人として生きたいだけです!」
「下等種の人間と一緒にですか?…愉快ですねぇ、そして虫唾が走る。…良いでしょう。では、人間がどれほど、脆弱な者か…見せてあげましょう。」

男が哂いながら、空中に映像を映し出す。そこには、親友であるアリサ・バニングスの姿が映し出されていた。。
こちらでも、男の背後に居た自動人形も、剣を抜き放ち、2人を囲む
その光景を見た瞬間に、すずかの表情が凍りつく。

「アリサちゃんに…何をするつもりですか!?」
「なに…ほんの少し…痛めつけるだけですよ。そうすれば…貴女も分かってくれるはずです。」
「そんな…止めて!!アリサちゃんを傷つけないで…!!」
「ならば…大人しく、付いてきてくれますか?なに…それなら、その少年も見逃して上げますよ。」

ノロノロと顔を上げ、男の下に歩き出そうとしたすずか。
親友であるアリサが傷つけられるくらいなら…メビウスに嫌われるくらいなら…男に従ったほうが良い。
だが…そんな彼女のメビウスは手を強く握り、引き止める。

「すずかちゃん、心が嫌だって言うのなら…行かないほうが良い。大丈夫だから…ね?」
「メビウス…くん…。けど…アリサちゃんが…」
「それこそ、要らない心配だよ。…あいつが側に居るはずだからね。」

あいつ…?と聞き返す前に、男が舌打ちをしながら、自動人形を起動させる。
優しく笑いかけながら、メビウスは再び、すずかを背中に庇うようにして男と対峙する。

「まったく…面倒な餓鬼ですね。仕方がない…貴方も痛めつけてあげますか。まぁ、貴方と…大切なお友達を痛めつけて…絶望に沈むすずか嬢の姿を見るのも一興。
少年、呪うなら自分の馬鹿さ加減を呪うことだな。」
「貴方ごときに…出来るかな?」
「餓鬼が…調子に乗るなよ!!」


まるで動じないメビウスの態度が頭に来たのか、男は杖を振るいアリサの元に自動人形を送り出す。
そして、残った人形で2人を囲む。
だが、ここで男は…最大のミスを犯していた。男が狙っていた少女の側に居る蒼い少年が、どんな存在なのかを…
そして、もう1人の少女の元に居る鉄拳の少年の無茶苦茶さを…男は知らなかった。
それが自分に襲い掛かってくる最大の不幸だということに…


・オメガ・

「…うぉ…?」
「どうしたのオメガ?」
「?」
「いや…。ちょっとなぁ。」

境内に座ってチビ狐を抱っこしているアリサ。一緒に首を傾げてるが…おおう、可愛いんだぜ。絶対に言わないけどな!!
って、そんな事じゃなくて…なぁんか、今、嫌な空気を感じたんだぜ。
…ん~、入り口辺りか…。確認してくるか…
小走り気味に、石段を下りて、入り口を見てくるが…何もないぜ…。

「っかしいなぁ…。なんか感じた気がすんだけどなぁ…」
「ちょ…ちょっと、なにこいつら!?離しなさいって!!」
「なに!?」

境内の方から聞こえてくるアリサの悲鳴。やっべ、ミスったぜ!!
3段跳びの勢いで、石段を登って、境内を見ると…変な人形がアリサの腕を掴んでいた。
チビ狐も一緒になって抵抗してるが…あいつの力が強いみたいだな。

「てめぇ!!アリサから手を離せこらぁぁぁぁ!!!!」

何かが切れたんだぜ…。思いっきり、地面を蹴って、人形に体当たりをブチかまして、アリサから引き剥がす。
そのまま、アリサを抱きかかえて、距離をとる。…こいつ、軽いな。

「オメガ…あ、ありがとう…。」
「おう、気にすんな。…腕、大丈夫か?」
「うん、大丈夫よ。」

おいおい、強気に振るまってっけど…小刻みに震えてんぞ。こんな所で意地を張らなくたって良いだろう。
俺は、軽く頭をポンポンと笑顔叩く。

「な…なによ。変な笑顔なんかして…」
「意地っ張り~。」
「だ…誰が意地っ張りよ誰が!!」
「ツンデレ~。…うぉっ危な!!手を噛むなっての。ほら、チビ狐も心配してるんだぜ?」
「がるる…ってチビ狐も?」

おっと、危うく手を噛まれるところだっだぜ。チビ狐も足元で、心配そうにアリサを見つめているんだぜ。
それに気が付いて、アリサは頭を撫でて「ありがとう」って言って笑っていた。やっぱり、こいつの笑顔が一番だぜ。
っと…また嫌な感じがしたな。人形を吹き飛ばしたほうを見ると、起き上がってごっつい剣を抜いていた。
その周囲に、新しい人形が…転移してくんな。

「い…今のなに。それにこいつら…何処から出てきたのよ…!?」
「あ~…考えるのと答えんのは後回しだな。アリサぁ、俺の後ろに隠れてるんだぜ?」
「え、ちょっと、オメガ…あんた、どうするのよ?逃げたほうが…」
「チビ狐ぇ、アリサが泣かないようにしててくれ!!」
「!」

分かった、と言う様に尻尾を立てるチビ狐に笑顔を向けて、俺は人形に向き直る。
さてと…この俺に喧嘩を売るとは、良い度胸をしてるぜ。

「イジェクトォォ!!」
『OK!!今日もグゥレイトに決めようぜ、マイブラザー!!』
「オ…オメガ、その格好、なんなのよ…もう…。」
「さぁて…俺のアリサを恐がらせた事…後悔させてやるぜぇぇぇぇぇ!!!」
「んな…!?」

イジェクトを展開してバリアジャケットを装備、トンファーとパイルバンカーが唸り出す。久々に、暴れるぜぇぇぇぇ!!!
後ろで訳が分からないっつうアリサだけど…今は説明してる時間がないんだぜ!!
とりあえず、こっちに向かってきた人形の1体をトンファーで無造作に殴り飛ばす。

「ありゃ?」

おいおい、たったの一発で胴体が粉々に砕けちまったぜ。傀儡兵の方が数倍は頑丈だったんだけどよぉ。
まぁ、オンボロでも別に良いけどな!!

「おっと…!!甘いぜ!!新返し技、燕返し!!」

振り下ろされる剣を、避けながらトンファーで掬い上げるようにして…吹き飛ばす!!
2m位、吹き飛ばして、パワーウェイブで粉々に破壊して、バックステップ【空歩】で距離をとる。

「っと…危ないっての!!」

後ろから突き出される剣を、真ん中からトンファーで叩き折って、パイルバンカーを突き刺す!!そして、魔力を注ぎ込んで内部から爆発させる!!
そのまま、前に居たもう1体に踏み込みながら、裏券を叩き込んで…吹き飛ばす!!

「うぉりゃぁぁ!!不動活殺裏拳!!」

決まったぜ…!!けど…地味に数か多いんだぜ…。
よし、それなら…。俺は再び空歩で距離をとって、魔力を集める。

「新必殺技…行くぜ!!」

俺は左手に魔力を溜めて、腕を振り上げ、Uを描くように全力で振り抜くいて…魔力の波を放つ!!パワーウェイブを更に強化した新技。
その名も…!!

「駆けろ…烈風拳!!」

魔力の波が人形を乗り込んで、盛大に爆発する。土煙が収まれば、粉々に砕けた残骸だけが残っていた。

『You win!!今日も決まってたぜ、マイブラザー!!』
「ハッハー!!余裕で圧勝なんだぜ!!」






・メビウス・

「ば…馬鹿な…。」
「なにが起こったの…?」

尻餅をついて、信じられないといったように私を見る男。
空中に映し出されている映像では、オメガがガッツポーズをして高笑いしてるところだった。まぁ…こんなのに負けるあいつじゃないからね。
私とすずかちゃんの周りには、破壊した人形の破片が散らばっていた。
まぁ…ただ単に、私がセイバーで破壊しただけだけどね。

「まさか…お前も魔導師だったというのか…!?」
「正解。バリアジャケットを展開してる時点で…当たり前でしょう?」
『貴方程度の実力で、マスターに勝てるわけもないでしょう。』
「く…!!」
「逃がさないよ。バインド!!」

逃げようとする男をバインドで拘束して、杖--デバイスを取り上げる。
デバイスを持ってる時点で、魔導師って事は分かってたから、こっちも遠慮せずにエクスを使うことができた。
さて…とりあえず、こいつはクロノさんに連絡して、逮捕してもらおうかな。
バインドで二重、三重に拘束しながら、私はエクスの通信機器を起動させる。

「…あ、クロノさん?…えぇ、いきなりすいません。ちょっと、次元犯罪者らしいのを捕まえたので…、はい、襲われましたけど、こっちは大丈夫です。
…はい、私の他にもう1人居ますけど、怪我もしてないです。…あ、そうですか、なら座標送りますね。それじゃ…。」
「あの…メビウスくん…?」
「これで良しっと。この人を逮捕できる人達の所に連絡入れたから、大丈夫だよ。多分、すぐに来るかな?」
「か…管理局とも繋がっているだと…!?き…貴様…何者だ…!?」
「さぁてね。…お前なんかに名乗る名前は持ってないよ。…あ、来た、速いな。」

目の前に転移魔法陣が開くと、管理局の制服を来た3人が軽く敬礼して、男を連れて行く。
その内の1人が、こちらに歩いてきた。あれ…この人は…アースラの武装局員の人だ。


「メビウスさんお久しぶりですね。ご協力に感謝します。覚えてますか…?」
「はい、アースラの局員さんですよね?覚えてますよ。速い到着でしたね。」
「あぁ、良かった。いやはや、実はあの男が、こちらの世界に逃亡していると言う情報を入手して、捜索してたんですよ。そうしたら、執務官から連絡が入りまして…
また貴方に頼ってしまいましたね。申し訳ない。」
「いえ、良いんですよ。…あ、そう言えば、お名前、聞いてませんでしたね。後、敬語じゃなくて良いんですよ…?」
「いやいや、アジムとゲランを撃破した人に、タメ口なんて出来ませんよ。それに、癖みたいなものですから。俺はグラン・ハーマンと申します。」

グランさんと笑顔で握手を交わす。後ろのほうで、他の2人が男を拘束して、待っているのを見て慌てて踵を返した。
そして、3人でまた軽く敬礼をすると、転移していく。ふぅ…これで1段落かぁ。バリアジャケットを解除して、すずかちゃんに預けていた俺んちページを受け取る。

「さぁ、帰ろう。送ってくよ。」
「え…あ、うん。」

未だになにが起きたのか、分からないすずかちゃんの手を握って歩き出す。
…チラチラと視線を感じるし、何か言いたそうな、聞きたそうにしてるね。
私も聞きたいことはあるけど…本人が嫌がっていた事を聞きたくはない。

「私の事…恐くないの…?」
「なんで?」
「だって…夜の一族なんだ…よ?人間じゃないんだよ…?」

なにを言うかと思えば…。俯くすずかちゃんを見ながら、私は小さく笑みを浮かべる。

「恐くないよ。逆に、私の事、恐くない?魔法を使って、戦ってたし。」
「こ…怖くないよ。私の事…護ってくれたから。それに…友達…だから…。」
「なら、私も同じだよ。すずかちゃんは友達だからね。怖くないよ。」
「…メビウスくん…。」
「私の知っている月村すずかは…猫が好きで、おっとりしてて、お料理が得意な普通の女の子。
…それだけだよ。けど、もし…秘密にしてるのが辛いなら…みんなに打ち明けてみたら?」
「…受け入れてくれる…かな。」
「大丈夫だよ。先に言っちゃうけど…オメガや閃、それになのちゃんも魔導師だし…。そんな事、気にするわけないよ。
アリサちゃんだって同じだ。…すずかちゃんはみんなの事、好きでしょ?」
「うん…。好きだよ。みんなと居ると楽しいし、安心できるの。」
「それと同じくらいに、私もなのちゃんもみんなみんな、すずかちゃんの事が好きなんだよ。安心して…ね?」
「……」

ん~…やっぱり少し不安なのかな。まだ表情は優れない。
…よし、ちょっと強引だけど…良いかな。

「エクス、認識障害。後はサテライトを使うよ。」
『了解しました。ちなみに、時刻はちょうど良いと思います。綺麗な景色が見れますよ。』
「ありがとう。すずかちゃん、ちょっと良いかな?」
「え…?ひゃぁ!?」

流石はエクス、やりたいことが分かってくれたみたいだね。
バリアジャケットを再び展開して、すずかちゃんを横抱き--お姫様抱っこをして上空に飛び上がる。
いきなりで驚かせちゃったけど…この景色を見せたいんだよね。

「はは、恐がらなくても大丈夫。はい、眼を開けてみて。」
「…わぁ…綺麗…」

恐る恐る眼を開けたすずかちゃんの目の前に広がるのは、綺麗な夕焼け。
海や空が真っ赤に染まって、町並みも綺麗に輝いて見える。私の好きな光景の1つだ。

「すずかちゃん、世界はこんなに綺麗で…優しくて、温かいんだよ。夜の一族とか…そんなの関係ないよ。
世界が望んだから、すずかちゃんはここに居て…すずかちゃんが望んだから、なのちゃんやアリサちゃんと出会えたんだよ。」
「…うん…。」
「勇気を出して、一歩踏み出してみて…ね?その時は、私も一歩踏み出して…魔導師って事も説明するよ。」
「…そうだよね。私…頑張って…勇気を出してみる。」
「そうそう。なら、笑わなきゃ。綺麗に笑って、頑張らないと。」
「うん…!!…メビウスくん、まだ少しこの景色…見てて良い?」
「もちろん、ゆっくり見ていようね。」



笑顔を浮かべるすずかちゃんは…やっぱり可愛い。女の子はこうでなくちゃ。
なのちゃんも…すずかちゃんもアリサちゃんも、悲しい表情なんて似合わないからね。
大丈夫、きっとなのちゃんは驚きながら、受け入れてくれるし…アリサちゃんは秘密にしてた事は怒るだろうけど…受け入れてくる。
みんなみんな…優しい心を持った…友達だからね。






あとがき

はい、ミスったぁぁぁ!!!書く順番間違ったぁぁぁ!!!
次回がちょっと真面目な話でした。申し訳ないです。
メビウス、すずかフラグを立てる、と、オメガ、アリサ攻略の巻でした。
…オメガ君が格闘ゲームキャラになってきたかも…。
そして…チラッと出した今後の軽い伏線。まぁ、気が付くでしょうね…。



[21516] 金色の鷲と深紅の不死者
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/09 23:23
・閃・

「は~い、静かにしてね。今日、転入してきた新しいお友達を紹介します。…はいはい、楽しみなのは分かるけど、静かにしない。」

朝のホームルーム。教師が転入生が居ると言った瞬間に、教室がざわめきだす。
教師が軽く注意しても、中々静かにはならない。諦めたのか、軽くため息をつきながら、教室の外に居るであろう…彼女に声をかける。
扉を開けて、入ってきた少女--フェイトを見た瞬間にざわめきが止まる。…一部、男子、ガッツポーズとってるぞ。

「よっしゃ…!!新しい女子だ…!!」
「メビウスハーレム加入阻止だな…!!」

お前ら…その野望…とっくに終わってるぞ…。
燃える男子生徒を尻目に、教壇の前に立ったフェイトに軽く視線を送る。
お~お~、緊張しちゃって…。まぁ、しょうがないだろうな。

「はい、それじゃ自己紹介してね。」
「えっと…始めまして、フェイト・T・ランスロットです。よろしくお願いします。」
「ランスロット…だと…!?」
「あ…慌てるな。まだ家族と決まったわけじゃない…!!」

あ~…とりあえずお前ら、少し静かにしろ…。若干、アリサの視線が痛いんだよ。俺の近くだから、勘違いされたらどうすんだよ。
…そして隠す気もなく、物凄く幸せですオーラを漂わせているメビウス。笑顔が蕩け切ってるぞ…。デレデレだな。
なのはは……同じかよ。お前もデレデレモードか。ったく、…気持ちは分かるけどな。

「それじゃ、フェイトちゃんの席は…」
「はいはい!!先生、ここ空いてる!!」
「いやいや!!窓際より、廊下側の方が良いって!!」

一斉に手を挙げて、自分の隣が空いているとアピールする男子生徒達を見ながら、また呆れたようにため息をつく。
お前ら…フェイトが戸惑ってるぞ。なのはも勢いに負けて、手を上げれないで居るし…メビウスも苦笑してる。

「ん~、フェイトちゃんは何処がいいかな?」
「あの…お兄ちゃんの隣が…良いです。」
「お兄ちゃん…?あぁ。なら、メビウス君の隣にしましょう。その方が安心できるものね。」

フェイトはチラッとメビウスに視線を送りながら、小さく笑う。まぁ、兄であるメビウスの近くのほうが安心はするんだろうな。
…絶対に違う意味でいったんだと思うけど。…それに、一応は俺やオメガ、なのはも近く席だし…事情を知ってる奴が近くに居たほうが良いか。
お、途中でなのはに軽く手を振ったな。…本当に仲良いよな。

「既にメビウスハーレムの一員だと…!?」
「兄妹だから…違うはずだ…!!」
「これは…メビウス×なのは公式が崩れるか…!?」
「…なのは×フェイト?」
「おまっ!!」


嘆く一般男子生徒諸君、…本当に小学3年かお前ら…。あと、なのは×フェイトはネタだ。……多分な。
メビウスの隣に座って、一言二言と言葉を交わして教科書を開くフェイト。…どうなるかと思ったけど…なんつうか微笑ましい。
…俺も一応、リリンって言う、妹みたいなのが居るから…気持ちは分かる。見れば、なのはも笑顔で眺めていた。こいつも色々と心配してたみたいだからな。
原作じゃ、裁判とかで苦労したんだろうけど…ここのフェイトは良く笑うようになったみたいだ。確実に良い方向に話は進んでいる…と思いたい。
1時限目の授業が進む中、俺はこれからの事を考えていた。1期は無事に終了して、特別大きな問題もなかったな。…空気読めない馬鹿を除いて。
シルヴァリアスはミッドに強制送還させられたようだ。なんか何時の間にか、転校してたらしい。いや、興味なかったから、別にどうでもいいけど。
メビウスのレアスキルに付いては、予想外だったが…ソラノカケラねぇ。卑怯極まりないな…。まぁ、あいつには良く似合っているとは思うけど。
次は2期、A''s編が待ってるわけだ。八神はやてとの出会い、ヴァルケンリッターとの戦い、そして闇の書の決戦。
こでうまく立ち回らないと…蒐集されるかもしれないな。とりあえず、夜道の一人歩きは絶対にやめておこう。
シグナムとかヴィータに遭遇したらどう頑張っても、勝てる気がしない、絶対無理不可能。…俺の魔力なんて要らないだろうけどな…。やべ、泣けてきた。

(そうなると…素直に事件がおきたら管理局に頼むのが一番か…?)

ブレイズやクロノなら、うまく収めてくれそうな気がするし、なのは達も無茶をやらかしたりはしないだろう。
特に、メビウスは…闇の書まで救おうとしそうだからなぁ…。主人公だから当たり前か。

(…あれ?主任とかリリンとか…フレッシュリフォーの科学者総動員すれば…ワクチンプログラム的なの作れんじゃないか…?)

そこまで考えて…授業終了のチャイムが鳴り響いた。


屋上

「それじゃ、フェイトも魔導師って事ね。」
「うん。…驚かないんだ?」
「驚くもなにも、なのはちゃん達から教えられてたから。」

何時ものメンバーにフェイトを加えての昼食。
内容はフェイトの素性…て所かな。アリサ達にも俺達が魔導師って事を教えてあるし、すずかも夜の一族と言うことを暴露している。
俺の知らないところで、襲撃みたいなのを受けて、それで話したほうが良いって事になったらしい。
まぁ、魔導師だろうが夜の一族だろうが、アリサ達の友情には傷1つ付かなかったようだ。
…その後に、何故か秘密にしてたことで説教されたけどな…。

「けど、あんたらが学校に来ない間に、そんな事があったなんてね。」
「あぅ…秘密にしててごめんね。」
「まったくよ。けどなのは、今日のテストちょっと酷かったみたいね。魔法ばっかり勉強してたら駄目よ?」
「…うぅ…漢字の書き取りがむずかしかったもん…。」
「だからって、半分近く外すのもどうかと思うわよ。」
「…メビウス君…!!」
「はいはい、良し良し。ほら、泣かないで。」
「ほ…ほら、なのはちゃん。今度一緒に勉強しよう?」


しょげるなのはをが良し良しと慰めるのメビウスと、必死にフォローするすずか。そんな2人を見て呆れ顔のアリサ。
あ~…こいつ、今日の小テスト…ボロボロだったみたいだしな…。
教師が答え合わせしていくたびに、顔が青くなってたよな。

「うぅ…ふ、フェイトちゃんはどうだったの…?」
「私は、ん~…えっと…その…」
「フェイトちゃん、殆ど正解してたよね。あ…」
「………」
「あはは…なのちゃん、少しお勉強…しようね。」
「えっと、なのは、そんなに悪かったの?」

すずか…フェイトが気を使って言わなかったのを言ってやるなよ…。
なのはが真っ白になったぞ…。フェイトもアタフタしてるし…ったく、本当に賑やかだな。

「しかし、良く漢字なんか分かったな。…メビウスが教えたのか?」
「うん。一応は勉強見てあげてたからね。」
「ハッハー!!メビウスの勉強の教え方は上手なんだぜ!!俺もお世話になったぜ!」

…このまま行けば、なのは達は中卒魔導師に、成らずに大学まで行くかもしれないな。
その為には、なのはの学力強化が必要だが…まだ先の話だから…大丈夫だろう。





・フレッシュリフォー社、開発部・



「…ワクチンプログラム?」
「そうそう。なんとかなんないか?」
「なんとかったってねぇ…。」

主任が頭がしがしと掻きながら、椅子に深く腰掛ける。
学校で考えたことを言ってみたんだが…難しいか?

「原作じゃ…大昔に何処かの誰かさんが、中身を改変したんでしょ?…難しいなぁ。」
「開発部の全科学者使っても…無理か?」
「あ~…幾ら有能ぞろいとは言え…ねぇ。」

やっぱり難しいみたいだな…。けど、今のうちに対闇の書のプログラムを作っておけば…後々、有利になると思うんだよな。
主任も同じ考えなのか、机の上の端末を操作し始める。

「あ~…せめて、騎士達だけでも切り離せれば…有利になると思うけど…。素直に管理局に頼ったら?」
「いや、ばれて猫姉妹に潰されんのいやなんだが…。」

多分、八神はやての周囲を、猫姉妹が監視してる筈だ。下手に接近して…消されるとか勘弁して欲しい。

「あ、そこら辺は大丈夫じゃないかな?グレアム提督居ないみたいだし。」
「は…?」
「いやぁ、ちょっと調べてみたんだけど…ギル・グレアムのギの字もなかったよ。はやての財産管理とかは、弁護士がやってるみたいだし。」
「マジで…!?んじゃ、代わりに誰が…あ…。まさか…」
「そのまさかだね。」

…グレアムの代わりに…あの人が居るのか。
管理局提督にして…俺達の大統領。ビンセント・ハーリングが居るから…グレアムの存在が消えた…?

「…猫姉妹は…?」
「ハーリング提督の使い魔って事かな。…だから、はやてには監視も何もついてないっと。」
「これ…良い事か、悪いことか?」
「±0…て所じゃない?」

おいおい…大丈夫かよ、A's編…。不安になってきたぞ。
とりあえず、俺と主任は過去の闇の書のデータを集めて、対策を立てる事にした。
戦力にならない俺達には、この程度のことしかできないからな。
ただ…ちょっと主任の表情が優れない気がするが…気のせいか?


(闇の書…か。…僕はどっちに付くべきだろうね…。)




・ミッドチルダ、海上訓練施設・



「わぁ…メビウス君、凄いよ!!映画の世界みたい!」
「本当だね。あ、なのちゃん、はしゃぎすぎないでね。」


私達はブレイズさんから一緒に訓練しないかと誘われて、ミッドチルダの海上訓練施設に来ている。
ここは港のような作りになっていて、海上に演習場があり、その近くには次元航行艦が停泊していた。まるで海軍基地みたいだね。
初めて訪れるミッドに興奮気味のなのちゃんを、落ち着かせながら、施設内の通路を歩く。
時々、窓から見える景色は地球と違って、本当に映画の中の街に見える。
ここに居るのは、私となのちゃん、それにフェイトの3人だけ。閃はフレッシュリフォーで用事を片付けてから来るらしいし、オメガはサッカーの練習試合が近いから、猛特訓中。
施設内地図を見ながら、指定された部屋に向かう。そこでブレイズさん達と合流する事になっている。

「クロノさん、ブレイズさん、お久しぶりです。」
「2人とも久しぶり!」
「あぁ、態々呼び出してすまない。」


たどり着いた部屋には、クロノさんとブレイズさんが待っていた。私達は2人と軽く握手を交わす。
まだ少し時間があるらしく、私達は雑談に花を咲かせていた。


「クロノさん、お土産どうでした?」
「あぁ、卵の形をしたお菓子だったか、おいしかったよ。…母さんはもっと甘いほうが良い、って言ってたけどね。」
「あはは…、相変わらずですね。けど、喜んで貰えたみたいで良かったです。」
「何時も何時も、ありがとう。そう言えば、梅干と言うのがあるみたいだが…」



「フェイト、地球での生活はなれたか?」
「うん、お兄ちゃんやなのはが色々としてくれたから、大丈夫だよ。」
「ブレイズ君は、こっちに遊びに来ないの?」
「行きたいのは山々なんだが…結構、忙しくてな。ん~…今度の休暇にでも、みんなで遊びに行くかな。」
「うん、おいでよ!!沢山沢山、お菓子作って待ってるから。ね?フェイトちゃん。」
「お母さんや、お父さんもブレイズ達に会いたいって言ってたから…大歓迎だよ。」


軽く雑談を交わしていると、部屋に備え付けられている通信端末から着信音が響く。



≪ハラオウン執務官。演習場の用意ができました。ハーリング提督もご到着です。≫
「分かった。ブレイズとメビウスは演習場に向かってくれ。なのはとフェイトは僕に付いてきてくれないか。」
「あれ…?私達は訓練しないの?」
「あぁ、予定が変わってね。2人の相手をするはずだった3姉妹が来れなくなったんだ。今日は見学だけだ。」
「そっかぁ…。メビウス君、ブレイズ君。頑張ってきてね!」
「2人とも、怪我しないでね?」
「幸運を祈る。」
「うん。気をつけるよ。」
「メビウス、行くぞ。」

ここでクロノさん達と別れる事になった。


・屋外通路・


「…殆ど海の上なんですね。」
「一部、円形台があるが…まぁ、空魔導師専用の演習場みたいなものだからな。ここはコンビナート跡地を演習場に改築したんだ。ほら、少し向こうに見えるだろ?」

通路を歩きながら、ブレイズさんの指差した方向を見ると、確かに採掘施設らしいのが見える。
今回はそこに停泊している次元航行艦【ケストレル】の航空部隊の隊長、ヴォイチェクさんの教え子と模擬線をする事になってるらしい。
父さんから少し話を聞いているけど、会うのは今日が初めてだ。

「そう言えば…今回の模擬線の相手、ヴォイチェクさんの教え子なんですよね?…ブレイズさんは名前とか…知ってるんですか?」
「いや、俺の知らないな。ただ、ヴォイチェク隊長は管理局屈指のトップエースだ。…その彼に教育された魔導師となると…油断はできないな。」

そう言うとブレイズさんは、表情を引き締める。…正直、ブレイズさんは強いと思う。空間跳躍魔法なんてものを使っているし…何より、広い視野を持っている。
時の庭園での戦闘も、ブレイズさんの指揮のお陰で助かったってクロノさんが言っていた。…信用して、信頼しあっている戦友なんだろうね。

「ブレイズさんとクロノさんって…長い付き合いなんですか?」
「ん?」

唐突にそんな事を聞いてみた。ブレイズさんは何かを思い出すように額に手を当て、少し考えるそぶりを見せ、すぐに小さく笑う。

「そうだな。家も近所だったし…親も局員同士だからな。…お前とオメガみたいな付き合いだよ。」
「幼馴染…ですか?」
「むしろ腐れ縁だな。…おっと。ヴォイチェク空佐、お久しぶりです。」
「久しぶりだねブレイズ君。」

屋外通路の向こうから歩いてくる男の人に敬礼をするブレイズさん。この人が…ヴィクトル・ヴォイチェク。
軍帽を被って、管理局の制服を着ていると…軍人に見える。歴戦の猛者って言う雰囲気を身に纏っているけど…不思議と優しい感じもする。
ブレイズさんに敬礼を返すその表情も…優しい。…強くて優しい…か。父さんの言ってた通りの人なんだね。

「ふむ、君がメビウス君か。はじめまして、ヴォイチェクだ。」
「初めまして、メビウス・ランスロットです。父からお名前を聞いていました。」
「ほぉ…なかなかどうして…礼儀正しい。…スカーフェイスの教育の賜物か。」

一礼すると、ヴォイチェクさんは笑顔で手を差し出してくるのを見て、私は慌てて握り返し、握手を交わす。
後ろを見ると…制服を着た男子が2人待機していた。1人はヴォイチェクさんと同じ制服を着ていて、もう1人は…空軍のジャケットみたいなのを羽織っている。
私の視線に気が付いたのか、制服を着た男子が笑いながら、敬礼してくる。

「初めまして、イリヤ・パステルナークだ。…君が噂のブレイズ・トリスタンかい?」
「あぁ。どんな噂かは知らないが…確かに、俺がブレイズ・トリスタンだ。」
「はは、失礼。アースラの切り札、クロノ執務官の補佐役にして、跳躍魔法の使い手だと聞いてね。会うのを楽しみにしてたんだ。」

イリヤさんが笑顔でブレイズさんと握手を交わし、私とも交わす。…なんだか…人を惹きつける笑顔をしてる人だね。
それに、眼には自信が満ち溢れていて…凄く輝いている。そして…この人は強い。…そんな気がする。

「そして、君がメビウス・ランスロットか。……うん、君、強いだろう?」
「え…?」
「はは、まだ分からないか。…俺が予言しよう、君はもっともっと強くなる。…そんな雰囲気を纏っているよ。」
「…イリヤ。あまりからかうな。」

イリヤさんの後ろに居る男子が呆れたように額を押さえている。…こっちは私と同い年のみたいだ。
ヴォイチェクさんも笑いながら、こっちを眺めている。

「はは。ほら、アーサーも挨拶しろよ。お前のライバルのなるかもしれないんだぞ?」
「……そうかな。」

一歩、踏み出してくる男子。…なんだろう…凄く…何処かで感じたことのある気がする。
この子も鋭い眼をしてるけど…凄く澄み切っている。まるで…空のような…。

「…円卓の鬼神…か。父から話は聞いていた。」
「え…?」

「俺はアーサー。…アーサー・フォルク。…コールサインは黄色の13だ。」










イリヤ・パステルナーク、年齢14歳。
アーサー・フォルク、年齢9歳。コールサイン、黄色の13





あとがき

短くてクダクダな内容の今回…駄目だ。
さて…出しましたよ。とうとう出しました。…最強のライバル登場。
13=キングなのでキング+円卓=アーサーと言う安易な名前です。苗字は…説明は要らないですよね。一応、関係あります。…石投げないで。
誰もが一度は想像または妄想したリボン付と黄色の13が仲間だったらというのを…やってみました。
作者の腕前で何処まで表現できるか…不安すぎます…。
…多分、後2~3で2期にいけるかと思います。…妄想力が枯渇してますが…どうなるか…。
主任には…一応設定ありです。二期辺りでばらしていこうかと…。では…。




[21516] リボン付きVS金色の鷲 漆黒の悪魔VS深紅の不死者
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/10 20:59
・メビウス・

「こちら管制官のスカイアイだ。黄色の13、メビウス1、聞こえるか?」
「…メビウス1…?」
「お前のコールサインだ。黄色の13、聞こえている。」
「えっと、メビウス1、聞こえています。」

演習場の上空で待機する私とアーサー。インカムから聞こえてきたのは、聞き取りやすい男の人の美声。
メビウス1が私のコールサインらしい。…名前のままだけど…覚えやすいから良いか。
私とアーサー、ブレイズさんとイリヤさんが模擬戦をすることになっている。
彼は巨大な砲身の様なデバイスを持っていた。バズーカ砲にも見えなくはないけど…大きさ的にエクスと同じくらいだし、片手で持っている。
けど、気になるのは…両肩に1個ずつ付いている筒の様なパーツ。…なんだろう…?

『あのデバイスは…』
「OK。これから模擬戦の説明を始める。魔法はもちろん、非殺傷設定。戦闘エリアはAからGまでとする。コンビナート跡地での戦闘も許可するが、ぶつからないでくれよ?
制限時間は30分。その間にどちらかが撃墜、もしくはギブアップで終了とする。時間内に決着がつかなかった場合は、こちらで計測したダメージ値で判断をする。質問は?」
「問題ない。」
「あ、こっちも大丈夫です。」
「良い返事だ。では…カウントを始めるぞ。5、4、3、2、1、0!!」

エクスが何か言いかけてたけど…今はカウントを聞かないと…。
スカイアイさんのカウントが0になった瞬間に、私はキャンセルを使い、トップスピードでアーサーに切りかかる。
アーサーも気が付いて、砲身から巨大な魔力刃を展開して、迎撃しようとするけど…この速度なら押し勝てる!!

「あぁぁぁぁぁ!!!!」
「…!!」

魔力刃同士がぶつかり合い、火花が散る。馬鹿な…押し込めない…!?
全力全速でぶつかったのに…アーサーが少しも動かない…。この速度でぶつかれば、大抵は吹き飛ばせるはずなのに…微動だにしない…!!
私は鍔迫り合いを続けながら、少しでも押し込もうするけど…どうにもならない…!?

「驚異的な速度だ。だが…まだまだだ。」
「なっ…!?」

アーサーがほんの少し前に出る。嘘でしょ…こっちは未だに最高速度でぶつかり合っているんだよ…!?
くぅぅぅ…押し負ける…!!??
ドン、と破裂するような音が響くと、逆に私がアーサーに押し込まれていた。
初速は私が勝ってるけど、最高速度も出力も…彼の方が勝っている…!!

「速度は充分だ。しかし…力がない。速度だけに頼らずに…力もつけることだ。」
「ま…ずい…!!」

空気を切り裂くようなスピードで押し続けられるのはまずい…!!けど、押し返そうとしても…完全に負けている!!
仕方がない…。私は押し返すのを諦めて、全速ではじかれるようにして、後方に飛び下がる。ほんの少し距離が開いたところで、ランチャーモードに変更して魔力弾を撃ち込む。

「いい判断だ。だが…予測はできる。…TLS。」

その言葉の通り、アーサーのデバイスの銃口から放たれる光条が私の魔力弾を撃ち砕く。
しかも、私のように弾じゃない…まるで光線だ…!!それに、威力が卑怯すぎる…。計測してみると、詠唱無しなのにラジカル・ザッパー並みの威力だよ…!?

「冗談じゃない…!!XLAA、FOX3!!」
「数で来るか…!!」

10発以上のXLAAを構築して、上下左右から撃ち込む。これなら…回避はできないはずだ…!!
命中して爆音が響く。…煙が晴れた先には……もう、なんなんだ、嘘でしょ…!?

「高機動で…重装甲なんて卑怯すぎる…!?本当に、強い…!!」
「防ぎきれないかとは思ったが…そうでもない…か。」

煙がはれた先には、球体の障壁に包まれた無傷のアーサー。…本当に卑怯すぎる…。背中が冷たいものが走り、冷や汗も止まらない。
呆気に取られていると、アーサーの周りに展開される魔力球。

「QAAM…行け。」
「今度は追尾…!!」

2発の魔力球がこっちに向かって放たれてくる。速度はXLAAには及ばないか…。なら、振り切って反撃だ。
再び最高速度までスピードを上げ、スプリットSで海面スレスレまで降下する。本当は避けるためじゃないけど…そんな事言ってられない!!
まだ振り切れない…!?そのまま、キャンセルを使い、90度直角に上昇するけど…それでも付いてくる。追尾性能が…洒落になってない…!?
それに…アーサーも追撃して来ている。速度、火力全てにおいて負けている…。これは…拙いな。
ソードウェーブを彼に撃ち込んでも、魔力刃で切り払われてどうにもならない…!!
こうなったら…!!

「…コンビナート跡地か…!!」
「幾ら追尾性能が高いとは言っても…これなら…!!」

採掘基地に残されているアンテナやクレーンの間を飛び回り、かく乱する。流石のアーサーも私のように慣性を無視できないのか、ここまでは追って来れないみたいだ。
っと…!?後ろのほうでQAAMが着弾して、爆発が起きたか。…迎撃してたら巻き込まれてたかも…危ない危ない。
ここで一旦距離を離して、体勢を立て直そう。遠距離ならラジカルザッパーとXLAAを併用して使えば、勝機はあるかもしれない。
施設の壁に背中を預けて、息を整える。…冷や汗が凄い。

『マスター…来ます。』
「え…?」

エクスの声で視線を上げると、目の前に…筒の様なものが浮遊していた。これは…アーサーの肩に付いていた…?

『遠隔操作型のVRデバイスのバル・バス・バウです!!これは…ビットです!!」
「ちょ…洒落にならない…!!」

エクスの警告の通りに、筒--2つのビットの砲身が光り、魔力弾が撃ち込まれる。そりも…さっきのTLS並みの威力だ。
ギリギリで抜けたけど、一瞬で私が背中を預けていた壁が崩壊していく。それでも…まだ追尾してくるか…!!
遠隔操作型のデバイスなんて聞いたことがない…!!

「エクス、もう少し早く教えて欲しかったね…!!」
『すいません。集中してるのを邪魔するわけには…っ!!上空から高魔力反応!!これは…ライデン・エルジア!?』

魔力光が通り過ぎた瞬間に私の通過した場所が…文字通りに消滅する。コンクリートの欠片1つも残さないって…。
…デタラメだ…。今のだけでなのちゃんクラスの砲撃だ…!!しかも、そんな事をしながら、ビットの操作もしてるなんて…。

「エクスみたいに…何か特別なのが搭載されてるの…!?」
『いえ…何も搭載されていないはずです…。全ては、己の能力だけで操作してるのかと…。しかもライデンを扱っているのに、こんな高機動戦闘が可能とは…。」

……もう何も言えないな。勝てる要素が…ない!!
外からの砲撃と、内部からのビットの攻撃で施設はもう持たない…。私は、壁をボムで破壊して、外に飛び出す。
出た場所は海面の近く。上空を見ると…アーサーの周囲に5つの魔方陣が展開し、砲身‐‐ライデン・エルジアと彼の元に戻ったビット--バル・バス・バウにも魔力光が収束していた。
計8個の魔方陣から溢れる黄金の魔力光。既に、私がここから出てくることを、予測していた!?これは…拙い…!!

「砕け…ストーンヘンジ!!」

大気を振るわせ8個の魔方陣から放たれる巨大な光条。それが全て、私の襲い掛かってくる。
回避できるか…!?無理だ。キャンセルを使っても間に合わない。迎撃は?ラジカルザッパーでも対抗できない。防御?…そんな装甲は持ってないよ。

「うぁぁぁ!!!!」

私は魔力光に飲み込まれ…海中に沈んでいく。そこで…私の意識は途絶えた。





「アーサー、お疲れ。…どうだった?」
「…なにがだ。」

模擬戦を終え、海上施設に戻ってきたアーサーをイリヤが迎える。
クールな態度を気にせずに、イリヤはにこやかな笑顔を浮かべて、アーサーの後ろに視線を送る。

「彼の実力だよ。…本気で戦ってただろう?お前が本気を出すなんて、滅多に無いからな。」
「……」
「しかし、2人のレディを泣かせるとは…彼も罪作りな男だね。」

後ろでは、引き上げられたメビウスが担架に乗せられ、運ばれていくところだった。そこに走ってくる2人の少女を眺めて呟く。
アーサーは無言でその方向を見つめた後に、無言でイリヤとすれ違うようにして歩き立ち去る。
何時ものことか、と首を振るが…

「…本気を出さないと負けていた。」
「…そうか。負けてたか…はは!!」

ポツリと、すれ違いざまに零した言葉。それを聞いて、イリヤは驚いたように…そして、嬉しそうに笑い声を上げた。
何事もクールにこなすアーサーの眼に…強い炎が宿っていた。ライバルと言える存在を見つけ…彼もまた、強くなっていくのだろう。
見送る背中は…クールで…熱かった。







・ブレイズ・

先ほどまで、メビウスとアーサーの模擬戦を見ていたが…まさか、あのメビウスが負けるとはな。
しかも手も足も出ない状況だった。今頃、救護班に助けられ、医務室に運ばれている頃だろう。
なのはとフェイトは模擬戦が終わった直後に、飛び出して行った。殆ど泣き顔に近かったから、心配なんだろう。
アーサー…黄色の13、末恐ろしい魔導師だ。それが…俺の正直な感想だ。だが…今は目の前の彼と戦うことに集中しないとな。

「こちらスカイアイ。では、次はヴァンビール1とブレイズの対戦だな。2人とも準備は良いか?」
「こちらブレイズ、完了している。」
「同じく、何時でもどうぞ。」
「OK。カウントを始める。3、2、1、0!!」

俺もコールサインは名前をそのまま使うことにした。航空隊に配属されてるわけでもないから…良いだろう。
目の前に居るイリヤの装備を確認する。…左右に1挺ずつ、計2挺のライフル型のデバイスを持っているか。
あれは…データで見たことがあるノスフェラトだったな。
とりあえず、様子見で周囲にバレットスフィアを展開し、サンダーボルトで掃射するか…

「おっと…砕かせてもらうよ。」
「なに…!?」

ノスフェラトから撃ち込まれた魔力弾がパレットスフィアを撃ち砕いたか…!!
すぐに展開を諦め、接近しようとするが…くそ…こちらの行動でも予測してるのか、接近できない。
スペシネフで切り払える程度の威力だが…足止めには充分か…。
一旦、接近を諦め、魔力を手に収束し…ワームホールを作り出す。接近できないならば…跳躍するまで。

「おっと…!?これが跳躍魔法か…!!」
「出し惜しみはやめだ。全力でいくぞ…!!」
「望むところだ。」

目の前に開いたワームホールから撃ち込まれる魔力弾を回避するために、一瞬弾幕がやむ。
俺はスペシネフをサイズフォームに切り替えると、下段から斬りあげる。
それを笑みを浮かべながら、ノスフェラトの側面に展開した魔力刃で受け止めたか。
どうやら…接近戦もこなせるデバイスのようだな…!!

「長大なデバイスだが…小回りは効くようだな!!」
「こっちの台詞だ。銃型で油断したよ…!!」
「はは、お互い様だ!!」

何合か斬りあいを演じるが…お互いの顔には笑みが浮かんでいた。
…どうやら…どちらも似たような事を考えているようだな。

「どうやら彼等の戦いに触発されたようだな。俺も…君も!!」
「あぁ…高機動戦闘と行こうか。」

お互いが離れ、高速飛行で戦闘を再開する。イリヤから放たれる魔力弾をワームホールで転移させ、反射するが…

「っと…ここか!!」
「器用なことを…!!」
「っ!?君も人のこと言えんだろうよ!!」

こっちが空けたワームホールに砲撃魔法を逆に撃ち込んで、反撃してきただと…!?
送出用のワームホールから放たれてきたイリヤの砲撃魔法を、ギリギリで身体を逸らして回避するが…バリアジャケットの一部が解けたな…。
イリヤを見ると、2挺のノスフェラトを前後で連結して、ロングレンジライフルに組み合わせていた。なるほど…それで砲撃魔法の出力を上げたか…。
俺はワザとワームホールを作り出して、再びイリヤの攻撃を誘発する。だが…今回のワームホールは攻撃用ではない…!!
海水を転移させ…魔法とぶつかり合わせ、それで出来た水蒸気でイリヤの視界を妨害する。

「さて…ADMM!!」
「また厄介な…!!」

しかし、炊事容器の向こうから、12発の魔力球が追尾をしてくる。…遠距離なんだが…正確にこっちを追尾してくるか。
ショットガンで数発を破壊し、残りはスペシネフてできり払うが…っち!?爆発性能ありか!!

「これでチェックメイトかな?」
「油断は禁物だ…!!」
「っつ…流石だ!!これが…漆黒の悪魔の実力か…!!」
「こっちも思い出したぞ…。深紅の不死者!!」


爆炎に包まれながらも、俺はイリヤの周囲にワームホールを開け、シンファクシを撃ち込んでいく。
爆発音が轟き、2人して煙にまかれる。
煙が晴れ、海上で再び向き合い、対峙する俺達。
…満身創痍と…言ったところだが…まだイリヤは余裕の表情を見せている。底が知れないな…。

「さて…切り札がまだ残っている現状。しかも、時間も少ない。どうだろ、一撃で決めないか?」
「確かに。受けて立とう。」
「なら…スタイリッシュに決めさせてもらうよ?」
「こちらも、最高の魔法で行かせてもらう。」

向き合い、互いに長大なデバイスを相手に突きつける。
銃口部に収束するお互いの魔力が臨界点に到達したときに…2人が同時にトリガーキーで発動させる。

「貫け…アークバード!!」
「シャンデリア!!」

似たような圧縮砲撃魔法が正面からぶつかり合い、大規模な爆発が巻き起こる。

「…引き分けかな?」
「そうみたいだな。…手ごわかったよ。」
「はは、俺は久々に楽しめた。君と戦えてよかったよ。」
「時間切れだ。両者とも、すばらしい戦いだった。これで模擬戦は終了とする。帰還せよ。」

煙で視界が制限されているのを利用して、接近しようとしたが…考える事は同じだったのか。
爆発の中心地で、俺はイリヤの首に魔力刃を、イリヤは俺の頭に銃口を突きつけた形で対峙していた。
そこで時間切れをスカイアイが告げる。その場でデバイスを下げて、握手を交わし、施設に引き上げていく。
疲れたが…なかなか楽しかったな…。





「どうですかな?」
「うん、良い魔導師が育ってきているようだね。」

施設の最上階の部屋で観戦していた2人の男性。
1人はビンセント・ハーリング、1人は次元航行艦ケストレル艦長、名将ニコラス・A・アンダーセン。
2人は友であり、最高の部下、最高の上司という関係である。

「流石はスカーフェイスとサイファーの息子。見所がありますな。」
「あぁ。だが…まだ幼い。…管理局への入局は考えていないさ。」
「ですな。…彼のような子供に頼らぬ体制を築いていきたいものです。」
「ブレイズ君も相変わらずで安心したよ。彼は…バートレットの教え子だったね。」
「はい。バートレットも「何れは自分を超える」と…言っていましたよ。」
「はは、あの彼がかね。よほど気に入ってるのだな。」
「はい。アーサーも…かなり強くなってきましたね。」

そう言うと、アンダーセンは軍帽を被りなおし、1枚の写真をポケットから取り出す。
そこには、数人の男女が写っていた。中央に満面の笑みサイファー、その左隣に抱き疲れて苦笑しているスカーフェイス。右隣には優しげに笑う金髪の男性。
後ろではオメガの父親のチャーリーが豪快に笑っていた。 彼等の共通の友にして…最高の魔導師達。

「…ラリーは何処にいるのでしょうな。」
「アーサー君を私達に預けた後…フラリと何処かに行ってしまったからね。彼のことだ…世界の意味を考えているのだろう。」
「帰って来ますかな?」
「それは分からない。だが…彼が帰ってきたときに…胸をはれる平和を築きたいものだ。」

モニターに映し出される少年達を優しげに見つめるハーリング。その表情は何処までも優しく、何処までも慈愛に満ちている。
アーサーの父親にして片羽の妖精と呼ばれた魔導師、ラリー・フォルク。ある事件が原因で彼等の前から姿を消していたのだ。
だが、5年前に突然、ハーリングの前に現れ、息子であるアーサーを預けた後に再び、消息を絶ったのだ。母親に関しては何も言っていなかった。
ただ、アーサーはそんな父親でも尊敬しているようだ。彼に空戦の技術を、戦いの意味を父親は語り、その全てを書き記した本を手渡していた。

「その為には…陸・海・空。全てを統合し、確執を無くさねばならぬでしょう。」
「アンダーセンの言う通りだ。…なに、レジアスも分かってくれるさ。彼はあんな事を言っているが…誰よりも平和を願っている。
ただ…意地を張ってるだけさ。シュトリゴン隊のおかげで…少しずつだが彼も受け入れ始めている。…もう少しだ。」
「貴方なら…提督ならば可能です。」
「はは、買い被りすぎだよ。だが、誰かがやらなくてはいけない。…アンダーセン、これからも私に力を貸してくれるか?」
「もちろんです。私だけでなく…リンディやレティ、多くの局員達は貴方についていきますよ。」
「ありがたいものだな。」

にこやかに笑うハーリングとアンダーセン。平和を誰よりも願い、誰よりも平和を愛する彼ら。
その表情は…子供のように光り輝いていた。




・メビウス・

・医務室・

「…つぅ…ここは…?知らない…天井だ。」
「メビウス君!!」
「お兄ちゃん!!」

眼を開けると…泣き顔のなのちゃんとフェイト。
起き上がった私の胸に2人して飛び込んでくる。えっと…なにがあったんだっけ…?
周囲を見ると真っ白な壁に天井。…医務室みたいだね。私は…ベッドの上に居るみたいだ。

「良かったよぉ…良かったよぉ…」
「お兄ちゃん…心配したんだよ…!!」
「え~っと…」
「メビウス君、模擬戦で負けて…海に落ちちゃったんだよ?覚えてないの…?」
「あぁ…そうだったね。派手に負けたからなぁ…。フェイト、もう大丈夫だから、泣かないで?」
「けど…けど…!!」

未だに泣いているフェイトの頭を撫でて慰めながら、堕ちたときのことを思い出す。なのちゃんは私の手をギュッと握って、離そうとしない。
そっか、負けたんだったな…。思い出しても…完璧に負けたなぁ。

「フェイト以上のスピードでなのちゃん並の砲撃か。…勝てる要素が1個もないね。」
「…メビウス君…。だ、大丈夫だよ!!きっときっと、次は勝てるよ!!」
「なのちゃん…。」
「メビウス君は凄く強いの!!凄く強くて…優しくて……ぐす…」
「もう、負けて悔しいのは私なのに…なのちゃんが泣いちゃったら駄目でしょ?」
「だって…だってぇ…」

また泣き始めるなのちゃんを、フェイトと一緒に抱き寄せて、慰める。
心配してくれたのは嬉しいけど…流石に泣かせたのは…きっついなぁ。

「…失礼するぞ。」
「あ…。」
「…取り込み中か?」
「いやいや!!大丈夫だから!!」


軽く音を立てて扉が開くと、アーサーが立っていた。
なのちゃん達が抱きついている状況の私を見て、一旦引き返そうとしたけど、あわてて止める。
少し戸惑いながらも、アーサーがベットの近くの椅子に腰掛ける。
えっと…なのちゃんにフェイト…そんなに威嚇しなくても…。

「…お前の妹達か?」
「「……」」
「ほら、2人とも自己紹介しないと…。」
「…むぅ~…高町なのはです…」
「フェイト・T・ランスロット…」
「はい、2人ともよく出来ました。」

彼を親の敵みたいな眼で見ている2人だけど、何処吹く風のアーサー。
とりあえず…初対面なんだから自己紹介しないとね。私の言葉を素直に聞いて自己紹介する2人の頭を撫でて褒めてあげれば、可愛らしく笑ってくれた。
…ほんの少し刺々しい言い方だったけど…ね。

「それで、私に何か?」
「……とりあえずは、俺が墜して医務室送りにしたんだ、見舞に来るのは当然。」
「あはは…。見事に完敗だったよ。勝てる要素が1つもなかった。」
「……そうか。」

それだけ言うと、アーサーは立ち上がって、私に背を向ける。
お見舞いといっても…様子を見に来ただけみたいだね。言葉少なげなのは、彼の性格だって分かってるから、別に機嫌を悪くしたりはしない。


「…称えるに値する。」
「え?」
「お前となら…更なる高みを目指せる気がする。…また共に空を飛ぼう。…待っている。」

扉が閉まる寸前に見せた表情は…ほんの少し…笑顔だった。






イリヤ・パステルナーク。
デバイス・【ノスフェラト】2挺ライフル。連結するとロングレンジライフルに変更可能。

アーサー・フォルク。
メインデバイス【ライデン・エルジア】高火力だがカスタムして高機動可能
サブデバイス 【バル・バス・バウ】遠隔操作型ビット。簡単に言えばファ○ネル


あとがき


戦闘描写が(以下略。
黄色の13圧倒的と言うことが伝われば…ちなみにステージはコンビナート跡地ですが…04の初めて黄色と会ったところです。
メビウスと黄色の13との始めての出会いはここでないと…。
ちなみにアーサー、ニュ○タイプ的なこの作品最強ランクのチートです。高機動、高火力、重装甲と3拍子そろっている最強キャラです。
黄色の13を神格化している作者ですので・・・申し訳ないです。
次回で空白期モドキは終わりにします。書きたいことがまだありましたが…グタグダ行くとやばいと思いましたので。
では…




[21516] 幕間最終。リボン付きと主と妹と
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/12 22:56
・メビウス・

「さてと…今日は何を作ろうかな。」
「お兄ちゃんの手料理、久々だね。」
「あはは。本当だよね。」

土曜日の学校が終わって、私とフェイトは何時ものスーパーで買い物をしていた。
理由は母さん達がミッドに用事があるとかで、今日1日は帰って来れないからだ。だから、私とフェイトで夕食の買い物に来ていたんだ。
外では動物形態のガルム達が待て居る。今回は特別、重いものを買うわけじゃないから、私達で事足りるからね。

「フェイトはなにか食べたいものとかある?」
「私は…お兄ちゃんの料理なら何でも良いよ?」

笑顔でそう言ってくれるのは嬉しいんだけど…ん~…やっぱり、得意のハンバーグかなぁ…。
2人でカートを押しながら、商品を選んでいく。

「ん…?フェイト、カートお願いね。」
「良いけど、どうしたの?」

横の通路を見ると、車椅子の女の子が、少し高い所にある缶詰を取ろうとしていた。
精一杯、手を伸ばしてるけど…少し届かないみたいだね。
フェイトにカートを任せて、私は小走り気味に近づいて、缶詰を取って手渡してあげる。

「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとうなぁ。…あれ?あぁ~!!あの時の!!」
「え?」

女の子が私の顔を見て突然、大きな声を出して驚いている。
いや…初対面の人に驚かれる顔はしてないんだけど…。って…あの時って何…?

「ほらほら!!雨の日に傘を貸してくれた男の子やろ?」
「傘…。あぁ、思い出した。あの時の女の子。」
「そうそう。こんな所で会えるなんて、凄い偶然やね。」

そう言って笑う女の子は確かに、ずっと前の雨の日に傘を貸した女の子だった。
こんな所で会うなんて…なんだろう?ここのスーパーって何かあるのかな?

「えっと、お兄ちゃん…?」
「っと、フェイト、ごめんごめん。」
「妹さん?始めまして。」
「あ、始めまして。」

フェイトは私の隣に立ちながら、ペコリと女の子に礼をしながら、誰?と言う視線を私に送ってくる。
…そう言えば、私も名前を知らなかったな…。

「名前言ってなかったよね。私はメビウス・ランスロット。改めてよろしく。」
「妹のフェイト・T・ランスロットです。」
「私は八神はやて。よろしくなぁ。」
「はやてちゃんね。覚えたよ。」
「私も覚えたよ。2人も、お買い物してるん?」
「うん。今日の夕ご飯の材料をね。ちょっと親が外出しててさ。」
「へぇ、フェイトちゃんが作るんか?」
「ううん、私よりお兄ちゃんの方が上手。私は手伝いくらいかな…。」
「いやいや、フェイトも上手になってるよ。」

ほんの少し落ち込むフェイトを撫でて、元気付ける。
実際、一緒に料理を作っているから、フェイトも1人で簡単な料理くらいは作れるようになってきている。
レシピ通りに作って練習すれば、誰でも上手になれるからね。

「ん~…せや!!なら、家に来るとええよ!!実はな、家も今日は私だけなんよ。だから、一緒にご飯食べへん?」
「けど…良いの?」
「ええよ。傘のお礼もしたいし、1人だと寂しいからなぁ。いっその事、泊まっても大丈夫やよ?」



八神家


「えっと…お邪魔します。」
「はい、お邪魔されます。」
「あはは、けど、本当に良いの?」
「私が良いって言ってるんやから大丈夫やて。さっきも言ったけど、一緒に住んでる親戚が少し遠出してて、明日の夜まで帰ってこないんよ。」


はやてちゃんを乗せた車椅子を押しながら、お家にお邪魔する私達。なんだか、押し切られちゃった気がするけど…良いのかな?
一応は、家の留守電にメッセージ入れたから、母さん達が帰ってきても大丈夫だね。

「けど、ええなぁ。フェイトちゃん達、こんな大きな犬と暮らしてるんやねぇ。」
「うん、アルフとガルムって言うんだ。…はやては何も飼ってないの?」
「居ることは居るんやけど…。親戚のやからなぁ。少し遠慮してまうんよ。モフモフしててええなぁ…。」

足を拭いて、リビングで寛ぐガルム達を撫でて嬉しそうに笑うはやてちゃん。フェイトも一緒に座って、話をしている。
私ははやてちゃんにことわって、冷蔵庫を開けて、買ってきた材料を仕舞っていく。生物は速めに冷蔵庫に入れないとね。

「あ、メビウス君、ありがとう。お客様なんやから休んでてええんよ?」
「いや、流石にお邪魔してるからさ、少し手伝うよ。」

上着を脱いで、軽く腕まくりをして、手を洗う。流石に、何か手伝わないと申し訳ないからね。
フェイトも慌てて、手を洗って、料理の準備を始めている。さて…3人で何を作ろうかな?

「そう言えば、親戚の人達と住んでるって言ってたけど…お父さんやお母さんは?」
「ん~…小さい頃に事故で…ね。」
「あ、ごめん。聞かない方がよかったよね…。」
「ええよ。もう慣れたし、一緒に暮らしてる人達が居るから、寂しくはないんよ。」

カラカラと笑うはやてちゃんは…強いな。寂しい筈なのに、それを乗り越える強さを持っていたんだね。
けど…親戚の人かぁ…どんな人達なんだろう?
トントンとまな板の上で包丁が踊る。お鍋から、美味しそうな香りが漂ってきた。

「親戚って、どんな人達なの?」
「ん~…スラッとした美人に、天然ぽやぽやなドジっ娘と…ちょっと勝気な女の子…かなぁ?」
「みんな女の人なんだね。…っと、フェイト、そっちの火止めてくれる?」
「うん。けど、みんな用事があったんだ?」
「なんか最近、忙しそうにしとったからなぁ。まぁ、その分、一緒に居れる時は、ずっと側に居てくれるから良いんやけどね。」
「あはは、その人達の事、大好きなんだね。」
「当たり前やって、私の家族やもん。」

なるほど。笑顔のはやてちゃんから、本当にその人達の事が大切って事が伝わってくる。
っと、匂いがリビングに届いたのか、アルフが少しソワソワとし始めたね。はやてちゃんも「もう少しやからねぇ」と笑って見ていた。

≪ねぇ、お兄ちゃん、…さっきから何か感じない?≫
≪え?……多分だけど、はやてちゃんの魔力じゃないかな?彼女もコア持ってるみたいだからね。≫
≪そう…かなぁ…?≫



・フェイト・


「けど、メビウス君もお料理、本当に上手なんやね。フェイトちゃんかて凄いやんか。」
「あ、ありがとう。けど、はやての方がもっと上手。私は…少し焦がしちゃったよ。」
「私も最初は失敗ばかりやったよ。…けど、兄妹かぁ…ええなぁ。」

夕ご飯が終わって、結局私達ははやての家に泊めてもらう事にした。今、私とはやては一緒にお風呂に入っている。
先にお兄ちゃんはお風呂に入って、リビングで寛いでいる筈。

「そう…かな?」
「そうやよ。あんな優しいお兄さんが居たら、本当に甘えられそうやからね。フェイトちゃん、メビウス君の事、好きやろ?」
「……分かるの…?」
「当たり前や。あんなに分かりやすいのに分からない方がおかしいんよ。…メビウス君は鈍感みたいやけどね。」

あ…う…。今日、会ったばかりなのに…もうばれてる。
…けど、確かにお兄ちゃんは鈍感だ。…なのははそこが良いの!!って言ってるけど…。

「けど、本当に優しいのは私にだって分かるんよ?…見ず知らずの私に雨降ってるのに、傘を貸してくれるなんて…お人好しも良いところや。」

パシャパシャとお湯を弾くはやての顔は、凄く嬉しそうな笑顔。
顔が赤いのは…きっとお風呂が熱いとか、それ以外だと思う。
2人で身体を洗い合って、お風呂から上がる。髪を軽く拭いて、リビングに向かう。はやてはキッチンで冷たい飲み物を用意するって言っていた。
リビングに行くと、お兄ちゃんがガルムに寄りかかるように座って、髪を梳かしていた。

「上がったんだ。…フェイト、おいで。」
「あ…うん。」

お兄ちゃんが私に気が付くと、自分の膝を笑顔で叩いて、優しく私の名前を呼ぶ。
家では何時も、お風呂から上がると、お兄ちゃんが髪を梳いでくれるんだ。膝の上に甘えるように座ると、優しく優しく櫛を髪に通してくれる。
それが…凄く気持ち良くて…安心できる。

「2人とも、冷たい飲み物持ってきたよ。って、フェイトちゃん、ええことしてもらっとるなぁ。」
「はやて!?あ、や、その…。」
「こら、動いちゃ駄目。髪の毛痛むでしょ?」

あうう…はやてに見つかって、驚いて動こうとした私をお兄ちゃんが止める。
…きっと顔が真っ赤になってると思う…。甘えるのは好きだけど…人に見られるのは…少し苦手。
ほら、はやても笑ってるよ…。

「あはは、本当に仲がいいんやね。」
「そうかな?…はい、フェイト、おしまいだよ。…それじゃ、次ははやてちゃん、おいで。」
「へ?ええの?」
「うん。ほらほら。」

笑顔ではやてを膝の上に座らせて、私の時と同じように優しく梳いていく。
はやても最初は少し硬くなってたけど、優しい手つきに徐々に身体の力を抜いていっている。

「あ~…気持ちええなぁ。…フェイトちゃんの気持ちがよう分かるよ。こんなお兄ちゃん居たら、確かに」
「は…はやて!!」
「あはは、冗談やて。」

慌てる私を面白がって笑うはやて。うぅ…なんだか、弱みを握られちゃった気がする…。

「ん~…お兄ちゃん♪なんて言ってみたり…」
「なぁに、はやて?」
「ほへ?」
「え?」

驚いたようにお兄ちゃんの顔を見つめるはやてと私。その顔は…私となのはが一番弱い…優しくて甘い笑顔だ。
それにはやての名前も…きっと一番優しい声で呼んだと思う。

「えっと…お兄ちゃん?」
「ふふ、さっきからどうしたの、はやて?」
「あ…う…。もぅ、卑怯やよ…その笑顔…。」
「あはは。からかいすぎちゃったかな。ごめんね。」

顔を真っ赤にして、お兄ちゃんの胸に顔をグリグリと押し付けるはやて。うん…多分、あの笑顔は…私も耐えれないと思う。
きっと、無条件で…甘えたくなっちゃうよ。

「これ…天然なん?」
「うん。そうだよ。…困るよね。」
「確かに…これは困るなぁ…。フェイトちゃんの気持ちがよう分かったよ。」
「2人して…どうしたの?」
「なんでもないって。…メビウス君、少し甘えててええかな?」
「もちろん。ほら、フェイトもおいで。」
「…うん!!」

私ははやてと一緒にお兄ちゃんの腕の中に飛び込んでいく。…世界で1番安心できて…1番私が満たされる所…。
はやても幸せそうに…笑っている。

「ん~…本当に…優しいなぁメビウス君は。…フェイトちゃん、ごめんな。私…負けれないかも。」
「…私も負けないよ?」


なのはにはやて…ライバルが2人になったけど…絶対に負けない…!!





あとがき

時間系列が滅茶苦茶ですが…ご勘弁を…。
はやての関西弁が微妙すぎて泣けてきます。誰か翻訳サイトを…!!泣
今回も短いです。はやてとのフラグを立てておいてと…次回から2期に突入します。
いや、ここでフラグ立てておかないと後々、回収不能になる恐れが…
騎士達は別世界に魔導師狩りに行っています。はてさて…どうなることやらで…。




[21516] As編 1話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/13 23:55
・メビウス・

季節は12月。もう真冬だ。吐く息は真っ白で、空気も冷たい。

「久々に1人だけか。」

コートを羽織って、マフラーをしっかりと巻き直す。
私は今、神社に向かっているところ。理由は…オメガの代わりにチビ狐に油揚げをあげるため。
閃はリリンちゃんがこっちに引っ越してくるらしくて、その準備で忙しいそうだ。オメガは校庭でクラブの練習中。
なのちゃんやフェイトは、すずかちゃんのお家に遊びに行っている。誘われたけど…男の子が私だけだと少し…ね。
そんな訳で、油揚げを持って神社に向かっている。
石段を登り、鳥居をくぐると、何時ものように境内に居るはずのチビ狐に呼びかける。

「チビ狐。油揚げもって来たよ。」
「…」

奥の方から、静かにトコトコと歩いて出てくるチビ狐の頭を軽く撫でて、油揚げの袋を開けてあげると、お腹が減ってたのか、はぐはぐと美味しそうに食べてくれる。
ん~…この狐って…本当に小さいままだなぁ。観察する私に気が付いたのか、首をかしげてジッと顔を見つめるチビ狐に「なんでもないよ。」と言って、また頭を撫でてあげる。
…さて…何時までもこんな事をしてる…場合じゃないか。

「いい加減…出てきたらどうですか?」

首もとのエクスを握り締め、私は鳥居の方に視線を移す。
さっきから、こちらを観察するような視線を感じていたんだ。それも、多分魔導師だ。


『マスター、周囲に結界が展開されました。…やはり魔導師のようですね。』
「みたいだね。」

さて…一体、誰が何のために…こんな事をしているのか…。考えたいけど…そうもいかないか。
鳥居の影から、1人の女の人が姿を表した。凛々しい人…だね。そして…かなりの凄腕だ。

「はじめまして…ですね。私に何か用ですか?」
「…名も知らぬ少年よ。すまないが…その魔力、貰い受けるぞ。」
「言葉は不要…ですか。」


女の人がバリアジャケットを、纏い剣型のデバイスを私に突きつけてくる。
これは…甲冑に近い感じがするけど…装甲が少ない。どっちかと言うと…ブレイズさんのバリアジャケットに近い…?

「最初に言っておきます。…全力で、抵抗させてもらいますからね?」
「それで構わない。だが…覚悟はしてもらおうか。」
「…エクス!!」
『了解です。…マスター、お気をつけて…。』

エクスをセイバーに切り替えて、正面から向き合い対峙する。
…威圧感が…凄まじいね。…歴戦の剣士って感じがヒシヒシと伝わってくるよ。
一枚の落ち葉が私達の間を舞い…それが地面に付いた瞬間に…同時に地面を蹴っていた。




・シグナム・


「くっ…!!」

驚くほどの魔力量を有したし少年を見つけ…戦いを挑んでみたが…この少年は強い。それが私の感想だ。
蒼い剣を振るい、我が剣レヴァンティンと真正面から斬りあえるほどの実力を、この少年は持っている。しかし…倒せない相手ではない。
それでも…何故か戦いが長引いている。決して私が手を抜いている訳でも、少年が強過ぎると言うわけでもない。
ほんの少し私のの心の底にある違和感。それが剣を鈍らせていた。

(強い。だが…なんだ、この違和感は…。私はこの少年を知っている…?いや、違う…。この少年と似た人物を…知っている?)

鍔競り合いをしながら、少年の顔を観察する。
確かに…私は知っている。だが…守護騎士である自分に過去の記憶などあるはずがない。ならばこの違和感はなんだと言うのだ…?


「ちっ…。流石に…強い…!!」
「少年こそ…なかなかやる。」
「こっちとしては…逃げたい気分なんですけどね…!!」
「逃がす気は…ない…!!」

振り下ろされるセイバーをレヴァンティンで弾き返して、胴体に蹴りを叩き込むが…
それを察知した少年は、体勢を立て直すためにバックステップで下がり、蒼い魔力弾を構成し撃ち出してくる。
避けるまでもない…なぎ払うまで!!

「陣風!!」
「なぎ払われた…!?」

レヴァンティンの刀身から衝撃波を放ち、魔力弾を跡形もなく迎撃する。これには少年も驚いたようだな。
既に戦闘を開始してから、結構な時間が過ぎているな。長期戦は私にとって不利となる。
このまま続けては…少年の仲間や管理局が戦闘を察知するかもしれない。それは絶対に避けなければ…いけない。
私を家族と言ってくれた主の為に…負けるわけにも…引くわけにもいかないのだ…!!

「…少年よ。決めさせてもらうぞ。」
『高魔力反応…来ますよ。マスター!!』
「なら、全力で…迎え撃たせてもらいますよ…!!』

私のはレヴァンティンの刀身に魔力を乗せ、少年の剣にも更に魔力を収束する。

「紫電」
「ソードウェーブ…」
「一閃!!」
「フリーケンシー!!」

私の必殺の斬撃と少年の放った、十字の斬撃が正面からぶつかり合い、爆発が起こる。
く…威力では互角だったようだな。

「防がれた…いや、相殺されたか…。」
「なんとか…なった。」

私の切り札と言える紫電一閃を相殺するとは…やはりこの少年は強い。そして…内に走る歓喜。これほどの魔力ならば…闇の書の頁を多く埋める事が出来るはずだ。
そうすれば…主も…きっと助かる…。それが今の私の…戦い、生きる理由。まだ大丈夫だ。周囲には何の反応もない。万全ではないが…まだ戦える…!!
だが…次の魔法を行使しようと、私が魔力を溜めようとした瞬間に…周囲に響き渡る不気味な声。

てこずっているようだな。…ならば、我らが…手を貸してやろう…。
「なに…?」
『これは…マスター、気を…外…ハッキ…』
「エクス…?…な…!?」

なんだと…!?突然、少年のデバイスが機能を停止し、バリアジャケットが解除される…だと…!?
本来ならば好機…なのだろうが…騎士としての誇りが攻撃を仕掛ける事を躊躇させる。
だが…私が動く前に…ズブリ…と鈍い音を立てて…

「…あ…れ?」

背後から、何者かの剣が少年の…胸を貫いていた。








(あれ…?どうして…私の胸から…剣なんて、出てるんだろう…?どうして…血が、噴出してるんだろう…?
どうして…私のリンカーコアが…突き刺さって…身体の外に…出てるんだろう…?)

「ただのモブキャラの分際で…僕の邪魔をするから…こうなるんだよ!!」

その声と同時に…貫いていた剣が引き抜かれる。その瞬間にメビウスの胸から血が噴出し、周囲を紅く染める。
バシャ…と自分で作った血溜りに倒れ付すメビウスと、呆気に取られるシグナム。
彼の背後を見ると…フードを被り双剣を持った魔導師が、佇んでいた。その切っ先にはメビウスのリンカーコアが突き刺さり、蒼い光を放っている。

「ふん。…まぁ、所詮は雑魚でモブキャラか…。おい、こいつの魔力が欲しいんだろう?…早く吸い取れ。」
「貴様…何者だ…?」

突き刺さったままのコアを差し出す魔導師を警戒し、レヴァンティンを構えるシグナムだが、魔導師は面白そうに笑い声を上げて、もう1振りの剣を突きつけてくる。

「消耗した状態で僕と戦うつもりか…?馬鹿だね。…今の僕は機嫌が良い。こいつの魔力を吸い取って消えるなら…何もしないさ。」
「……くっ…。」
「そうそう。それが一番、良いことだ…はははは!!」
(少年よ…すまない。)

万全な状態ならば、この魔導師も倒せるだろうが…メビウスとの戦いで、それなりに魔力を使っている。ならば、ここで無理する必要はないだろう。
心の底でメビウスに謝りながら、闇の書を取り出し、魔力を吸収していくシグナム。
それを愉快そうに見つめる魔導師の眼は…狂気に満ちていた。まるでメビウスが…こうなる事を望んでいたように…憎悪に満ち溢れていた。

「…予想以上だな…。決着としては不本意極まりないが…。」
「ふん、むしろ感謝して欲しいものだがね。」

魔力を吸収し終えたコアを排出され。それをフード魔導師が拾い上げる。
そして…愉快そうに口元を歪め、醜い哂を浮かべる。

「ふ~ん。雑魚の癖に…レアスキルを持ってるなんてね…。」
「魔力が…回復しただと…!?」

再び蒼い光を放つメビウスのコア。ソラノカケラにより、瞬時に魔力が供給されたようだ。
その瞬間に…シグナムの手の中にあった闇の書が再び、魔力を吸収している。

「なっ…これ以上はやめろ!!…闇の書…止めろといっている!!」
「あはははははは!!!そいつはまだ喰い足りないってさ!!」
「く…!!」

再び魔力を吸収する闇の書を止めるために、シグナムはこの場から転移して、離れる事にした。
それを見届けた魔導師はフードを取り…素顔を露にする。シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー…。

「…所詮は…雑魚なんだよ!!あはは!!」

血溜りの中に倒れているメビウスの身体を蹴りつけて、狂ったように哂う。
2度、3度と蹴りつけ、今度は彼の手を思いっきり踏み躙り…醜く変形させる。それでも飽き足らず、再びけりつける。

「意識を失ってるのがつまらないな。醜く…豚のように泣き叫ぶ貴様の声を聞きたかった…よ!!」

頭を踏みつけ、蹴りの飛ばす。もはや…それは人の所業ではなかった。
踏みつけ、蹴り飛ばし、突き刺す。その表情は…狂気の笑みで埋め尽くされていた。

「ふふ…。なのは、こいつはあと少しで…醜くなるよ。…もう見た目で騙されなくても良いんだよ。…待っててね。」

アスカロンを振り上げ、メビウスの顔を切り刻もうとしたシルヴァリアスだが…軽く舌打ちをして神社の入り口を見つめる。

「ちっ…邪魔者が来たか。…まぁ、これだけ痛めつければ…良いか。…最後の仕上げだ。」

メビウスのリンカーコアを宙に浮かせ…シルヴァリアスはアスカロンを振るう。
その斬撃が容赦なく…蒼いコアを…粉々に砕き…潰していった。



・???・
ははははは…予想以上の魔力だ。
さぁ…管理局の犬どもよ…どう動く…?
ははははは…












チビ狐は走っていた。
彼女の友達が…大変な目にあっている。それを彼女の1番の友達に知らせるために…走っていた。
口にくわえるのは紅く染まった蒼いリボン。目的地は…学校の校庭。
何時もそこでサッカーをしていると…彼は言っていた。人の目に付くのは嫌いだけど…そんな事に構って入られない。
匂いを頼りに…ひたすらに走り続ける。

(どこ…どこ…!?)

チビ狐は人の言葉を解し、頭も良かった。だからであろう…道に書かれている文字を理解して…目的地にたどり着いたのだ。

「お?こんな所まで来て、どうしたチビ狐!!」
「!!」

大好きな油揚げをくれる1番の友達--オメガを見つけると、チビ狐は一目散に駆け寄っていった。
身体が疲れてるけど…そんな事は関係ない。速く伝えなければ…

「おいおい。なんだよ、油揚げはメビウスが持ってっただろ?」
「!!!!!」

違う、伝えたいのはそんな事じゃない。チビ狐は加えていたリボンをオメガに手渡す。

「あん?これメビウスのだろ?おい、これ…血か…?チビ狐!!メビウスになんかあったのか!?」
「!!!」

チビ狐はコクコクと何度もうなずき、走り出す。それを追ってオメガは荷物も全部捨てて走り出す。
親友の大切なリボンが血で濡れている…。何かあってチビ狐が知らせに来たのだと…瞬時に理解したのだ。
1人と1匹が夕暮れの街を疾駆する。走って走ってたどり着いたのは…何時もの神社。
石段を登り…境内を見れば…

「メビウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

無残にも変わり果てて…血溜りの中に倒れている親友の姿が…そこにあった







あとがき

…………いきなりの展開で始まりました。
いや、何も書く事が…。メビウス君は離脱…です。
…さぁどうなる2期、どうする作者!!




[21516] As編 2話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/16 20:59
フレッシュリフォー社、最先端医療施設

・閃・

「…お兄ちゃん…お兄ちゃん…!!」
「フェイトちゃん…大丈夫…メビウスちゃんは大丈夫だから…。」


重苦しい空気が漂う。その中でサイファーさんに抱きついて、泣きじゃくるフェイトの声だけが響いている。
…メビウスは厚いガラスの集中治療室の中で眠っている。正確には…意識不明って事だがな…。
あいつがメビウスって事は…多分、言わなきゃ分からないだろう。
包帯で全身を覆われ、身体中に輸血や薬品の管がつながれ…生命維持装置でやっと…生きている状態だ。
あの優しい笑顔も…強い光を持っていた瞳も…全部全部…壊れていた。
オメガの連絡を受けた俺とリリンが、フレッシュリフォー社が誇る最高最大最先端の医療施設に収容したが……どうにもならない…。
おびただしい出血に外傷。内臓まで届いている傷。本当に生きているのが…不思議なくらいだった。医療スタッフ達も最善を尽くしてくれたが…生命維持だけで精一杯。
エクスも外装から内部構造までズタボロで…修復不可能な位までに破壊されているし、コアも機能を停止している。…なにがあったのか、それすら知る手がかりはない。
フェイトとなのはも駆けつけたが…フェイトはさっきからずっと泣いている。だが…それならまだ良い。感情ってもんが…あるんだからな。
だが…なのはは…泣きもしなければ、わめきもしない。ただ…感情が抜け落ちた顔で、虚ろな暗い瞳で、メビウスを見つめていた。
…これは…やばいかもな。フェイトより…なのはの方が参ってるな。だが…正直言うと俺もきつい。
なのは達と一緒に居たアリサとすずかも来ているが…アリサは姿の見当たらないオメガを探しにいったし…すずかは泣きそうなのを我慢して…その場で立ち尽くしている。
その場から一旦離れ、部屋の外に居る主任と合流する。
何時もはふざけた表情の主任も…今回ばかりは真面目だ。

「…どんな…感じなんだ…?」
「出血過多、外傷と内臓の破損。眼もアウト…手の足の骨も粉々。…生きてるのが不思議なくらいだって。」
「……やっぱりか…。リンカーコアは…?」
「再生不可能な位まで粉々に砕かれてる。…仮に無事だったとしても、魔導師はおろか…2度と通常の生活には戻れないみたいだし…さ。
あの綺麗な顔も修復は…多分…無理だろうね。」
「…!!!」

壁に拳を打ち付ける。…浅はかだった。馬鹿だった…!!もっと先を読むべきだった…!!
俺たちの中でメビウスが一番魔力が高かい。つまりヴァルケンリッターに…狙われる可能性が一番高いって事だろう…!!
なんで対策を立てなかった…!?なんで忠告しなかった…!!俺は、あいつの親友なんだろう…!?あいつらの笑顔を護るって…誓ったんだろ!?
なのに…なのに…。きつく閉じた眼から涙がこぼれる…。

「こんなのって…ねぇよ…!!」
「…誰が…やったんだろうね。」
「今の時期から考えると…ヴァルケンリッターしか居ないだろ…!!…はやての為だからって…こんな事、許されんのかよ…!!」

闇の書の守護騎士達。あいつらが…やったとしか俺は思えない。
だが、主任は否定するかのように首を振り…メガネを上げる。

「…彼女達が、こんな非人道的な事をする筈がない…。ただ魔力を奪えれば良いのに、コアまで破壊はしない筈だ。
それに…デバイスまで破壊する理由が見当たらない。絶対に…彼女達じゃない。』
「なら…誰がやったって言うんだよ…?」
「それが分かったら苦労はしないさ。」

なんでだよ…一番可能性があるのは…守護騎士達だろう…?なんで主任は絶対なんて…断言するんだよ…!!!
あいつらがメビウスをこんな眼にあわせたんだろう…!?かっと頭が怒りで熱くなる。

『…どうしたんですか、帝閃。冷静にクールに…思考を働かせろ。』
「レーベン…お前…。」
『全部の可能性を落ち着いて見極めるんです。冷静に、客観的に、全体を見渡すんです。…貴方はそれが出来るはずでしょう?
神の眼と思考を用いて…解析するのですよ。…お!!私、今良い事言いましたよね!!ふふふ…流石は私!!』

…こいつに諭されるとはな…だが…確かにその通りだ。だが…最後の自画自賛で台無しだぞこんちくしょう…。
思考を切り替えるために、頭を振って落ち着かせる。そうだ…俺は何も出来ない分、頭で戦力になるんだよ。
落ち着け…落ち着けよ俺。熱くなってもクールにだ。冷静に全部を見るんだ…帝 閃。

「よし…落ち着いた。…取り乱しちまってすまない。レーベンも…サンキューな。」
「良いさ。…僕も君の立場なら…そうなってる筈だから…ね。それじゃ、僕は一旦、研究所に戻るよ。」
『まぁ、私がサポートしてあげなきゃ…何も出来ない童ていたたたたたたたた!!!!!散る散る散る散るチルノ!!!…ひでぶ!?』


白衣を翻して、歩き去っていく主任を見送りながら、レーベンを思いっきり踏みつけて黙らせる。
去っていった反対方向の廊下の聞こえてくる足音。そっちの方を向けば、膝に手を付いて息を切らせてユーノが居た。
顔とかに少し土が付いているが…発掘作業中だったみたいだな。
俺がこいつやクロノ達に連絡を入れていた。…クロノとブレイズは現場検証に行ってくれているはずだ。

「はぁ…はぁ…閃!!メビウスは無事なの!?」
「……」

無言で病室を指差すと、ユーノが駆け込んでいく。…こいつもメビウスとは仲が良かったからな…。
態々、発掘を中断して…着替えもせずにこっちに来てくれたようだ。
メビウスの状態を見てユーノが病室から出てくるが…その表情は…辛い。

「…一体…誰がやったの…?」
「まだ分からない……。お前まで泣きそうになってどうすんだよ…。」
「だって…メビウスは僕の友達で…ジュエルシードの時も助けてくれて…。どうして…!!」

悔しそうに…涙をポロポロと零すユーノ。

「閃…悔しいよ。…メビウスがあんな目にあっているのに…助ける事も…仇を討つことも出来ない…。」
「…俺も同じだって。だがな…ユーノ、泣くのは後だ。…今は落ち着いて…考えるんだよ。」
「考える…?」
「誰がメビウスをこんな目にあわせたのか…目的は何なのか。それが分からないと話しにならない。…あいつの分まで…俺達が考えんだよ。
ほら、涙拭け。お前にも…できる事があんだからよ。」
「閃…。そうだよね…。僕にも…出来る事があるはずだよね…!!」

袖で涙を拭いて、ユーノは泣くのをやめた。…まだ眼が赤いけどな。まぁ…こいつが冷静になってくれただけでも、充分だ。
…だが、どうやって守護騎士達がやったと…気づかせるべきか…。俺が下手に知らせるのも拙い。闇の書の為に、まだ蒐集は続けられる筈だ。
…そうなると…次に狙われるのは…なのは辺りか。今のなのはじゃ…戦えないだろうな。

「ユーのはしばらく、なのはの近くにいてやってくれないか?」
「なのはの?」
「今のあいつは…誰かが支えてやらないとヤバイ状態だ。メビウスっつう…でかい心の支えがなくなったからな。」
「良いけど…、フェイトの方はどうする?」
「そっちは大丈夫だろう。…サイファーさんやスカーフェイスさんが支えてくれる筈だ。とりあえず、当分はなのはの側に居てやってくれ。」
「分かった。…なのは…大丈夫かな…。」

心配そうにするユーノだが…その気持ちは分かる。
フェイトは、義理とは言え…両親が居る。あの人達が支えている限りは…フェイトの心は折れない。
それに、きっとプレシアの大きな愛が心の中にある。愛する母親との別れの経験が、フェイトの心の糧になっているはずだ。
問題は、なのはだ。多分だが…フェイトよりなのはの方が、メビウスへの依存率は高い筈だ。小さい頃から一緒に居たって言ってるし…何をするにも何時も、側に居たからな。
失った反動は…あいつの方が大きいだろう。そうでなければ…あんな暗い眼にはならない。

「そう言えば…オメガとガルムは?」
「…あの2人も…相当落ち込んでんだろうな。」




・医療施設入り口・


「こんな時に…あの馬鹿、どこ行ってるのよ。」

姿の見えないオメガを探して、施設内を歩き回るアリサ。
ふっと窓の外を見ると…入り口の階段の所で座っているオメガの後姿を見つけた。その腕の中にはチビ狐が抱っこしていた
既に時間帯は夜で外灯に照らされなければ、見つけれなかっただろう。
すぐに入り口に向かい、その背中に声をかける。

「オメガ、こんな所でなにやってんのよ。」
「…おう、アリサか。」

振り返らずに…返事をするオメガの声には、何時もの元気な声とは程遠いものだった。
聞いた事もないオメガの声に戸惑うアリサだったが、そんな事は知らずにオメガは静かに話を始める。

「俺って…メビウスの親友…なんだよな。」
「今更、何を言ってるのよ。自分でも親友って…言ってたじゃない。」
「なのによ俺…助けれなかったんだぜ…?」
「オメガ…?」

抱っこしているチビ狐にポタポタと静かに落ちる涙。
アリサはあわててオメガの近くに走りよるが、どうすることも出来ない。彼の涙声と独白を…聞く事しか出来なかった。

「メビウスは、俺がどんなに馬鹿をやっても…呆れながらも最後まで、付き合ってくれたんだ。こんな俺の事を…親友って言ってくれたんだぜ?
なのによ…俺…その親友があんな事になってたのに…呑気にサッカーの練習なんかしてたんだぜ…?」
「オメガ…もう言いから…思いっきり泣きなさいよ…。我慢なんて…あんたに似合わないわよ。」
「ごめん…ごめんメビウス…!!痛かったよな…恐かったよな。それなのに…俺、助けれなかった…!!!気が付かなかった…!!」

チビ狐が必死にオメガの涙を舐めて慰め、アリサはそんな1人と1匹を抱きしめていた。
何時も太陽のように笑う彼の始めてみる泣き顔。初めて聞く泣き声。どれだけ…親友の存在が大きかったのか…それだけで分かる事が出来た。
ただアリサは…この友達思いの少年と一緒に泣くしか…出来なかった。






・屋上・

「……ガルム。」
「アルフか…なんだ。」

アルフは屋上に佇み夜空を見上げるガルムを見つけ、声をかけた。
何時もの様に凛とし、クールな声で答えるが…ため息をつきながら、アルフは隣まで歩いていき、バシっとその背中を叩いた。

「っつう…何をする。」
「…ったく、あんたもあんたで…強情だね。」
「おい…こら、離せ…!!」
「やなこった。…あんたが…ガルムがつらそうなのを見てると…あたしもつらいんだよ。」
「っ…。」

ガルムを無理やり、自分の胸に抱きしめて、背中を静かに擦ってやるアルフ。
その眼は…大切なものを見るように…優しく愛しい光を持っていた。

「我は…我はメビウス様を、護ると…絶対の忠誠を…誓っている。」
「うん。」
「だが…我は…メビウス様をあのような…事に…。」
「あんたがあいつを大切にしてるのは…わかるさ。」
「我は…何も返しきれていない…メビウス様に命を助けて頂いた恩も、名を付けてくれた事も…全てを与えてくれた事を何も…何も…!!」
「きっと…大丈夫だよ。まだ死んだわけじゃないんだから…。メビウスなら大丈夫さ。…あんたのご主人様なんだろ?」

アルフの胸の中で嗚咽を漏らすガルム。身体が小刻みに震え、背中に手を回し縋り付く彼は…子供のように見える。

「誰が何の権限があって…メビウス様から空を奪った…!!空を飛ぶ事が…大好きだったあの方から…誰が翼を奪った…!!
我は…我は、護れなかった…!!」
「ガルム…ここにはあたししか居ないから、泣きなよ。受け止めてあげるからさ。」
「う…あぁぁぁぁぁ…!!!!」













あとがき

ストーブつけようとしたら、白い煙が出て大破した作者です。…これは…面倒な事に…なった…。
Asでのコンセプト、無印ではメビウス無双的な要素が多かったので…今回はオメガや閃達に頑張ってもらおうかと思います。
メビウス君、意識不明の重体です。エクスも全壊してます。医療知識が皆無の作者にはこの程度の描写が精一杯です。
悪い意味で…ご都合主義ですね。真犯人は闇の中…。文字の如く闇の中…。
次回は…あの方が…本気を出すかもしれません。



[21516] As編 3話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/23 21:37
・ユーノ・

メビウスが入院して数日がたった。
閃やオメガ、ガルムはクロノ達と協力して捜査を行っている。…それで学校とも両立してるんだから、彼らのタフさには驚かさせれるよ。
…フェイトも表面上は持ち直したけど…やっぱり、寂しそうな、悲しそうな顔をするときがある。けど、サイファーさんやスカーフェイスさんが支えてあげているから、多分大丈夫。
一番心配なのは…やっぱり、なのはだ。。…僕はソッと隣を歩くなのはの横顔を見る。
学校が終わる時間帯に迎えに来て、一緒に帰るようにしろって、閃から言われてそうしてるんだけど…やっぱり、見知らぬ僕は少し注目を集めていた。
まぁ、何回も来てる内に慣れたけどね。出会った頃のような、笑顔はなく…虚ろな表情で、沈んだ暗い眼をしている。…

「えっと…なのは。今日の学校はどうだった…?」
「…普通だったよ。」
「そ…そっか、普通か。…普通…ね。」

話しかけても、こんな感じでしか返事が返ってこない。感情の篭っていない…平坦な声。…今の彼女は…何にも興味が無いんだろうね。


「…メビウス、早く治ると良いよね。」
「……うん…。」

…しまったぁぁぁぁ!!!幾ら話のネタが無いからって…メビウスの話題を出したら駄目だよ僕!!
け…けど、彼の話題なら…なのはも乗ってくるんだろうけど…辛い事かもしれないから…どうしよう…?

(ああもう…何時もはなのはが、話をしてくれいたから…何をどう話せば良いんだろう?…何時もは…なのはが…?)

あぁ…そうか。僕は重大な事を忘れていた。…なのはにとって、メビウスが全てだったんだ。
僕がお世話になっていたとき何時も何時も…それこそ聞き飽きるぐらいに、メビウスの話ばかり聞いていた。
きっとなのはは…メビウスを通して世界を見ていたんだろう。…メビウスの居た世界だから…彼女は世界を見ていたんだ。
…それはつまり…メビウスが居ないと…彼女の世界は…無いって事…?

「…誰か…居る。」
「え…?」

なのはが立ち止まるのに気が付いて、僕も慌てて歩みを止める。考え事をしてて気が付かなかった…周りに結界が張られてる…。
前を見ると…一風変わった服を着ている女の子が…険しい表情で僕達を見つめていた。
肩にはハンマーのようなデバイスが担がれていて…物凄く拙い。と僕の6感が告げている。

「…らぁぁぁぁ!!!」
「いきなり!?」

何も言葉もなしに…ハンマーを振り上げて、こっちに向かってくる女の子。冗談じゃない…!!
動けないなのはの前に飛び出して防御障壁を展開して、振り下ろされるハンマーの一撃を防ぐ。
くうぅぅ…僕の障壁じゃ、防ぐのが精一杯だ…!!

「ちっ…。まさかあたしの一撃を防ぐなんてね…。」
「君は一体…何が目的だ!!」
「悪いけど…お前らの魔力、貰ってく!!」
「魔力…まさか…君がメビウスを…!?」

再び振り下ろされるハンマーを障壁で防いで、弾き飛ばす。単純な方法だけど…いや、単純な方法だからこそ恐い。
これだけの威力の一撃…なんにも使わずに出せるなんて…僕じゃ勝てない…!!

「なのは、僕が防いでる間に後方から砲撃を…」
「あ…あ…」
「なのは…!?」

突然、なのはが自分の身体を抱き抱えるようにして座り込んでしまう。
そんな…何が…って、気にすることも出来ない…。女の子の力押しに…耐えれ…ない!?

「って…障壁が割られた!?君はオメガか!?」
「誰だよそいつ!!…避けやがったな…」
「な…なんて馬鹿力…。地面が陥没してるよ…。」
「馬鹿力言うな!!」


盛大に振り下ろされたハンマーが地面を穿つ。障壁を破られた瞬間に下がってなきゃ…危なかった…。
その意趣返しに、ちょっと挑発しちゃったけど…拙かったかな…。


「なのは、戦って!!僕だけじゃ、防ぎきれない!!」
「む…無理だよ…。」
「無理って…どうしたのさ、なのは!?」
「やだよ…戦えないよ。怖いよ…怖いよぉ…。メビウス君、メビウス君…助けてよ…メビウス君!!助けて!!」
「そんな…閃、オメガ…僕じゃ…無理だ…。」

身体を震わせて、彼に…メビウスに助けを呼ぶなのはを見て…僕にはどうにもならないと…気が付いた。
僕じゃ…なのはの心を癒す事なんて出来ない、助ける事なんか出来ない。…メビウスしか、なのはの心を…救えないんだ。
それでも…今のなのはは…僕が守るしかない。僕の持てる全魔力を駆使して、最硬度の障壁を作り上げて、女の子と向き合う。
…突然の泣き声で女の子も戸惑ったみたいだけど、もう…手加減とかしてくれそうにないな。

勝たなくてもいい。…今の僕に勝利は必要ない。…今の僕の必要なのは…負けない戦いだけだ!!









ヴィータが振り下ろすアイゼンを、ユーノの障壁が防ぐ事数回。流石のヴィータも予想以上の守りに少し手こずっていた。

「さっきから守ってばっかりかよ!!」
「君こそ…殴ってばかりだね…!!」
「こんの…!!」

疲労の表情を浮かべながらも、虚勢を張り続けるユーノは流石と言うべきか…。
後ろで座り込んでいる少女を守るために、彼もここで負ける訳にはいかなかった。空の少年が居ない間は自分が守らねば…それが彼の意思。
一方のヴィータも同じである。先日、シグナムが蒐集してきてから、はやての体調はすこぶる良好だ。だが…何時また苦しみだすか分からない。
自分を可愛がってくれているはやての為。苦しむ彼女を救う為に…たとえそれがはやての望まない事でも…彼女は戦い続ける。

「これで…砕けろ!!」
「しまっ…た!?ぐあぁぁ!?」

アイゼンが障壁を打ち砕き、ユーノ諸共弾き飛ばした。
まともに直撃を受けたユーノが数m程吹き飛び、地面にこすり付けられる。
肩にアイゼンを担いで、ヴィータは静かに、未だに座り込んでいるなのはへと歩み寄り、蒐集を始めようとしたが…それを遮るようにして…声が響く。

「どぉぉぉりゃぁあぁぁあ!!!」
「なん………わぁ!?」

突然、展開していた結界の天井部を破壊して落ちてくる人影。ヴィータとなのはの間を遮るようにして着地した少年。腕に付けられたパイルバンカーが唸っていた。

「オ…メガ…。間に合って…よかった…。」
「ユーノ、少し休んでるんだぜ。…閃も少しでくる。」

弱弱しく顔を上げたユーノの眼に映ったのは…頼りになりすぎる親友、オメガの後姿。彼なら…負けないだろう…と考え、安心感から…ユーノは意識を失った。

「さてと…今度は俺が相手だぜ!!こい…ゲートボーラー!!」
「だ…誰がゲートボーラーだぁぁぁ!!!」

オメガの一言で逆上したヴィータがアイゼンを振り上げて、突進してくるが…ある意味で相手が悪かった。
この少年は…色々な意味で理不尽なのだ。パイルバンカーに魔力を溜めて…迎え撃つオメガの顔には…眩い笑顔。
アイゼンとパイルバンカーが正面からぶつかり合い、魔力光が散る。

「おらぁぁぁぁ!!」
「あたしが…押し負ける…!?うわぁぁぁ!?」

オメガの気合の声と共に、ヴィータの小柄な身体が吹き飛ばされる。空中で体勢を立て直し、地面へと着地する。
その顔には驚きの表情が浮かんでいた。自慢のアイゼンでの一撃がいとも簡単に防がれ、吹き飛ばされたのだ。
しかも、ハンマーの部分に罅まで入れられたのだ。流石のヴィータでもほんの少し怖気づいてしまうのも仕方が無い。

≪ヴィータ、撤退だ。…もう1人、魔導師が向かっている。≫
≪ザフィーラ!?…分かったよ。≫

索敵を行っていた仲間のザフィーラから念話が入り、これ以上は不利と判断したヴィータ。


「…お前の名前、なんだよ。」
「ハッハー!!俺はオメガ・ガウェインだぜ!!」
「オメガだな…。今度あったら…ぶっ叩く!!」
「おう!!やれるもんならやってみろぉぉぉ!!!」

最後にオメガを睨み付けて転移していくが、オメガはまったく気にせずに笑顔で親指を立てていた。
…これがヴィータのある意味で不幸であり…ある意味で幸せの始まりだったのかもしれない。







・閃・

「…お前は…なにしてたんだよ、なのは!!」
「………」

医療施設の廊下に響く俺の怒鳴り声。周囲に居た医療スタッフが驚いて、こっちを見ているが…知らん。
俺が到着したときには、守護騎士は撤退済みで、怪我したユーノをオメガが背負っているところだった。
…幸い、ユーノは骨折程度で済んだ。内臓にも傷はないが、当分は戦えないだろう。
だが…問題はなのはだ。…正直、なのはの護衛にユーノしか付けなかった俺にも責任はある。と言うか…俺が100%悪い。
それでも…俺は何処かで信じていたんだよ。なのはが…きっと戦ってくれるって…不屈の心を持っててくれるって…。
たが、現実は違った。…なのはは蹲って泣いていただけ…。

「なぁ…なのは。お前は…どうしたんだよ。なんで戦わなかったんだ…?」
「…だ…だって、私…何も出来ないよ。恐くて…身体が動かないんだよ…。」
「動かないって…訓練とか…前の事件だって、戦ってたじゃないか。」
「わ、私…メビウス君が居ないと…何もできないよ…。恐くて…なんにも…!!」


泣きながら走り去るなのはを…俺を見ている事しか出来なかった。
あぁ…メビウス…今更だが…お前の存在がどれだけ大きかったか…痛感されられたよ。
なのはの心は…弱いままだったんだ。…お前が居たから…なのはの心は強かったんだな。
これから…どうすんだよ…。なぁ、メビウス。俺だって…辛くて…泣きたいんだぞ…?この襲撃で闇の書の事が分かってくるけどよ…。2人の主人公がこんなんで…どうすんだよ。

「……あぁ、泣きたいな畜生。大声出して…何かに八つ当たりしまくって…泣きたい気分だよ。」








ランスロット家。メビウスの自室。


「やっぱり。ここに居たのね。」
「あ…お母さん。」


サイファーが、フェイトの部屋まで様子を見に行ったのだが、部屋の中には誰もいなかった。もしや、と思いメビウスの部屋を確認すると、ベットの上に座っているフェイトを見つけたのだ。
薄桃色のパジャマ姿で、大きなイルカのぬいぐるみを抱きしめているフェイトが可愛らしいく、サイファーは笑顔でベットの側まで歩み寄り、並んで座る。

「メビウスちゃんが居なくて…さびしいわよね。」
「うん…。」
「ふふ、何時も、一緒に寝てたものね。一人で寝るのは寂しいの?」
「あう…知ってたんだ。…寂しいよ。凄く…寂しい。」

ギュっとイルカのぬいぐるみを抱きしめるフェイトの眼には涙が溜まっていた。何時もなら…メビウスに髪を梳かして貰い、彼に抱きついて、抱きしめられて眠っている筈なのに…。
2人でも大きいと感じたベットが…更に大きく感じる。それだけじゃなく、勉強を教えてくれた机も、一緒に星を見たロフトも、全部が大きく感じている。


「…フェイトちゃん。私も…寂しいわよ。」
「…お母さん?」
「貴方は私の娘なんだから…思いっきり甘えても良いのよ?…むしろ、甘えなさい。メビウスちゃんみたいに出来ないと思うけど…ね。」

フェイトを抱きしめるサイファーの顔は何時もの笑顔とは違い。慈愛に満ちた…母親の笑顔。
かつてプレシアがフェイトに見せていたあの笑顔と…まったく同じものだった。

「…うん。…何時も…ありがとう。お母さん…。」
「ふふ、良いのよ。フェイトは私の可愛い娘だもの。…さあ、ここで寝ていいから…ね?」

優しく抱きしめたまま、サイファーは静かに子守唄を歌いだす。愛しい娘の為に…この娘を大事に思っている息子の代わりに…
何時しかフェイトは静かな寝息を立てて、眠りについていた。
ソッとサイファーはベットに寝かせ、お気に入りであろうイルカのぬいぐるみも一緒に布団をかける。
本来ならば自分も一緒に眠りたいのだが…今夜はそうもいかない。
電気を消して部屋を出た彼女の背中には…あるものが宿っていた。





郊外、工事現場。


深夜の時間帯。サイファーが訪れたのは郊外の工事現場。
周囲には人の気配も無く、工事用の重機が立ち並んでいる。

「出てきなさい。居るのはわかってるのよ。」
「…気が付いていたか。」

前方に展開される転移魔方陣。その中から出てきたのは…烈火の将、シグナム。サイファーの魔力を感じ取り、尾行していたのだ。
何故、サイファーがここに着たのか…理由は簡単だ。ここなら…どんなに暴れても…誰も気が付かないから。深夜ならなおさらだ。

「…やっぱり、ヴァルケンリッター…だったのね。」
「私を知っているのか?」
「さぁて…ね。どうかしら。」

クスクスと口元を押さえ、微笑むサイファー。シグナムは戸惑いながらも、レヴァンティンを抜き放ち、彼女に突きつける。

「その魔力…貰い受けるぞ。」
「あら…。貴方は覚えてないの?」
「私に…過去の記憶は無い。…覚悟してもらおうか。」
「そう…なら、思い出させて…あげるわね♪」

サイファーが、長く綺麗な蒼髪を留めていた髪飾りを外し…微笑を浮かべる。一瞬、見惚れたシグナムだったが、すぐに気を取り直して、攻撃しようとするが…

「…世界が…揺れている!?」
「あらあら…まぁまぁ…。ほんの少し力を解放しだけなのに。」

最初は地震かと思ったが…それは違った。世界全てが…揺れているのだ。
突然の出来事に驚くシグナムだが…目の前に居るサイファーを見て、固まった。

「魔力流…だと…!?お前は一体…」
「ふふふ。さて…思い出せるかしら?」

サイファーの周りに竜巻のように舞い上がる魔力流。そして…膨れあがる殺気。
気が付けば、彼女の手には銃口が2つある長銃身ライフルが握られていた。

「さぁ、始めましょうか。…シグナム。」

一歩、前に踏み出してくるだけで襲い掛かってくる殺気と威圧感。
知らず知らずにシグナムの身体は震えていた。

(この私が…恐怖してるだと…!?それに…この感じは…なんだ!?私は…この女性と戦ったことがある…!?)

目の前の女性から感じる違和感。それはメビウスと似たもの。いや、違う。メビウスが彼女と似たものを持っている。
ここでシグナムは逃げておくべきだっただろう。確かに騎士として彼女は強い。並みの魔導師なら相手にすらならないだろう。
だが…目の前に居る女性がどんな存在なのかを…知っておくべきだった。
ベルカ戦争を戦い抜き、アジムとゲランでさえ一蹴した1人の傭兵が居た。畏怖と敬意の狭間に生きた1人の傭兵。
ベルカの騎士を最も多く撃ち落とし、ベルカの騎士達でさえ恐怖した存在。
全てをなぎ払い、全てを撃ち砕き、全てを護り、全ての戦局を覆した傭兵。
その名は…【円卓の鬼神 サイファー・ランスロット】

「さあ…ZERO…全てを…破壊するわよ。」













あとがき


天上天下最強お母さん起動の巻きでした。お母さん、全ルート制圧済みの人です。
戦局が読めて、誇りを持っていて、全てを破壊できるお母さんです。
さぁ…今回の駄文ですが…次回からどうする作者!!
メビウスの依存しまくりのなのは…さぁ、こっちもどうする!?



[21516] As編 4話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/02/23 21:38
・シグナム・

私の真横を極光が通り過ぎる。…馬鹿な…地面が半円状に抉れている。
周囲には彼女が放った砲撃により…幾多ものクレーターが出来ていた。まるで大規模爆撃受けたように…な。
先ほどから冷や汗が止まらない。情けない事に…レヴァンティンを握る手が震えている。
女性…サイファーがトリガーを引くたびに放たれる魔力の奔流。…これほどの砲撃を無詠唱で連発できるはずが…。

「さぁ、どうするのかしら。烈火の将、シグナム。…騎士ならば接近してみなさい?」
「…後悔しても…知らんぞ!!」

余裕の表情で挑発してくるサイファーに向かって、私は一気に加速してレヴァンティンを振るう。
しかし…それは彼女に届く事はなく…目の前に展開された障壁によって防がれる。なんて…厚さの障壁だ…。

「はい、残念♪」
「がはぁ!?」

何が起こった…身体に鈍い痛みが走ったと思ったら、数mほど吹き飛ばされた…!?それに…障壁にも罅1つ入れる事すら出来ないだと…!?
く…レヴァンティンを地面に突き刺して、なんとか立ち上がる。たった一撃で、身体の自由を奪われた…。

「あらあら…。ベルカの騎士達は…もっと強かったわよ?…それに、昔の貴女もね。」
「お前は…何を知っている…。私の何を…知っていると言うのだ!!!!!」

声をあげ、無謀と分かっていてもサイファーへと向かい剣を振るう。1閃2閃3閃と剣閃が奔るが…その全てが障壁に阻まれ届かない。

「一体、なんだ…この違和感は。何故、お前は…そんな眼で私を見る…!!騎士たる私が…何故、ここまで恐怖している!!」
「…貴女の心の奥には、記憶があるからよ。」
「私は…私には、過去など…何もない!!今しかないのだ!!先も過去も…全ては闇の中だ!!私にだって…自分がなんなのか…それすら分からない!!」

知らず知らずに私は叫んでいた。何故だろうか…目の前の彼女には…全てぶつけて…全てを話しても良いと思えてしまう。

「そんな私を…大切に想ってくれる主の為に私は…修羅となって戦うしかないのだぁぁぁ!!!」
「そう…貴女は修羅になるのね。…けど残念。修羅は所詮…人の限界。…私はね…鬼の神…鬼神なのよ。」

ライフルの銃身が斬撃もろとも私を吹き飛ばす。たた…単純な魔力の競り合いで負けた…。
それでも…私は止まれない…立ち止まれない…。主の為に…!!
銃口に光が収束していくのが見える。また、あの…特大の砲撃が奔るか…

「これで…終わりにしましょう。」
「動け…動け動け動け…動けぇぇぇぇ!!!!」

言う事を聞かない身体を無理やり動かす。あの砲撃を正面からまともに喰らったら…消える…。
ここで…そんな失態を犯すわけには行かない。迫る魔力の奔流を紙一重で回避して、後退する。
工事用の重機などが障害物になってくれるかと期待したが…無駄のようだ。
私の後ろにあったはずの2tトラックが…跡形もなく消え失せている。破片どこから…最初から何もなかったのように…。
騎士として有るまじき行為だが…今は逃げるしかない。
正直に言おう…私では彼女に…勝てない。あの少年も強かったが…彼女は…桁外れだ。
…だが、脳裏に…頭痛と共に浮かんだ1つの単語。…それが私の過去に繋がるのかは知らないが…恐らく、彼女の…異名なのだろう。
円卓の鬼神。…私と彼女に間に…なにがあったというのだ…!!







「…シグナム。貴女の剣は…そこまで鈍ったの…?それとも…迷っているの…?」

シグナムの後を追いもせずに、静かに佇むサイファー。その眼には…過去を思い出すように…悲しい光が宿っていた。
だが、そんな彼女の周りに突然、出現する魔力剣。

「…まったく、感傷にふけっているのに…邪魔するなんて誰かしら?」

呆れたようにため息をつき、襲ってくる魔力剣を銃身で、足で、拳で1つずつ丁寧に粉々に破壊していく。
真後ろから襲ってくる魔力剣すら感知して、見ずに破壊するあたり…流石は鬼神と言えるだろう。

「…もう、面倒になったわねぇ。」

50本ほど破壊したが、流石に飽きてきて面倒になったのか、適当に足でなぎ払う。
しかし、周囲にはまだ幾多もの魔力剣が展開されており、まだまだ彼女に襲い掛かってくる。
正直に言うと、逃げれば良いのだろうが…それは彼女に癪に障る。

「鬼神に…後退の二文字はないものねぇ。ただ、前進制圧するのみだし…引かぬ媚びぬ省みぬだし。」

長銃身型のデバイス、ZEROが真ん中から2つに分かり、1挺のライフルが2挺のライフルへと変化する。
それを両手に持ち、左右に広げるようにして、構える。

「はい、ローリングバスター。」

その場で回転し非常識極まりない砲撃が全ての魔力剣、重機等を纏めてなぎ払っていく。
最初からそれを使えば、良いだろう。もはや、その威力、魔力量共になのはのスターライトブレイカーを上回っていた。
匹敵するのはメビウスのユリシーズクラスなのだろうが…彼女の場合…無詠唱なので…こちらの方が上だろう。
実はサイファー、単純な魔力を放出する砲撃魔法しか使えない。誘導制御等、まったくもって使えないのだ。
…最も、彼女の砲撃魔法、【バスター】は当たれば堕ちる。当たらなくても、射線上の近くに居れば衝撃波で堕ちる。…卑怯である。

「後は…上にいるのはわかってるのよ。」

黒い笑顔で片方のZEROを上空に向け、バスターを放つ。閃光が駆けて、夜空を切り裂く。
それが上空に居た魔導師らしき人物に命中して、辺りを照らすほどの大爆発が起きた。
パラパラとデバイスの残骸らしき物が落ちてくるが…原形すらとどめていない。一応は非殺傷だったので、魔導師は死んでいないと思う。
堕ちてこない所を見ると、転移したようだ。

「…はぁ、久々に暴れたわね。」
「本当に…派手にやったな。」
「あら、フェイス居たの?」

声のしたほうを向けば、入り口に佇むスカーフェイスの姿があった。
どうやらサイファーが戦闘をしているのに気が付いて、様子を見に来ていたようだ。

「…まったく、重機や休憩所まで消滅させるとは…相変わらず、滅茶苦茶だな。」
「ふふ、そうかしら?久々だから、張り切っちゃった。」

小走り気味に走りよるサイファーの顔には、疲労すら浮かんでいなかった。
彼女にとって、準備運動程度の戦いだったようだ。シグナムにとっては…命がけだったろうに…。

「…ヴァルケンリッターだったか。」
「えぇ。闇の書…ね。また厄介な事になるわよ。…どうするの?」
「……俺達は介入はしない。…これはあの子達の…物語だ。俺達の物語は既に…終わっている。」
「そっか。なら…私もおてんばはこれっきりね。」
「おてんばで済ますな…。工事用の重機とか…どうするんだ?」

既に平地と化した工事現場。ここには多数の重機があったはずなのだが…夜中に内に全てが消えてたとあっては大騒ぎだろう。

「それなら、大丈夫よ。ほら、元通りよ。さぁ、帰りましょう。今日はフェイトちゃんと一緒に寝るのよ♪」
「…まったく…」

スカーフェイスの腕に自身の腕を絡めて、帰路に付くサイファー。
平地になったはずの工事現場は…何時の間に、戦闘が起きる前のように…重機が静かに立ち並んでいた。


(もう、私には貴女にアクセスする権限は…殆ど無いのね。この程度の事しか…出来ない。
ねぇ、タングラム。今、貴女は…何処でたゆたって…いるの?)



???

馬鹿な…僕のアスカロンが…粉々に破壊された…。
このボロデバイスがぁぁぁ!!!バリアジャケットもボロボロじゃない…!!
まぁ、良いさ。…どうせ新しいデバイスの完成した。…闇の書の騎士…シグナムだったか?
あいつにアスカロンを見られていたし…どうせ飽きたから良いか。主人公は…主人公らしく、新しい装備にしないとね。
ははははは!!!!







アースラ艦内、執務官室

・ブレイズ・

「なのはは戦闘不能…か。困ったな…戦力不足か。」
「情緒不安定のようだ。閃からも今回の任務には参加させないでくれ、と要請が来ている。」

モニターに映し出されているデータを見ながら、俺とクロノは頭を抱えていた。
メビウスは入院し、なのはも戦闘不能となると…結構な痛手だ。ユーノの証言を元に色々調べたが…闇の書か。

「厄介だな。…今回ばかりは流石に、俺達だけじゃ、どうにもならないぞ。」
「オメガや閃、フェイトが協力してくれるらしいが…どうしたものか…」

クロノは難しい顔をして今までの事件のファイルを開き、閲覧していく。
確かに…オメガ達の協力は心強い。艦内の武装局員達では、守護騎士達に対抗すら出来ないだろう。
先ほど、増援を打診してみたが…生憎、3姉妹はハーリング提督の護衛でベルカ自治領に、シュトリゴン隊も任務中。
勿論、アーサーやイリヤもだ。…本局に依頼しても…善処する、程度だ。

「しかし…不思議だな。闇の書は、指定ロストロギアだろう?白虹騎士団が出てくると思ったが…。」
「恐らく…上層部が伝えていないんだろう。未だにベルカを快く思わない提督も居るからな。」

…顔を見合わせて何度目かになるため息をつく。白虹騎士団の助けさえあれば…守護騎士達も恐くはない。
だが、クロノの言った通り、管理局の上層部は未だに9年前のベルカ戦争の事を覚えている。
まったく…陸海空で確執があるのに、ベルカともあるとは…所属しておきながら、なんだか泣けてきたな。
ハーリング提督がベルカに行っているわけも、聖王教会との協力体制を整えるためだ。
確か…グラシア家が代表だったか…。

「しかし、これだけではデータが少ないな。どうするクロノ?」
「さっき、無限書庫の使用許可を取ってきた。そこで調べて対策を立てよう。」
「なるほど。…誰に行ってもらう?」
「ユーノ辺りが適任だろう。それに、リーゼ達も協力してくれるらしい。」

確かに…古代文献や遺跡調査などに、秀でているスクライア一族のユーノなら安心できる。
無限書庫、管理局が誇る超巨大なデータベースだ。管理世界の情報なら全て詰まっている。難点は…あまりに巨大すぎて管理し切れていないことだがな。
それに…リーゼ達も手伝ってくれるなら、何とかなりそうだ。
リーゼアリア、リーゼロッテ。ハーリング提督の使い魔で俺達とも親交が深い。どうやらベルカに行く前に、こちらの手伝いとしてハーリング提督が残してくれたようだな。

「本来なら閃も無限書庫に行って欲しい所だが…」
「いや、彼にはオメガ、フェイトを抑えてもらおう。…メビウスやなのはが戦えない現状では…彼も切り札の1人だ。」

閃の分析力、思考能力は正直、頭が下がる。今回の闇の書の事だって、彼が裏付けや情報を持ってきてくれたお陰で、早い段階で少しとはいえ、データを集めれた。
まったく…まるで未来が読めているみたいだな。

「今後は…どう対処する?」
「襲撃された所を押さえるしかないだろう。…フェイトにオメガ、それにブレイズ。君が囮になって…おびき寄せるしかない。」
「まぁ…所在不明じゃそれしかないか。それ相応の覚悟が必要だな。」
「何時もすまないな…。」
「仕方がないさ。それに俺に言う前に、フェイト達に言って置け。彼女達を危険な眼にあわせるんだからな。」

さて…これから…忙しくなるな。






・スーパーマーケット、エグザウィル店内。


「えっと…後は缶詰だけですね。」

えらく不思議な構造の新しいスーパーマーケット。近隣のトーラスビットにも負けぬ品揃えを持つ。
その店内で買い物メモを見ながら商品を探す1人の女性。守護騎士の1人、シャマルである。
先日までシグナム、ヴィータが蒐集を行っていたが、今回は休止という事で家でリラックスしているはずだ。
最も、シグナムは何か考え事に耽っているし、ヴィータは密かに特訓をしているのだが…。

「桃の缶詰に…みかんの缶詰と…ネクストマンカード?」

最後の方に走り書きで書かれた文字はヴィータのものだ。そう言えば、はやてと2人で企業戦士ネクストマンと言う番組にはまっていた事を思い出す。
どうやらそのシリーズのカードの同封のお菓子を買ってきて欲しいのだろう。

(この前ヴィータちゃんは絶防巨人GAマンが当たったって…喜んでましたし…はやてちゃんもアクアビットマンカードが当たったって言ってましたね。)

小さく笑いながら、カートを押して店内を歩くシャマル。だが、よそ見して歩いていたからか、前に立ち止まって商品を見ていた青年に気が付かずにカートをぶつけてしまう。

「ごふ!?」
「きゃ!?す、すいません!!」
「きゃ…脚部破損、AP90%減少…!!」
「え、あのだだ大丈夫ですか!?」

意味不明な事を呟きながら蹲る青年に驚くシャマル。軽くぶつかった筈なのに、そこまで大げさにリアクションを取られると心配になるようだ。
しかし、青年は何事も無かったかのように立ち上がり、何故かカートを指差す。

「なかなかやるな…。だが、次はこうはいかんぞ!!」
「え…え?え!?えっと…」

傍から見るとこの青年、かなりおかしい。と言うか…物凄く可笑しい。妙な人にぶつけてしまったと後悔するシャマルだが、青年は何故か咳払いをして一礼する。

「はい、奇行をしてすいません。落ち着きました。」
「え、あ…ぶつけたの私ですから…気にしないでください。……あれ?」
「僕の顔に何か?…はっ!?これはフラグか!?一目ぼれフラグか!?」
「ち…違います!!」
「なんだ…違うのか…。」

シャマルが顔を徐に見つめていると、再び暴走モードに突入する青年。何故か恥らう乙女よろしく顔を赤くしてクネクネしている。…気持ち悪い。
いきなり一目ぼれとかフラグとか訳の分からない事を言われて、シャマルは慌てて否定すると、がっくりと肩を落とす青年。

「…あの、何処かでお会いした事…ありませんか?」
「……これが噂に聞く逆ナンか!!リア充イベント遂にキタ!!やっふぅぅぅ!!!」
「ででですから違いますってば~!!」
「お客様…店内ではお静かに…。」
「すすすす…すいません!!」
「川手店長~。」

近くで品出しを店長に注意され、顔を赤くして必死に謝るシャマル。青年はその後ろで未だにもだえていた。

「…まっ、冗談はおいといて。」
「冗談じゃすまないですよ…。」
「僕と貴方は…会ったことないとは思いますよ?」
「そう…ですか…?」

だが、この青年をどこかで見たような気がして首をかしげるシャマル。それを見た青年が萌え!!とか叫んでいるが、相手にすると疲れるので無視しておく。

「しかし…これも何かの縁です。…今度あったらお茶でもどうですか?」
「え…今度ですか!?」
「えぇ。運命と書いてディスティニーを信じてみませんか?…まぁ、会えたらの話ですよ。会えたらの。それじゃ…失礼。」

にこやかに笑顔を残して、立ち去っていく青年の後姿を眺めながらシャマルは何となく…会えたら良いな。と思っていた。





「シャマルさん。また…会えたね。…今度こそ…今度こそ、救って見せる…!!」


外に出て、振り向きながら…青年--主任がポツリと言葉を漏らす。
誰にも聞こえる事もなく…喧騒の中に消えていった。







あとがき

戦闘(以下略)
随所にネタを入れてみた今日この頃です。
あぁ…ファンタシースターの新作とGジェネの新作が出ますね。
はまって更新速度が遅くならないように頑張ります。
…アクアビットマンカードが物凄く…欲しいです。




[21516] As編 5話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/03/03 20:39
・ユーノ・

「僕が無限書庫に…?」
「あぁ。怪我の状態が辛いなら、断ってもかまわない。」
「…行くよ。今の僕にはそれしか出来ないから…絶対に行くよ。」
「そうか、ありがとう。使用許可はクロノが取っておいてくれたそうだ。」

閃が手配してくれた医療施設のお陰で、腕の骨折も比較的楽に治っている。…ほんの数日で治すなんて、フレッシュリフォーの医療施設は優秀だよね。
僕の病室に見舞いに来てくれたブレイズの顔には、少し疲労の色が出ていた。きっと…クロノと2人で色々と無理をしてきたんだろう。

「今夜辺りから、おとり捜査を始めるからな。…何か分かり次第、連絡を入れてくれ。」
「わかったよ。…今回は僕1人だけ?」
「いや、サポートにガルムが名乗りを上げてくれた。彼と一緒に向かってくれ。現地でも協力者が居る。」
「ガルムもって…あの、彼も一応は戦力になると思うんだけど…?」
「確かにな。だが、情報を調べるのも重要な役割だ。こっちは…なんとかするさ。」

僕に許可証を渡して、病室を出て行くブレイズの後姿は…やっぱり疲れている。
…無理もないのかな。メビウスは…意識不明だし、なのはも部屋に閉じこもって出てこないらしい。
クロノやブレイズにとっても、あの2人は大切な友人だって事だよね。勿論、僕にとってもね。そんな2人があんな状況じゃ…やっぱり色々と大変なんだ。
それにガルムがこっちのサポートに廻るなら、尚更だ。彼自身結構強い。メビウスの使い魔とか言う以前に…それ以外にも戦いを経験してるような強さだ。

「無限書庫…。良いさ、僕が全部…調べて見せる!!」


無限書庫

「なんて、意気込んでみたものの…広すぎるって!!」

無駄に広すぎる書庫内部に響き渡る僕の声。噂には聞いていたけど…なんだここは…資料やらデータやらが全部未整理じゃないか!!調べ難いったらありゃしないよ!!
検索魔法を構成してこなきゃ…かなり大変だったね。別な本棚の方では、ガルムが黙々と資料を調べいてる。
…さっきから…アリアとロッテの視線が…背中に突き刺さる。いや、なんと言うか…狙われている?そう…捕食される…?

「…猫姉妹。真面目にやれ。」
「ま…真面目にやってるわよ!」
「別にあのフェレットおいしそうだったなぁ、とか考えてないわよ!!」
「なにそれ!?考えてたわけ!?え、僕狙われてたの!?一瞬、フェレットだっただけなのに!?」

…効率が悪いかもしれないけど…少しガルムの側で調べよう。…僕だって食べられたくない。
なんで彼の近くに言ったら少し、耳をシュンとするわけ!?本気で食べる気だったの!?
…うぅ…始めたばかりなのに…別な意味で疲れてきたかもしれない…。

「あれ…?」
「どうかされましたか、ユーノ様。」
「いや、イヤリング…付けたんだなぁって。」
「あぁ…一応は我の自作ですから。まぁ…女物ですけどね。」

苦笑する彼の左耳には、サイコロのような形をしたクリスタルのイヤリングが付けられていた。
女物で片方しか付けてない…。僕の想像が正しければ…アルフへのプレゼントだったんたじゃないかな。それで片方を彼女が彼に渡した…と。
…ガルムとアルフ。なんだかんだで良い仲だったし…。まぁ、そんな野暮な事を聞くほど、僕も馬鹿じゃないから、黙って聞かないで置くさ。
さて…みんなのために…調べないとね!!




海鳴市 深夜

・ブレイズ・


≪こちら閃。Bポイントに反応を確認。数は…4、内1つは結界構成後、戦域を離脱。残りの3と付近に居たフェイト、アルフが交戦を開始した。至急、現場に急行せよ。≫
「こちらブレイズ、了解。オメガ、Bポイントで戦闘だ。行くぞ!!」
「ハッハー!!了解だぜ!!」
≪こっちは、残りの1を探し出してみる。…2人とも油断するなよ。≫

インカムから聞こえてくるのは、別ポイントで広域索敵を行っている閃の声。傍らで準備運動をしていたオメガを引き連れて、指定された交戦ポイントに急行する。

(まるで魚とりだな。索敵網を張り巡らし、高魔導師でおびき寄せる。…向こうも勘付いては居るのだろう。1つ離脱したとなると…戦力的にはこちらが上か…。)

だが…その考えは甘かった。結界の一部を破壊し、内部へと侵入をすると…フェイト達が善戦していたが…流石におされ気味か…!!

「はぁぁぁ!!」
「くぅ…!!」

剣を構えた騎士の一撃をバルディッシュで捌ききるが、小柄な彼女の身体が吹き飛ばされる。1人で無茶をして…!!
アルフは…使い魔らしき男と戦闘を繰り広げていて、フェイトのサポートには廻れないか…!!

「みっけたぞぉぉぉぉ!!!」
「ハッハー!!会いたかったぜビータぁぁぁぁ!!」
「うっせぇ!!それにあたしはヴィータだ!!ビじゃなくて、ヴィだ!」

…オメガは早速、上空から強襲してきたハンマー持ちの騎士と戦闘を開始したか。…何かしらの因縁でもあるのか?
っ!?まずい、思ったよりフェイトが消耗している。これは…下がらせるべきか。

「フェイト、下がれ!!1人で突っ走るな!!」
「まだ…やれる!!こいつらが…お兄ちゃんを…!!」
「意気込みやよし。だが…勢いだけで私は倒せん!!」
「きゃぁ!?…バルディッシュ!?」

騎士の火炎の纏った一撃がフェイトに襲い掛かる。あれは…カートリッジシステム…!?また厄介な物を…!!
なんとかバルディッシュで受けきったようだが…魔力、威力共に耐久度を超えたらしく、バルディッシュが両断され破壊された!!
だが…主であるフェイトには傷1つ付けなかったか…。

≪こちら帝。フェイト、一旦引け!≫
「閃、けど…」
≪バルディッシュがその状態じゃ、戦えないだろう。それにお前に万が一の事があったら、メビウスに会わす顔がない。ブレイズに任せて撤退しろ。≫
「り…了解。ブレイズ、お願い…。バルディッシュ、ごめんね…。」
「あぁ。とりあえず、1人で突っ走った罰として、反省文原稿用紙3枚分だからな。」

後方にフェイトを下がらせて、俺が騎士と向き合い、対峙する。

「こちらは管理局局員だ。全武装を解除し、こちらの指示に従ってもらいたい。…こちらとしては…穏便に済ませたい。」
「…無理だと言ったら…どうする?」
「こちらも…それ相応の手段を使うのみだ。」

スペシネフに魔力鎌を展開して、縦に一回転させる。威嚇と…牽制だ。これで従ってくれれば良いんだが…無理か。

「そうか。ならば、剣で語れ。どちらが正しいかは…戦いで決めよう。」
「…仕方がないか。…名前を聞いても良いか?」
「我が名は烈火の将、シグナムだ。お前の名は?」
「ブレイズ・トリスタン。階級は執務官補佐役だ。」
「ブレイズ…。導きの灯火か。良い名だ…。覚悟!!」
「そっちもいい名前だ。シグナム!!」

さて…お前の烈火と俺の灯火…どちらが強いか…勝負と行こうか…!!








「おぉぉぉりゃああ!!」
「うわっと!?お…お前、どんだけ無茶苦茶なんだよ!?」

一方のヴィータとオメガ。こちらは打撃戦を繰り広げていた。
ハンマーとパイルバンカー。どちらも、相手を打ち砕くには最適であり、当たれば一発で戦闘不能に陥らせる事が出来る。
文字の如く、真正面からのぶつかり合いを演じる2人。そのぶつかり合いで、上空に打ち上げられたヴィータ。が鉄球を構成し、オメガ目掛けて撃ち込むが……彼には効くわけが無い。
鉄球の大きさはサッカーボール程のものだ。…そしてオメガの得意なスポーツは…サッカーである。
つまり…

「ハッハー!!輝け、俺の金色の脚ぃぃぃぃ!!」
「蹴り返すなぁぁぁ!!本当になんなんだよ!!」
「拳拳拳肘肘拳肘脚脚脚頭ぁぁぁぁ!!!!」

鉄球を拳で脚で頭突きで破壊しながら、ヴィータ目掛けて猛進していくオメガ。流石のヴィータも若干、涙眼だ。
最初は、オメガもベルカ式の一種だと思っていた彼女だが…ここまで来ると最早、ベルカ式とかを超越している。…魔導師と言うのも怪しい。

「なら…これでどうだ!!」
「パチキ……トゲ突き鉄球は卑怯だぜ!!」
「うっさい!!頭突きで破壊してたお前が言うな!!」

流石のオメガもトゲ突き鉄球を、頭突きで破壊する程の石頭でも無いらしく、トンファーとパイルバンカーで破壊していくが…1回で破壊できる数にも限りがある。
徐々に、進んできた距離を後退していく。

「…ならば…これを使うんだぜ…!!」
「今度は何する気…」
「レイジング…ストォォォォォム!!!」
「なんだよそれ!?」

オメガが両腕を勢い良く振り下ろし、地面に打ち付けると彼の周囲に幾多もの魔力柱が現れ、鉄球を破壊していく。
あまりの滅茶苦茶差に、ヴィータも頭が痛くなってくる。全ての鉄球を破壊し終えると、魔力柱は消え、中央には満面の笑みのオメガが親指を立てていた。

「どうよ!!俺の超必殺、すげぇだろ!!」
「…通り越して頭が痛くなるっての。…ああもう!!次で決めてやる!!」
「おし、なら俺も次で決めてやるぜ…!!」
「アイゼン、カートリッジ…リロード!!」
「はぁぁぁぁぁ…色即是空…!!我が心は明鏡止水…!!」
「ラケーテンハンマー!!!」
「真・昇竜拳!!!!!」


魔力が装填され、上空から振り下ろされるヴィータのハンマーを、地上で迎え撃つオメガのパイルバンカー。
バチバチと音を立てて、魔力光が火花を散らし、両者の必死の顔を明るく照らす。

「こんのぉぉぉぉぉ!!!」
「おぉぉおぉぉおおぉ!!!!」

両者の魔力がぶつかり合い臨界を越えて、爆発が起こり、2人が吹き飛ばされる。
だが、アルフと戦っていたザフィーラが、吹き飛ばされたヴィータをキャッチして、そのまま転移し離脱していく。どうやら、引き際と悟ったらしい。

「く…。トリスタン、この勝負預けたぞ。」
「待て!!…転移されたか…。」

シグナムの転移を見届けると、ブレイズは静かにスペシネフを脇に抱えるようにして、持ち直した。所々に罅が入っているところを見ると…かなり苦戦したようだ。

「スペシネフ…すまない。大丈夫か?」
『イエス、マイロード。…多少は破損しましたが…活動には問題ありません。ですが…彼女達に対抗するには…』
「強化が必要か…。後で閃と主任にでも…掛け合ってみるか。」

ため息を付きながら、傍らを見れば眼を回したオメガをアルフが起こしているところだった。
傍目には怪我をしてるようには見えないので、ブレイズも安心してそちらに歩き出す。

「ほら、しっかりしなよ。…まったく、派手にやったもんだね。」
「ハッハ~……鉄球がグルグル廻ってるんだぜ~…。」
「頭でも打ったかな。…パイルバンカーの部分が粉々だな。」
『流石の俺も…全力でぶつかりゃ壊れるぞ。』
『頑丈さが取り柄のイジェクトなのですが……強化案を本当に出さなくてはいけませんね。マイロード。』
「そうだな…。こちらブレイズ、作戦は終了。これより帰還する。」

未だに眼を回しているオメガに肩を貸しながら、ブレイズとアルフはその場を後にした。
彼の頭の中では、これからの対策とデバイス強化案について…考えられていた。












スーパーマーケット、エグザウィル 


「…なんで、来たんでしょう。」

考えるように、頬に手を当ててため息をつくシャマル。昨夜は管理局との戦闘があり、シグナムとザフィーラは全力で惰眠を貪っていた。どうやら、思った以上に苦戦したようだ。
ヴィータははやてと一緒に【企業戦士ネクストマン 89話ライバル参上、その名もドミナント仮面】を見ているはずだろう。…本当に好きなのだと思う。
そんな事は置いといて、何故かシャマルは買い物がある訳でもないのに、スーパーのベンチに座ってボーっとしている。
理由は…なんとなく、あの青年に会えそうな気がしたからだ。

「会えるわけないのに…なんで期待してるんでしょうね、私は。」

困ったように小さく笑うシャマルだが…ふっと彼女の前に立つ人影。
もしやと思い顔を上げると…

「……………えぇぇえ!!??」

バケツのようなヘルメットを被った…怪しい人物が佇んでいた。







カフェ、レイヤード。


「いやぁ、すいませんってば。」
「本当に本当にびっくりしたんですからね!!」

バケツヘルムを傍らの椅子において、平謝りする青年--主任。(ちなみに、ヘルメットを文字にすると 興 である。)
どうやらシャマルを驚かせようとして、作ったみたいだが…驚かせすぎたようだ。先ほどから謝ってばかりいる。


「まぁまぁ。こうして会えたんですから…それにお茶も僕の奢りですし!!」
「それは…そうですけどぉ…」

にこやかに笑いながら、頼んだケーキと紅茶を差し出す主任。ここは彼が見つけたカフェであり、何故かマスターがバケツヘルムを気に入り、頭に被ったりして遊んでいた。
ちなみに主任はコーヒーのみである。

「まぁ、こんな美人さんとお茶が出来るなんて……人生勝ち組やっふぅぅぅぅ!!!フラグ1攻略でこれ!!」
「美人さんって言ってくれるのは嬉しいんですけど…最後ので台無しですよぉ…」

しかし、褒められるのは嬉しいからか、シャマルは顔を赤くしながら、ケーキと紅茶を食べていく。
主任ははしゃぎながらも、そんな彼女をニコニコと笑いながら眺めていた。

「そう言えば…名前、言ってませんでしたね。私はシャマルです。」
「シャマルさんですね。僕は…僕は…。」
「?」

ふっと、一緒にお茶なんてしてるのに、名前を知らないと思った彼女があわてて、自己紹介を始めた。
自己紹介といっても、名前程度の簡単なものだが、主任はどうしたものか…と一瞬、考えるそぶりを見せる。
しかし、小さく何か…諦めたような笑みを一瞬浮かべたが…すぐに元の笑顔に戻り、名前を口にした。

「僕はノヴァです。よろしくお願いしますね。シャマルさん。」
「ノヴァ…さん…?」
「うおぉおおぉ!!!なんか物凄く可愛らしく呼ばれたぜぇぇぇ!!!」
「そ…そんなに嬉しいんですか…?」
「シャマルたんのような美人に呼ばれるともうね!!」
「は…はぁ…?」

暴走モードに入るノヴァを見つめながら、やはりシャマル…この青年をしって居る気がして…ならないのだった。







あとがき
物の見事に…支離滅裂。
充電しないと…駄目ですね。そして…やばいです。
汁のデバイス名が思い浮かばない…。誰か良いのありませんか?もしビビっと来たのがあったら、使わせていただきます!!




[21516] As編 6話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/03/04 19:06
フレッシュリフォー社、デバイス開発室・



「あ~…しんどい…。」

首をぐるぐると回してこりをとる。さっきから、モニターと睨めっこばかりで肩が凝ったようだな。
モニターに出ているのは、ブレイズとオメガのデバイス、スペシネフとイジェクトの詳細データと、強化後の試作データだ。
先日の守護騎士達との戦闘で、破損したみたいだし…それに追加で強化しようって事で、俺がフレッシュリフォーの施設で改良を施してたところだ。
フェイトのバルディッシュはカートリッジを実装して、一足先にほんんの手に渡ってるはず。一部、エクスのデータを、解析して出来た慣性制御機構も搭載してるが…
試作段階だし、完璧に慣性を無視するほどの効果も無い。だが、フェイトの高機動戦闘の助けに少しはなる筈だ。

「ったく…主任は主任で、どっかに出掛けてるしよ…。人がレアスキル持ちだと分かった途端に後はよろしく!!じゃねぇっての…
しかもデートとか…大嘘をつくんじゃないっての…。」
「ふ~ん。あんたも苦労してんのね。」
「そうなんだよなぁ…………はい?」

俺の独り言に返ってきた声。おかしい…おかしいぞ。ここには俺しか居ないはず…。他の科学者達は隣の部屋に居るはずだ…。
室内を見渡しても…どこにも人影なんてありゃしない。

「どこ見てるのよ。ここよ、ここ。」
「誰だ!?」
「あ、そっか。声しか聞こえてないのね。…よっと。」
「…転移?いや…次元を切り裂いた?」
「ふぅ~。久々にこっちに来たけど…。リリン元気にしてるかなぁ?」

突然、窓際の空間が裂けて、1人の少女が姿を現した。…外見はリリンと瓜二つだが…髪型がツインテールだから…確実に違う。
…服装の見た目は…リリンのバリアジャケットと似てるな…。あいつのデバイスは…フェイ・イェンだったはず。それと酷似した格好って事は…こいつ、もしかして…

「…ファイユーブ…?」
「あら、あたしの名前知ってるなんて………ふ~ん、なかなかね。外から見てて、面白い人間だと思ったのよね。アイスドールも来ればよかったのになぁ。」
「…おいこら、机に座るなよ。」
「良いじゃないの別に。」

面白そうに俺を見つめるファイユーブ。まさかと思ったが…オリジナルかよ。しかも、サラリとアイスドールなんて単語だしやがった。
フェイ・イェンのオリジナル、ファイユーブ。プラジナー博士が作り上げた融合型VRデバイスだ。単体でも高性能を誇るし、ユニゾンすればかなりの能力を発揮できる。
しかし、ファイユーブ自身が融合する事を嫌い、更には強固な自我を持っていたため、、誰にも扱えなかった。正確には、適合者が限定されてるらしい。
完璧な適合率を持っていないと、確実に融合事故が起こるそうだ。まぁ…それはアイスドールにも言える事だそうだ。
フレッシュリフォー社でもトップシークレットの情報であり、俺もリリンが教えてくれるまで知らなかった。
確か…リリンの手引きで逃亡して、自由奔放に世界を旅してるとか…言ってたな。トリストタラム自身も認めてるから、良いんだろうけどな。

「ちょっとちょっと、あんたってさ、リリンのなんなの?」
「うぇ?…あ、いや、なんつうか。お兄様って呼ばれてるけど…なんなんだろうな。」
「あんたにも今一分かってないのね。…まぁ、あの娘は昔から天然だったものねぇ。見てて面白いけど、ハラハラしちゃうのよね。」
「…今更だけど…何しにきたんだよ…?」
「ん~?…決まってるじゃない。私達の可愛い妹が…どんな奴に興味を持ったか、見に来ただけ。」
「……さいですか…。」
「それで、あんた的にはどう考えてるのかしら?」

本当に、自由奔放なんだな…。天真爛漫に笑うファイユーブとは裏腹に俺の背中は、冷たい汗で洪水状態だっての。
いや…雰囲気的にはほんわかなんだよ。ただ…眼がすんげぇ恐いんだよな。俺を品定めする見たいな眼だよ。
俺はリリンのなんなの…か。ん~…思った事を素直に言ってみるか…?下手なこというと…消されそうだ。

「多分だけど、リリンは甘えれる相手が必要だったんだと…俺は思う。まだ7歳で天才なんて呼ばれてるし、父親とも中々会えない。」
「だから、身近に甘える相手として…あんたが選ばれたってこと?」
「誰だって1人は、寂しいもんだって。それに友達も欲しいって言ってしたし…ほら、俺も少しはデバイスの事がわかるから…リリンとは良く話せる。
まぁ、今のあいつには、沢山の友達も出来たけどな。それでも、リリンが甘えたいってのなら、俺はそうしてやりたいと思ってるよ。父親がわりって訳じゃないけど…兄かな。」
「ふ~ん。………まっ、合格かな?まだまだだけど…後はリリンが自分でなんとかしないとね♪」
「あ~…恥かしいっての。本人に聞かれたら、死ねるぞこれ…。」
「顔が真っ赤になっちゃったわね。っと、あの娘が来たみたいだから、あたしは帰らないと。」
「会ってってやらないのか?」
「残念だけど、アイスドールに抜け駆けは禁止よ、って言われちゃったからねぇ、残念残念。それじゃね。あ、あたしが来たって事は、言っちゃ駄目だからね?」
「一応聞くけど、なんでだ?」
「ファイちゃんに会いたかった!!って泣かれると大変だもの。それじゃ、まったねぇ~。」

来た時と同じように空間が開き、手を振って消えていくファイユーブ。それを見届けると、俺は椅子に深く腰掛けて天井を見ながら、特大のため息をこぼす。
あ~…本当に恥かしいっての…。本人に聞かれてたら、告白に近いぞこれは…。ただまぁ…実際にそうだと俺は思っている。
コンコンと軽いノックの音が聞こえてすぐに、部屋の扉が開く。

「お兄様、クッキーが出来ましたので、一緒に食べませんか?…お兄様?」
「あ、や…なんでもない。クッキーか…食べますかね。」

銀色のトレイの上からは、正に出来立てのクッキーがいい匂いを放っていた。なのはに教わってお菓子作りを始めてから、めきめきと上達してるからな。
リリン様のクッキーがあれば48時間戦える、と科学者連中が言ってたな。…一瞬、向こうの研究室で狂喜乱舞してる奴らが見えたから…振舞ったんだろうな。

「良かった…。紅茶も用意いたしましたので…ご一緒しましょう♪」
「そっか。机の上はごちゃごちゃだから…ソファのほうが良いな。」
「はい。」

笑顔で紅茶の準備を始めるリリンをなんとなく眺めながら、モニターを閉じて、軽く背伸びをする。
長時間座ってたからか、背骨からポキポキって音が聞こえるな。あ~…ちょっとすっきり。

「ふふ、お兄様の白衣姿、なんだか新鮮ですわ。」
「そうか?主任に着てみろって言われてからは、着てたけどな。…お、チョコチップか。」
「はい。疲れた時には甘いものが一番ですので。…美味しいですか?」
「あぁ。うまいうまい。」
「まぁ、それは良かったですわ♪」

花が咲いたように笑顔で喜ぶリリン。本当に…可愛いなちくしょう…。
まぁ、実際、クッキーはうまいし、紅茶もばっちりだ。正に才色兼備って奴だなうん。
…ところでなんで、リリンは隣に座って紅茶を飲みながら、さっきからこっちの様子をチラチラと伺ってくるんだ…?
あれ、これは…確かどっかで見たことある光景だな…。どこだっけ…。

メビウス君!!クッキーどうかな?
うん、凄く美味しいよ。何時もありがとうね。
えへへ~♪

……あぁ、メビウスとなのはの組み合わせで、よくやってたな。褒めて頭を撫でてやってたっけ。
確か…アースラでも時々やってて、リリンも見てたな。……撫でて欲しいってか…?

「…リリン。本当にありがとうな。」
「あ…ふふ。いいえ、どういたしまして。閃お兄様♪」

優しく頭を撫でてあげれば、嬉しそうに猫みたいに擦り寄ってくるリリン。…ったく、2人して顔を赤くしてれば世話ないな。
まぁ…ファイユーブにも言ったし…せめて俺が甘える事の出来る人って事で…良いか。





・ユーノ・

「ガルムとメビウスの付き合いって、結構長いの?」
「我とメビウス様のですか。そう…ですね、助けていただいたのは…あのお方が4歳の時でしたか…。」

休憩時間ということで、書庫内部の机でお茶を飲む僕達。そんな中、なんとなく僕は、ガルムとメビウスの出会いが気になった。
本当になんとなく、興味本位って所かな。

「あ、なんか気になるわね。」
「何故、お前らも気にするんだ…?」
「なんとなく?それに、あんたも唯の使い魔って訳じゃないんでしょ?昔になにかあったんじゃないの?」
「そうそう。私達よりも長生きしてるのよね?それに…雰囲気が違うもの。」
「…リーゼ達って…結構長生きしてるんだ。……」
「そこのフェレット。おばさんとか言ったら、怒るわよ?」

ロッテの鋭い視線を受けながら、僕は視線を逸らす。……命は惜しいからね。
当のガルムは口元に手を当てて、何か思い出すような仕草をしていた。
アリアやロッテも気になるらしく、尻尾をユラユラと動かして、話し出すのを待ってるみたいだし…僕もやっぱり気になる。
…この2人はガルムに何かしらの興味があるらしく、良く話しかけてはいるみたいだけど…なんなんだろうね。
紅茶のカップを机に置くと、ガルムは徐に…静かに話し始めた。

…我は昔、とある世界の森で暮らしていた。深い深い森で、多くの動物達も平和に暮らしていた。
勿論、近隣には人間達も居たが、森の奥地…我らの領域には立ち入らなかった。我らとて、人間の領域を侵したりはせずに、それぞれ気にせずに暮らしていたよ。
しかし、愚かな人間は必ず居るものだ。貴族と言える者達だったかな…戯れに、森の動物達を銃で狩り始めたのだ。
食べる為ならば、仕方が無いと思う。食物連鎖のサイクルの中に居るのだからな。だが…奴らは、遊びで命を刈り取り始めたのだ。
流石にこれは許される行為ではない。銃に勝てるわけも無く、逃げ惑うしかなかった。だが…我は立ち向かった。
人間をおびき寄せ、分断し…1人ずつ噛み殺していったんだ。あの時は、この行為が森を守ると信じていたが…馬鹿だったな。
気が付けば、魔犬やら狂犬やら…妙な名前を付けられ、賞金までかけられた。大規模な狩りが行われ…暮らしていた森も追われた。
ただ…自分や仲間達を守るための行動だったのに…奴らにとっては人を襲った化け物…としか思われなかったようだ。
我も身体に幾多もの銃弾を浴び…息も絶え絶えだった。そこに人の気配を感じ、あぁ…ここで死ぬのか…と思ったよ。
だが…意識が戻れば…我は包帯を巻かれ、毛布をかぶせられていた。その上から…1人の少年が我の身体を優しく撫でていたのだ。そう…メビウス様だ。
どうやら、家族で旅行中に瀕死の我を見つけて…助けていただいたようだ。その小さな手で…包帯を代え、食事の世話をして必死に看病してくれた。
初めて…だったな。人にこれ程までに優しく…大事にされたのは。

「魔犬と呼ばれた我に…ガルムと言う名を与えてくれた。こんな我と、契約を交わしてくれた。命を助けて頂いただけでなく、名を、家を、役割を…与えてくれた。
…故に我は…メビウス様に絶対の忠誠を誓っている。そして、名を呼ばれぬ悲しみを…我は知っている。だから…この名前には誇りを持っているのだ。
本当にあの方には…感謝しても仕切れない。」

そこまで話すと、ガルムは切れ長の眼を伏せて…小さく笑う。男の僕から見ても、その仕草はカッコいい。
けど、彼にもこんな過去があったんだ。…重い過去で…悲しい過去。けど、ガルムは乗り越えて強くなったんだ。

「「……」」
「…アリア、ロッテ…?さっきからボーとして…どうしたの?」
「はっ!に…にゃんでもないわよ!?」
「…かんでるよ。」

リーゼ達が顔を赤くしてにゃーにゃー言ってる。その視線は静かに紅茶を飲むガルムに注がれてるけど…まさか…。
アルフ、君の知らないところで…彼も中々、やるみたいだよ。
これからどうなるか…ちょっと、面白い事になるかもと期待する僕は…駄目なのかな?










カフェ、レイヤード。

「お待たせしましたシャマルすぅわん!!」
「あの…もう少し普通に登場しませんか…?」
「馬鹿な…これが普通じゃないですと!?」
「回転しながら扉を開けて…こっちに来るのは普通じゃないですよぉ…。」

顔を真っ赤にしながら、シャマルは店内を見渡す。幸い店内には客がおらず、バケツヘルムを被った筋骨粒々なマスターが、カップを拭いているだけだった。
そんなシャマルを物凄い笑顔で見つめながら、ノヴァは向かいの椅子に座り、指をパチンとならす。

「へい、マスター、何時もの。」
「ご注文は?」
「…何時もので。」
「ご注文は?」
「いつ「ご注文は?」……アライアンスコーヒーで。」
「もぅ…何時ものって言いますけど…きまったメニューじゃないでないしょう…?」

流石のノヴァも、筋骨粒々でバケツヘルム装備のマスターの圧力にはかなわないらしく、大人しくコーヒーを頼む。
シャマルも小さく笑いながら、先に頼んでいたケーキと紅茶を楽しんでいた。
最近では2人はこうしてカフェで待ち合わせをし、何処かに出掛けるという事をするようになっていた。所謂デート…というものだ。
もっとも、行き先がスーパーだったり本屋だったりと、少しロマンが欠けるところばかりだが…シャマルにとってはとても有意義な時間となっている。
何故か知らないがこの風変わり…と言うか変な青年と一緒に居ると、安心できるのだ。

「おかしいな…。常連になると何時もので通じると…本に書いてあったのに…。」
「常連って…そんなに来てるんですか?」
「いえ、まだ5回程度です。」
「それは常連って言いませんよ。…それに5回って…私と来た回数ですよね…?」
「もちのろんですよ!!シャマルさん以外はアウト・オブ・眼中です!!」
「アウト・オブ・眼中…?」
「…眼中に無いってことです。忘れてくださいすいません。」

テーブルに額を擦り付けるようにして懇願するノヴァと小さく溜め息をついて笑うシャマル。
この青年は確かに変で…何故か自分への好意をまったく隠そうともしない。ただ…その好意を無理やり押し付けない辺り…紳士なのかもしれない。

(はやてちゃんが言ってましたね…。変態だけど紳士のように振舞う人のを事を…)
「変態紳士…?」
「シャ…シャマルさん。何処でそんな言葉を…。」
「はっ!ちちち違います!!うっかり出ちゃっただけです!!」
「確かに僕は変態ですか…いや、変態という名の紳士…むしろ、紳士という名の変態。と言うか、もっと罵ってシャマルさん!!」
「ででですから違いますってば~!!」

慌てて否定するシャマルだが、遅かったようだ。既にノヴァは暴走状態に陥り、身体をクネクネさせ悶えている。
そんな2人を眺めながら、バケツヘルムのマスターは賑やかなカップルだと…オマケのケーキを用意して、コーヒーを注いでいた。







??????

「これが新作のデバイスか。」
「はい。わが社のオリジナルにして第1号です。」
「性能的には…ふん、VRデバイスにも劣らないようだな。それじゃ、使わせてもらおうか。」
「おぉ、かのゴッテンシュタイナーの御曹司様に使っていただけとは…光栄です。これからも我が、【レサスグループ】をよろしくお願いいたします。」
「ふん。貴様次第だ。ディエゴ・ギャスパー・ナバロ。まぁ…精々、気張る事だな。」









その日、なのはは不思議な夢を見た。

「ここは…どこ?」

広く白い空間に自分1人だけが立っている。不思議な事に、なのははこれが夢であり、ここは何故かとても安心する事が出来る空間だと気が付いていた。
トコトコと当ても無く歩く彼女の前に、光で出来た不思議な人型が現れた。

「高町なのは…良く来ましたね。」
「ひゃ…貴方は…誰?なんで私の名前をしってるの?」
「私は、アイスドール。貴女を、高町なのはを見守っている者です。」
「どうして…私を見守ってるの?」

光で出来た人型、アイスドールの声は何処までも優しく…なのはの心に響いてきた。

「貴女がとても綺麗で…強い心を持っているから。貴女が誰よりも優しく、みんなの幸せを願っているのを私は知っています。」
「…私は強くなんて…ないよ。」
「どうして…そう思うのですか?」
「…私ね、メビウス君が居ないと、何も出来ないの。恐くて怖くて…1人はいや…。」
「1人は嫌なら…何故、友達を頼らないのですか?フェイト・T・ランスロットやオメガ・ガウェイン。貴女には沢山の友達がいるでしょう?」
「みんな…私の大切な友達だよ。けど…けど、メビウス君は…違うの…!!どんな時も私を守ってくれた…。どんな時も私の味方をしてくれた…!!
どんなに失敗しても…どんなに迷惑をかけても笑って守ってくれた…。何時も…助けてくれた。」

泣きながら、自分の気持ちを吐き出すなのは。メビウスと言う少年に…彼女はここまで依存していたのだ。
彼が側に居ないと言う恐怖心が…不安感が幼いなのはの心を蝕んでいく。

「…なのは。貴女は…どうしたいのですか?」
「どう…したい…?」
「考えてください。貴女は…彼に何を求めるのか。貴女は…メビウス・ランスロットにとって…どんな人間になりたいのか。」


優しく優しくアイスドールは、なのはの頭を撫でるようにして顔を見つめる。何故かなのはは、光で出来た人型で顔も分からないのに…微笑を浮かべている気がしたのだ。

「私はアイスドール。貴女を、高町なのはを見守り…助ける者。覚えていてください。そして次は…私の名前を呼んでください。」
「あ…待って!!」
「ふふ、話したいけど…時間が迫っています。また…会いましょう、私の可愛い……」

最後の言葉は聞き取れず…アイスドールの姿が消えさり、徐々に白い空間もぼやけてきた。

「……朝…?やっぱり…夢?」

眼を開ければ、自分のベッドの上。起き上がり…窓を開けると、メビウスが大好きな青空。

「…私がどうしたくて…メビウス君の何になりたいのか…。」

アイスドールに言われた事を呟き…机の上においてある写真立てをソッと持ち上げる。
そこには、恥かしそうに俯くなのはの手を握りながら嬉しそうに笑うメビウスの姿が映っていた。また泣きそうになるのをこらえて、なのははその写真を優しく抱きしめる。

「メビウス君は…お願い。私にほんの少しで良いから…勇気をちょうだい。」

願うように…祈るように呟くなのはの瞳は…空虚なものではなく、確かに…小さくだが強い光が宿り始めていた。




あとがき

さて…今回は一部、VRネタで頑張りました。
なのははどうなるか……。そして、閃、お前もさり気なくラブラブしてんじゃないよ…!!





[21516] As編 7話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/03/17 21:43

フレッシュリフォー、デバイス開発室、主任部屋。


「後は…このチップを埋め込んで…。」

薄暗い部屋の中、ノヴァはモニターを見ながら、何かを作成していた。その隣には自動製作装置が接続されている。
資料が乱雑に放置されている机の上に、1つだけ綺麗にまとめられた資料と、プレゼント用の箱が置かれていた。

「……データ解析も終わっているし、カモフラージュも完璧。後は…正確に作動するかが問題か。」

背伸びをすると、使い古された椅子がギシと音を立てて軋む。
軽く頭を振り、無造作に伸びている髪をかき上げると、再びキーボードを叩き、モニターの操作を再会する。

「……僕の行いが…吉と出るか、大凶と出るか。…ばれたら確実にやばいよねぇ。」

自嘲的な笑みを浮かべるながら、彼は1人の少年を思い出す。自分と同じ転生者と言う不可思議な体験をしている人物、帝閃。
ノヴァにとって年齢が離れているが、大切な友人でもある。だが…今、自分がやっている事を考えれば…友人と言う関係は壊れてしまうだろう。

「それでも…僕は止まらない、止まれない。僕の9年間は…この為だけにあったんだ。」

机の一番上の引き出しの鍵を開け、2枚の写真を取り出し眺める。1枚はシャマルとノヴァが一緒に写っている最近の写真。彼にとって一番の宝物である。
もう1枚は色が抜け、古い写真という事が分かるが…2人の人物が写っているが、顔が塗りつぶされ誰かも判別が出来なくなっている。
それを交互に眺めると、ノヴァは再び自嘲的な笑みを浮かべ、右手で顔を覆う。

「父さん、貴方に教え込まれた知識…ここの為だけに覚えてきたよ。たとえ…貴方が望まない結果だろうが…僕には関係ない。
過去の貴方達に反旗を翻そうが、僕にはどうでも良い事だ。今度こそ…絶対にシャマルさんを、助けて見せる。」

モニターに向き直ろうとした主任の背後で、扉が開く音がした。すぐに写真をしまって振り向けば、閃が呆れたような顔をして立っていた。

「薄暗っ!!電気くらいつけろよ。視力悪くするぞ?」
「その時はキサラギ病院で手術を受けるから、大丈夫だよ。閃君こそ…今日は来ないはずじゃ…?」
「そのつもりだったんだけど…オメガのデバイスの最終調整をしたくてな。…邪魔なら、別な所でやるけど?」
「あ…僕も今日は終わりにするつもりだったから、大丈夫。」

閃に焦りを感づかれないようにして、モニターの電源を落とし、装置も全て取り外す。
そんなノヴァの行動を訝しげにしながらも、閃はソファに座ると鞄から資料を取り出して、思考の海に潜り始める。

「明日は、少し予定があるから、ここには居ないからね。」
「あいさ。…最近、予定があるな。なんかやってるのか?」
「ふふふ、僕にだって10や20の秘密はあるもんだよ。」
「ありすぎだろ。…今日はあがるのか?」
「もちのろん。荷物も持ったし…それじゃね。」
「お疲れ~。……さてと、レーベン。」
『はいはい。…これってプライバシーの侵害じゃないんですか?』
「お前だって気になるだろ?…さっき主任が持ってたのは、小型の製作装置だ。しかも、俺に隠れてなんかやってるみたいだし…。
疑いたくないが…まさかな。」

ノヴァが足早に立ち去り、扉が閉まるのを確認すると、閃はおもむろにレーベンをノヴァが使っていたモニターに接続すると、操作を始めた。
本当なら、こんな事はしたくない。だが…以前に広域索敵を行っていたときに…彼と…守護騎士の反応が近くにあるのを見つけてしまったのだ。

「…主任らしくないな。セキリュティーが甘すぎる。…簡単にデータが見れるけど…トラップか?」
『いえ、それらしいのはまったく全然これっぽっちも、見当たらないですね。…あの人がこんな初歩的ミスしますかねぇ?』
「とりあえず…使用時間がさっきまでのデータを見てみるか…。」

ファイルを開くと、何かの設計図とプログラムのデータが出てきた。レーベンにコピーをさせながら、閃は設計図とテキストを読み進めていく。

「転移妨害プログラムに…再構築プログラム?…なんだこりゃ?」
『今一、使い道が見当たらないですね。とりあえず、コピーしておきますか。』
「頼む。…設計図の方は、髪飾り?…新型のデバイス…って訳でもないか。」

何時ものノヴァらしくない行動を疑問に思いながら、データの解析を進めていくが…どれも何に使うのかが、今一、理解できない。

「こうなると…明日にでも尾行っするっきゃないか?」
『とりあえず、ダンボールとレーションを用意しなくては!!』
「いや…スネークするつもりはないぞ?」
『ストーキングならぬスネーキングですね!!ぷぷ…!!これは笑える!!』
「全然、笑えねぇ…。…主任、頼むから…妙な事をしないでくれよ。」





アクセサリーショップ、アヴァロン

「ありがとうございました。」

会計が終わった商品を袋に詰めて、出て行くお客をカウンターで見送るアルフ。
ここはスカーフェイス達が営んでいるアクセサリーショップ、アヴァロン。
そこで彼女は店員として手伝いをしているのだ。アクセサリーだけでなく、小物やガラス製品なども扱っている為、女性や子供に人気の店となっている。
主であるフェイトは、闇の書及び守護騎士捜索に参加したかったようだが、クロノやリンディ、そしてサイファー達が「まだ小学生なんだから、勉強しなさい」との説得を
素直に聞いて、久々に学校に行き、勉強しているはずだ。
アルフも休養という事なのだが家に居ても暇だから、こうしてアヴァロンの手伝いをしている。
店番をしながらカウンターの後ろに、設置されている耐熱ガラスで出来た窓を眺め、また視線を店内に戻す。

「はぁ……。本当ならあいつが向こうに、居るはずなんだけどね…。」

頬杖を付きながら、恋する乙女のようにため息をつく。いや、実際に恋する乙女なのだが…。
窓の向こうはガラス工房になっており、向こうの作業風景を眺めれる様な作りになっている。
何時もはガルムが炉に火を居れ、作業しているのを店番をしながら眺めているのだが…彼が無限書庫に行ってからは、その光景を見ていない。
スカーフェイスは別の工房でアクセサリーを作成しているし、サイファーはメビウスの見舞いに行っているので、店内には彼女1人だけ。
アルフは左耳に付けているサイコロ型のイヤリングに軽く触れ、再びため息をこぼす。

「…ずるいじゃないか…。あたしだけ…置いてけぼりだよ。」

イヤリングを指先で弄りながら、貰ったときの事を思い出して、何回目かのため息をつく。



ランスロット家、ガルムの部屋。

「無限書庫…?」
「あぁ、我等が戦う相手、闇の書の関する事を調べるには最適の場所だ。」

子犬形態のアルフを膝に乗せ、夜空を眺めているガルム。人間形態で甘えれば良いのだろうが、やはり彼女自身、甘えるのが少し恥かしいようだ。
ガルム本人はまったく気にせずに、優しく頭を撫でてあげている。

「あたしも行った方が良いのかな?」
「いや…アルフはフェイト様と…なのは様を護ってあげてくれ。」
「なのはも?…どうしてだい?」
「本来はメビウス様が護っていらしたが…なのは様の心は弱く幼い。恐らくは当分は戦えまい…頼む。」
「仕方が無いね。あんたの頼みだ、2人ともあたしが護って見せるさ。」
「世話をかけるな。…せめてもの礼だが…」
「なんだいこれ?…イヤリング?」

ガルムは傍らにおいてあった紙袋を開け、中にあったイヤリングを取り出すと、アルフの目の前に差し出す。
クリスタルで出来た四角いダイス型のイヤリング。シンプルだが、スッキリとしたデザインで彼の手作りだとすぐに分かる。

「お守り代わり…という事にでもしておいてくれ。…プレゼントだ。」
「い…良いのかい?」
「あぁ。…お前がどんなのが好きなのか、皆目検討がつかなくてな…こんな形だが、気に入ってくれたか?」
「え…あ~…。が…ガルムにしては上出来じゃないか?うん。上出来だよ。」

膝の上から降りて、人間形態に戻ると、手渡されたイヤリングを付けて、照れたようにする彼女の顔は、真っ赤に染まっている。
誰しも、好意を抱いている人からのプレゼントは嬉しいものだ。
そんな彼女を小さく笑いながら、ガルムも満足げに見ていたが、何故か左耳にしかイヤリングを付けていないのに気が付いた。

「両方に付けないのか?」
「こっちは…よっと、動かないでおくれよ。」
「お…おい。…我に付けてどうする…。」
「お守りなんだろ?なら、あんたも守ってもらいなよ。」

ガルムの右耳に手を伸ばし、もう片方のイヤリングを付けると、アルフも満足げに笑みを浮かべる。
以前にフェイトが、メビウスとお揃いのリボンを付けて喜んでいるのを思い出して、自分も真似てみたのだ。
確かに、お揃いと言うのは恥かしいが…嬉しさがそれ以上にある。なんとなくアルフは、フェイトやなのはの気持ちが理解できた気がした。


「やれやれ…お前が良いなら構わないが…女物なんだぞ?」
「大丈夫大丈夫。ガルムも充分、女っぽい顔してるから、…よっと…」
「まったく……。絶対に無理は…するなよ。」

今度は人間の状態でガルムの膝の上に座り、ソッと胸に寄りかかり、夜空を見上げるアルフ。
どうやら…イヤリングのお陰で、ほんの少し素直になれたようだ。




・無限書庫・

「……さっきからなんだ?」
「な、なんでもないわよ!?」
「見てないからね!?気のせい気のせい!!」
「そうか…。…ここは我1人で調べるから、別な本棚を…」
「こっちは古い文献が多いから、3人のほうが捗るのよ!!」
「…意味が分からんが…。」

検索魔法と目視で、文献を解読していくガルムの両隣に陣取るアリアとロッテ。
訳も分からずに流されるガルムを遠くから眺めて、ユーノは呆れたように苦笑しながら眺める。
彼の過去を聞いてから、アリアとロッテはアタックを駆け始めたようだ。
なんとなく…ふっと彼に想いを寄せている女性の事を思い出し…再び苦笑する。

「アルフ、もしかすると…ライバルが増えるかもよ。」





「くしゅ!!……うぅ、暖房強くしようか。…はぁ、速く帰ってこないかな。」


どうやら恋する乙女のため息と悩みは…まだまだ続きそうである。






・フェイト・

下校路




「そっか。ブレイズ君達が…」
「うん。学校に行きなさいって。」
「にゃはは。しっかり勉強しないと駄目だモンね。」

並んで歩くなのはの顔は、前に比べるとずっと明るい。勿論、お兄ちゃんが居た時まで行かないけど…それでも良くなってる。
学校が終わって、私となのはは手を繋ぎながら、一緒に下校路を歩いている。
…本当はお兄ちゃんが真ん中に居て、3人で手を繋ぐはずなんだけど…今は我慢しなきゃ。

「…なのはは…まだ戦えないの…?」
「う、うん。…その…無理かな…。ごめんね。」
「あ、良いの。…ただ、一緒に戦えたら心強かった…って思っただけだから。」


悲しそうな顔をするなのはを見て…チクっと…胸が痛くなる。これは…なんの痛みだろう…?
これはなのはを心配する痛み…?それとも…。

「あ、フェイトちゃん!!」
「はやて…?」

名前を呼ばれた方を見てみると、はやてが笑顔で手を振っていた。
なのはが誰?って聞いてきたから、説明をしながらトコトコと近くまで歩いていく。買い物袋を持ってるから…買い物の帰りなのかな?

「はやて、久しぶり。」
「フェイトちゃん、久しぶりやねぇ。っと、私は八神はやてって言うんよ。よろしく。」
「私は高町なのは。よろしくね、はやてちゃん。」
「なのはちゃんね。2人とも下校途中?」
「うん、はやては買い物の帰りなんだ?」
「そうなんよ。今日は沢山買ったからなぁ。」
「わ…沢山買ったんだね。1人で大丈夫なの?」
「慣れてるから大丈夫なんよ。まぁ…ほんの少し一緒に来てもらえばよかった、なんて思ったりもしたけど。」

はやては大きな袋を車椅子の足元に乗せて、カラカラと笑う。親戚の人が心配してないのかな…?

「あれ?メビウス君はどうしたん?」
「その…お兄ちゃんは…。」
≪なのは、どうしよう。説明したほうが…良いのかな?≫
≪うん、魔法の事とか言わないで説明した方が良いと思うの。それに、私達、きっとうまく嘘付けないと思うよ。≫

…私も上手に誤魔化す嘘をつける自身は無いから…。お兄ちゃんにも「フェイトは嘘が下手だね。」ってよく言われた。
料理の練習中に指を切ったときとか…すぐにばれちゃったから…、やっぱり私は下手なんだ。
お兄ちゃんが入院してる事を説明すると、はやての顔から笑顔が消えて、すごく心配そうになる。

「入院って…メビウス君、大丈夫なんか!?」
「う…うん。遠くの病院だから、お見舞いもいけないけど、大丈夫って言ってた。」
「そっかぁ。…それなら良いんやけど…心配やね。…2人も心配で元気なかったんやね。」
「分かるの?」
「あはは、分かるって。なのはちゃんも心配で仕方がないんやろ?…私も同じ気持ちやもん。」

やっぱりはやても…お兄ちゃんの事が心配なんだ。きっと友達として心配してるのとは…ほんの少し違う。
なのはも気が付いてると思うけど…はやても私達と同じ気持ちなんだ。

「ん~…そや!!千羽鶴を作るんよ!!」
「千羽鶴?」
「そうそう。メビウス君が早く良くなります様にって、3人で想いを籠めて千羽鶴を作れば、メビウス君もきっと良くなると思う!!」

想いを籠めて…。そっか、心配してるだけじゃ…だけだよね。奇跡でも何でもいいから…お兄ちゃんが元気になってくれるなら…私は何でもしたい。
なのはも同じ気持ちなのか…2人で顔を見合わせて頷いて…作る、って…言っていた。

「なら、決まりやね。大変やけど…メビウス君の為やもん、頑張ろう!!」
「うん。…メビウス君の為…だもんね。」

3人で文房具屋で折り紙を買うと、連絡先を交換して、それぞれの家で作って、持ち寄る事になった。
お兄ちゃん…きっと…想いは、届くよね?





カフェ、レイヤード。

「と言う訳で…お待たせしましたシャマルすぅぅぅぅわん!!!!」
「ふ…普通にさんで良いですよぉ。」

シャマルが何時もの如く、カフェで紅茶を飲みながら待っていると、回転しながらドアを開けて登場するノヴァ。
本来なら、カランカランと優雅な音を奏でるドアベルも、今回ばかりはドガンガランと台無しである。
バケツヘルム装着のマスターの、厳しい視線を冷や汗たらしながらスルーして、ノヴァはシャマルの向かいに座る。

「いやはや、お待たせしましたね。」
「いえ、良いんですよ。けど…こんな時間にどうしたんですか?」

時刻は夕方であり、これから何処かに出掛ける時間も少ない。それなのに何故か、ノヴァはシャマルを何時ものカフェへと呼び出していた。

「実は、渡したい物があるのです…よ!!」
「渡したい物ですか…?私に?」
「はい。こう見えても僕は手先が器用でして…こんな物を作ってみたんですよ。」
「は…はぁ…?」

口元に笑みを浮かべ、逆行メガネをクイクイとするノヴァに若干、怯えながらもシャマルは差し出された箱を受け取る。
しかし、箱を開けると、シャマルの口から「うわぁ…」と小さく言葉が漏れる。入っていたのは、金細工が施され、中央には翠色の宝石が輝いている髪飾り。

「こ…これ、どうしたんですか…?」
「さっきも言った通り、僕が作ったんですよ。…シャマルさんへのプレゼントですねぇ。」
「こんな高価なもの、貰えませんよ!?」
「いやいや、貰ってくれないと僕が困るんですよ。シャマルさんの為に作ったんですし…ささやかなお礼です。」
「ノヴァ…さん。」

真摯な眼でシャマルを見つめるノヴァ。何時ものふざけた顔ではなく、彼にしてはとても真面目な表情。
シャマルも戸惑ったが、にっこりと笑うと、髪飾りを受け取り、自分の髪へと付けていく。

「ど…どうですか…?」
「似合ってますよ!!スバラシイ!!スバラシイィィィィィ!!!」
「も…もぅ、恥かしいじゃないですか…。ノヴァさん、ありがとうございます。」


目の前で歓喜の奇声を上げて褒めるノヴァと、嬉しいやら恥かしいやらで顔を赤くするシャマル。
それから2人はここで軽くお茶を飲んだ後、別れる事にした。

「それじゃ、お気をつけて。」
「はい。ノヴァさんも。あの…本当にありがとうございました。」
「いえいえ、シャマルさんの為なら例え火の中水の中。…また会いましょう~。」

優雅に一礼するとノヴァの後姿が人込みに消えるまで眺め続けるシャマルだった。









「…これで最終段階だ。…うまくいってくれよ。」
「何が…最終段階なんだ…?」
「っ!?」

人通りの無い路地まで来たノヴァの口からこぼれる言葉。本当なら…消える筈の言葉を拾い、路地の入り口に佇む1人の少年、帝 閃。
先日から言っていた通り、ノヴァの行動を監視していたのだ。手にはデバイスが展開され、2人を囲むようにして簡易結界が展開されている。

「や…やぁ、閃君、奇遇だね。」
「奇遇だね…じゃ…ねぇだろがぁぁぁぁ!!!!」
「うぐ…!?」

閃はノヴァをバインドで拘束すると、地面に投げつける。その眼には戸惑い、怒り…そして悲しみが宿っている。

「主任…なんで、シャマルと一緒に居たんだよ…。」
「偶然って…言っても信じてくれないよね?」
「当たり前だ…!!真面目に…話してくれよ…。」

今すぐにでも泣き出しそうな表情で、倒れているノヴァの側に座り込み、彼を助け起こす。
投げ飛ばしたとはいえ、手加減しているから、かすり傷1つも付いていない。

「なんであんなに…親しそうなんだよ…。なんで髪飾りなんか…なんなんだよ…。」
「………」
「答えてくれ…主任。あんたの目的はなんなんだ?…あんたは…俺達の味方なのか?なぁ…頼むから答えてくれよ…。」

無言の主任に、縋る様に頼み込む閃の眼から涙が零れていた。転生者でもある彼でも…メビウスの消失でかなり精神的に辛いのだ。
そして…味方だと思っていた主任のこの行動。それが彼の最後の心の防波堤に罅を入れるのは簡単な事だった。

『主任、閃と貴方は…友人なんですよね。なら、話しても良いんじゃないのですか?…貴方の事です、何かしらの考えがあるんでしょう?』
「……さて、どこから話したものか…ね。」
「話してくれるのか…?」
「ここまで来たら話すしかないよねぇ。前に僕には、デバイス関連については下地があるって…話したよね?」
「あぁ。確かに…聞いたな。」
「僕の実家は…ベルカの有力貴族だったんだ。そこの当主の息子として僕は転生した。
僕の父さんはね…ベルカ史上、最高の魔導師と呼ばれた人なんだ。魔導技術の開発や…デバイスの開発に関しても天才的な…ね。」
「………」

ノヴァは路地の壁に寄りかかると、懐から古ぼけた写真を取り出し、眺めると再び話を続けた。

「魔核弾頭V2。あるロストロギアをコアにする大量破壊兵器。そのコアとなっていたロストロギアとは…闇の書の事なんだ。
…その開発に…僕の父さんは関わっていたんだ。いや…むしろ父さんが…推し進めていたね。」
「お…おい、待てよ…。ベルカの有力貴族…天才魔導師、そしてV2の開発…。まさか…お前の父さんって…!?」







「…僕の名前はノヴァ…ノヴァ・カプチェンコ。ベルカ史上最大最高の魔導師、アントン・カプチェンコの…実の息子さ。」










あとがき

あかされた主任の過去。さてさて…Asも佳境に入ってきたかもですね。
東北在住の作者ですが…内陸に住んでいますので…別段、大きな被害も無くすみました。怪我もなく無事だという事をご報告いたします。
本当に沿岸に比べたら、圧倒的に作者は恵まれています。暖房があり、暖かい食事が取れるだけでも贅沢ですし、沿岸に居た友人の無事も確認できました。
読者様方も…ご無事でしょうか?
ダンケ様、34様、ユーロ様、Corporal様、真っ黒歴史様、天船様、クラフト様方。他の読者様の無事を願い…あとがきとさせていただきます。




[21516] 【一発ネタ?】ゼロと呼ばれた少女。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/03/24 21:45
これは、作者の妄想&生き抜きで生まれた作品です。
続くかもしれませんし、読みきりかもしれません。それでも大丈夫だ、問題ない、と言う方はどうぞ…















旧ウスティオ領、現ベルカ領。

「はぁ…はぁ…!!」

森の中を走る1人の少女。靴は破れ、裸足で近い状態で走り続けたからか、痛々しい傷が幾多も刻まれている。
蒼く美しい髪や白い肌が泥で汚れても、少女は走り続けた。

「あ…!!」

木の根に躓く、前のめりに転んでしまう。足先に鈍い痛みが走り、見ると爪が割れ、血が滲んできていた。
ここで立ち止まり、休んでしまえたら…だが、そんな事が出来る状況ではない。

「どこに行った…。まだこの近くに居るはずだ、探せ!!」
「っ…!!」

自分が走ってきた方から聞こえてくる怒声。そう…少女は追われていたのだ。
つかまれば、何をされるか分かったものではない。震える足で立ち上がり、少女は走り出そうとするが、転んだ時に足をくじいたらしく、うまく走れない。

「居たぞ!!こっちだぁ!!」
「いや…!!」
「ぐ…この!!」

茂みから現れた男が少女を見つけ、捕まえようとするが、少女も必死に抵抗する。
伸ばされた手を振り払い、必死で逃げ始める。きっと男は仲間を呼んだだろう、自分が捕まるのも時間の問題だ。
しかし…それでも逃げたい、逃げなきゃいけない。それだけが少女の足を突き動かしていた。


「森が…」

視界が開けると…目の前は断崖絶壁の崖。後ろからは、数人の足音が聞こえてきて、逃げ場が無いかと周りを見渡すと…1人のフードを被った青年が崖の前に佇んでいた。
何故か分からないが…少女は咄嗟に青年に駆け寄ると…

「ん…?」
「た…助けてください!!」

そう叫んでいた。青年は訝しげながら、少女の後ろの方を見て表情を固くした。少女も振り向くと、数人の男達が森から抜けてきたところだった。
青年と少女を囲むようにして、男達は半円の形をとる。2人の後ろは断崖絶壁。逃げようが無い。

「手間を取らせてくれたな…。大人しく…付いてきてもらおうか。」
「いや…!!私に触らないでください…!!」

リーダー格の男が少女の腕を無理やり掴み、連れて行こうとする。抵抗しても華奢な少女と、鍛えられた大柄な男。どう足掻いても振りほどけるわけが無い。
もっと抵抗しようにも、ここまで逃げてきた少女のそんな体力は無く、どうにもならない。
ここまで…と少女が諦めようとした時に…青年が動いた。

「大の男どもが…こんな娘相手に必死になって、みっともないな。」
「ぐふ!?」
「あ…!!」

めんどくさそうにしながらも、少女の腕を掴んでいた男を殴り飛ばす青年。
少女は、涙を溜めた瞳で青年を見つめる。殴った拍子に青年のフードが取れ、素顔があらわになった。
精悍で…何かを悟っているような…そんな表情をしている青年。少女は…その顔に一瞬、眼を奪われた。

「隊長!?貴様…我らが何者か知らんのか!?」
「知らんな。…興味も無いし、知りたくもない。」
「我らは、栄えあるベルカ軍第84歩兵部隊だ。大人しく、その娘を渡せ!!」
「渡せと言われてもな。別に庇ったわけじゃないし…どうでも良いが…。お前ら、俺の事も一緒に消すつもりだろう?」
「それは貴様の態度次第だ。半殺し程度で抑えてやろう!!」
「やれやれ…。まぁ、暇つぶしになら…満足するか?」

起き上がった隊長格がデバイスを展開すると、周囲に居た男達もデバイスを青年に突きつける。
青年は、怠慢な動きで少女の自分の後ろに隠すと、何故か面倒そうに手を天に向け振り上げて…振り下ろした。

「へぇ~。お前ら、うちの隊長に手を出すなんて…良い度胸してんなぁ。」
「覚悟は出来てんだろうね?」
「騙して悪いが…仕事なんでな。」
「罠を仕掛けておいて、あっさり全滅とは…使えない奴らだな。」
「な…なに!?」


突如として、後方に現れた十数人の男女。既にデバイスとバリアジャケットを装着し、男達に襲い掛かる。
正規の軍として、訓練を受けていた男達。しかも、ベルカ軍となればかなりの強さを誇っているはずだ。
だが…そんな男達を軽々と倒していく男女達。気が付けば、隊長格だけが残っていた。

「貴様ら、何者だ!?管理局の魔導師か!!??」
「残念だが…違うな。…渡り鴉の名を冠する傭兵団と言うば…分かるか?」
「貴様らがあの…レ…レイヴンズ・ネスト…!?」
「正解だ。…散れ…!!」

青年が、柄のみのデバイスを抜き放つと、巨大な魔力刃が生まれ、隊長格の男を一刀の元に切り捨てる。
周囲を見渡し、敵が居ない事を確認すると、青年はため息をつきながら、仲間である彼らに歩き始める。
少女も、咄嗟に青年の後ろを小走り気味についていく。

「やれやれ、なかなかのサプライズだな、フェイス。」
「知らん。…この娘が勝手に持ってきただけだ。」
「あ…あの、助けていただいて…ありがとうございます。」

豪快な笑顔を浮かべる青年と、仏頂面で少女を睨むフェイスと呼ばれた青年。
少女はあわてて、頭を下げて礼を言うと、フェイスは舌打ちをしながら、森へと歩き始める。
彼らは少女が来た方向とは別のところで、野営しているところだったのだ。

「おいおい、フェイスよ。この娘はどうすんだ?」
「知らん。成り行きで助けた事になったが…ほっておけ。」
「ちょっと、フェイス。それはひどいんじゃないの?」
「いっつ…。なんだレイピア…?」
「なんだじゃないでしょう。ったく、こんな所に女の子を置いて行くわけ?」
「俺も流石に、どうかと思うぞ?」
「チャーリー…お前もかよ。」

レイピアと呼ばれた女性が、少女の肩に毛布をかけて、フェイスを睨む。軽く投げた小石が彼の頭に命中したようだ。
チャーリーと呼ばれた青年もうんうんと腕を組みながら頷きながら、周囲の仲間達に視線を送る。
仲間達は「隊長、それはないでしょ!?」とか「天下のフェイス隊長が女の子を見捨てるなんて…」等と好き勝手言っている。
フェイスは軽く舌打ちしながら、「好きにしろ」とだけ言い残すと、自分のテントへと歩き始めた。

「まったく…。ほら、他の野郎どもは見回りにでもいきな!!後はメシの準備だよ!!」
「へいへい。うし、見回りに行くぞ。レイピア、その娘の事、頼んだぞ。」
「あいよ。っと、いきなりでごめんね。大丈夫だったかい?」
「は…はい。その…」
「あんな事言ってるけど…スカーフェイスはいい奴なんだよ。気にしないでね。あぁ、スカーフェイスってのは、さきっの仏頂面な男ね。一応はあたし達のリーダーさ。
あたしはレイピア。さっきのデカイがチャーリーってんだよ。まぁ、よろしくね。」
「姐さん。暖かい飲み物もってきましたぜ。」
「あいよ。…ほら、飲んで落ち着きな。」

少女を丸太で作った椅子に座らせると、レイピアは暖かいココアが入ったカップを手渡す。
周囲は薄暗くなってきているが、野営地の所々で付けられた焚き火が、周囲をほんのり明るく照らしている。
少女の近くでも焚き火が始められ、レイピアは隣に座ると、少女の顔についた泥を優しく、ふき取っていく。

「ふにゃ…」
「こら、動かないの。…まったく、こんな綺麗な顔が汚れてちゃ、勿体無いよ。…ほら、取れた。」
「ありがとうございます、レイピアさん。」
「あたしが好きでやったことなんだから、別に良いさ。…なぁ、なんであんた…追われてたんだい?」
「それは……ごめんなさい。言えない…です。」
「そっか。別に良いさ。…まぁ、ここに居る間はあたし達が護ってあげるからね。けど…何時かは話してちょうだいね?」

レイピアは軽く少女の頭を撫でると、食事を作りに行くといって、貯蔵しているテントへと向かっていく。
少女は掛けられた毛布を羽織ながら、ボーと焚き火を見つめているが…そんな彼女の前に影が写る。
顔を上げると、スカーフェイスと呼ばれた青年が、呆れたようにして少女を見つめていた。

「まったく…。足を出せ。」
「え…?」
「足を出せと言っている。…傷口から化膿しても知らんぞ。」
「は…はい。」

少女がオズオズと足を出すと、スカーフェイスはしゃがんで、少女の足に出来た傷口を眺めていく。
少しの間眺めると、傍らにおいてあったバッグから、包帯やら薬やらを取り出して、彼女の傷口に付けていく。

「…お前の名前は?」
「…ゼロフィリアス…です。ゼロと、呼んでください。」
「年齢は?」
「女性に…歳を聞くのは失礼だと思います。…16です。」
「そんな事は知らんな。…苗字は?」
「………」
「言えないか。まぁ、別に良いが…。しかし、ゼロか。女には似合わない名前だな。」
「貴方だって…顔に傷が無いのに、スカーフェイスって名前じゃないですか。」
「ふっ…よく言う。」

軽くジト眼で見つめるゼロの視線を、軽く笑ってスルーするスカーフェイス。
彼は、慣れた手つきでゼロの傷口に包帯を巻きつけて、傷口を覆う。

「これで終わりだ。…あまり動かさないことだ。」
「…慣れてるんですね。」
「さてな。…後はレイピアに任せる。…ゼロ…だったか。俺達と行動を共にするなら…戦いに巻き込まれる事を覚悟して置け。」

それだけ言うとスカーフェイスは、踵を返して立ち去っていく。
ゼロはその後姿を眺めながら…ソッと小さく「ありがとう…」と呟くのだった。











スカーフェイス・ランスロット、年齢、20歳。
ゼロフィリアス・??? 年齢、16歳。
チャーリー・ガウェイン、年齢20歳。
レイピア・パーシヴァル。年齢20歳


あとがき

ほぼ一発ネタです。息抜きと妄想で書きました。
続きは…どうなるでしょうね。





[21516] As編 8話 来るべき対話の為に…
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/04/15 23:30
・閃・

「…冗談だろ…?」
「冗談なら、僕もここまで悩まなかったし、名前を捨てたりしなかったんだけどねぇ。…全部、事実であり…真実さね。本当に、事実は小説より奇なりってね…。
まったく…転生者が特別な存在なんて、誰が言い始めたんだか…。最初に、転生小説を書いた作者の顔が見てみたいよ。」

主任は…悲しそうに俯くと、古ぼけた写真を俺に手渡してきた。
…顔も…身体も全部全部、塗りつぶされた写真。…塗りつぶした大きさでかろうじて…大人と子供って分かる程度の写真だ。

「僕と…父さんさ。それが唯一、残っている…ノヴァ・カプチェンコの記録。…まぁ、塗りつぶしちゃってるけどね。それ以外は…全部燃やしたし、データも削除したよ。」
「………」
「カプチェンコの名は…ベルカ領内では、未だに絶大な影響力を持つんだよ。それこそ…かつての亡霊達が近づいてくるほどまでにね。
…僕が扱えた資産だけで…莫大なものだったからね。まぁ…殆ど、凍結したから、亡霊たちに使われる事も無いさね。」
「凍結…?破棄したんじゃないのか?」
「…何事も先立つものが必要だよ。…機動6課が立ち上げになれば、莫大な資金が必要となる。その為の凍結処理だよ。
色々と裏から手も回して…僕のものになっているのさ。」

機動6課立ち上げだって…まだ先の話だろう…。いや、主任にとっては…罪滅ぼしってことなのか…?
困惑して、混乱して、思考回路が可笑しくなっている俺に気が付いて、主任は自虐的な笑みを浮かべて、立ち上がる。
…何時もの飄々とした表情とも、まったく違う。始めてみる…表情だ。

「最初は全部捨てて、何も知らずに、何も考えずに生きようと思ったよ。たとえ転生しても…望んだ理想のアニメの世界でも…あまりにも多くの罪を背負ってすぎた。
カプチェンコ家の開発したV1でどれだけの…人が死んだだろうか。どれだけの笑顔を、どれだけの夢を葬ったんだろうか…。」
「それは…主任の責任じゃないだろ…。それは親の…アントンの責任のはずだ!!」
「…同じさ。家族を、友を…奪われた人にとって、全部全部同じ事。父さんだろうが、僕だろうが…その罪を背負うのも同じことさ。」

…俺が思うほどに…主任は責任を感じてたのか…。
だが、さっきも言ったとおり、主任が悪いわけじゃない。だが、こいつにとっては、親の罪も自分の罪と思ってるんだろう。

「けど、絶望して生きる訳にはいかなかった。…父さんの、ベルカの狂気の遺産、V2が何処かに眠っているかもしれないし…なにより、【王】が何を意味するのか…知りたい。」
「【王】…?…そう言えば、ゲーム中でも確か…墓碑文に…」
「新たなる世界への門は開かれた。我が魂は風となり、その門へと誘う。眠りし王の目覚めるとき、我が肉体もまた蘇るだろう。」

確かに主任の言葉どおり、ゲーム中ではそう墓石に書かれていたらしい。
だが…俺の考えが正しいなら、王とはV2か…闇の書の事じゃないんだろうか…?
闇の書なら、この事件が無事に終わるなら、破壊なり凍結される筈だ。原作でも消滅していたし…。
しかし、主任は…そうじゃないと思っているのか…?

「闇の書が王じゃないのか…?」
「…少し気になる言葉が残っていてね。全部、記憶して燃やしたんだけど…あまりにも気になるんだよ。」
「どんなのだ?」
「王を目覚めさせるは3つの鍵。闇の中に眠りし鍵が目覚めし時…王への道開かれん。」
「3つの鍵…?…嘘だ、どう考えても闇の書が王だろ?それ以外に、何があるんだよ…?」
「自慢じゃないけど、父さんは先見の明がありすぎてね。多分だけど、王を起こすための鍵を…3つ用意したんじゃないかな?闇の書が王って事じゃないと思う。
もっと別な…物を作り上げていると思う。まぁ、僕には見当が付かないけどね。」
「なんだよ、別なものって…ああ…、頭が混乱してきたぞ、お前がカプチェンコ家の人間だって事で、パニックになってんのに…!!」
「まぁ、仕方が無いさ。…けど、君のご両親には本当に…感謝してるよ。行き倒れていた僕を助けてくれて…何も聞かずに…研究員なんて仕事をくれた。」
「主任…。」

立ち上がり、顔を覆いながらも俺に背を向けると、立ち去ろうとする主任。

「例え…君に恨まれてもかまわない。…僕の9年間はこの時の為だけに、あったんだ。…今度こそ、僕はシャマルさんを…救って見せる。」
「お前…まさか、シャマルの事…。」
「そうだよ。…彼女の事を…愛してるんだ。言っておくけど、生前からじゃないからね?…僕がノヴァとして転生して…子供の時に彼女と出会っていた。
…一目惚れって奴かな。…まぁ、今話す事じゃない…。愛する女性を救えなくて、何が男か…!!」
「…救えるのか…?」
「さぁ…わからないよ。死に物狂いで解析したけど…あまりにも難しすぎる。けど…僕は止まれないんだよ…。」
「…ったく、このアホが…!!」
「いで!?」

俺は立ち去ろうとする主任の背中を、力任せに思いっきり叩く。
こいつは…1人でなんか背負いやがって…。同じ転生者であり…俺はこいつも親友と思っている。
なら…協力して、解決するのが…当然だろう?

「さっさと研究室に戻るぞ!!お前の解析したデータと未解析の部分、調べるぞ!!」
「…閃君…?僕は、ベルカの人間だよ…?裏切りに等しい行為を…してたんだよ?」
「んな事は関係ない!!闇の書の解析してはやてを助ける!!つまり、シャマル達だって救う事になんだ!!メビウスだってそうしたっての。
俺にとって、お前がノヴァ・カプチェンコだろうと関係ない。お前はフレッシュリフォー社、開発局の主任!!それだけで充分だ!!」
「……ありがとう…。本当に…ありがとう…!!」
「礼は後だ。…闇の書対策プログラムを構築すんぞ!!…頼りにしてるぞ、主任。」
「ふふふ…任せてもらおうか。僕の9年間が無駄じゃなかった事を証明するさ!!」



無人世界 砂漠地帯。

・シグナム・

「くぅ…!!」

砂竜の重い爪の一撃を防ぎ、胴体を両断する。これで3匹目を…撃破した事になる。
管理局との交戦を避けるために、私は異世界の砂漠地帯で戦闘、蒐集を行っているところだ。
砂竜が倒れるのを見て、レヴァンティンを下ろし、周囲を見渡す。

「はぁはぁ…流石に…辛いか。」

竜種は魔力も豊富な分、生命力等も強く、1人で相手をするのは、少し骨が折れる。
しかし、ザフィーラとシャマルは主の護衛を、ヴィータには海鳴で管理局の動向を探ってもらっている。ならば、私が蒐集をしなくてはならない。
最初は主を助ける為だったのだが…最近は主も発作を起こさなくなってきた。
それ自体は嬉しく、歓迎するべき事なのだが…。

「…いかんな。迷っている暇はない。私は…ただ主の為に。」

頭を振り、雑念を捨てる。だが…疲労で注意力が散漫になっていたのか…突如、砂中から現れた触手に絡め取られてしまう。

「く…。」

振りほどこうとするが…くそ…更に締め付けが強くなったか…。レヴァンティンを持つ手が動かせない…!!

砂中から現れた砂竜が獰猛な眼で、私をにらみつける。同胞の仇を討つ…と言う事が。
私はここで終われない…。なんとかして…逃げなければ…。

「くぅ…そんなに締め付けるな…!!」
「動くな。…助けてやる!!」

虚空から現れた鎌が触手を、全て切り払う…!?
何が起きたか分からずに、私は崩れた体勢を立て直し、砂竜から離れ、追い縋ってくる残りの触手をレヴァンティンで切り捨てようとするが…それも全て撃破されていく…!?
だが、今聞こえてきた声は…あいつの声か…!!

「烈火の将、シグナム。危ないところだったな。」
「トリスタン…。やはりお前か…そんな気はしていた。」

私の目の前に展開される転移魔方陣から出てきたのは…以前に刃を交わした、ブレイズ・トリスタン。
彼は…敵である私に背を向けて、砂竜と対峙するか…。私を敵だと思っていないのか…。それとも…私を信用しているのか?

「今は一時休戦だ。…この竜が居たら、満足に話も出来ないからな。スペシネフ、モード変更。」
『イエス、マイロード。バリアジャケット及び本体再構築。』

一旦、バリアジャケットが解除されるが…すぐに構築された…?
…闇のような漆黒の騎士甲冑と大鎌は変わらずだが左腕は…なんだ?鉤爪のような鋭いクローが装着されている…?
呆気に取られている私に気が付き、トリスタンは小さく苦笑を浮かべながら、自身の右腕に視線を移す。

「もはやデバイスと言うより…武器だな。…さて、砂竜を黙らせるとするか。」
「…私を捕まえようとはしないのか?」
「さっきも言ったが…こんな状況では落ち着いて話も出来ない。…逃げるなら、別に逃げても構わないが…。」

それだけ言うと、彼は左腕に装着されていたクローを砂竜めがけて発射する。
遠隔操作…いや、違うな。よく見れば…魔力で作られたワイヤーで繋がれている。確かに…デバイスと言うよりは兵器だな…。

「お前には罪はないんだろうが…すまないな…!!」

クローが砂竜の額を捕らえ、掴んだと同時に…クローの中心部から放たれた魔力弾が頭を撃ち抜き、砂竜を撃破した。
…なるほど、やはり…強いな。砂煙を上げて、崩れる竜を見届けると、彼は私の方に向き直り、表情を和らげる。

「流石の守護騎士も、連戦は疲れるようだな。…怪我もしてるようだが、大丈夫か?」
「敵に心配されるまでもない。この程度、傷の内にはいらん。」
「意外と強情だな。まぁ…無事ならかまわないのだが…。」
「…お前は、本当に管理局の人間か…?普通ならば、私を助けずに、あのまま捕縛すると思うが…。」

敵である私に背を向けて、助けるだけでも妙なのに、トリスタンは私の怪我まで心配している。
本当に管理局員なのか…疑いたくもなる。
だが、今度は逆にトリスタンが、呆気に取られた表情をして、口元に手をやると、なにか考え事を始める。

「確かに…普通ならそうするだろうな。…だが、俺は全て武力で解決すると思っていない。…俺達には言葉がある。…刃を交わす前に、話で解決するならば…良いんじゃないか?」
「…つくづく…変わっているな。敵である私に背を向けただけでなく…話し合いか。しかし…私がその言葉を聞かずに、お前に刃を突きつけたら…どうする?…このように。」

私はレヴァンティンをトリスタンの首元に突きつけ、彼を威嚇する。正直言えば…この状況で戦えば…負けるかもしれん。
だが、その心の内を悟らせない為の虚勢だ。

「そちらがその気なら…もう俺は死んでいる筈じゃないのか?…騎士たるお前が背後から斬り付けるとも思っていない。違うか?」
「…本当にお前は変わり者だ。ならば、正々堂々と…剣で語ろう。」
「話す気はない…か。ならば、刃を交わし…そしてまた言葉を交わすだけだ。」
「ふ、望むところだ。我が刃こそ、我が言葉。…その身に刻むといい。」

鎌型のデバイスを構えると、トリスタンは小さく口元に笑みを浮かべた。
…どうやら、私と同じのようだな。…私自身、強者である彼との戦いを、どこかで望んでいたのかもしれない。
知らず知らずに、私の口元にも笑みが浮かんでいるだろう。それほどまでに…彼と、トリスタンと戦うのは…不謹慎だろが嬉しく、楽しい。

「さて…前の続きを始めるとしようか。…シグナム!!」
「トリスタン、覚悟!!」




数時間後、砂漠に大の字で仰向けで倒れるブレイズと、疲労困憊で転移していくシグナムの姿があった。
両者とも満身創痍といった感じだか…その表情は満ち足りていて…何処までも澄んでいるようだった。



・ヴィータ・

「うぅ…さむい…。」

北風が容赦なく、あたしの身体から体温を奪っていく。
はやてからプレゼントされたマフラーを巻きなおすと、ポケットに両手を入れる。散歩って言って出てきてるけど…本当の目的は管理局の包囲網の調査。
目ぼしい所は探し終えたけど…尾行も何も付いてなくて、少し拍子抜けする。

「こんなことなら、シグナムについてけばよかったなぁ…。」

オメガだったか…あいつにやられてから、色々と鬱憤が溜まってんだよな。
まさか、あしたのアイゼンと真っ向からやりあって跳ね返すなんて…本当にあいつはデタラメだ。
ベルカ式とかそんなものじゃない。けど、あたしは絶対に負けてない。前の戦いだって、あいつのデバイスをぶっ壊してたはずだから…絶対に負けてない!!
…ザフィーラが気絶してたぞとか言ってたけど、絶対に気絶なんてしてない!!あの時は、寝不足だったんだ!!

「…ああもう…思い出したら、むかついてきたぞ…。あんの能天気めぇ…。」

恨み言をこぼしていると、あたしの足元にコロコロと転がってくるサッカーボール。
気が付くと、あたしは近所の公園の近くまで来てたみたいだ。…誰か遊んでるのか?

「おっと、すいませ~ん。それ俺のサッカーボー…おおう。」
「…お前…オメガ、なんでここに!?」
「ハッハー!!それはこっちの台詞だぜ、ヴィータぁぁぁ!!」
「いちいち叫ぶな!!」

声が聞こえた方を振り向けば、見覚えのある奴が走ってきた。…向こうも私に気が付いて、驚いてるけどすぐに、あの能天気な笑顔を浮かべる。

「仕方がない。ここで戦うしかない…」
「へ?いや、俺…戦わないぜ?」
「はぁ?…なんでだよ!?あたし達は敵同士だぞ!?」
「だって、イジェクト持ってないねぇし…お前だった戦いたくないんだろ?…なら、無理に戦う必要なんてないんだぜ!!」
「あ…おい。待てって!!」

何故か、立ち去るオメガを追ってあたしも歩き出す。…なんとなくだけど、こいつももっと話がしてみたい…そう思ったんだよ。
公園内の広場では、オメガが1人でサッカーボールを蹴って、練習をしてた。あたしはそれを近くのベンチに座って、なんとなく眺めていた。
…リフティングって言う奴をしてるみたいだ。ポンポンと面白いくらいに、あいつの足の上で、ボールが跳ねていく。


「お前もサッカーするか?」
「あたしは…やらないよ。あのさ…お前、あたし達の事が…憎くないのか?」
「なんでだぜ?」
「なんでって…あたし達は敵同士なんだぞ?…それに管理局は…あたし達の事を憎んでるはずだ…って、うわぁ!?」
「ふ~ん。そうは思わねぇけどなぁ…。」
「い…いきなりびっくりさせんなよ!!」

ホンの少し下を向いてたら、何時の間にかオメガがあたしの目の鼻の先に、顔を突きつけて、なんか納得したように笑った。…こいつは…本当にびっくりさせやがって…。
そして、あたしの眼を覗き込むようにすると、あの能天気で豪快な笑顔を…浮かべていた。

「ヴィータ。お前は悪い奴じゃないだろ?」
「…はぁ?」
「俺の親父殿が言ってたんだ。…悪い奴の眼は、悪い光ですんげぇ汚れてる。けど、良い奴の眼は澄んでて、透き通ってるってな。お前の眼はすんげぇ、透き通ってんだよ。
だから、お前は良い奴なんだぜ!!それに、戦う気もなかったんだろ?悪い奴なら、問答無用で攻撃してくるもんだぜ!!」
「……馬鹿だろ?」
「ハッハー!!よく言われるぜ!!けどよ、俺は馬鹿でも充分良いと思うけどなぁ。」

地面においてあったサッカーボールを頭に乗っけると…またポンポンと跳ねながら、あいつは空を見上げて…馬鹿みたいに笑い声を上げた。
あたしは眼を丸くして、驚きながら…そんなあいつから眼を離せなかった。…すんげぇ馬鹿だけど…その姿は…なんかかっこよかった。

「うだうだ迷ってさ、失敗するより、俺は一直線に突っ走って…馬鹿みたいに豪快に失敗した方が良いと思うんだよ。確かに、お前は良い奴だ。けど、なんか迷ってんだろ?」
「…うっさい、お前には関係無い。」
「おおう、つれねぇなぁ。…迷ったときはよ、自分のハートを信じてみたらどうなんだ?…自分のハートが叫ぶ通りに行動しろって。」

自分の胸を力強く、ドンと叩いて、こっちを振り返る満面の笑顔のオメガ。…自分のハート…か。
…確かに、あたしは迷ってんのかもしれない。魔力の蒐集…それがはやてを本当に救う事になんのかな…。シグナムとかは馬鹿みたいに信じてるけど…なんか不安がある。

「お…良いものみったけぜ!!」
「あ、おい…。」
「ヴィータはちょっと待ってろよ!!」

それだけ言うと、オメガは公園の入り口に向かって走り出す。…どうしたんだ?
…なんかリヤカーを引いた男と話してるけど…あ、なんか紙袋もって戻ってきたな…。

「ほいよ。寒い時はこれが一番なんだぜ。」
「…なんだこれ?」
「石焼き芋って言うんだぜ!!冬の定番なんだよなぁ。…あっついからに気を付け…」
「あっち!?…先に言えよ!!」
「言う前に、がっつく方が悪いと思うぜ!?けど、うまいだろ?」
「……まぁな。」

紙袋から出てきたのは、アルミホイルで包まれたサツマイモ。…なんか、美味しそうなにおいがして来るぞ…。
それをあたしに手渡して、オメガも隣に座って食べ始める。
……言っておくけど、顔が赤いのは熱がったのが恥かしかっただけだからな。…貰って嬉しいとか、すんげぇうまいとかじゃないんだぞ…本当だぞ。
けど…甘くてホクホクしてて……やっぱりうまい…。

「お、へへ。やっと笑ったか。」
「…見るな。」
「ハッハー!!女の子は笑ってた方が可愛いって、あいつも言ってたんだぜぇぇ!!」
「んな…かか、可愛いとか言うな!!……って、あいつって誰だよ?」
「ん~?…俺の大親友さ。」


30分後。


「そんじゃな、風邪ひくなよ~。」
「お前こそ。……なぁ…」
「ん~?」
「……今度は負けないぞ。今までも負けてないけどな!!」
「ハッハー!!それはこっちの台詞だぜぇぇぇ!!」

それだけ言うと、オメガは豪快に笑いながら、走り去っていく。
……本当に…ほんの少ししか話さなかったけど…馬鹿でアホで…能天気で…筋金入りの良い奴だな…。

「あいつらになら…あたし達の事…任せれるんじゃないのか?」

誰も居ない帰り道に…ぽつりとあたしの独り言が漏れて…風に消えていった。













スペシネフ・ラーズグリーズ・13
有線式クローアーム追加。
魔力鎌、前部と後部の両方に展開可能。





あとがき

かなり間が開いて失礼しました。
…今回も微妙すぎますね。とりあえず、あと5話以内を目標に頑張っています。
では、また次回…。






[21516] As 9話 目覚めるは悪意の闇
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/04/20 23:59
ランスロット家、リビング。

「ここを…こう折って…。」
「フェイトも、上手になったな。」
「そうね~。…ああもう、折り紙するフェイトちゃん、かわいいわぁ。」

夕食も終わり、入浴を済ませたフェイトがリビングのテーブルで、折り紙で鶴を作っているところだ。
サイファーは向かいに座り、スカーフェイスはソファに座りながら、愛する娘の可愛らしい行動に頬を緩めていた。
メビウスの為に、千羽鶴を作りたい。だから、作り方を教えて欲しい。数日前の夕食の時にフェイトが提案してきた事だ。
最初こそ、不安げな手つきだったが、今では慣れた手つきで一羽ずつ、丁寧に鶴を折り作っている。
愛する息子が重体で、辛いのは親である彼らも同じこと。だが、愛する娘であるフェイトのこの行動が、どれだけ心を癒し、救われたのか。
小さく笑みを浮かべながら、フェイトを眺めていたスカーフェイスだが、ふとある事に気が付き、笑みを更に深くする。

「…なぁ、フェイト。少し聞いても良いか?」
「なに、お父さん?」

小さく笑みを浮かべ、声をかけるスカーフェイスに気が付き、フェイトは手を止めて、首をかしげる。
そんな娘の可愛らしい仕草に、更に笑みを深める2人と、なんで笑顔になっているのか今一わからずに、フェイトはキョトンとしていた。

「俺の気のせいで無ければ、青い折り紙だけ外してないか?」
「あ…えっと、後で折ろうって…。」
「…なんでだ?」
「その…うんと…」
「…ふふ。」

何故か顔を赤くして、モジモジし始めるフェイトを見て、サイファーは堪え切れずに、小さく笑い声をもらした。
実は、鶴の作り方を教えた時にサイファーは、何故フェイトが青い折り紙を残しているのかの、理由も聞いていたのだ。
その理由すら、可愛らしくて、笑いがこぼれる内容である。

「…青は…お兄ちゃんの色だから。…大切に折ろうって決めたんだ。」
「なるほど。…まぁ、そんな事だとは思ったがね。」
「良いわね~。本当にフェイトちゃんは可愛いんだから~。」
「お、お母さん、苦しい…。」

笑顔で抱きしめて、頬擦りをしてくるサイファーに驚きながら、フェイトも嬉しそうに笑顔を浮かべる。
例え義理だろうが…彼女にとってサイファーはもう1人の母親であり、サイファーにとってもフェイトは愛すべき娘なのだ。
そんな2人をスカーフェイスは、優しい眼差しで見守りながら、傍らにおいてある籠の中身に視線を向ける。
そこにはフェイトが今まだ作った300羽近くの折鶴が収められていた。恐らくは、あと少しで自分のノルマを達成するところだろう。

「はぁ、いい湯だった。…って、サイファーは…なにしてんだい?」
「見ての通り。フェイトとのスキンシップ中だ。」

長い髪をタオルで拭きながら、リビングに入ってきたアルフの眼に映ったのは、頬擦りされているフェイトの姿。
アルフはスカーフェイスの一言で、納得しながら、冷蔵庫からドリンクを取り出して、風呂上りの一杯を楽しみだす。

「ぷはぁ。風呂上りの後の冷たいのは最高だね。」
「まったく…。ガルムが居たら、小言が飛んできてるぞ?」
「そう言うフェイスだって、何か言うんじゃないのかい?」
「そうかもな。だが、その前に…とりあえず、フェイトの事を助けてやれ。」
「フェイトちゃ~ん♪」
「お…お母さん、鶴折れない…。ひゃっ!?何処触ってるの!?」
「よいではないか、よいではないか~♪」
「サイファー、いい加減しな…よっ!!」


何故かフェイトのパジャマを脱がしにかかるサイファーの後頭部を、新聞紙を丸めた棒でアルフが引っ叩くと、パコンといい音が響く。
最近では、こうして彼女がサイファーの暴走を止める役割にあるらしく、手馴れたものである。

「あ…アルフ…!!」
「大丈夫かい、フェイト?」
「う…うん。何時もの事だから…。」

何時もの事で良いのか、何時もの事で…。と心の中で苦笑しながら、自分のほうに逃げてきたフェイトを背中に庇うアルフであった。
ランスロット家の暖かく穏やかで…少し寂しい夜は、今日もすぎていく…。





帝家、閃の自室。


「はい、13連鎖です♪」
『ば…馬鹿なぁぁぁ!!!』
「え…えげつねぇ…。8連鎖の次に13連鎖とか…。」

落ち物ゲームで遊んでいるリリンの相手をするのは、閃のデバイスであるナイトレーベン。閃がナイトレーベンと、コードを繋げて操作を出来るようにゲーム機を改造していたのだ。
テレビ画面には、ナイトレーベンの枠が全て、埋まり負けているところだった。

『うおおお…。リリン嬢、もう一回勝負!!』
「良いですわよ。けど、負けませんわ!!」
「レーベン、諦めろって…。10連敗中だろう…。」
『てやんでぇい!!ここで諦めたら江戸っ子魂がすたらぁぁ!!』
「江戸っ子ってどこがだよ…」

異様に燃えているナイトレーベンに呆れながら、閃はため息をつき、リリンに緯線を移す。
ようやくリリンの転入手続きも終わり、春から閃と一緒に聖祥に通う事になったのだ。
しかし、流石にミッドから通うのは些か問題が在る為、リリンたっての希望で帝家に居候することなった。
既に入浴も済ませ、パジャマ姿で遊ぶ彼女の姿は、年相応の少女である。

「はい、20連鎖です!!」
『に…逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…』
「すでに積んでるぞ…。」
『……乱数調整…』
「やめろアホ!!」
『割れるぅぅぅぅ!!!』

10分後


『も…燃え尽きたぜ…真っ白に…燃え尽きたぜ…。』
「とりあえず…寝てろ。」

弱弱しく点滅するナイトレーベンを、調整装置につなげると閃はベッドに腰掛けている、リリンの隣に座る。
彼女の膝の上には童話の絵本が開いておいてあった。

「へぇ、リリンも童話なんて読むんだな。」
「はい。私だって、難しい本ばかりじゃないんですよ?」

笑顔で閃に寄り添いながら、リリンは絵本のページをめくって読み進めていく。
手持ち無沙汰の閃も適当においてあった雑誌を手に取ると、パラパラと流し読みを始めていた。
ページをめくる音が部屋に響くが、2人にとっては心地よい沈黙の時間。
10分ほどたった頃だろうか、閃が肩に僅かな重みを感じ、リリンの方を見ると…

「すぅ・・すぅ…」
「寝ちゃってるな。…まぁ、そんな時間だしな。」

先ほどまではしゃいでいたからか、何時の間にか眠りの国に旅立っているリリンに苦笑しながら、閃はそっと自分のベットに寝かしつける。
リリンの部屋も用意されているのだが、そこまで起こさずに連れて行くのは無理だろうし、起こすのも可哀想だ。
そのまま、ソファで寝ようとした閃だったが、よく見るとリリンが彼の手を掴んで離さない。

「ん…お兄様…行っちゃ…やだ…。」
「…おいおい。一緒に寝ろっか…?」

ホンの少し赤面しながら、閃はため息をつき、リリンの隣に横になる。そうすると、リリンは満足そうな寝顔を浮かべ、彼に擦り寄ると再び、寝息を立てる。
流石の閃も緊張するらしく、最初こそ硬かったが、リリンの安心しきった寝息を聞くと、身体の力を抜き、ソッと頭を撫でて、自分も眼を閉じる。
転生者であり、導き手となる決意をした少年と…天才と呼ばれる幼き少女の寝顔は…とても可愛らしいものだった…。


八神家、リビング。


「出来た!!」
「沢山作りましたね。…主、これを繋げれば?」
「そうやよ。ん~…疲れたなぁ。」

テーブルの上には、色とりどりの鶴が積み重なっておいてあった。作った本人であるはやては背伸びしながら、自分の成果を笑顔で見つめている。
シグナムも若干、笑顔で鶴を1羽1羽丁寧に紐でつなげて、置いてあった籠の中にしまっていく。

「しかし、これは何に使うのです?」
「千羽鶴って言うを作ってたんよ。」
「なぁ、はやて。千羽鶴ってなんだ?」

キッチンからシャマルと一緒にお茶を持ってきたヴィータがはやての隣に座りながら、鶴の山を指差す。
シグナムも千羽鶴という言葉がわからずに、首をかしげていると、何処からかザフィーラが辞典を持ってきて、意味を調べ始めていた。

「千羽鶴、病気快癒・長寿がかなうという説があるらしい。」
「へぇ。てか、ザフィーラ、その辞典何処から持ってきたんだ?」
「そうやよ。まぁ、自分の為やないんやけどね。」
「あれ、そうだったんですか?」

首をかしげるシャマルに笑顔で返しながら、はやては作っていた理由を教える事にした。実は今まで、秘密にしていたのだ。理由は…少しの恥かしさから。

「んとな、私の大切な友達が大怪我したそうなんよ。…それで、早くよくなりますようにって…想いをこめて作ってたん。」
「そうだったのですか。…そのお友達も怪我が早く直ると良いですね。」
「そうやねぇ。…まだみんなに紹介とかしてなかったもんなぁ。」
「どんな奴なんだ?」
「んとな…。やさしくて…かっこよくて…凄くいい人なんよ。」

笑顔でヴィータの質問に答えるはやての頬はホンの少し赤くなっていた。
流石のシグナムやシャマルねその友達に、はやてがどんな感情を抱いているのか理解したらしく、顔を見合わせて笑っている。

「あとな、蒼くて綺麗な髪をしてるんよ。」
「…蒼い…髪…!?」


はやての言葉を聞いて、シグナムの脳裏に浮かぶのは…神社で蒐集した少年と工事現場で戦った女性の姿。
…はやての言葉からして…友達とは少年の事を指しているのだろう。突然、驚いた事に「どうしたん?」と心配するはやてに気が付き、
なんでもないとシグナムは答えると、何事も無かったかのように、鶴を紐で繋げていく。

(まさか…あの少年が…主の友達…!?…蒼い髪など、そんなに居るわけでもない。そう考えるのが…当然か…。
ならば、私は…主になんと…詫びれば…!!)

少年、メビウスに大怪我させたのは、決してシグナムではない。だが、彼と戦ったのは…確かに彼女だ。
その戦いが原因で…あの妙な魔導師にメビウスが殺されかけた。そして…魔力も自分が奪った。
その事が、シグナムの心に影を落としていた…。



深夜 八神家リビング。

「あと少しで、全て埋まるな。」
「そうね。…これが埋まったら…お別れなんでしょうね…。」

闇の書のページをめくりながら、シャマルは寂しそうに微笑む。
自分達が消えるのは覚悟のうえだった。だが…その時が近づくと…やはり、はやてとの生活の楽しさを思い出す。
4人にとって、彼女との生活は…何よりも掛替えの無い満ち足りた生活だった。

「だが、これが主を救う為だ。…我等はその為に動いてきた。」
「ザフィーラ…。えぇ、そうね…。」

壁に寄りかかりながら、ザフィーラが蒐集の目的を今一度、思い出させる。
闇の書に侵食されていたはやてを、助けるための魔力の蒐集。闇の書の項を全て埋めれば、侵食は止まり、はやての足も、発作も完治する。
だが…それで本当に良いのかと…思っている人物が居る。

「なぁ、あたし達のやってることって…正しいのか?」
「ヴィータちゃん?」
「本当に、はやてを助ける事になってるのか…?これって…本当にはやてが望んでた事なのか…?」

うつむき加減のヴィータの口からこぼれるのは…今まで自分が感じていて、押し殺してきた疑問。
昼間のオメガとの出会いで…感じた事を全て…吐き出してみる事にしたのだ。

「闇の書の蒐集が終われば、侵食も止まり、新たに転生する。それが主を救う事になる。お前だって、最初は納得してただろう?」
「だけど、最近じゃ、はやても発作を起こさなくなってきてるし…侵食だって殆ど止まってるんだろ?なら、もうこんな事しなくても…」
「ヴィータちゃん。…それでも私達が闇の書を完成させないと…はやてちゃんは一生歩けないままなのよ?」
「それに何れは主が誰なのか…管理局に突き止められる。その前に…我等が消えれば、主はやてに害は及ばない。」

シャマルとザフィーラが諭す様に、ヴィータを止める。シグナムだけは…ヴィータに言われた事をホンの少し考え始めていた。

「確かに…主の発作と、コアへの侵食が止まっているのは事実。……そうか…あの少年…。」
「シグナム、どうしたの?」
「いや……実は…主の言っていた友達。…恐らくだが、私が蒐集した…魔導師の事だろう…。」
「魔導師って…どういうことだ?」

シグナムは以前に蒐集した少年の事、吸収し終えたコアの魔力が一瞬で回復し、闇の書が勝手に吸収しようとした事等を3人に話し出した。

「無限のリンカーコア…って事か…?」
「なんだよそれ…。反則じゃないか…?」
「けど、闇の書が勝手に吸収したりするのは…異常ね。それに…1人から吸収できるのは、1回だけの筈よ。」
「だが…その少年の魔力を蒐集してから、主の発作も治まっている。」

無限のリンカーコア、闇の書の異常な行動、発作がおさまったはやて。
それが何を意味するのか……




次の日。
キサラギ公園。


「あ、2人とも、おはよう!!」
「はやてちゃん、おはようなの。」
「はやて、おはよう。」

待ち合わせの公園にはやてが到着すると、先になのはとフェイトは2人は、折鶴が入った籠を持って待っていた。
ここでそれぞれが作った鶴を合わせて、メビウスの所に持っていく事になったのだ。

「遅れてごめんなぁ。ちょっと、持ってくるのに手間取ったんよ。」
「あ、大丈夫だよ。私達も今来たところだから。ね、フェイトちゃん。」
「うん。…わ、はやても沢山作ってきたんだね。」
「そう言う2人かて、沢山作ってきとるやないの。」

2人がベンチにおいていた籠の中を見ると、確かに沢山の鶴が紐でつながれて入っていた。
もっとも、はやての持ってきた籠の中も負けないくらい、沢山入っているのだが。

「後は全部つなげて、メビウス君の所に持っていけば、大丈夫やね。」
「うん。…メビウス君…よくなるよね…?」
「当然やって。みんなで一生懸命作ったんやからね!!」

不安がるなのはを元気付けるようにして、笑顔で答えるはやて。
それを見て、なのはも弱弱しくだが、笑顔を浮かべ、信じようとしていた。
だが…フェイトは2人を庇うようにして…何故か入り口をにらんでいた。

「フェイトちゃん、どうしたの?」
「なのは…。はやてを守ってあげて。」
「え…?」
「…居るのはわかってるよ。…出て来い。」

何時でもバルデッシュを使えるようにして、入り口に居るであろう…彼女が大嫌いな人物に声をかける。
すると…入り口の空間が僅かに揺らめき…1人の人物が姿を現す。

「ふん…。兄妹そろって、礼儀がなってないな。」
「黙れ…!!私達に近づくなって…言われてる筈!!」
「シルヴァリアス…君…!?」

現れたのは…下卑た笑みを浮かべる少年、シルヴァリアス。その手には、アスカロンと似た様な2対の剣型のデバイスが握られていた。

(今のは何…。空間転移とも違うし…。まさか…ステルス…!?)
「へぇ、勘付いたか。…お前の思っている通り、ステルスさ。…僕の新型のデバイス、フェンリア・プロヴィデンスの力さ。」
「な…なぁ、なのはちゃん、フェイトちゃん…誰なん?」

突然現れたシルヴァリアスと、そんな彼を警戒する2人に驚きながら、はやては2人を見つめる。
だが、そんなはやてを見たシルヴァリアスは愉快そうに笑い…彼女を指差す。

「これはこれは…闇の書の主の八神はやてじゃないか…!!」
「…え…?」
「っ!?」
「なのは…今度こそ、君は騙されているんだ。…君が探していた闇の書の主、それこそが…そいつなんだよ!!」

はやてを指差し声高々に、彼女が主である…と言ってのけるシルヴァリアスの眼は…酷く濁り…淀んでいた。

「う…嘘…だよね?はやてちゃんが闇の書の…。」
「わ…私…は。」
「嘘をつくな。…メビウスだったか…あいつも貴様の為に…あんな怪我をしたんだったなぁ。」
「メビウス…君…?」
「はやて、見ちゃだめ!!」

メビウスの名に反応して、はやてが伏せていた顔を上げるが…フェイトが必死に止める。
彼女の言うとおり…上げない方が…よかったのかもしれない。
空中にモニターが映し出され…そこにはシグナムが、メビウスを貫いている映像が映されていた。

(実際には…僕がやったが。まぁ、映像なんて幾らでも改ざんできる。)
「し…シグナムがメビウス君を…。わ…私のせい…なん…?」
「はやて、落ち着いて!!あいつの言う事なんて信じちゃだめ!!」
「…シルヴァリアス君…どういうこと…!?」

フェイトがはやての耳をふさぎ庇い、なのはもシルヴァリアスをにらむ。温厚で優しい彼女でも…シルヴァリアスは大嫌いな人物であった。

「どうもこうも…そいつがメビウスの魔力を狙わせたって事だよ、なのは。…君に近づいたのだって、魔力を狙ってのことさ。」
「ち…違う!!私はそんな事…。」
「何が違う、どう違う?現にお前と知り合いだったメビウスは…こうして蒐集されてるじゃないか!!」

俯くはやてに何度も何度も同じ映像を再生し、見せ付けるシルヴァリアス。

「違う…違う違う違う違う…!!」
「なにをどういっても無駄か。…まぁ、良い。さぁ、なのはそこをどいて…僕がそいつを片付けてあげるから。」
「片付けるって…だ…駄目だよ!!」
「はやては…私達の友達…。お前なんかに触らせない!!」

2人にとって、シルヴァリアスの言葉など信じるに値せず、大切な友達であるはやての言葉を信じるのは当然である。
だが…シルヴァリアスにとって…なのは以外はどうでもいい存在。ゆえに…フェイト諸共、斬れば良いという思考に達するのだ。

「なら…人形ごと死ね…!!」
「っつ…バルディッシュ!!」
「ちぃ…メビウスと良い、貴様と良い…本当にむかつく兄妹だな!!」
「お前なんかが…お兄ちゃんの名前を口にするな…!!」

咄嗟にバルディッシュで斬撃を受け止めて、憎悪の眼をフェイトは向ける。
彼女にとって…最愛の人物であるメビウスの名を…シルヴァリアスが口にするだけでも許せないのだ。
舌打ちをして、フェイトから離れると、シルヴァリアスは別な魔法を仕掛けようとするが…それより早く上と右から接近してくる反応があった。

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なに…。上か…!?」
「あたしも…居るんだよ!!」
「がふっ!?」

上空からの斬撃、シグナムのレヴァンティンの一撃をフェンリアで受け止めるが、右から接近していたヴィータの横殴りのアイゼンの一撃をまともに胴体に受けて吹き飛ばされる。
どうやら、はやてが狙われているのに気が付いて、駆けつけてきたようだ。

「無事ですか、主!?」
「主って…それじゃ…本当に…。」

なのはが戸惑うようにして、駆け寄るシグナムとはやてを交互に見つめる。ヴィータとフェイトはお互いに若干、けん制しながらもシルヴァリアスの吹き飛んだ方向を警戒していた。

「な…なぁ、シグナム…。うそやろ?シグナムがメビウス君に大怪我させたって…嘘やろ…?」
「…………いいえ、本当の…ことです。」
「うそや…うそや嘘や嘘や…嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

シグナムが後悔の念を浮かべながら…苦々しくはやての質問に答える。
一度言ったが、彼女が大怪我をさせたわけではない、だが…騎士として…己の責任だと…感じているのだ。
その言葉を聞いた瞬間に…はやては糸が切れた人形のように…車椅子の上に崩れた。
シグナムがあわてて、助け起こそうとするが…それを遮る様にして…闇の書が転移してきた。

「闇の書…!?なぜここに!?…あ…主!?」

シグナムの驚きの声とともに…はやてが浮き上がり、突然現れた奇妙な球体に吸い込まれていく。
そして…周囲に響き渡る不気味な声。

「はははは…。ようやくだ…ようやく…時が満ちた…。」
「誰だ、貴様!!闇の書の意思ではないな!?」
「いいや…。我らは闇の書の意思だ。…太古より寄生している存在ではあるがな…。礼を言うぞ、守護騎士どもよ。お前らのお陰で…我らは再び目覚めれた。」
「目覚めただと…何者だ!!」


「我らは…ダイモン。時空世界を真に支配すべき存在よ…!!」










あとがき

さて急展開を見せた今回。
そして登場、全ての元凶のダイモン。物語に付き物の…悪役です!!
うまく行けば4~3話で終わる予定です。





[21516] As編 10話 歩き出す真白き光
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:dcfd38fc
Date: 2011/05/21 07:41
「主を…主を返せぇぇぇぇぇ!!!」

シグナムはダイモンと名乗った球体に、レヴァンティンを振り下ろし、はやてを包んでいる外殻を断ち切ろうとする。
だがそれは、硬い障壁に阻まれ、傷1つ付けることが出来ない。

「く…。ヴィータ、アイゼンで砕け!!」
「わかってる!!このぉぉぉぉ!!!」

しかし、アイゼンでの一撃でさえ、障壁に罅を入れることすら出来ずにもはじき返される。
流石のこれには、ヴィータやシグナムも眼を丸くして、驚愕の表情を浮かべる。アイゼンの重い一撃を意図も簡単に受け止められたのだ。


「あたしのアイゼンでも…だめだと…!?」
「くはははは。無駄な足掻きをする、守護騎士どもよ…。ほぉ、仲間が来た様だな。」
「シグナム、はやてちゃんは!?」
「…こいつは…?」

2人の後方に転移陣が開き、シャマルとザフィーラが転移してきた。最初こそ、フェイトも戦闘体制をとろうとしたが、動けないでいるなのはを庇う事で精一杯だった。

「はやてが…はやてがこいつに吸い込まれた…!!」
「…貴様、目的はなんだ…!?」

冷静に、だが威嚇するように構えるザフィーラの口からは、唸る様に声が漏れる。彼にとっても、はやては大切な主であり、家族でもある。

「我らの目的は…全てを支配する事。その為には、まだまだ力が足りんのでな。…貴様らも我等の為に、よく働いてくれた…。」
「どういうことだ…!?」
「魔力の蒐集…闇の書の中に眠りし我等が、目覚める為の手段にすぎん。くはははは、太古に改変を加えておいてよかったものだ。」

球体が鈍く光を放ち、耳障りで不気味な声で笑う。
それは守護騎士達を激怒させ…憎悪させるには充分だった。

「私達は…私達は断じて…貴様の為に集めていたわけでは…無い!!」
「だが…結果的には我らを目覚めさせた。しかし…まさか、あの子供が…主の知り合いとは思わなかった。…お陰で目覚めの時が早まった。」
「なんだと…」
「絶望も我等の糧となる。…はははは、幼き恋心が、絶望で塗り潰されていく様は…実に面白い余興であった。」
「貴様……!!」
「おっと、貴様らには最早用は無いが…最後の余興でもしようか…。」

ダイモンが怪しく光ると、シグナム達の足元に魔方陣が展開し、4人を包み込む。
その光が、徐々に強さを増していくと…4人の身体が透け始めていく。

「これは…私達が…消える…!?」
「完全には消さぬ。…貴様らの絶望も頂こうか…ははははは…。」
「ちくしょう…ちくしょぉぉぉ!!」

ザフィーラが消え、ヴィータも足掻きながら、ダイモンを睨み付ける。それ視線すら、心地良いのか、禍々しく笑うダイモンは…正に邪悪。
シグナムは消えそうになりながらも…後ろに居るフェイトの方を振り向く。
うずくまり動けないなのはを庇うので、フェイトも精一杯であり…シグナム達が消えるのを見ている事しか出来なかった。

「頼む…主だけでも…主、はやてだけでも…助けてくれ!!」
「この期に及んで…主の心配をするか。くくく…まぁ、よい、管理局の犬よ。…我らと戦うならば…追ってくるがいい。」

消えながらも…はやての事を想うシグナムの言葉を、哂うダイモン。フェイトは忌々しそうに睨み付けると…邪悪に哂いながら姿を消した。

「…みんなに…みんなに知らせないと…!!なのは、たって…!!」
「……あ…う…うん。」

フェイトは蹲っているなのはを無理やり立たせると、閃達に連絡しようと、携帯を取り出すが…後ろでドサと誰かが倒れる音が聞こえた。
振り向けば……柔らかな光に包まれたシャマルが…力なく倒れていた。



アースラ内部 艦橋


「ダイモン…か。聞いた事も無い名前だな。…何かしらの組織…か?」
「わからない。だが、フェイトの証言を考えるなら…こいつが全ての元凶なんだろうな。」

ブレイズはフェイトが撮影していた画像を何度も見直しながら、額に皺を作る。
クロノも何時も以上に険しい表情をしながら、モニターを捜査していく。

「ワザとらしく、追跡できるように足跡を残してやがる…。とことん、なめた真似をしてくれるな。」
「それだけ、自信があるという事なのか…。なんにせよ、明白な宣戦布告だ。…後悔させてやる。」

2人の目には、明らかに怒りの炎が燃え盛っていた。完全にとはいかないが…考えれば守護騎士達も被害者なのだ。
ダイモン、それがいかなる存在なのか…2人には関係が無い。
ただ…世界の平和を乱すものは敵であり…許す事の出来ない存在。

「発見次第、すぐに出撃できるようにして置こう。…フェイト、閃の2人は何時でも出れる。」
「なのはとオメガは?」
「オメガはデバイスの最終調整が途中らしい。今、閃が急ピッチで調整している。なのはは…無理だな。」

未だにメビウスの居なくなったショックから、立ち直れて居ないなのはを戦場に出すなど、愚の骨頂である。
だが、オメガも出れないとなると…戦力低下は免れないだろう。

「…メビウス…。おまえが居てくれればな…。」

ブレイズの零した言葉は…クロノの耳にだけ入り、消えていった。



艦内、メンテナンスルーム。

・閃・


最悪だ。今の俺の心境を表すなら…正にこの言葉だろう。
なのはは戦えないし、オメガのイジェクトも未だに調整中。そして…敵があのダイモン。
なんで奴らがこの世界居るのか…。ましてや闇の書の中に潜んでたなんて…本当に最悪すぎる。
頭では別な事を考えながらも、ウィンドウを操作する自分を褒めてやりたい気分だよ畜生。

「閃…オメガは間に合いそう?」
「無理かもな。…ダイモンを見つけたら、速攻しかけるそうだから…本当に時間との勝負だっての。」
「そっか。…主任は?」
「…医務室だ。あの守護騎士の事を看病してる。」

ウィンドウを覗き込んでくるフェイトの質問に、作業を止めずに答える。
…主任はシャマルが運び込まれて来ると同時に、医務室に猛ダッシュした。…多分だが、再構築はシャマルの身体の消失を、転移妨害はダイモンの転移魔法を防いだんだろう。
クロノ達に怪しまれたが…この事件が終わったら説明するといって、今は不問にしてもらっている。

「…くそ。なんでこんなタイミングに…。イジェクトも途中だし…メビウスもいない…。」
「…メビウス…君。」

俺の呟きが聞こえたのか、俯いて椅子に座っていたなのはがピクリと反応する。
…こいつが戦えれば…楽になるんだが…と思わない事も無い。
だが…無理して戦場に出しても、今のなのはでは…足手まといがいいところだろう。
振り向かずに、作業を進めようとすると…フェイトがなのはの所まで、歩き出した。

「なのは…お願い。今、なのはの力が必要なの。…戦って…!」
「……ごめん。フェイトちゃん…私、やっぱり無理だよ…。恐くて戦えない…。」

小さく震えながら、フェイトの事を見上げるなのはを見て…俺は確信した。
あぁ…本当にこいつは…メビウスに依存してるんだな…と。不屈の心は…もう無いのかと…絶望的な気持ちになってきたな。
だが、次の瞬間…パンと乾いた音が響き渡った。…フェイトがなのはの頬を…打った…?


「…なのはは…なのはは、お兄ちゃんに甘えてるだけだよ!!何時も、何時もお兄ちゃんが助けてくれたから…今度も助けてくれるって思ってるだけ!!
魔法が使えない…恐くて戦えない?それは甘えたいだけの口実だよ!!それが…お兄ちゃんが…メビウス・ランスロットが大切って言った白い魔道師の姿なの!?
それが、強くて優しくて…誰よりも一生懸命な高町なのはの姿なの!?」
「フェイト…ちゃん…。」

眼に涙を溜めて…今まで、心に溜まっていたかのように言葉を吐き出すフェイト。
…こんなフェイトは始めてみるな。…打たれた頬の痛みを忘れて…なのはは唖然としている。

「…ねぇ…答えてよ……なのはぁ…。戻って…きてよ…。」
「あ…!!」
「行くな、なのは。…お前には、その資格は無い。」

メンテナンスルームから泣きながら、飛び出していくフェイトを、追おうとするなのはを俺は引き止める。
…全部…吐き出しちまうか。なぁ、メビウス…お前だって…こんななのはは…望んでないだろ…?

「…お前さ、ジュエルシードの時とか…フェイトの事とか…何か考えてたか?」
「え…フェイトちゃんの…事?」
「まぁ、助けたいって思ってたのは事実だろうけど…。…お前、メビウスが決めたから…とか心の底で思ってなかったか?」
「っ!?」
「メビウスが褒めてくれるから、メビウスが一緒に居るから、そう言えばメビウスが喜んでくれるから…。そう思ってたんじゃないか?」
「そ…そんな…事…」
「…俺にはそう見えたよ。…なぁ、なのは、お前は…どうしたいんだ?」
「どうしたい…?」
「これから先、ずっとメビウスの背中に隠れてるのか?頼りっぱなしなのか?…お前がそれで良いなら、別に構わない。
メビウスは優しいから、受け入れてくれるとは思う。けど…フェイトは…多分違うぞ?…メビウスの隣に…フェイトは立ちたいと思ってる。」
「メビウス君の隣に…?」
「そう…だから、フェイトは…泣きながらも前に進んでんだよ。お前は…救いの手をさし伸ばされるのを…ただ待ってるだけだ。
そんなお前を…メビウスは好きになるのか…?」
「………」
「よく考えてみろよ。…とりあえず、アースラからは降りろ。…今のお前じゃ、何も出来ない。」





・なのは・

閃君に言われて…私はアースラから降りた。
…時間は夕方で…夕日が街全体を赤く照らしている。
何も考えないで…フェイトちゃんや閃君に言われた事を思い出しながら…私は歩いていた。
メビウス君に甘えてた…だけ。…そうかもしれない。
私はメビウス君が褒めてくれるから…お菓子作りも頑張った。魔導師になったのだって…メビウス君が…側に居てくれるから…て思った。
気が付けば…私は神社についていたの。

「…ここでメビウス君が…。」

倒れていた所は…神社の中心だったんだよね。
私は…そこまで歩いていくと…身体の力が抜けて…ペタンと座り込んじゃった。

「メビウス君…。声を聞きたいよう…笑顔が見たいよう…一杯一杯…一緒にいたいよ…。」

眼から涙があふれて…止まらない。どうして…どうしてメビウス君が…。あんなに優しいのに…あんなに…
誰も居ない神社に…私の泣き声だけが響いていく。

…どの位、泣いたんだろう…。気が付くと…チビ狐が心配そうに…私の顔を覗き込んでいた。
…この仔がメビウス君の事を…教えてくれたんだよね…。

「…チビ狐。…メビウス君は…なんであんな事になっちゃったの…?」
「…!!」

声をかけると…チビ狐は草陰に一目散に走っていった。…なにか、小さな袋を持ってきて…それを私の手の上にポンとおいた。
…袋の中を覗き込むと…そこには蒼い欠片が…沢山、入っていたの。

「これって…メビウス君の…コア…?」
「(コクコク)」

あぁ…そっか。チビ狐が…集めていたんだね…。メビウス君のコアのカケラを…。
そう思うと…また涙があふれて…。また泣いちゃう…よ。
けど、そんな私を…誰かが後ろから…優しく抱きしめてくれた。

「…なのはちゃん。そんなに泣いたら可愛い顔が台無しよ?」
「サイファー…さん…?」

優しく…まるでメビウス君のように抱きしめてくれたのは…母親のサイファーさん。
…なんで私がここに居るって…わかったんだろう?…けど、そんな事はどうでもよくて…やっぱり親子なんだ。
メビウス君と…本当に同じ。暖かさも…抱きしめてくれるのも…全部同じなの。
サイファーさんは、私を抱きしめながら…袋の中を覗き込む。

「…メビウスちゃんのコア…ね。…ねぇ、なのはちゃん。」
「…はい。」
「前に話したわよね?…メビウスちゃんは、なのはちゃんのお陰で強くなってるって。」
「…そんな事、無いです。私…やっぱり、メビウス君が居ないと…不安で…。」
「…だったら、ずっと一緒に居れば良いのよ。」
「え…?」
「ずっとずっとメビウスちゃんと一緒に居れば良いのよ。…大人になってからも…ずっとね。」

サイファーさんの笑顔は…本当に優しくて…私の心が…軽くなっていく気がしたの。
大人になってからも…ずっと一緒に…。

「メビウスちゃんはね…なのはちゃんの事が、好きで好きで…大好きなのよ。だから…大丈夫。全力全開でぶつかっちゃいなさい。」
「サイファー…さん。私…私…!!」

何か言おうとしたけど…うまく言葉が出てこない。けど…今の私は…やっぱり本当の私じゃないんだ…。
ふと…手の中の袋を見ると…メビウス君のコアの欠片がホンの少し光り始めていた。

「メビウスちゃんもなのはちゃんと一緒に居たいって、言ってるわね。」
「あ…。」

袋から欠片が勝手に浮いて…私の胸の中に溶け込んでいく…?
…胸が凄く熱い…。あぁ…感じるの…。

「メビウス君の…想いが…感じるよ…!!」
「…なのはちゃんの想いと…メビウスちゃんの想いが1つになったのね。…さぁ、なのはちゃん。…もう…飛べるわね?」
「はい…!!高町なのは…完全復活です!!」

久しぶり…本当の私。そうだよね…私はメビウス君と一緒に居たい。
だから……私は羽ばたくの。羽ばたいて羽ばたいて…飛び続ける。

≪なのは…。私の可愛いなのは。…ようやく…羽ばたき始めるのですね。≫
「アイスドール…?」
≪貴女に…光を…世界を照らす光を授けましょう。…さぁ、真白き光よ、一緒に…戦いましょう。≫

レイジングハートにも…光が集まる…?
そっか、アイスドール…あなたも見守ってくれてたんだ…。うん…また私は頑張れる。
フェイトちゃんや閃君…サイファーさんとアイスドールにも心配かけてた分…私は頑張らないと!!
胸元のレイジングハートを握り締めて…私はバリアジャケットを展開する。
今までのとは、ちょっと違うレイジングハート。蒼と赤のクリスタルが…交互に廻っているの。
これが…私の新しいデバイス。

「さぁ…行こう!!レイジングハート・エンジェラン!!」








高町 なのは
デバイス、レイジングハート・エンジェラン。
所持レアスキル ソラノココロ。ソラノキオクと効果は同じの模様。





あとがき
物凄く期間が開いて申し訳ないです。
アサルトホライズン…色々と不安になってきました…。
ACⅤのサイトを見たくても…重くて開かない今日この頃。…泣けてきますね。
Asは後2話位で終わらせる予定です。



[21516] As編 11話 舞い降りる空の王
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:dcfd38fc
Date: 2011/05/26 00:25
アースラ 医務室

「……シャマルさん…。」

ベッドの上で静かに眠るシャマルの手を握り締め、ノヴァは彼女の名前を呼ぶ。
原作どおり…とまでは行かないが、守護騎士達の消失があったが…シャマルだけは消失を免れた。
以前に彼が作成していた再構築と転移妨害プログラムを、埋め込んだ髪飾りのお陰であろう。
だが…それでも事態は最悪だという事には、変わりない。ダイモンの登場により、闇の書だけでなく、はやてまで連れて行かれてしまった。
しかし、自分勝手だといわれようが…ノヴァにとって、シャマルの無事は何よりも嬉しい事だった。
9年間…ノヴァは彼女を救う為だけに生き…様々な手段を考えてきた。…それほどまでに、ノヴァはシャマルを愛していたのだ。
静かに彼女の髪を掬えば…身じろぎをしながら、おぼろげながらも、眼を開けた。

「…ノヴァさん…?あれ、私…どうして…。」
「シャマルさん…!!無事で…無事でよかった…!!」
「きゃ…。ノヴァさん…泣いてるん…ですか?」

身体を起こしたシャマルをノヴァは力いっぱい抱きしめた。突然、そんな事をされて、驚くシャマルだが…彼が涙を流し、泣いている事に気が付き…戸惑ってしまう。
一緒に出掛けていた時は、飄々として…何時も、胡散臭い笑顔を浮かべていた彼の泣き顔は、まったく想像できなかった。
それでも、シャマルは表情を和らげ、彼の背中を…ゆっくりと優しく…慈しむ様に撫で始めた。
、ふっとシャマルの頭の片隅で…昔、こうして誰かをあやして上げていた様な…そんな記憶が…よみがえってきた。

・5分後・

「落ち着きましたか?」
「いやはや…見っとも無い所をお見せしました。」

バツが悪いようにして、頭をかきながら、ノヴァはメガネを直すと、傍らの椅子に腰を下ろす。
幾ら好きだとは言え、泣き顔を見られるのは、流石に恥かしかったようだ。

「…ノヴァさん、ここはどこなんですか?」
「…ここは管理局の航行艦内医務室です。」
「管理局…!?…なんでノヴァさんが!?」
「シャマルさん、落ち着いてください!!…思い出してみてくださいよ。…公園でなにがあったのか。」
「公園で……あ…。」

詰め寄ったシャマルの肩を掴んで、ベッドにノヴァは押し戻し、落ち着かせる。最初こそ、何故自分がここに居るのか、わからなかったシャマルだが、
ノヴァの言葉で公園での出来事を…ダイモンと遭遇した事を思い出した。
はやてが連れ去られた事、魔方陣に囲まれ、シグナム達が消された事。…だが、何故、自分だけ無事なのだろうか…。
ふっと、考えるようにして…髪に触れると、何時もそこに付けてあった髪飾りが無くなっている事にシャマルは気が付いた。

「あ…。髪飾りが…。」
「それなら、ここにありますよ。」

そういって、ノヴァが差し出したのは、黒焦げになった髪飾り。確かに、所々に彼からプレゼントされた髪飾りの名残が、残っている。
折角、貰ったプレゼントがこんな風になってしまったのを見て、ほんの少し悲しそうにするシャマルだが…ノヴァは笑顔でその手を握る。

「…これは、シャマルさんを護る為に作ったんですから…これでよかったんですよ。」
「私を…護る為に…?ノヴァさん、貴方は…何者なんですか…?」
「そうですねぇ。…とりあえず、管理局と僕との関係について…お話しますか。」

ノヴァはおもむろに、管理局と自分の関係。今の状況等を簡単にシャマルに説明をする。
最初こそ、驚いたシャマルだが、ノヴァの真摯な態度で落ち着き理解をしていた。

「けど、これだけは信じてください。僕は…シャマルさんを騙す為に近づいたわけじゃありません。」
「…わかっています。貴方は、そんな事をする人じゃないですし…私も楽しかったですから。」

この青年の根は真面目だという事を、シャマルは理解していた。一緒に出かけてたときも、自分より早く待ち合わせ場所にいたし、こちらの事を優先してくれていた。
そんな彼だからこそ…シャマルも信じ、淡い想いを抱いているのだ。

「よかった。……これから、闇の書とダイモンとの戦闘があります。なにか知っている事があれば、教えてくれませんか?」
「…ダイモンについては、何もわかりません。同じ書の中に居ても…まったく気が付きませんでした。闇の書については……」
「大丈夫ですよ。…ここの船の人達は、みんな優しい。…きっと他の仲間の人たちを助けてくれます。」

握っている手に力を込めて、シャマルを勇気付ける。今はどんな情報でも欲しいのが本音だ。

「…闇の書には管制人格が存在します。恐らくですが…その意思もダイモンが乗っ取っていると思います。ですから…彼女もどうにかしないと…」
「主であるはやてちゃんや、他の守護騎士も助けれない…という事ですか。」
「お願いします…!!私達はどうなっても良いんです…。けど、はやてちゃんだけは…はやてちゃんだけは助けてあげてください…!!」

懇願するように…祈るようにするシャマルを再び抱きしめ、ノヴァは先ほどされたように背中を擦る。

「大丈夫ですよ。…絶対に助かります。助けます。…ここには多くの英雄達が居るんですから。」
「えい…ゆう?」
「えぇ。…きっと彼らなら、はやてちゃんだけでなく、守護騎士達を救えます。…戦乱が起こるから…英雄が現れるんです。
世界に意思があるからこそ…英雄達はここに居るんですよ。」

ブレイズ、オメガ、閃。この3人はきっと英雄になるべき存在だろう。だからこそ…ノヴァは信じることが出来る。
彼らなら…世界すら救えるのだと。そして…今、眠っている英雄も…きっと目覚めてくれるだろうと…。







・ブレイズ・

「ようやく見つけたぞ…。」

ダイモンの追跡を開始し、1時間。ようやく、奴らが居る座標を特定できた。
場所は無人世界の荒野。…サーチャーを送り込めば、ダイモンと名乗った球体と、3本の十字架が見えた。

「これは…公開処刑とでも言いたいのか…!?」
「とことんふざけた真似をしてくれるな。」

クロノと俺の口からこぼれる怒りの言葉。…十字架には、3人の守護騎士が貼り付けにされていた。
どうやら…奴は完全に消さずに、俺達の到着を待っているようだ。本来ならば降服勧告をするんだが…奴らには無用だ。
クロノも同じようで、控えている閃、フェイト、アルフに出撃指示を出す。…今回はもう1人居るが…組みたくは無い。

「フェイト、閃。出撃だ。…シルヴァリアスも出てくれ。」
『あいよ。…主任にイジェクトの調整は頼んであるから、出来たらオメガも出撃させてくれ。』
『………あんなのと一緒に戦いたくない。』
『同じく。』
「文句を言うなフェイト。一応はシルヴァリアスも局員になってるんだ。…はぁ。クロノ、俺も出る。」
「あぁ。…無事に帰ってきてくれ。」

現在、艦長は本局でダイモンについての報告を行っているはずだ。だから、今のアースラはクロノが艦長代理として指揮を執っている。
さて…シルヴァリアスも戦力として出るが……閃やフェイトとは折り合いが悪すぎる。フェイトにアルフなんて、あからさまに敵意をむき出しにしている。
…実際に、俺だって奴と共同前線などやりたくもない。
…だが…今の奴は【管理局評議会】直属の魔導師だ。…何時の間に、そんな地位に付いていたのか…。っと、余計な事を考えるな…。
今はダイモンとの戦闘だけを…考えろ。

「スペシネフ。…行くぞ。」
『イエス、マイロード。…見慣れぬ敵です。どうや油断なさらぬように…。』
「わかっている。…だが、ここまでコケにしてくれたのだ。…屠るぞ。」



無人世界 荒野


「くくく…来たか。管理局の犬どもよ。」
「ダイモン。散々、おちょくってくれたな。…覚悟は出来てるだろうな?」
「ははは…。覚悟とは…面白い事を言うものだ。…よかろう、守護騎士達を消す前に…面白い余興を演じようではないか…!!」

哂いながら、ダイモンは闇の書を転移させると、魔方陣を展開する。…攻撃じゃない…?
光が収まれば、奴の傍らに銀髪の女性が控えていた。なるほど、あれが官制人格か。…見た限りでは、完全に奴の支配化か。

「リインフォースと…主であった者は名づけていた。くくく…祝福の風か。…ならば、貴様らに風を与えよう。…死を運ぶ黒き風をなぁ…!!」
「来るぞ。閃はバックアップ、フェイトは上空の敵を殲滅、アルフはフェイトの援護だ。」
「わかった。…アルフ、背中、お願いね。」
「任せときなフェイト!!」
「ふん、僕は好きにやらせてもらうぞ。」
「……勝手にしろ。…行くぞ!!」

官制人格であるリインフォースが手を振るえば、ダイモンと名乗った球体より、一回り小さな球体が幾多も生み出される。
さしずめ、ダイモン・オーブと言ったところか…!!
閃は周囲に防御障壁を展開し、こちらのバックアップをしてくれる。…彼の妨害魔法のお陰で、多少は奴らの攻撃の誘導性能は下がるだろう。
俺は誘導攻撃をスペシネフで弾き飛ばし、一番近くに居たオーブに接近する。

(…これならば、簡単に破壊できるか…?)

だが…それを予期していたのか、オーブが光り、全方位に砲撃魔法を放つ。ちぃ…魔方陣が展開しないから…予備動作が無いか…!!
だが…スライディングで回避し、真下に潜り込めば…

「攻撃手段を持たんだろう…!!」

下段から魔力鎌を振り上げ、縦に両断し、オーブを破壊する。…耐久力自体はまだ強くないようだな。…これなら、いけるか…?
そのまま、クローに魔力を収束し、別のオーブの外郭を砕き割り、中枢になっているコアを引きずり出し、握りつぶす。培養液なのか…妙な液体が顔に付着するが…害はないようだな。

『マイロード。…戦い方が悪魔のようですね。』
「今更だな。…敵には容赦しない。次だ…!!」





・フェイト・

「はぁ!!」

身体を一回転させて、周りに居たオーブを両断する。…うん、これなら、勝てる。
新しいバルディッシュのモード、ザンバーフォームで私はオーブを切り裂いていく。

「よし、フェイト、こっちも粗方、片付けたよ。」

アルフにお願いしていたオーブに簡単に壊せたみたい。下を見れば、ブレイズがオーブを切り裂いたり、クローで砕いたりしている。
…ますます戦い方が激しく…そして凄くなっている。…私のハーケンより大きな魔力鎌を自由自在に扱えるなんて…やっぱり凄い。

「っと、フェイト、まだまだ来るみたいだよ。」
「…うん。わかってる。…こんな奴らに絶対に負けない…!!」

私は両手でバルディッシュを構え、周りに現れたオーブをにらみつける。

(…こいつらが居たせいでお兄ちゃんは…!!)

頭がカッと熱くなる。…だけど、駄目。ここで無理は出来ない、暴走して…戦ってもお兄ちゃんは喜んでくれない。
落ち着いて…落ち着くの私。
ソッと髪に付けている蒼いリボンに触れて、心を落ち着かせる。…うん、もう大丈夫。

「お前達なんか…私は負けない!!」

閃が組み込んでくれた慣性制御のお陰で、私もお兄ちゃんみたいに、急制動、急加速を使えるようになっている。
トップスピードで接近して、通り過ぎるようにして、急制動を使って180度ターンをして後ろに回りこんで、バルディッシュを振るう。
巨大な魔力刃に両断されて、オーブが地面に落ちていく。確かに…簡単に倒せるけど…

「数が…減らない…。」
「次から次へと沸いてきて、きりがないよ…!!」

アルフと背中を合わせて、構える。…さっきから、倒した数だけ、オーブが現われる。…ううん、倒した数より…多い。
まさか…遊ばれている…?

「それでも……絶対に負けない…!!」
「あたし達を…甘くみるんじゃないよ!!」






「くくく…予想外に頑張ってはいるが…時間の問題か。」

不気味な笑い声を響かせ、ダイモンは傍らのリインフォースを動かし、新たなオーブを作り上げる。
最初は弱いオーブを作り、ブレイズ達の魔力を消耗させる。そして、徐々に強いオーブを作り上げ、ジワジワと追い詰めていたのだ。
現に、フェイトとブレイズはオーブが強くなってきている事に気が付き、ダイモンの狙いに感づいていた。
そして気が付けば、周囲を完全に囲まれ、身動きが取れない状況にまで追い詰められていた。…シルヴァリアスは別のオーブを追撃し、前線から離れた場所に居る。

「はぁ…はぁ…!!」
「…ペース配分をしくじったか…。」
「つぁ…右手が思うように動かないね…。」

降りてきたフェイトは肩で息をし、ブレイズも額に汗をかいていた。アルフもオーブを砕きすぎたのか、右手が動かなくなってきている。
だが、ダイモンは容赦せずに、幾つものオーブを生み出し、更に包囲を厚くする。

「楽しませて…もらったぞ。管理局の犬どもよ。だが我らも暇ではないのだな。…幕引きといこうじゃないか。」

リインフォースが手を挙げ、魔方陣を展開すると、オーブも一斉に光り始めた。どうやら砲撃魔法を一斉に放とうとしているようだ・
これにはブレイズに焦りの表情を隠せない。

「流石に拙いか…。」
≪一か八か、俺の魔法で…≫
「駄目だ、閃。…その後がどうにもならないだろう…。」

如何に閃のアサルト・セルが強力とはいえ、ただの一発限りの特大魔法。その後の攻撃手段を持たないのだ。そんな危険な賭けをさせるわけにいかない
ここまでか…と、諦め気味のブレイズだったが…それすに吹き飛ばす…強い声が…響き渡った。

「スターライトブレイカぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「…なにぃ…?」


天から降り注ぐ桜色の魔力光。それが多数のオーブを巻き込み…文字通り、消滅させていく。
その魔力光は…ブレイズが知っていて、その声は…フェイトが望んだ声であり…その姿は閃が知っている…優しき白の魔導師 高町なのは。

「なの…はぁ…!!」
「お待たせ、フェイトちゃん!!」

涙声を出すフェイトの近くに降り立つと、なのはは今までと同じ笑顔を見せ、彼女を安心させる。

「まったく…心配してたが…もう大丈夫なのか?」
「ブレイズ君。もう大丈夫だよ。私はまた…飛べるの。」
≪遅いっての。…なのは、よくきてくれたな。≫
「閃君。…ありがとう。私…自分がどうしたいのか…決めたよ。」

なのはは決意を持った瞳で、ダイモンと対峙する。その後姿は…可憐でありながら強い。

「1人増えただけで…どうにかなるのか。リインフォース…片付けろ。」

忌々しそうにダイモンは声を荒らげ、リインフォースを操作し始める。彼女が右手を突き出すし…見知った蒼い魔方陣が展開される。
それは…アジムとゲランを葬ったメビウスの最強魔法…ユリシーズだ。

「ユリシーズだと…!?」
「くはははは!!!たかだか1人増えただけで、この魔法が防げるか…?」

高笑いするダイモンだが…なのはは静かに正面から向き合い…レイジングハート・エンジェランを握り締める。

「空よ…。私に力を…貸して!!」
「なん…だと…?」

その声と同時に…なのはの身体に集まり始める魔力。それは…メビウスのコアと彼女のコアが融合した事によって生まれたレアスキル【ソラノココロ】
メビウスのように常に供給されているわけではないが、それでも一瞬で特大魔法クラスの魔力を集める事が出来るのだ。
今までとは違う魔方陣を展開し…なのはは決意の篭った瞳で…リインフォースを見つめる。

「私には聞こえるよ。…貴女の助けてって声が。だから…私は全力でぶつかるの。手加減は…しないよ!!」
…ありがとう。けど…私より…はやてを…。
「放て、リインフォース!!」
「堕ちろ、暗き闇の悪意よ…ユリシーズ…!!」

なのは達目掛けて放たれる蒼い極光。だが…それを打ち返すかのように…既になのはは新しい砲撃魔法を…作り上げていた。

「一撃必殺…ホーリーライトブレイカぁぁぁぁぁ!!!!」

レイジングハートの蒼と赤のコアが光…スターライトブレイカー以上の魔力光がユリシーズとリインフォースを飲み込んでいく。
たとえ、メビウスには劣るユリシーズとはいえ…それを飲み込む程の威力を放てる彼女は…正に天才。
光が収まると、力なくリインフォースは地面に倒れこみ…消えていく。どうやら、闇の書の中に戻ったようだ。

「………」
「…凄まじいな。だが…ダイモン、これで貴様の手札はなくなった。…大人しく降伏しろ。」

なのはの砲撃の威力に呆気に取られていたが、ブレイズは頭を振り、一応ダイモンへ降伏勧告を始める。
オーブも消え、それを作っていたリインフォースも消失した今…残るのはダイモンのみ。
だが…ダイモンはそれすらも余興だと言わんばかりに…哂い始めた。

「くくくく…はははははははは。ここまで頑張るとは思いもしなかったよ、管理局の犬どもよ。…だが…この程度で追い詰めたつもりか…?」
「なんだと…?」
「まだ…こやつの相手をしてもらっていなかったのでなぁ…。さぁ、来たれ、処刑戦機…ジグラット。」

ダイモンの背後の空間が割れ…中から巨大な影が姿を現す。白く機械的なボディをし…4本の足で巨体を支える影。
ダイモンの保持する機動兵器、ジグラット。

「まだこんなものを…隠していたか…!!」
「はははは、さぁ、こいつとも…遊んでもらおうか!!」











・メビウス・

ここは…どこだろう…?
私は真っ白な空間を漂っていた。

「メビウス・ランスロット。私の声が聞こえますか…?」
「誰…?」
「あぁ…やっと、声が届いた。」

何処からともなく…女の人の声が聞こえてきた。
向こうも私の声が聞こえたみたいで…嬉しそうにしている。

「メビウス…よかった。私の声が聞こえるのですね…。」
「うん、聞こえてるけど…貴女は誰…?」

なんだろう…凄く懐かしくて…どこかで聞いた事のある…優しい声だ。

「私は…タングラム。貴方の心の空で…たゆたうもの。」
「タングラム…?」

…前に父さん達に聞いた事がある…因果律制御機構…?
どうして…それが私のところに…?

「私は貴方のお母さん、サイファーと…親しかったのです。…もう、彼女の願いに私は答える事が出来なくなってしまった。」
「…どうして…?」
「…それはいえません。けど…その代わりに、息子である…彼方の事を見守っていました。」

目の前に…綺麗な女の人の姿が浮かび上がる。…この人がタングラム…?
女の人は優しいえ笑顔を浮かべて、私の頭を優しく撫でる。

「メビウス。今、世界に…悪しき闇が訪れようとしています。」
「…悪しき闇…?」
「はい。…何れは世界を覆いつくし…全てに悲しみをもたらす存在。…過去の亡霊、ダイモン。…この者達を…放っておけません。」
「ダイモン…。」
「現に彼らは…既にその牙をむいています。…貴方の大切な者達に…。」

タングラムが指差した先には…なのちゃんやフェイト…ブレイズさん達が黒い球体と戦っている姿が映し出されていた。
みんなが…戦っている…!?

「ダイモンは闇の書に潜み…その主である八神はやてを吸収する事で…完全な復活を遂げようとしています。」
「はやてちゃん…を!?」
「メビウス、お願いです。ダイモンを…倒してください。これは…貴方にしか出来ない事です。」
「私に…しか…?」
「かつて…ベルカに貴方の様な魔導師が居ました。ただ、空と共にあることだけを望んだ魔導師、空王と呼ばれた彼と…貴方は似ている。」
「空王…?」
「ダイモンの野望を…幾度も阻んだ空王。その血を受け継いだ貴方なら…彼らの野望を砕くこともできるのです。」
「…私は野望とか…空王とか何も知らないよ。」

そう…何も知らない。どんな血筋だろうが…どんな役目があろうが…私は私。
だけど…

「だけどね。…なのちゃんやフェイト…そして、はやてちゃんを傷つけるのなら…私にとって…敵だ。」
「メビウス…!!」
「…みんなを護る事が…世界を護る事につながる。…そして、世界を護る事が…みんなを護る事につながる。…タングラム、私は…戦うよ。」
「あぁ…なら…私も貴方に…もてる全ての力を貸しましょう。ですが…覚えて置いてください。私を使うという事は…貴方は神にも等しい力を持っていると…」
「使わないよ。…力を貸してくれるのは嬉しいけど…私は貴女を使わない。…そうだな…相談相手になってくれる…?」

運命を操作したりとか…私はそんな事をしたくない。私は神様になんてなりたくないんだ。私は…私って言う人間。
その答えに驚きながら…けど、納得しながら、タングラムは優しく微笑んでくれた。

「…わかりました。なら…この剣を持っていってください。」
「…これは…?」
「騎士を殺す為に作られた…騎士の剣です。貴方になら…扱えます。」

紅い光で出来た剣を私が握ると、光が集まり、紅いペンダントに形を変えた。

「そして…この子もつれていって上げてください。」
「わっ……。君は?」

何時の間にか、私を抱きかかえるようにして、巨大な翳が後ろに控えていた。
なんだろう…甘えるようにして頭を擦り付けてくる。

「その子は…強大な力を持っていますが…まだ心は幼いのです。どうか…その子も大切にしてあげてください。」
「…うん。わかった。」
「ダイモンは…人知を超えた存在です。ですが…人智を超えた化け物を打ち倒すのは…それ以上の化け物が世に現れた時なのです。
だけど…その美しく気高き化け物を、人はきっと…こう呼ぶでしょう…【英雄】と。メビウス…貴方は…空の英雄なのです。」
「はは…英雄…か。恥かしいけど…そうなれるように頑張らないとね。」
「さぁ…貴方の大切な者達を…助けてあげてください…!!」






・なのは・

「ぐ…!?」
「ブレイズ君!?」

砲撃魔法を受け止めたブレイズ君がその場に膝を着いて…胸を押さえる。
ずっと前にも見たことがある…。戦いすぎると起こる発作だって言ってたけど…。

「なのは…余所見を…するな!!」
「あ…きゃぁ…!?」

ジグラットの誘導弾を障壁に防ぐけど…衝撃が完全に防ぎきれなかった…。
こっちが攻撃しても…向こうの障壁に全部阻まれちゃうし…砲撃魔法を使いたくても、詠唱をさせてくれない。
もう、フェイトちゃんも避けるだけで精一杯になってきているの。

「くくく…さぁ…管理局の犬どもよ。ここまでにしようか…。」
「ち…やばいぞ。」

ジグラットの頭の部分が延びて…凄く長い砲塔が出てきた。…4本の足にそれぞれついている魔力コアから、魔力が送り込まれている…?
感覚でわかる…あの魔法が直撃したら…耐えれない…。けど…私の後ろには…ブレイズ君やフェイトちゃんが居る…。
絶対に…避けれない。

「なのは…逃げて…!!」
「フェイトちゃん、私は…逃げないよ。絶対にもう逃げない…!!」
「くくく…すばらしい友情だ。…どうだ、高町なのは。…我らの元に来ると言うのならば…貴様だけでも助けてやろう。もう…諦めろ。」

…突然、なにを言うと思ったら…そんな事を言うんだ。
なんでかわからないけど…私は小さく笑って…大きな声で…想いを叫んでいた。


「諦めないもん…挫けないもん…絶対絶対…負けないよ…!!フェイトちゃんやブレイズ君を、みんなを傷つけて…メビウス君を…
あんなふうにしたお前なんかに…私は絶対に負けない!!私は…みんなと一緒に居るんだもん。
メビウス君と…ずっとずっとずっと!!一緒に居るだもん!お前なんかの仲間に絶対にならない!!」


心が叫ぶように…私は自分の想いをぶつける。絶対に…こんな奴らなんかに…負けない…!!

「そうか…ならば…散るが良い!!」
「なのはぁぁぁぁぁ!!!!」

後ろでフェイトちゃんの悲鳴が聞こえる…だけど、私は絶対に動かない。…絶対に受け止める…!!
大きな光が私の目の前に迫ってくる。眼を閉じて…最後の魔力を集めて、止めようとするけど…何時までも…何も来ない。
どうして…って眼を開ければ…。

「…お待たせ、なのちゃん。」
「え…あ…。」
「待たせて…ごめんね。」

私を庇うようにして…立ちふさがる男の子。好きで好きで…大好きで…ずっと一緒に居たいって…想っている男の子。
にゃはは、涙で…霞んじゃう。…だって…だって…優しく笑っているメビウス君が…目の前に居るんだもん。

「ば…かな…。何故、貴様がここに…。」
「さてね。…もう…私の大切ななのちゃんを…みんなを傷つけさせはしない…!!」

メビウス君は両手を広げて眼を閉じると…蒼と紅の光が…両手に集まっていく。

「汝は天駆ける真白き閃光。そして約束されし絶対勝利の剣なり!!来たれ!!エクスキャリバー・ホワイト・グリント!!」」

右手には…今までとは違って真っ白になったエクスさんが握られている。それにバリアジャケットも…蒼から純白で…袖には深紅のラインが入っていて…凄く綺麗。

「汝は紅き剣。騎士を屠る為に、創られた聖騎士なり、来たれ!!!!断罪の刃!!ファイヤフライ・ホーリーナイト!!」

左手には、エクスさんと同じ形のデバイスだけど…色がこっちは深紅。メビウス君の新しい…デバイス…?
そして…メビウス君の背中からは…まるで光で出来たような翼が広がっていて…凄くかっこよくて凄く綺麗…。

「く…だが…貴様だけで、このジグラットに勝てるか…!?」
「私だけじゃ…ないんだよ。…この子も居る。」
「…馬鹿な…貴様…まさか…!!」
「我が盟約の名の下に…虚空の狭間にてまどろむ幻獣よ…我の元に…こい!!ヤガランデ!!」

メビウス君の声に答えるようにして…大きな翳が私とメビウス君を庇うようにして…姿を現した。
青紫色をした…大きな翳。けど…その眼には優しい光が…満ち溢れている。

「さて…ダイモン。私とも…戦ってもらおうか…!!」




右手には天駆ける純白の神剣。左手には騎士を殺す聖騎士の聖剣。付き従うは紅きガルムの魔犬。
王を守護するは虚空の幻獣。空を愛し、空に愛されは者…空王なり。
新たに受け継ぐ王の名は…メビウス・ランスロットなり。








メビウス・ランスロット、覚醒。

デバイス・エクスキャリバー・ホワイト・グリント。
      ファイヤフライ・ホーリーナイト。
バリアジャケット 純白のコートに細部に深紅のライン。
光の翼習得。(某ガ○ダムV2のあれ。)




あとがき



主人公完全復活!!さて…次回でラストぉぉぉ!!
ヒロインのピンチに駆けつけるヒーロー!!(2回目)
最強主人公には欠かせない二刀流で翼!!
そして、この小説。これをしたくて書き始めました。…まだまだ「これがしたい」と言う事が沢山ありますので…ご期待を?(笑)




[21516]  (妄想ネタ)アナトリアの傭兵
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:dcfd38fc
Date: 2011/06/11 23:00
久々の更新がこんなので申し訳ないです。
騙して悪いが妄想なんでな、ガッカリしてもらおう。
それでも、大丈夫だ、問題ない。と言う方はどうぞ…。
































旧ウスティオ領 森林地帯、野営地。

ゼロが傭兵団【レイヴンズ・ネスト】に保護され、半月が過ぎた。
最初こそ、戸惑った雰囲気の彼女だったが、気さくな傭兵達のお陰で、最近はずいぶんと溶け込んできている。
ちなみに、愛称は【お嬢】である。どうやら、丁寧な言葉遣いや、物腰の柔らかさでそう呼ばれているようだ。
最近では、レイピアと一緒に料理や洗濯などを行うようになってきており、マスコット的な存在となってきていた。
最もゼロの手料理を食べた一部の傭兵が、相次いで体調を崩しているが…。

「お嬢、洗濯物もってきましたよ。」
「あ、ありがとうございます。乾しておきますから、そこにおいててください。」
「あいさ。」

男性が持ってきて洗濯物を、木と木に張り巡らされたロープに乾しながら、ゼロは軽く肩をトントンと叩く。
如何にシーツ等とはいえ、数十人単位の物を乾すとなると、華奢な彼女には少々辛い。

「あ~…お嬢、辛いなら、俺がやりますぜ?」
「大丈夫です!!私のお仕事ですから。」

心配そうに、洗濯物を持ち上げようとした傭兵を止めて、ゼロは笑顔を作る。
彼女自体、この仕事は嫌いではない、むしろ、好きなのだ。こうして、誰かの役に立っている事が…なによりも楽しく感じている。
傭兵もそれを理解したのか、軽く頭をかきながら、向こうで冷やかしの声を上げている仲間達の方に歩いていった。

「残念だったな。アプローチ失敗か!!」
「うっせぇ!!テメーだって、失敗しただろが!!」
「んだとこら!!」

何故だか、取っ組み合いを始める傭兵達を見ながら、ゼロは笑顔を浮かべ、その光景を眺めながら、洗濯物を乾し始めた。
傭兵…と言うと、荒っぽく粗暴な印象があるだろう。実際に、ここの傭兵達もそうである。だが…それでも彼らは純粋な…そう、まるでヤンチャ坊主のような印象があった。
取っ組み合いをしている傭兵を止めるわけでもなく、逆にはやし立てて面白がっているものも居れば、賭けをするものも居る。
ただ…全員が楽しみながら…笑いながら愉快にしている。まるで…大きな家族のような傭兵団だと…ゼロは思っていた。
そして、家族には母親がつき物だ。

「こらぉ、お前ら、遊んでないで、訓練でもしな!!」
「ああ姐さん!!シューターはまずいですって!!いって!!」
「ったく…どいつもこいつも…」

レイピアが一喝すると、母親に怒られた子供のようにして、傭兵達はそれぞれが訓練に使っている広場に走り出した。
額を押さえながら、レイピアはため息をつくと、ゼロの方へと歩み寄ってくる。
彼女にとってゼロは妹のような存在であり、逆もまた然りである。

「お疲れ、ゼロ。あの馬鹿共から、なにもされなかったかい?」
「もう、大丈夫ですよ。レイピアさんは心配しすぎです。皆さん、いい人ですから。」

疑いを知らずに笑うゼロを見て、レイピアは再びため息をこぼす。
女である自分が見惚れるほど、ゼロは整った顔をしている。実際、若い傭兵達はゼロに好意を抱いている者も居るほどだ。
最も、一般的な良識を持ち合わせる彼らが、ゼロに妙な事をする訳は無いと思っているレイピアだが…それでも心配なのだ。

「はぁ…あんたはもう少し、人を疑いな。…洗濯物はあたしが乾しとくから、うちの旅団長を起こしてきてくれるかい?」
「スカーフェイスさんを…ですか?はい、わかりました!!」
「やれやれ…嬉しそうにしちゃって。」

走っていくゼロの後姿を眺めながら、レイピアは面白そうな笑顔を浮かべる。
何故だか、あの仏頂面のスカーフェイスにゼロは懐いていた。最初こそ、オドオドしていたのだが、今では彼を起こすのもゼロの役目になっていたのだ。
スカーフェイス自身は邪険にしているが、それが一種の照れ隠しなのだとレイピアもわかっている。

「…まっ、4歳の差なんて、大してないからね。どうなることやら。」

黒い笑顔を浮かべながら、レイピアは残っている洗濯物を乾し始めた。
…尖った黒い尻尾が見えるのは…錯覚だと思いたい。




「…スカーフェイスさん?」
「………」

何時も、彼が寛いでいるハンモックを覗き込むと、胸の上に読みかけの本を置いたまま、スカーフェイスは静かに寝息を立てていた。
半月ほど、生活をともにしているが、彼のこうした寝顔を見るのは、ゼロは始めてであった。
伸びた前髪が、サラサラと風に揺れ、何時ものスカーフェイスのとは違う印象をうけた。

「……なんだ?」
「ひゃ!?おお起きてたんですか!?」
「……さぁな。」

ワタワタするゼロを無視して、スカーフェイスは起き上がると、つまらなさそうに自分のテントに歩き出す。
慌てて、彼の後を追うゼロだが…

「ま…まってください!!どうして早歩きなんですか!?」
「俺の勝手だ。…お前こそ、なんで付いてくる。」
「私はレイピアさんに、起こしてくるように頼まれたんです!!」
「…起きてるから、問題はないだろう。」
「どうせ、テントに入ったら、寝るつもりなんですよね?だったら、食事の用意くらい、手伝ってください!!」
「…ちっ、いちいち、煩いな…。…お前は料理をするなよ。」
「なななんでですか!?」
「自分で考えろ阿呆。」

小さく舌打ちをしながらも、スカーフェイスはテントに無造作に本を投げ入れると、調理機材の置いてある場所に向かう。
面倒でも、ゼロには絶対に料理をさせたくないようだ。実は一度、ゼロが作った食事を食べたスカーフェイスだが…その後に胃が物凄い事になったのだ。
スカーフェイスだけでなく、チャーリーも一口食べただけで、卒倒しているのだ。…作った本人は食べても問題なかったようだが…。
こんな感じで、ゼロはネストに溶け込んできていた。





深夜、スカーフェイスのテント。

「…一度、戻るか。」
「だな。物資も心許無いし、この情勢じゃな。」
「仕事には困らないんだろうけど…。相手は選びたいね。」

スカーフェイス、チャーリー、レイピアの3人は地図を見ながら、何かを考えていた。
ウスティオ領をほぼ制圧したベルカ公国。恐らくは、次はミッドと管理局が相手になるだろう。
だが…正直に言うと、ベルカは量はともかく、質では圧倒的に管理局を上回っている。このままいくと、苦戦は免れないだろう。
そこで、彼等のような傭兵が必要になってくる。だが、それは質では勝るベルカも同じ事。ある程度の質と量を持つ傭兵団は、両者にとって重要な存在になる。

「どちらに付くべきか…。」
「あたし的には、管理局の方が良いと思うね。正直、今のベルカは好きになれないよ。」
「俺もだな。…聞いた話じゃ、軍の上層部の一部に、選民思想が入ってるらしいぞ。」
「…そうか。…確かに、あまり良い噂は聞かないな。…まぁ、向こうも俺達については、同じように思ってるだろう。」
「違いない。ずいぶん、派手にやったからなぁ。…お前が。」
「うんうん…フェイスが異様に大暴れしてと思うのは、あたしだけかい?」

ジトっとした眼でスカーフェイスを見る2人だが、当の本人は何処吹く風できっちりと無視している。
以前に、彼等の本拠地の街にベルカが侵攻してきたときに、派手に暴れたのだ。もっとも、一番派手に暴れ、ベルカに大打撃を与えたのは旅団長である彼だった。

「なんにせよ、戻るべきだな。…要らん荷物まで抱え込んでいる。」
「ゼロの事か。結構、良い娘だと思うんだがなぁ。気が利くし、明るいし。…料理は壊滅的だが。」
「そうそう。それに、フェイスによく懐いてるじゃないか。邪険にしちゃ可哀想だよ。」
「どうだかな。…何故、あいつは追われていたのか…。」
「確かに、気になるね。」

出会った頃は、常に何かに怯えていたゼロだが、最近になってようやく明るい笑顔を見せるようになってきた。
恐らくだが、ネストの皆が、彼女を気遣い、護ってあげているからだろう。本人は否定するだろうが、スカーフェイスも口では色々と言うが、心配はしていたのだ。
その反面、自分の事を一切話そうとはしない。何度か、レイピアがやんわりと問いかけても、何も答えようとはしなかった。
まぁ、答えないからといって、追い出すような真似をする彼らでもないので、良いのだが…。信じてもらえてないのかもと、少し悲しくはなるのだ。

「まっ、何れ話してくれるさ。んじゃ、明日から、移動って事で良いな?」
「あぁ。そうしてくれ。…しかし、妨害魔法がこれほど厄介だとはな。」
「そう言うなよ。のんびり行けると思えば良いじゃねぇかよ。」

沈んだ空気を吹き飛ばすように、チャーリーが笑顔でスカーフェイスの背中を叩く。
ベルカは自国領土と占領地に、特殊な結界発生システムを設置しているのだ。性能的には、転移魔法を完全に使用不可にし、管理局の長距離進行を妨害。
飛行魔法も妨害されるので、卓越したベルカの騎士達と渡り合うのも難しいのだ。ベルカ軍自体にはその効果を無力化するデータが、デバイスに登録されているので問題はない。
そのデータを解析するか、構築すれば良いのだろうが…そのシステムを作ったのは、かの有名なアントン・カプチェンコ。恐らく、解析までかなりの時間が必要となるだろう。
結局は車両やヘリ等の輸送手段に頼るしかない管理局・ミッドは攻めあぐねているのだ。
なお、ネストは馬車と言う、ある意味で傭兵団らしい移動手段を使っていた。…決して、資金難だから…と言う訳ではないと思う。

翌朝



「よし、荷物は積み込んだな。」
「うぃーす。チャーリー隊長、確認完了しやした。」
「おし、んじゃ、移動を開始すんぞ。…お嬢も乗っけたか?」
「乗っけやした!!」
「乗っけましたって…私、子供じゃありません!!」
「…それはガキの言う台詞だ。」

子供扱いされたのが気に食わないゼロが反論するのを聞いて、スカーフェイスがボソッと言葉を漏らす。
周囲に居た傭兵達は大笑いし、言われたゼロはスカーフェイスに詰め寄っているが、片手で頭を押さえられ、う~う~唸っているだけだった。



数日後


「うわ~…。綺麗なところ…。」
「でしょう?ここがあたし達の故郷、アナトリアさ。」

馬車の荷台から、身体を乗り出して景色を眺めるゼロの眼はキラキラと輝いていた。
レイピアも故郷であるここを自慢するかのように、笑顔で彼女に名前を告げる。
地球に例えるならば、中世ヨーロッパのような建物や、田園風景が広がる街、【アナトリア自治区】
小さな街だが、ここの地下にはウスティオとまでは行かないが、多くの天然資源が眠っている。故に、ベルカに狙われたのだ。
それを退けたのが、この街出身の傭兵団【レイヴンズ・ネスト】だ。…最も、大半はスカーフェイスが撃破したようなのだが。

「なんだ、お嬢。そんなに珍しいのか?」
「いえ…こんなに綺麗な所を見たのは…初めてです。」
「そいつぁ、よかった。俺達の故郷をそう言ってもらえるとは、嬉しいねぇ。なぁ、フェイス?」
「…子供だな。」

読んでいた本から視線を外さないスカーフェイスに、苦笑いしながら、チャーリーはゼロの頭を軽く撫でる。
予定では、ここで当分の間、駐留する事になっているのだ。
久々の故郷で、浮き足立つ傭兵達と一緒に笑いながら…ゼロは何時までも景色を眺めていた。






ウスティオ領 山岳地帯。
ヴァレー基地。

「うむ…残存兵力ではどうにもならんか…。」
「はい。既に9割の空軍戦力を失っています。」

基地の会議室に漂う重苦しい空気。そこに居るのは、ウスティオ家当主や、その側近や軍の幹部達だ。
彼らは、開戦僅か1週間で領地の大半を失ったのだ。それでもなお、管理局との反抗作戦に賭けようとはしているが…如何せん、自身の兵力が壊滅に近いのだ。
恐らくだが、ゲリラとして各地で戦ってくれている部隊も居るだろうが…それでも足りない。
沈黙が続く中、1人の若い幹部が手を上げる。 

「傭兵を…使うのはどうでしょうか?」
「…確かに、彼らならば…ベルカの騎士達とも対等に戦えるのも居るかもしれん。金さえ出せば…な。」
「その通りです。失礼ながら…当家の財宝の一部を売却すれば、雇えるだけの資金は確保できるはずです。」
「…ううむ。仮に雇うとして…誰を雇うのだ?」
「誰とは特定は出来ません。出来る限り、多くの傭兵を。…ですが…1つだけ、確実に味方に付けたい傭兵団は存在します。」
「それは…?」
「アナトリアの傭兵、スカーフェイス率いるレイヴンズ・ネストです。」

ザワザワとざわめき出す側近達。提案をした若い幹部はため息を付きながら、未だに迷っている老人達を呆れていた
騎士達とも戦える傭兵となるとそうそう多くはない。だが、今は少しでも戦力が欲しいのだ。その中でも…ネストの戦力は非常に魅力的だ。
その中でも【アナトリアの傭兵】と異名を取る、スカーフェイスの実力は超一流だ。彼ならば、ベルカの騎士達とも対等以上に戦えるだろう。
ざわめきが少しずつ収まり、上座に座っている当主が静かに口を開く。

「よかろう。…至急、アナトリアに使者を。…ネストと契約をするのだ。そして、財宝も売り払え。領土が戻らぬ以上、宝の持ち腐れだ。余った資金で、基地の整備、
そして、兵達に豪華な食事も出してやれ。…これで今回の会議は終了とする。」






ベルカ、ティンズマルク


「そうか。…逃がしたか。」
「はっ。何者かに邪魔をされたようです。…如何いたしますか?」


窓辺に立つ男性と、片膝を付き、なにやら報告をする女性の騎士。顔半分を銀色の仮面で覆い、素顔は見えないが、赤めの髪をポニーテールでくくっている。

「捨て置け。あの娘は力を嫌っている。…使いはしないだろう。」
「御意。主、管理局についてはどうしますか?」
「…軍部の連中のさせたいようにさせて置け。…私は私で勝手に動く。…烈火よ。お前にも働いてもらうぞ?」
「はっ。我が命、我が剣は主の為に…。」

烈火と呼ばれた女性は、立ち上がると背中を向けている男性に敬礼をする。

「…さて、世界はどう動いたものか。…王はまだ…誕生はせぬ。」





スカーフェイス・ランスロット 二つ名。 【アナトリアの傭兵】
ゼロフィリアス・??? ネスト内のマスコット。通称、お嬢。



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