楽しい宴会が終わりを告げ、翌日。
二日酔いで重たい頭を抱える乗組員の間を、は1人ウキウキ歩いていた。
それは美味しい朝ごはんを食べたからということもあるが、一番はたくさんの兄と顔を合わせるのが嬉しいからだった。
家族を幼い時に失ったは、誰よりも愛に飢えていて、誰よりも兄が欲しいと思っていたのだから、当然のことである。


「マリュコー!!!」
「朝っぱらから元気なことだよい。」
、げんきぃー!マリュコはー?」
「元気だよい。」


よかっら、よかっら…と、回らない舌を動かしながら、ウシシシと笑っている。
相変わらず変な笑い方だと思ったが、あまりにも楽しそうに笑うため、何も言わなかった。
そもそも、子供はどんな子でもこんな笑い方をするのかもしれない。
マルコはそう自己完結させると、手に持っていた手配書に目を戻す。


「なーにー、それぇ?」
「これかい?これは、手配書だよい。」
「て、て、てぇ……う〜ん、、ブリャックリストならねぇ、知ってるよぉー。」
「それを言うなら、ブラックリスト…だろい。」


首を上下に振り、くしゃっと顔を歪めながら笑う。
ブラックリストも手配書も変わらないが、何故こんな子供がそんな物を知っているのか…思考を巡らせてから、はたと気付く。
そういえばは、シノビ"というよく分からない所に所属していたと。
そこでは、殺しもするし殺されもすると言っていた。
こちらとあまり変わりのない、治安の悪さだったのかもしれない。
しかし、のように小さな子供に殺しをさせるということは、もしかしたらこちらよりも治安が悪いようにも伺える。


「うひゃ!マリュコの、顔!!マリュコの顔!!」
「あぁ。そりゃ、海賊をやってれば手配書にも載るだろい。」
「ふはー…マリュコ、すごいねぇ。、そんげいしたよぉー。」
「そんげいじゃなくて、尊敬だ。」


ふへぇー、と分かったのか分からなかったのか、は相槌を打った。
それと同時ぐらいに、マルコの顔が描かれた手配書に手を伸ばし、まじまじとそれを見つめる。
何がそんなに難しいのか、眉間に皺を寄せながら手配書と睨めっこをしている。
マルコは自分自身の写真だけあって、少し羞恥心を覚えたため、から写真を取り上げた。
それに対しては、おうっ!と驚きの奇声をあげながら、少し不満そうな顔をする。
頬を膨らませ、仁王立ちにして立っているその姿がまた愛らしく、本人は不満で堪らないのだろうが、マルコはプッと吹き出してしまった。


「わらうーなぁー!!」
「わ、悪かったよい…ッ……」


まだ笑いの余韻が残り、声が微かに震える。
は益々怒り、マルコのいぢわるー!!と叫びながら、どこかに駆けて行ってしまった。
子供はなんて短気なんだ…と思う所だが、それがのせいなのか、その駆けて行く姿もまた微笑ましい。

笑ったせいなのか、腹筋がひきつる感覚にまた笑いそうになった。
特別、それがおかしいという訳でもないのだが…
どうしてか笑いがこみあげてくる。
これも新しく入ったばかりのの影響なのだろうか。


「本当に、不思議なやつだよい。」





二日酔いで苦しむ部下を余所に、隊長は1人和んでいた。

















いつしか、世界は桜色に、
マルコ(こどもってやつぁ、不思議な生き物だよい。)サッチ(なんだよ、いきなり。)


 

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