「、おめぇは帰れねぇんだよ。」
その言葉に、再び子供は泣き始めた。
大声をあげて泣くのではなく、唇を噛み千切らんばかりに噛みしめ、低く唸りながら泣いている。
今度のマルコも、静かに子供を下した。
突然告げられた宣告に、悲しみの涙を流すのも仕方ない。
他の乗組員はまだ理解出来ていないようだが、親父は理解出来たようだった。
親父が纏う、そのオーラが全てを物語っている。
マルコやその他の隊長も、うっすらと子供の置かれている状況が分かりつつあった。
「は、は、かえるもん。」
「どうやってだ。」
「、足、あるもん。海、歩く!」
「どこまで?」
「さ、さとにつくまれ、あるくもん…」
「寝言は寝て言え、このアホンダラめ。途中で力尽きて、溺れ死ぬのが関の山だろうが。」
幼いながらも、にだって分かっていた。
いくら誰だったか分からないやさしいあの人が、帰れると約束してくれたとしても、にはもう里に帰る事は出来ないと。
どこまでも続く、大海原。次につく島が里だとは限らない。
そもそも木の葉は、大きな国々に挟まれているため、海などない。
もう、諦めるしかない…
けれどそれすら出来ないのは、日々ミナトが教え続けた耐え忍び、信じ続けること…それが忘れられないからだろう。
「れ、れも、やさしぃおいちゃんはぁ、か、かえれりゅって、そーいっれらもん!」
「帰れねぇよ。」
受け入れるには、心が幼すぎた。
理解するには、身体が小さすぎた。
何もかもが早すぎた。
先生に会いたい。今、無性に先生に会いたい。
でも、今はそれすら許されない。
全てが、早すぎた。
「は、」
「おう。」
「、おうち、かえれない?」
「そうだ。」
残酷な言葉が、今はあまりにもリアルに感じてしまう。
子供はボロボロと大粒の涙をこぼしながら、雄叫びを上げた。
大切な人に向けた、最後のお別れをするかのように。
「しぇんしぇぇーッ!!!!!!!!」
バイバイ、だね。
(また、逢いたいな…せんせ、)
