チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[28313] 【ネタ】インフィニットストラトス・UC
Name: ノンベーン◆d7ea5a0f ID:6e30acfb
Date: 2011/06/12 04:40
織斑一夏は『ずれ』を感じていた。
本当の自分は此処ではない、『何処か』にあるのだと。平凡に埋没する日常、その中に紛れ込んでいる自分が、まるで異物かのように感じてしまうことがある。

勿論、友人関係や、唯一の家族の姉とも上手くいっていない訳でもないのだが。

既に引退しているようだが、過去にIS(インフィニット・ストラトス)による世界大会で一度優勝した姉は今でも忙しく、未だに何の仕事に就いているのかはっきりとはしないのだが……たまにしか家に帰ってこず寂しい想いを抱える事もある。

勿論、姉に隔意を抱いている訳でもなく、むしろ尊敬してさえいるのであるが、一人で家に暮らし次は何時帰ってくるのだろうか、帰ってきたとしてもすぐ仕事で出て行くのだろうか、と。

そんな思いに囚われたとき、一際強い『ずれ』が脳裏に訪れる。
何時まで姉に自分という枷を嵌め続けているのか、顔すら覚えていない両親は、今何処で何をしているのだろうか。

『ずれ』は自分の中の、それこそ自分ですら知らない『何か』を洗い浚い引っ張り出し、また無理やり脳味噌に押し込んだような、実に雑多な感情を自分に齎してくれる。

……こんな事ばかり考えているからか、周りの友人ですら、自分より『大人』だと感じる時がある。

そういう友人は大体、現実を見据えているような、それとも達観しているような気配を時たま感じさせてくる。その気配を感じたとき、織斑一夏は劣等感を感じるのだ。

自分はこんなところでのうのうと、何をしているのか、と。



事の始まりは、そう難しい物ではない。
就職率が高いと評判の藍越学園の受験を受けに行った日の事だった。
織斑一夏は時折、勘に身を任せる事がある。

とあるビルの中にある試験会場に行く最中の事だ。あの『ずれ』が突如脳裏に瞬いた。

この近くに『何か』が、『何か』がある。

一夏は、目の前にある受験会場を引き返し、ビルの中を走り始めた。
本来、こんな事をしている場合ではない。今すぐ元の場所に戻り、試験を受けるべきだ。

脳の中に居る平凡な自分が、そう語りかけてくる。

そうだ、自分は『日常』の中に戻り、ちゃんとした『大人』にならなければ、そうでなければならない。

脳の中に居る非凡な自分が囁く。

お前は、平凡の中に埋没するようなモノではない。もっと異質な『何か』だ。

その『ずれ』を、直したいんだろう?

そうだ、この脳裏に這いずる『ずれ』を、元来あった場所に、戻さねば。

一夏は足を進める。

この先に、『ずれ』を埋めれる『何か』があると感じて。



「その結果が、これだって言うのかよ。」
織斑一夏は、約三十程もの視線に貫かれていた。それも好奇の視線ばかり、だ。
一夏は今、教室にある一番前の席……それも教卓の前だ、そこに肩身を狭くして座っている。後ろから突き刺さる視線を不快に感じながらである。

そして自分を除いて他すべてが、「女」。
そんなとても羨ましいようでいて実は胃が痛くなりそうな風景。
そう、此処はIS学園。欲望渦巻くソドムの街、とまでは行かないが各国の陰謀が交差し、出来上がった経緯を持つ特殊な学園だ。

何故、こんなところに一夏は居るのか。
答えは至極単純、ISを動かしてしまったからだ。
あの後、暗い部屋で見つけたISに好奇心で触れたばっかりに、だ。
その時、如何様な事が起きたのかISが起動した、してしまった。
ISを動かせるのは女のみ、それをまがりなりにも、男が動かしたとなれば、無理やりこんな所に連れてこられるという事なのだろう。
……研究所送りよりはマシ、という事なのかもしれないが。

『ずれ』は、収まらなかった。



休み時間なのにまったく休息ができない環境の中、一夏は考える。

姉がこんな所で教師をしていたことも驚いたが(経歴を考えれば妥当なのかもしれないが。)何故、自分はあの時あのような、そう、勘どころか、ただ自分の内から湧き出る衝動に、身を任せてしまったのか、と。

あの時予感していた『ずれ』が収まるような事は結局起こらなかった。
ただ、ISを動かしたばっかりに周りが騒々しくなっただけであった。
自分の環境の変化に、戸惑いと憤りも感じてはいるが、起こった事は仕方ないとも考えている。だが、まだ『何か』に出会えていない。

そう、この先に『何か』があるのではないか……と、性懲りも無く期待している。

こんな所に来ても、考える事は何時もと同じ、か。
一夏はそんな自分を、鼻で笑った。
衝動に、周りの流れにただ乗っただけ、逆らいもせずに。だからこんな事になるのだと。
先ほどから何故か突っかかってくる金髪の女と相対しながら、深く沈んだ思考を引き上げる。

「あなた、話を聞いているんですの?」

その金髪縦ロール女は、そう声を荒げてくる。さて、何の話だったか?
しかし、彼女の声はまるでMAに乗っている人のようだ。

「ですから……!」

「俺はカミーユじゃないぞ。」

「誰ですかそれは!?」

さて、誰だろうな。確かこいつの名前はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生という話だ。そしてその立場を振りかざしながら俺に突っかかって……いや、ただ俺が珍しいだけで普通に話しかけて来たとでも言うのか?

高圧的な話し方、見下すような態度、こいつと友達付き合いをする奴は大変だな、と思う。
個人的には、その容姿や声は凄く好みなのではあるのだが。
と、ここで授業開始のチャイムが鳴り始めた。

「早く座らないと、またどやされるぞ。」

「それはあなたでしょう!?まったく……また後で来ますからね!」

そういって自分の席に戻っていくオルコット。彼女の言動や態度は少し気になる所があるものの、自分の好みと合致するので気にならない。むしろ役得、と言ったところか。
そう自分の新たな性癖を自覚しながら、織斑一夏も自分の席へと着席した。
といっても、元々自分の席の近くで話をしていたのではあるのだが。


「これよりクラス代表を決める、自薦他薦は問わない。」
姉である織斑千冬が声を張り上げる。クラス代表とは委員会への出席やら何やら面倒事が多い役職、つまりは従来のクラスの委員長みたいなものらしい。
皆面倒な事は嫌いなはずだ、自分もそう感じている。故に、自薦で出てくる奴は中々居ないだろうが他薦も許可されるとならば……。

「はい、織斑君が良いとおもいます!」

ほらきた、と一夏は溜息をつく。
まるで遊園地のパンダみたいに視線を浴びせられ続けている一夏は、何となくこうなるだろうとは思っていた。
クラスで唯一の男子、とならばその珍しさから厄介事を押し付けられる事もあるだろうと。

だが此処はIS学園、その入試の競争率は他のところとは一味違う。
自分は入試など形でしか受けていないが、本来は一握りの人間しか此処には入学が出来ない。つまりは頭が良かったり、更にはISの操縦経験がある、プライドの高い奴が多分。

「納得が行きませんわ!そのような選出は認められません!」

俺もそうだ、納得が行かない。自分が推薦されるのは概ね理解はしていたが、納得まではいっていない。諦めが悪い方なのだ、織斑一夏は。

「男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!」

最近の風潮はISの出現によって女尊男卑の世の中へと変わっていった。
それが染み付いてしまっているのだろう、少し悲しい事だな、そう一夏は感じた。
織斑一夏は周囲に流されやすい性質を持つが、同時に女性に媚びたりといった自分を曲げてしまう様な事はしない気質を持つ。IS学園に強制入学させられた時からこういうモノと直面するとは思ってはいたが、こうも早く訪れるとは、些か驚く。

「このセシリア・オルコットにその様な屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

一夏としてはこのまま、オルコットがクラス代表になるのが一番楽な道だ。
前説を言う前に、自薦でさっさと立候補すれば話しは早いのに。そう思わずには居られなかった。彼女の声は何故か好みだが、がなり声を上げたてる姿は、余り見たくは無いのだ。

「大体、文化としても後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で……!」

彼女がこの国をどう思っていようが、頑張って耐えて、としか言い様が無い。だが、あの身振り手振りを交えた演説は、見ている分には面白く、面白くも無い授業を受けるよりは、彼女のご高説を受ける方が退屈はしないだろうな、とも思う。
だが一方的にやられて黙っている程我慢強くは無い一夏。
一夏は火に油を注ぐ事を思いついてしまった。

「イギリスだって大したお国自慢は無いだろ、世界一まずい料理で、何年覇者だよ。」

「ぐぅっ、美味しい料理は沢山ありますわ!あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」

そんなつもりは毛頭無い。ただ、お菓子は兎も角、料理で良い評判は聞いたことが無い、そう追加の油を注ぐ前に、火は見事燃え上がったようだ。

「決闘ですわっ!わざと負けたら私の小間使い、いえ、奴隷にしてあげますわ!」

どうやら油を一度に注ぎすぎて、燃えすぎたようであった。




「織斑、本来であれば倉持技研から専用機が届くのだが、試合の予定時刻に間に合わんらしい、あそこは時間を破るのが得意なようだな。」

試合開始直前に、姉にそんな事を言われた。
これから三十分後にオルコットとの試合を第三アリーナで行うというのに、肝心のISが無くては不戦敗ではないか。
こうなれば、今からでも量産型ISの打鉄などを借り受けれないだろうか、と思考を深めていたところに。

「心配はするな、この事態を予期していたのかはしらんが、アナハイム社から機体が送られてきた。兎に角データを取りたいそうだから、遠慮せず存分に使ってやれ。」

アナハイム社、確か元は家電メーカーだった企業で、今ではIS関連企業含めて、世界的に様々な産業に参入している大企業だったはずだ。
元々入るつもりだった藍越学園からの就職先に、その下請け企業等があったのを覚えている。倉持技研というところが機体を送れなかったのも、アナハイムが関係していたのなら遅れた、というのも嘘なのかもしれない。自分の処遇には大人の事情が大きく絡んでいる、改めてそう感じ、顔を顰めた。

「こいつだ、アナハイムの新技術とやらをふんだんに盛り込んでいるそうだ、素人には勿体無い気もするがな。」

姉が指し示した先に、『機体』は存在していた。
直線的な形状が多く、箱を組み合わせてヒトガタのようにした真っ白な機体であった。
ただ特徴的なのが、本来のISは生身を曝け出している部分が多かったが、こいつはそのような部分が一切見受けられず、恐らくは搭乗するときは生身の部分が全て隠れるのだろう、そして……頭部に生える大きな一本角。その機体のバイザーを通す目からは、動いてもいないのに、底冷えする感覚を味わう。鎖に繋がれた猛獣、いや、これは。
私のたった一つの望み、希望の象徴。

「可能性の……獣。」

「何をしている織斑、時間が無い、早くしろ!」

そう急かされ、意識を周りに向けなおす。そうだ、早くこいつに乗って、試合に出なければ、時間もそう無い。そう考え、機体に近づいていく。

『ずれ』は、いつの間にか鳴りを潜めていた。




セシリア・オルコットと織斑一夏の戦闘は、オルコット側の優勢で進んでいる。
試合開始直後から織斑一夏はそれなりの機動性を見せていたがオルコットはまがりなりにも代表候補生、ISの搭乗時間も月とすっぽんの差がある。両手に抱えた大型のライフルで一夏を狙い撃ち、的確に当てていく。一夏のIS、『ユニコーン』に幾ら機動性があろうとも、搭乗者が素人では如何せん宝の持ち腐れだ。
そして更に厄介なのがオルコットのISから射出された『ブルー・ティアーズ』。
ビット状の兵器で、辺りを自由自在に飛び回り一夏に次々と砲弾を当てていく機動砲台。
四方八方からの攻撃に辟易しながら、一夏は自分の状態を確認していた。
相手の攻撃から逃げ回る事に専念して、自分のIS『ユニコーン』がどんな事が出来るのかすら、把握していなかったのだ。まずは武器だ、そう思考した時には既に、視界の片隅に『ユニコーン』の武装が一覧となって表示されていた。
親切だな、と一夏は感じた。このISに触れる前はただ、恐ろしいものにしか感じられなかったこの機体は、少しの間しか搭乗していないのに既に自分の手足になったかのように動いてくれる。身体を包んでいる装甲は、知りもしない父性と母性を同時に想像させてくれる。負けられないな、そう単純に考えた。ただただ、負けるわけにはいかないな、と。

「人の人たる力とやさしさを、世界に示す。」

その聞いた事も無い言葉が、聞いた事も無いはずの声で、頭に染み渡ってきた。
低い男の声だ、老練とした雰囲気と、ただ暖かい気配に満ちていた。
一夏は、このISに、親を求めているのかもしれない。
そう馬鹿げた考えが額の奥で通り過ぎていったとき、赤く、それに緑が混じった光が目の前に見えた。いや、これはIS自体から漏れ出している光だ、装甲の継ぎ目、画面の継ぎ目から漏れ出す光。
それを不思議に思いながらも、一夏はリストアップされた武装の一覧から、「バルカン」を選択する。
すると、一夏が被るISの頭部、そこから二対の銃火が見えた。五発に一発の割合で曳光弾が混ぜられたそれは青い線を引きながらオルコットの『ブルー・ティアーズ』に向かうが、容易く避けられる。
オルコットとは先ほどから口論を続けていた、いや、それはただ互いに罵倒し続けているだけにすぎないかもしれない。
だが、一夏はオルコットの考えに納得できない、それともオルコットを通して、世間に広がる嫌な考えを否定したいだけかもしれない、女尊男卑の風潮を。
それが嫌だと、訴える自分に嘲笑だけを向けてくるはまさに、その現われに見えた。
一夏は、感情が次第に高ぶっていくのを感じた。

「この、分からず屋ぁ!」

キィン、と金属の共鳴する音が響いた。




『ユニコーン』の全身を構成する装甲、それがその継ぎ目から割れ、スライドしていく。
その下には赤く輝くフレームが見える。全身の装甲がスライドし、フレームが露出したせいか、一回り大きく見えるようになった『ユニコーン』。赤い燐光が輝きを増し、白昼に溶け込むようだった白い装甲を、赤く彩る。
背部に折りたたまれていた「ビームサーベル」が両肩を飾るように広がる。
大きな変化を示したのは頭部だった、口の部分に当たるマスク状のパーツが開き、目を覆うバイザーもスライド収納され、その目を顕にする。
特徴であった、一本角は中央から割れてVの字に変形する。角に隠されていた第三の目、メインカメラも露出している。人間と同じバランスで配置されたデュアルアイ・センサーを瞬かせ、金色に輝くV字の角を展開させた姿。
その正体は『ガンダム』。
常軌を逸した性能を持ち、戦局をも左右すると言われる悪魔の力。
各地のISを使用した表ざたにされていない紛争にも姿を現し、その性能を大いに発揮したという。その特徴をもった「顔」が、『ユニコーン』の装甲の下に、隠されていたのだ。
それを見た織斑千冬は舌打ちをした。

「アナハイムの狸共め、一体何を考えている。」

アレを、『ガンダム』に属すると思われるISを世間に晒すのを厭わないとは。
あれは所謂裏に近い存在だ、競技用どころか兵器用のISである、強力すぎるモノだ。
確かに千冬の弟、織斑一夏は現在唯一の男性IS操縦者だ。
だからといって、『ガンダム』を授ける理由にはなるまい、とも考え、そこで思考を寸断する。今は弟が試合をしている、こんなくだらん思考は後でも出来る、と頭が痛くなりそうな事は後回しにした織斑千冬であった。


落とせる、そうオルコットは確信した。
相手のIS、確かスキャンした情報には『ユニコーン』と表示されていたそれは、ただの白い角ばった装甲を持ち、搭乗者の顔すらも隠したそれのたった一つの特徴、一本角を持つそれは、動きも一般的なISより少し速いが、専用機にしては遅いとすら言えるものであった。

搭乗者、織斑一夏も素人だ。先ほどからこちらの攻撃の三分の二程は当たっているのではないだろうか?こちらに気を取られ『ブルー・ティアーズ』に周りから攻撃され慌てている姿は、実に滑稽であった。その証拠に相手のシールドエネルギーも残り少ない。
後何発かで落ちるだろう、オルコットは勝負を終わらせる事を選んだ。

「落ちなさい!」

ビット状の『ブルー・ティアーズ』が一夏のIS『ユニコーン』を取り囲み、球陣を敷く。
そこから描かれる射線は、一夏に回避させる場所を与えないだろう。
そう思い、射撃を命じたオルコットは、目を見開いた。
確かに相手に向かって四方八方から向かっていったレーザーが全て、『逸れて』いったのだ。
あれは普通のシールドで起こりうる現象では無い、そこに言い知れない恐怖を感じたオルコットは手に抱えたライフルを一夏に向け、撃つ。

「消えた……!?」

青い軌跡を残したレーザーは、しかし一夏には当たらなかった。
何処に、と思ったその時、右からの衝撃を感じた。右肩に在ったはずのアンロック・ユニットが赤く熱で染まった淵を残し、半分になっていたのだ。
慌ててハイパーセンサーに意識を向けなおす。それが捉えた相手の姿はもはや先ほどまでの『ユニコーン』ではなかった。

白い装甲は赤く光るフレームが露出し、その白かった機体を赤い燐光で染め上げている。
のっぺらとしていた顔は剥がれ、V字の角と、人の顔のような頭部。
その姿を確認したときには遅かった、『ユニコーン』の右手に持たれた短い棒のようなもの、そこからピンク色の光が迸り、まるでサーベルのような形となる。

恐らく「アレ」が右肩を斬った物だろう、そう直感したオルコットは、機体を瞬時に左へと動かした。
そのすぐ後に『ユニコーン』が通り過ぎる。速い、オルコットはただそれを恐怖していた。こちらに向け、剣を向けていたから、来るという事は分かっていた。
だが、あれ程の速さは想定すらしていない。消えたようにしか見えなかった、もちろん、瞬間移動だなんて事は無いだろう、恐らくは瞬時加速、しかし、素人に出来うる技術ではない。あれは、ただ単にスラスターを吹かしただけの……。

そこまで思考を展開させたオルコットは、慌てて『ブルー・ティアーズ』に攻撃を命じる。
幾ら速くなっても素人、二度も『ブルー・ティアーズ』の包囲網からは逃れられない。
そう考え全ての『ブルー・ティアーズ』を発射する、ビット状の物はもちろん、ミサイル状のものも、だ。それらはレーザーと煙をの軌跡を引いて、一夏へと向かう。
そして、爆炎が辺りに広がる。

「やりましたわっ!」

それはやっていないフラグだった、と後のセシリア・オルコットは語った。



立ち込めた煙を割いて飛び出してくるその姿は、無傷であった。
いや、煙で多少煤けてはいるが、一夏のIS『ユニコーン』は赤い軌跡だけを残し、信じられない速度でオルコットの周囲を飛び回る。
そして気づいた時にはもう一つのアンロック・ユニットが、左肩にあったはずの、だ。
それが断ち切られていたのだ。やはり赤く染まった淵を残して。

「こんなことが……!?」

ありえない、あの速度では幾らPICがあろうと、扱いきれるわけが無い。
驚愕を残せないオルコットはビット状の『ブルー・ティアーズ』でやたらめったらと相手に向かって乱射する。が、かすりもせずに、その全てを回避されていた。
と、その後、動きを止めた『ユニコーン』は何を考えたのか、右手に持った「ビームサーベル」を元の位置、背中のバックパックに納めた。そして、右手でオルコットを指差したかと思うと、手の平を上にし、手をゆっくりと握り締めた。
その行動は一体何なのか、そう問いかける前に変化は訪れた。

先ほどまでオルコットの意のままに動いていた『ブルー・ティアーズ』が、その機首を次々と転換し、オルコットに向きなおしたのだ。そしてレーザーを、「オルコット」に向けて放つ。

「なっ……私が分からないのですか!?」

まるで今まで可愛がっていた飼い犬に噛み付かれたかのように慌てふためくオルコット。
それも当然だ、本来、こちらが操っていたはずの『ブルー・ティアーズ』が、そのコントロール権が、奪われたのだから。
どんな手段でそれを成したのか、オルコットには到底理解できるはずもなかった。
コアネットワークを経由してハッキングでもしたのか、はたまた埒外の手段で行ったのかも区別が付かなかった。

唯一つ理解出来た事は、自分が何時の間にか、アリーナの地面に居て、その上に『ユニコーン』が組み敷いている事だけであった。
いや、もう一つ、ある。
それは、一夏の記憶が、流れてきて……。






声優ネタ、バナージ君マジふわもこ。
色々詰め込もうとしてダメになった感じがする。
そして何気にオルコットさんが喋る、主人公より他の人が動きやすい……。

続きませぬぞ。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.00407290458679