日本の刑事事件では初めて、東京地検特捜部が容疑者の取り調べのすべての過程を録音録画し、取り調べが全面的に可視化されました。
東京地検特捜部は、先月、不動産の取り引きを巡って会社に損害を与えたとして逮捕した不動産会社の元役員を、13日、特別背任の罪で起訴しました。元役員は逮捕された容疑を認めていたということで、取り調べは、元役員の同意を受けて、逮捕直後から起訴までの21日間、すべて録音録画され、全面的に可視化されました。弁護士によりますと、取り調べは、検察官が記録することを告げて始まり、終了すると、映像の冒頭と末尾の部分を見せたうえで、記録したDVDをそのつど封筒に入れて封印したということです。1回の取り調べの時間は1時間半から2時間程度で、これまでの特捜部の事件と比べると大幅に短くなったということです。弁護士は「元役員は、自分の主張を伝えやすかったと話していた。威圧的な調べなど、不適切な取り調べを防ぐ効果もある」と話しています。取り調べの可視化を巡っては、無罪が確定した村木厚子さんの事件を受けて、法務省が先月、新しい刑事司法制度の導入に必要な法整備を法制審議会に諮問し、全面可視化が導入されるかどうかが焦点になっています。今回の全面可視化は試験的に行われたということで、最高検察庁は、今後も可能なかぎり続け、来年の春をめどに捜査への影響を検証したいとしています。