最近スクライドのSSが増えて狂喜乱舞している私。
流行に乗ってみた。※ちょこっと修正。
「・・・だ、よろしくである。」
教室の中、一人の男子生徒が立ち自己紹介を終える。
彼に集まるものは視線、視線、視線。
たかが自己紹介、何も珍しくはない。
にも関わらず彼に集まる視線は尋常ならざるものであった。
それは、彼の存在が珍しいからだ。
ここはIS学園。
世界各国より、ISについて学ぶために様々な人が集まる『女子高』。
そう、ここは女子高。男子生徒など本来いるはずがない。
ならば、先ほど自己紹介をした人物は女生徒なのか?
断じて否。どこからどうみても男。
ならば何故ここにいるのか?
女子高に男がいて何故許されるのか?
それは、自己紹介をした彼と、その隣で机に伏した少年の『二人』が、世界でただ二人の『男性でありながらISを起動できる人間』であるからだ。
世界の共通認識である、『ISは女性のみが起動できる』を真向から否定した二人の少年。
常識の例外である彼らは、調査・研究・保護、様々な理由から女子高であるIS学園に通っている。
そんな、希少価値の塊である片割れが、机に伏しているもう一人の片割れに話しかける。
「どうしたのであるか、一夏?何を突っ伏しているのだ?」
「お前さ・・・よく平気だな・・・」
「うむ?」
「いや、こんな女の子だらけの所に連れてこられてさ。」
「中々にない経験であるな!」
「それだけかよ・・・」
「それだけではないぞ!私は今!猛烈にインスピレーションが高まっている!」
「なんでこの状況でそんなハイテンションになれるかな・・・」
「なるとも!よいか一夏よ。私には夢がある!その夢を叶えるためには様々な経験は必要不可欠なのである!」
「あぁ。そういえばいつも言ってたなぁ・・・」
「そうとも!私は夢を叶えるために一分一秒無駄にしないのである!
そして、この女子高に通うということは通常経験できないことなのだ、興奮しないはずがない!」
「あぁ、そう。喜ぶのはいいけど興奮とかあんま言うなよ・・・見られてるぞ・・・」
そう言って、一夏と呼ばれた少年は顔を隠すように机に突っ伏した。
彼は、教室中から刺さる視線に耐え切れなかったのだ。
「ふむ。」
一夏のグッタリした様子を見たもう一人の男子生徒は彼を置いて窓際へと歩く。
そして窓際の席に座り、外を眺める女生徒へ声を掛けた。
「久しぶりである。」
「・・・」
無反応。まるで何事もなかったかのように外を睨む女生徒。
「む?・・・久しぶりである。」
「・・・」
「無視であるか?あまりの悲しみに箒の幼きころのツンデレ具合を叫びそうになるのである。」
「やめろ!・・・はぁ・・・久しぶりだな。」
あまりのしつこさに観念したのか箒と呼ばれた少女は、話しかけた少年に向き合い返事をする。
「うむ。ここで箒に会えるとは思わなかったぞ。」
「それは私のセリフだ。・・・よもやIS学園で男であるお前たちと再会しようとは・・・」
「人生とは不思議なものよな!はぁーはっはっはー!」
厭味に気づいているのかいないのか。
少年は快活に笑い、少女は眉間に皺をよせる。
「その煩い口を閉じろ。・・・まったく、貴様は変わらんな。」
「うむ!箒も息災で何よりである!」
「・・・はぁ・・・」
「何故溜息をつくか?」
「貴様には関係ない。」
一刀両断。少年の問いかけに答える義理などないとばかりに即答する。
だが、ここに居る少年はそれで折れるようなピュアハートではなかった。
「ふむ。一夏に最初に声を掛けて欲しかったのだな。」
「なぁっ!?」
「それは申し訳ないことをした。」
「き、き、貴様!」
わなわなと肩を震わせ、ゆっくりと立ち上がる箒。
「落ち着くのである。・・・時に箒よ?」
「・・・何だ。」
「一夏とは話さないのであるか?」
「な!?・・・き、貴様には関係なかろう。」
「ふむ。私はどちらでも良いが、このままでは・・・手遅れになるぞ?」
「・・・どういう意味だ。」
意味がわからないと、少女は少年へ先を促すように睨みつける。
「あそこに居るのは誰であるか?」
「・・・一夏だろう。」
「そう!一夏である!歩く女性吸引機!フラグ一級建築士!そして!ここはどこであるか!?」
「I、IS学園だ・・・」
「そう!IS学園である!女子高なのである!つまり!一夏独壇場!」
「・・・!?」
「箒がもたもたしている内に既にフラグは立っているのである・・・!」
「な・・・なん、だと・・・!?」
「挨拶の初動など些細なこと!そんなことに気を取られていれば一夏の貞操を取られるのである!」
「!?」
まさに青天の霹靂。少女の背中に電流が走る・・・!
「わ、私は、どうすれば・・・!」
突きつけられた現実に箒はふらふらと椅子へ座り込んだ。
その瞳は動揺に揺れ、ぐるぐると回る思考は答えをだせず焦りだけが積る。
「私に任せろ、箒よ。」
「・・・!」
暗い森へ置き去りにされた迷子のように震えていた箒を救い上げるように少年は優しく声を掛けた。
「箒も知っているだろう?私の夢を!私にはドラマティックな再開から恋人の誕生までの道筋など、既に見えているのである!」
「!?」
「さぁ!共に行こうではないか!あのフラグマイスターにフラグを立てるために!」
「あぁ!」
箒は勢いよく立ち上がり、覚悟を決めた顔で少年を見上げる。
そして少年もまた、自信を浮かべた笑みを箒を見せ、二人は駆けるように教室を出て行った。
「・・・はぁ・・・」
ちなみに一夏少年はずっと机に突っ伏していたので、二人の幼馴染の奇行に気づいていない。
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学園の屋上。
二人の男女が向かい合う。
「・・・久しぶりだな・・・」
声を掛けた少女、箒。
「あ、あぁ。久しぶり。」
答える少年、一夏。
少女は屋上の手すりに身を持たれる様に背をゆだね、少年を見つめる。
「6年ぶり、か・・・」
少女は時の流れを反芻するように目を細める。
「そう、だな・・・」
少年もまた互いを隔てた時の流れを感じる。
「随分と会わなかったが、すぐにわかったぞ。」
少女はまっすぐに少年を見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「そうか?俺、変わってないかなぁ?」
少女の言葉に微妙な表情で頬を書く少年。
「いや、変わったさ・・・」
少女は少年の言葉を否定する。
「え?」
少女の意外な言葉に驚く少年。
「・・・格好良く、なったよ、お前は・・・」
ざぁ・・・と一陣の風が二人の間に流れる。
少女は風に攫われた髪を救い上げ耳にかけるように手で梳く。
「・・・」
少年は少女呆然と見やる。
・・・彼女はこんなことを言うような少女だったであろうか?
・・・目の前にいる少女は、こんな仕草をするような人物であったか?
・・・こんなにも、可愛らしいと、俺は感じた事があるだろうか?
少年は、少女に感じた女に動揺し、女に感じた色気に動揺する。
あぁ・・・彼女はこんなにも美しい女だったのか。
「私は・・・」
「え?」
「私は、どうだろう?・・・変わったか・・・?」
少年は目の前に立つ少女に揺れ動く心を、確かに感じた。
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「・・・くっくっく・・・はぁ~はっはっはっはぁ~~~!」
―――屋上で談笑する少年少女から見えない位置で高笑う影。
「シーン構成、ダイアローグ、演技付け、全て脚本どおり。一語一句変えることのない完璧なドラマ!」
―――彼の名は雲慶(ウンケイ)。
「一夏よ!私の偉大なる脚本の中で!」
―――190cmを越える長身に、ピンクのアフロヘアーを持つ、
「ときめいて死ね!(人生の墓場的な意味で)」
―――脚本家を夢見る少年だ。
「いや、箒は全然変わってないな。」
「え?」
「いやぁ、だってすぐにわかったぜ?お前、髪型が前とぜんっぜん変わってないもんなぁ。もし髪型違ってたら気づけなかったって、絶対。」
「・・・貴様・・・!」
「ぬぁ!ストーリーから外れた!?そのような台詞は私の脚本にないぞ!」
夢は遠く、彼は未だ届かず。
うろ覚え雲慶でスマヌ。
絶対に続かない。